※本コラムは2024年3月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社トライトは医療福祉業界における人材不足を人材マッチングとICTソリューションで解決していく会社です。
代表取締役社長の笹井英孝氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社トライトを一言で言うと
医療福祉業界の人材不足を解決するためのソリューション提供企業です。
トライトの沿革
創業経緯と代表就任経緯
2004年に建設派遣業として創業し、その後医療福祉分野での人材紹介を展開してきました。
私が当社に参画したのは2019年で、もともと医療関係の会社を経営した経験から、当社株主である投資ファンドから声がかかり、代表取締役として就任しました。
新たな経営陣になってからは、過去のビジネスモデルを根本から見直し、2019年を新たな創業と位置付け、医療福祉業界のICTソリューション事業など新しい分野にも進出しました。
過去、私は15年以上医療分野に携わっており、医療機器とデータの活用についての知識がありますが、このICTソリューション分野は非常に将来性が高い分野だと考えています。
上場経緯
2019年以来、投資ファンドが100%株主であったため、会社売却か上場が目標でした。
当社のビジネスは、医療福祉や建設といったソーシャルワーカーに関わる事業を展開していたため、社会性・公共性という観点で上場がふさわしいと考えました。
そして2023年7月に東証グロース市場に上場を果たしました。
トライトの事業概要と特徴
概要
当社の事業は大きく三つに分けられます。
最初に、売上全体の約半分を占めている医療福祉業界の人材事業です。
ここではデジタルマーケティングを駆使して、医療福祉分野の専門職(保育士や看護師、介護士など)の転職希望者に対し、希望に沿った転職先の求人案件を紹介しています。
次に、建設業界向けの人材事業です。
この分野では、プロジェクトベースで人手が必要になる建設業界に対し、経験豊富な技術者や有資格者を派遣しています。
特に経験を積んだベテランを中心に派遣することで、高い信頼を得ています。
最後に、医療福祉のICTソリューション事業です。
この分野では、介護施設等の業務効率を向上させるためのプロダクトを提供しています。
2023年6月には株式会社bright vie(以下ブライトヴィー社)がグループに参画し、介護施設向けのソフトウェアを提供しております。
事業における優位性
医療・介護業界への特化
医療従事者に対する知識が当社の大きな強みです。
一般的な企業と異なり、医療福祉の現場は緊急性が要求されることが多く、例えば手術室で働く看護師が欠けるとなると、その影響は計り知れません。
これに対応するため、我々はスピードを重要視し、短時間で適切な人材を配置できるよう迅速な対応を心掛けています。
また、小規模な介護施設では、一人の欠員が全体の運営に大きな影響を与えるため、迅速な人材紹介がさらに重要です。
このように契約施設のニーズを正確に把握するために必須となる医療福祉業界の知識が豊富な営業社員を多く抱え、約8.1万施設(2023年12月末時点)との信頼関係を築いています。
約200万人の求職者データベースと適切なマッチング
我々のデータベースには約200万人の有資格者が登録されており、これが大きな競争力となっています。
この豊富なデータベースを活用することで、例えば地方で医療福祉従事者を必要としている場合でも、適切な人材を我々のデータベースから迅速に見つけ出すことが可能です。
また、2023年12月末時点で全国28都道府県に拠点を有しておりますが、創業以来、地域を徐々に拡大しながら20年にわたってデータを蓄積してきました。
我々のデータベースは常に最新の情報を保持するように努め、スキルや希望条件に対して契約施設のニーズとマッチングするかどうかをすぐに確かめることができます。
これは、当社が他の人材紹介業を営んでいる企業と一線を画す最大の理由だと考えています。
トライトの成長戦略
人材紹介事業の強化
医療福祉事業の生産性を改善していきます。
具体的には、今後も医療福祉人材紹介事業を伸ばしていくために、営業社員の積極採用と人材育成に力を入れていきます。
現状は、医療福祉業界では多くの人が転職時に当社の様な有料職業紹介事業者を利用していません。
一般企業と比較して、医療福祉分野では直接応募や知人の紹介による転職活動が未だ主流で、人材紹介を利用する割合は約20%に留まっています。
このため、市場の拡大とともに当社の売上も増加すると考えており、この分野での成長を目指しています。
今後も業界内でトップクラスのポジションを維持しつつ、10%から20%の年成長率を目指していきます。
ICTソリューションの拡充とデータソリューション事業への展開
主にICTソリューションに関しては介護分野での活用を目指しています。
現在、介護現場では多くのデータが手作業で記録されていますが、DX化して省人化を図ります。
またデジタル上で記録したデータにAI技術を用いて分析することで、より効率的なケアや予防管理を実現していきたいと考えています。
例えば、心拍数や血圧、睡眠パターンといったデータをリアルタイムで収集・分析することで、潜在的な健康リスクを早期に識別し、介護が必要なレベルの上昇を防ぐことが可能です。
これにより、高齢者一人ひとりのQOL(生活の質)を向上させると同時に、行政における課題でもある医療費の削減にも繋がると考えています。
このようにICTの活用とデータの統合により、医療・介護分野におけるサービスの質が飛躍的に向上し、社会課題の解決にもつながると考えています。
新規事業の早期収益化に向けた積極的なM&A投資
新しい事業の早期収益化に向けてM&Aを積極的に行っています。
既存事業はオーガニックに成長を遂げてきましたが、新しい分野であるICTソリューション事業は、早期に事業を立ち上げるためにも外部の技術やノウハウを取り入れる必要があります。
2023年6月にブライトヴィー社を買収したことで、介護分野でのICTソリューション事業を強化しました。
今後もユニークな企業やサービスを探し、アライアンスやM&Aを進めていきます。
注目していただきたいポイント
日本は今後数十年にわたり、少子高齢化という大きな課題を抱え続けていくと考えています。
労働人口が減少している中で、高齢者が安心して暮らせる社会を実現するためには、医療福祉分野の専門性が高く適切なサポートができる人材の確保と少人数でも運営することができる環境作りが必要です。
当社はこのニーズに対して人材確保とDX推進による省人化を提供し、医療福祉現場の課題に応える企業としてコミットしていく方針です。
そのためにも必要な技術やプロダクトについては積極的にM&Aを行いながら、提供できるソリューションを増やしていく予定です。
今後も長期的な視点を持って、この課題に取り組んでいきたいと考えておりますので、その点に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
現在、日本は少子高齢化により、高齢者の支援とその医療福祉人材の成り手の不足といった中長期的な社会課題を抱えています。
当社は、この医療福祉業界における人材不足という課題に対して人材紹介とICTソリューションの提供を行うことで解決しようと事業を展開しています。
これからも社会的価値の高い事業を通じて、投資家の皆様にとっても価値ある成果を提供していきますので、ご支援と応援を心よりお願いします。
本社所在地:〒141-0032 東京都品川区大崎1-2-2 アートヴィレッジ大崎セントラルタワー17階
設立:2004年11月
資本金:10百万円(2024年3月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場 (2023年7月24日上場)
証券コード:9164