※本コラムは2022年11月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
近年、攻めの経営戦略としてのDX支援サービスが増える中、株式会社GRCSは経営の「守り」の部分にフォーカスし企業成長の最大効率化を支援しています。代表取締役社長の佐々木慈和氏に今後の成長戦略を教えていただきました。
株式会社GRCSを一言で言うと
企業経営における守りの領域をテクノロジーを活用して支援する会社です。
創業の経緯
親族が起業家気質であったこともあり、いつかは起業したいという思いがありました。最初は教育系事業で2005年にFrontier X Frontierという会社を設立しましたが、うまく行かずその後もいくつかの事業を展開しておりました。
そんな中、2009年に現在の主力ビジネスであるGRC事業との出会いがありました。このタイミングで社名変更とともにその他の事業をストップさせ当領域に集中するという経営判断をしました。振り返ると一つ目の大きな転換点であったと思います。
第二創業のような形でスタートしたわけですが、計画通りにはいかない部分もあり事業として確立したのは2013年頃だったと思います。そして、同年にはセキュリティ事業を展開し始めました。ちょうど、世間的にもセキュリティ意識が高まり始め、その必要性が意識されてきた時期でした。ここが第二の転換期と言えます。
GRCとセキュリティのそれぞれの領域で事業が軌道に乗りはじめ、相乗効果も出てきたことで、領域を横断的に展開する今の事業モデルが確立しました。売上高も順調に推移して上場が視野にはいってきたタイミングとなります。
また、設立当初から100%自己資金で運営してきた当社ですが、このタイミングで始めて資金調達を実施しました。そして本格的に成長ドライブをかけていくことになりましたので、ここが三つ目の大きな転換点だったと思います。
事業内容について
社名の通り、「ガバナンス」「リスク」「コンプラインンス「セキュリティ」という企業の経営における守りの領域をテクノロジーで支援する事業を展開しています。
GRC市場は、グローバルにおいては2030年にかけて年14%での成長が見込まれている分野です。しかし国内においてはまだ市場の定義すら無い状態です。ですので、当社は市場を形成していく役割を担いつつ、その過程で非常に高い成長率を実現できると考えております。
コンサルティングの観点では大手監査法人が競合であり協業企業となります。もともと専門人材が少ないGRCとセキュリティの分野ですが、当社も10年以上この分野に取り組んでいて数多くの専門人材を抱えております。加えてテクノロジーを活かすことが当社の強みだと考えております。
また、当社はコンサルティングサービスの提供で得られたノウハウを活かし自社で製品の開発・提供も行っております。国内においてこのようなプロダクトを自社開発し提供する企業はほとんどいません。さらに、GRCおよびセキュリティ領域における海外のプロダクトも積極的に取り入れ、グローバルで導入が進んでいる最先端プロダクトを国内に向け展開しております。そういった意味でも非常に成長余地のある領域であるとご認識いただけるかと思います。
当社の事業領域はコストセンターと認識されていることが多く、例えば、コンプライアンスの対策に積極的に投資する経営者はいません。そして、日本は特にこの風潮が海外に比べると強いと言われています。グローバルでは当領域に向けられる予算は日本のおよそ10倍程度だと考えております。
そのため、我々は国内にまだ浸透していないGRC領域の支援をするという価値を、国内企業にとって程良い予算感で提供する、ということを特徴としており、差別化の要因でもあります。
また、当社のビジネスにおいては人材が非常に重要です。繰り返しになりますが、GRCやセキュリティ領域の専門人材は非常に少ないです。そのため、人材を採用した上で、「いかに専門人材として育成していけるか」が企業成長にも大きく関わってきます。その選択肢として、当社は直近M&Aを実行しております。例えば、2022年7月に子会社となったバリュレイト社のM&Aにおいては二つのポイントがあります。
一つ目は人員の増強です。バリュレイト社が抱える18名の従業員に対し、当社がこれまで専門人材を育成してきたノウハウを適用させていきます。
二つ目は採用力の強化です。バリュレイト社は採用コンサルティングの事業を展開しているため、今回のM&Aでは採用の専門人材も獲得することが出来ました。足元年間約30名の採用を行っておりますが、ここをさらに増やしていきたいと考えております。
さらに、当社内での育成プロセスも改善させていく方針です。これまで、未経験人材の育成にはおよそ3年〜5年ほどの期間を要していました。この時間軸を短くするため、リスキリングの仕組み化を進めていきます。
これが実現すれば当社の成長スピードも加速していきますし、リスキリングの質を高めることで、今後もさまざまな企業のバリューを高めていくことができます。今回のM&Aは、人材採用と育成戦略の一手と捉えていただくとわかりやすいかと思います。今回のM&Aが軌道に乗れば、次は50人、100人・・・と対象とする会社の規模も拡大させ継続的にM&Aを実施していく方針です。
GRCおよびセキュリティの領域を扱う当社の事業は、投資家の皆様にはなかなか伝わりにくい部分が大きいと思います。まずご認識いただきたいのは、当領域に企業は一定以上の投資をしていると言う点です。
また、コストセンターではあるものの、一度お取引が始まるとリプレイスされにくいという特徴もあり、ちょうど監査法人のようなイメージになります。また、当社の既存取引先の割合は84.3%となっております。
以上の2点から、一度入り込めればいかに事業が堅調に推移し、企業が成長していくかという部分をぜひ注目していただきたいと思っております。
中長期の成長イメージとそのための施策
成長戦略は非常にシンプルでして、大手企業に特化した既存顧客の取引拡大と新規顧客開拓の2軸となっています。
GRCとセキュリティの領域は、上場企業であれば何かしらは取り組むべきところです。現在国内の上場企業は約3900社ありますが、当社の取引社数は166社にとどまっております。また、そのうちの15社で全体の68.6%を占めているというのが現状です。15社以外にも取引の拡大が見込める既存顧客が多くおりますので、既存顧客へのアップセルだけでもまだまだ成長の余地があります。
以前は取引社数を増やすことに注力していた時期もありますが、 今は「年間3000万円以上をGRCおよびセキュリティの領域に投資できる規模の企業に集中する」という戦略を明確に決めています。
この15社と同程度の取引社数を、既存顧客の中で単純に今の10倍にすることができればその分売上を伸ばしていく絵が描けますし、並行して新規クライアントを開拓していくことでさらに強固なものになっていくと考えております。
また、さらに長期的な目線で申し上げますと、大手企業の開拓とそこへ向けたプロダクト開発が軌道に載りましたら、次は縦展開を進めていきます。つまり中堅の企業様への展開をしていくわけですが、ここで事業構造が少し変化します。
大手企業に対してはコンサルティング:プロダクト提供の割合がおよそ9:1なのですが、これが5:5になるイメージです。また、プロダクトの料金は七掛けになります。さらに中小規模になりますと、プロダクト提供が全体の9割、料金は五掛けとなります。大手企業である方が、企業の規律や、我々の競争環境も厳しいですので、まずはいわゆるTier1の部分から確実に抑え、Tier2、Tier3と裾野を広げていくのが当社の成長戦略です。
現状ではTier1の中でも特に金融業界に力を入れております。これはイメージ通りかもしれませんが、金融業界はGRCおよびセキュリティの分野に最も投資をしている業界であると言えます。金融庁の監視があったり、顧客管理なども他業界に比べて厳しいためです。そして、特に証券の売買システムが絡むフロントテクノロジー領域に一番リスクがあるとされています。
当社はこれまで、この売買システムの周辺でリスクを抑えるためのサービス展開を行なっていました。実際に証券事故等が発生すると対策を講じようと投資してくれるのですが、やはり基本はコストセンターですので、なかなか導入が進んでおりませんでした。
そこで、新たにフロントテクノロジーの領域にて、取引プラットフォームやデータマネジメントの展開を開始しました。飛び道具としてまずはこのようなキャピタルマーケットソリューションを提供し、後々に我々の本丸のビジネスであるGRCとセキュリティ領域が拡大していくというイメージです。
具体的な規模としては、足元最大5億円程度の年間投資をしていただける証券会社様との取引が進んでおります。また、リスク管理や金融庁対策等はどの証券会社であっても同じニーズがありますので、1社でパッケージ化できれば横展開が可能になります。
また、銀行、信託、ホールディングスなど、グループにまたがるリスク・コンプライアンスの管理は連動しております。よって金融機関全体でもオセロのように当社の事業領域を拡大させていけると考えております。
投資家の皆様へメッセージ
まだまだ未開拓の市場ではありますが、今のところ競合もあまりいないと認識しております。ニッチな領域である一方、シェアを獲得していけると非常に面白い事業展開になっていくと思いますので、是非当社への投資をよろしくお願いいたします。
本社所在地:東京都千代田区丸の内1-1-1 パレスビル5F
設立:2005年3月(2018年3月商号変更)
資本金:299百万円(2023年1月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2021年11月18日上場)
証券コード:9250