※本コラムは2022年11月1日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ビックデータやAI が賑わいを見せ始めた2012年に創業し堅実な成長を実現し続ける、株式会社ギックス。代表取締役CEOの網野知博氏に市場構造やさらなる成長戦略について教えていただきました。
株式会社ギックスを一言で言うと
当社のクライアント様にデータインフォームドな判断(=データに基づいて論理的に考え合理的に判断すること)をしていただくための行動変革の支援を行っている会社です。
創業の経緯
創業は2012年ですが、ちょうどその当時はビックデータというキーワードが出てきた頃でした。また、弊社の創業メンバー3名がともに在籍していたIBMではクイズ番組でAIが人間のクイズチャンピオンに挑戦するというプロジェクトが行われておりましたが、私達は「AIが業務判断するよりも、高度に分析されたデータを用いて、人間の判断する方が経営の高度化に近いのではないか」と考えていました。
そこで一連のシステムを構築する事を目的にした会社ではなく、データを預かり、分析し、読み取りや示唆出しも行った上で経営者向けに指南するサービスを提供する事を考えました。
創業当初は、所謂「スモールビジネス」と言う形態で、少人数ブティックファームとして事業をスタートさせました。
幸いにも、設立して間もない頃から大手クライアントに恵まれ着実に成長する事ができました。中核となるメンバーも入社し、経験を重ねながら、一連の取り組みを仕組み化していく事により、質が高いアウトプットを生産性高く提供できるようになり、その頃から、所謂「スタートアップ」に転換し、ベンチャーキャピタルから出資も受けて、事業拡大に向けた取り組みをスタートさせました。起業から3年経った2016年の事です。
VCから投資を受けてからも、当社のやりたい事をブラさずに、データインフォームド推進に特化して経営を続けてきたことが、今から振り返るとかなり重要なポイントになっていたと感じます。
未だに外部からは何をしているのか分かり難い会社と言われることも多いので、今後も努力は必要だと感じています。ただ、それでも当社の提供便益を理解したクライアントは、継続的に当社とご契約し続けてくれております。経営方針としては決して間違っていたわけではないと考えています。
伝統的大企業のトップ/ミドルマネジメント層に対してデータを使って経営判断をすることの重要さを理解していただいて、当社のサービスを活用していただく。その結果、彼ら自身の行動が、データインフォームドなものに自ずと変化していく。そういうことが私たちの価値です。
世の中の成功パターンの一つに中堅中小規模の企業様にむけてサービスを展開し、顧客数によって収益をあげるモデルがあります。しかしながら、当社は当社が得意とするビジネスモデルを貫き、当社がベストだと考えているやり方で進み続けてきたことで、今があるのだと思っています。
また、connecting the dots. も強く意識しています。今、あらためて振り返ってみると、たくさんのクライアントの方々やパートナー企業に恵まれてきました。出会いやめぐり合わせ、ご縁、運にも大変助けられました。様々な方のおかげで、今こうして事業を続けている事ができています。
事業内容について
当社がパーパスとして掲げております「データインフォームド」、すなわち、データに基づいて論理的に考え合理的に判断する。これをクライアントに浸透させ、実行していただくためのご支援をしております。
「データに基づいて論理的に考え合理的に判断する方が良い」ということは、至極当たり前だと思うかもしれませんが、実際のところは、ビジネス判断の多くが勘と経験、もしくは前例踏襲により行われています。
企業の強さは、多くの社員が関わる日常業務の何十、何百もの小さな判断の積重ねで決まります。クライアントが、データを見て考える、データのより効果的な使い方を考えるようになるために、当社が提供しているサービスは、DIコンサルティング、DIプラットフォーム、DIプロダクトの3つです。
「DIコンサルティング」では、企業様からお預かりしたデータを当社が分析可視化し、そこから何が読み取れるか、またどのように使っていけば判断が迅速化・高度化するのか等の検討をクライアントと一緒に実施しております。
データ利活用の方針が固まったら、データの蓄積・分析をするシステムや、業務アプリへの導入のご支援をさせていただきます。これが「DIプラットフォーム」サービスです。
さらに、このような形で当社に多様な企業様の事例が蓄積されていきますので、業界共通の課題解決になりそうなものは当社が投資を行い、SaaSサービスの形態で、クライアントが使いやすい形で提供しており、これを「DIプロダクト」サービスと呼んでいます。
これら3つのサービスにより、クライアントが「データインフォームド」な行動をとる、ビヘイビアが変わる事を目指して、伴走支援をさせていただいております。
なお、当社は“伝統的大企業”を対象にサービス展開をしております。判断の高度化により生産性が上がり、より大きなビジネスインパクトが出るという観点で、従業員の数、あるいは対象とする顧客の数が大きい企業様をターゲット・クライアントと捉えております。もちろん、これは当社の現時点でのケイパビリティを踏まえた判断ですので、3年後ないしは5年後には変わっているかもしれません。
また、当社は“データ利活用にチャレンジして苦い経験を持つ”企業様の方が、相性が良いことが多いです。データ利活用の検討には様々な落とし穴や難しさがありますが、失敗経験がある方が当社のサービスの実践的な進め方を理解して頂きやすいと考えております。
中長期的の成長イメージとそのための施策
当社が定義している事業領域は、潜在市場ではありますが、現時点で3-5兆円程度あります。まだまだブルーオーシャンですので、しっかり年間40%の売上成長を実現していくつもりです。具体的な手段としては、当社で縦横展開と呼んでいる、DI思想の部内展開・社内展開・業界内展開・他業界展開を、3つのサービスを柔軟に組み合わせることで、高速且つ効率的に推進していく事になります。
まず、解決すべき課題を相談頂いてそれが本当に解決できるのか、業務を高度化できるのかを試す「DIコンサルティング」サービスを実施し、業務適応の方向性が決まったら、「DIプラットフォーム」サービスにてデータ処理分析基盤構築やアプリケーション開発を行います。
また、一つの部署やテーマで一旦仕組み作りをしても、新しいデータの追加や派生的に使い方を増やしたいといったニーズは継続的にあり、この点も含め「縦展開=部内展開」と呼んでいます。
一方で、とある部署でデータ利活用の成果が出ると、社内の他部署やグループ子会社などからお問い合わせをいただくことが多々あります。そういった場合には、そちらの部署や子会社において、改めてDIコンサルティングを行い、そこからの一連の流れが始まっていきます。これが「横展開=社内展開」です。このような形でグループ企業を含めて断続的な縦横展開を行なっていきます。
加えて、例えば鉄道業界のように業界共通の課題があり、競合関係になりにくい業界においては他社様へ展開することもあり得ます。あるいは、他業界において同じ変革テーマ、同じ業務領域でのニーズをお持ちの企業様へ展開させることもあります。
この顧客開拓のアプローチを着実に広げていくことで、目標値となる売上高年間40%成長を実現していきます。
市場に競合が多数押し寄せる事で、競争環境が激化するのではないかと言う質問を頂戴することもあります。しかし、現状は市場規模に対してPlayer数が少なく市場がスカスカな状態だと捉えています。
各社それぞれ強みを持って市場に参入してきますが、各社アプローチに仕方も異なりますし、課題解決手法も異なります。
当社はクライアントの事業の「もやっとした課題」に対して、課題定義からスタートし、課題解決を目指すという伴走アプローチをとっています。
「事業に関わるデータを可視化して、構造的や体系的に物事を見ると、おのずと解決の方向性が見えてきますよね?」と言うスタイルです。こうすることで、業務のプロであるクライアントの知識や能力を最大限引き出していきます。隣で走るパートナーという位置づけです。
ではなぜ、当社が伴走できるのか。ここが当社の一番の強みだと思います。大量の未整備のキタナイデータが、ごちゃごちゃした状態で、様々なシステムに分散して格納されている。しかも、そのシステムは、日々、複雑性を増しながら増え続けていく。多くの企業は、このような状況にあります。このような使いづらい多種多様な大量データ(世にいうビッグデータ)を受領して、整えて、集計して、体系的な可視化を行い、また、高度な分析を行って、意味のある分析アウトプットを出していく。ここのスピードが、極めて速いのです。
あるクライアントにおいては、この領域でデータ分析のお仕事をされているチームが3ヶ月程度の時間を要していた分析や可視化において、当社が参画して2週間程度で構造的な可視化を提供しました。
いきなり、リアルなデータを使った可視化結果を見ながら議論を開始できるので、最初から実のある議論が可能となります。業務のプロであるクライアントと、データ分析のプロである私たちが、リアルなアウトプットを共に眺めて、課題や方向性を議論することができる。これが、伴走の真髄です。
仮に競合他社様が同じようなアプローチで参入を試みても、10年間ノウハウを溜め、特許技術を含む多くの技術アセットを拘置してきた当社に追いつくのは困難だと思います。あるいは、各社が当社とは異なるアプローチで参入してくれば、市場全体が盛り上がることにつながります。いうなれば、「データインフォームド市場への競合参入、大歓迎」という風に考えています。
投資家の皆様へメッセージ
当社は、10年後に「あのとき、ギックスの株を買ってよかった」と思っていただけるように中期的に堅実な成長を目指します。投資家の皆様には、ぜひ、長い目線で当社を見て、ご興味を持っていただけますと大変嬉しく思います。
本社所在地:東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル 11F
設立:2012年12月12日
資本金:2億8592万円(2022年11月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2022年3月30日上場)
証券コード:9219