※本コラムは2022年11月8日に実施したIRインタビューをもとにしております。
コロナ禍で規制が緩和されたオンラインによる服薬指導を追い風に、高い成長が期待されているジェイフロンティア株式会社。他社に真似のできない圧倒的な強みについて、代表取締役社長執行役員の中村篤弘氏に話を伺いました。
ジェイフロンティア株式会社を一言で言うと
目指している世界観で申し上げると、「SOKUYAKUヘルスケア経済圏」を創出することです。
未病・予防→疾病→未病・予防という人々の「ヘルスケアサイクル」において、「疾病期間」の短縮化・「未病・予防期間」の長期化を通じた、健康寿命の伸長による社会保障費の削減に貢献にしたいと考えています。
つまり、病気に罹ったかなと思ったら、ネットで検索しておおまかな症状を特定する。その症状に合った病院や医師を検索して、オンライン診療を受ける。さらに処方された薬を宅配で受け取ることができる。こうした一連の流れをオンライン上で完結させるのと同時に、私たちが提供している健康食品、漢方薬、化粧品を利用していただくことで、病気になりにくい身体づくりをしていただく。この「ヘルスケアサイクル」の全てをカバーするサービスを提供するSOKUYAKUプラットフォームを運営しています。
創業の経緯
大学卒業後、大手ドラッグストアに就職して、化粧品や医薬品の店舗販売に従事しました。これは、私が大学生の頃、祖父の介護を経験し、通院や薬の受取に大きな手間を感じたことがきっかけとなっています。
その後、2000年ごろから楽天やAmazonなどのEコマース(以下、EC)が徐々に台頭するようになり、この分野は伸びると思いました。それで、ECについて学びたいという気持ちから広告代理店に転職したのです。
広告代理店では、いわゆるD2C事業者の立ち上げサポートに関わりました。なかには株式を上場して大きな会社に成長したところもあります。
さまざまなD2C事業者と関わるなかで、モノが売れない理由はひとつだけではないことに気付きました。どれだけ素晴らしい媒体を用いて、注目されそうなプロモーションを展開したとしても、プロダクトがダメだと売れません。また良いプロダクトであっても、 ECカートシステムの使い勝手が悪かったり、あるいは送料が高かったりすると、売れなくなってしまいます。
このように、D2C事業は、さまざまな面からソリューションを提供しなければ売上につながらないため、それを広告代理店として関わるには限界があり、起業することにしたのです。
会社を設立したのは2008年6月で、当時の社名は「モバイルフロンティア株式会社」で、広告代理業としてスタートしました。とはいえ、SNS広告やPRイベント広告などを展開するのと同時に、2012年には自社ブランドの健康食品である「酵水素328選ドリンクプレーン(アサイーベリー味)」と「酵水素328選ごほうびドリンク」を、2016年には自社ブランドの医薬品「ホワイピュア」を発売しました。
そして2019年には調剤薬局の「健康日本堂調剤薬局 赤坂店」を開設しました。これは調剤薬局を日本全国に展開するためものではなく、「SOKUYAKU(ソクヤク)」のβ版として、サービス展開を図るためのものでした。薬剤師を配送員にして、「薬剤師の出前館」のようなサービスを提供したのです。
正直、電話による服薬指導や処方箋医薬品の宅配については、いずれ規制が緩和されるものの、この時点では恐らく4、5年後くらいだろうと思っていました。ところが、2020年に入って新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化したことによって、オンラインによる服薬指導が解禁されました。2020年4月から電話による服薬指導や処方箋医薬品の宅配を開始し、2021年2月からオンライン診療・服薬指導プラットフォームサービスである「SOKUYAKUアプリ」の配信をスタートさせたのです。
事業内容について
大きな柱は3本あります。「メディカルケアセールス事業」、「ヘルスケアセールス事業」、「ヘルスケアマーケティング事業」がそれです。
メディカルケアセールス事業は、医薬品のD2C(通信販売)、調剤薬局の運営、そして、オンライン診療・服薬指導のプラットフォームである「SOKUYAKU」の運営を行っています。
ヘルスケアセールス事業は化粧品や健康食品のD2C(通信販売)です。
そして3つ目の柱がヘルスケアマーケティング事業で、ヘルスケア関連商品を扱っているEC事業者向けに、販促やプロモーション、BPOサービス等を提案しています。
「SOKUYAKU」は、オンライン診療の予約と共に、服薬指導も予約して、患者さんが処方箋医薬品を宅配か郵送かのいずれかを選択して受け取れるというサービスです。この、オンライン診療・服薬指導から処方箋医薬品の郵送・宅配までをワンストップで出来る仕組みについては、ビジネス特許を取っております。
これを導入して下さっている病院と調剤薬局が、2022年の第1四半期末で7000件近くあり、ユーザー数も55万人まで増えてきました。調剤医療費の市場は7.7兆円もありますから、この1%がEC化すれば770億円、10%がEC化すれば7700億円の市場規模になります。しかも、日本における医薬品のEC化は、ようやく規制緩和によって始まったばかりですから、今は小さくてもこれからの伸びしろに期待できます。
あと、人口1000人あたりの医師の数ですが、日本は2.4人しかいません。先進国の中で非常に少ないことに加えて、医師1人に対する65歳以上人口は112人で、これは世界でも群を抜いてトップです。そして20年後には医療費・介護費などを含めた社会保障費が、現在比で1.8倍になるのですが、医療従事者数は横ばいで推移する見通しです。医師や看護師はこれから人手不足と患者数の激増で大変な状況になるのが目に見えていて、それを私たちが提供する新しい医療の形を通じて解決できると考えております。
では、SOKUYAKUは他社でも真似ができるのではないかという質問をいただくことがあるのですが、他社が真似をすることは難しいと私は考えています。こちらについて説明させていただきます。
ポイントはいくつかあるのですが、たとえばオンライン診療・服薬指導のシステムを導入した場合、他社は医療機関から初期費用と月額費用を徴収します。これに対してSOKUYAKUの場合、医療機関からは初期費用や月額費用は一切取りません。患者さんから1診察につき150円、1服薬指導につき150円を頂戴していている点が特徴です。
また、広告規制の問題があり、保険証を使う診療の場合、7割を国が負担するため、広告を打って特定の病院や薬局に集客してはいけないという法律があります。
もちろん自由診療は広告規制がないので、自由に広告を打つことができますが、保険証を使った診療はそれができません。保険診療ではマーケティングやプロモーションができないため、オンライン診療件数が増えない一方で、医療機関のシステム費用の負担は重くなるという構図が医療のオンライン化の普及を阻害する要因となっています。
その点、「当日にお薬が届きます」というサービスの広告は法律上、問題ありませんので、その広告を通じてSOKUYAKUプラットフォームに患者さんを集め、オンライン診療をご利用いただくという流れが出来たのです。つまり、日本国内で唯一、患者さん向けのプロモーションをやっているオンライン診療の会社が、ジェイフロンティアなのです。
中長期の成長イメージとそのための施策
会員の増加という点で申し上げますと、これからマス広告に力を入れて展開し、認知度を高めていきますが、最近の傾向だと薬局の間で、SOKUYAKUを導入する動きが活発化しています。
SOKUYAKU事業を伸ばしていくうえで大事なのは、初診からオンライン診療を受けてくれる病院数を増やすことです。それが今、うまく回ってきているのは、調剤薬局やドラッグストアが近くの病院の先生を紹介してくれるケースが増えているからです。
何しろ「SOKUYAKU」のシステムは初期費用も、月額費用もかかりませんし、薬局も医薬品のEC化を進めたいと考えていますから、積極的に医師を紹介してくれます。また、代理店制度も採用しており、病院に医療機器を卸しているメーカーや、製薬会社など医療機関と接点があるパートナーと組んで、医療機関へのSOKUYAKUの導入数に応じた手数料をお支払いするということも行っています。
前述したように、調剤医療費の市場は7.7兆円もありますから、これからまだまだ成長していく余地があると思っていますし、これからは「SOKUYAKU」で集客しつつ、そのお客様を自由診療に送客するという流れも考えています。こうして収益の柱を増やしつつ、さらなる成長を目指したいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
教育と医療は国の二大インフラです。このひとつである医療について、私たちは医療従事者の負担がこれからどんどん重くなっていくなかで、それを軽減するためのソリューションを提供していきます。いわば国策ど真ん中のビジネスといっても良いでしょう。
しかも45兆円という社会保障費は、今後20年で90兆円まで膨れ上がります。つまり私たちの市場は、今後20年間で100%成長する可能性がほぼ確実視されているのです。そこをしっかりご理解いただきたいと思います。
本社所在地: 東京都渋谷区渋谷2-9-9 SANWA青山bldg.8階
設立:2008年6月
資本金:51,463,000円(2022年11月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2021年8月27日上場)
証券コード:2934