※本コラムは2022年11月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。
近年、日本において深刻化する人口減少・少子化問題。その社会課題に取り組むため、大手銀行を辞めて婚活サービスを始めたのが、株式会社IBJ代表取締役社長の石坂茂氏です。婚活業界トップのIBJに日本における婚活マーケットの将来性について伺いました。
株式会社IBJを一言で言うと
「日本で最も結婚カップルを生み出す会社」です。当社は、婚外子率の低い日本において結婚カップルを生み出すことで日本の深刻な社会問題である人口減少・少子化問題を解決したいと考えております。この事業は、SDGsに直結しており、極めて社会的意義のある事業だと自負しております。
創業の経緯
日本興業銀行(現みずほ銀行)に新卒で入行しました。すぐに仙台支店へ配属され4年間、東北で仕事をした後、本店勤務になりました。その後、1990年代の後半から不良債権問題が深刻化して、山一證券など大手金融機関の破綻が相次ぐのと同時に、生き残った金融機関は再編を加速させ、日本興業銀行も第一勧業銀行、富士銀行と合併することになりました。
斯様な中、インターネットが民生用に登場してITブームが起こり、そのなかで多くの起業家が育っていきました。もともと私の実家は自営業で、私のように就職するのは稀だったため、日本興業銀行を辞めて自分で会社を興すことについては、何の抵抗もなく自然でした。
まずは銀行を辞めて、知人の事業を手伝いながら自分に出来ることは何かを、考えていた中でITをベースにして起業するならば、情報マッチング事業が良いのではないかと思索を巡らせていた時、結婚紹介業はどうだろうと思ったのです。
当時から日本の人口減少問題が深刻化することは自明で、日本の場合、婚外子率が低いため、基本的に結婚してからでないと子供を産むのが難しいため、婚活サービスを提供し、結婚カップルを増やすことで、この問題に寄与できると考えました。
2000年代に、日本初のインターネットを活用した結婚情報サービス事業を始め、これが比較的順調に業績が伸びて黒字化した段階で、Yahoo Japanの100%子会社となりました。会員数を増やして収益は増加した一方、オンライン婚活では、肝心の成婚率が上がりませんでした。
そのため、会員数が増えても、どこかで成長率の限界を迎えるのではないかと不安視していました。お客様からもマッチングが上手く行ったとしても、そこから先、どう結婚まで交際を進めていけば良いのか分からないという声が多くあり、インターネットを使った出会いの機会の創出(マッチング)だけでなく、マッチング後の結婚に向けたお客様の背中を押すための成婚サポートが必要だと思い、全国に昔からある結婚相談所の仲人業の方たちに成婚までのサポートについてヒアリングした結果、成婚率を上げるには、お客様一人一人の婚活のお悩みを丁寧にカウンセリングし、適切なサポートをする必要があることに気が付きました。アルゴリズムを用いたITの活用と、マッチング後のヒトの手による成婚サポートを融合させた婚活事業を立ち上げるため、Yahoo JapanからMBO。そして2006年に株式会社IBJを設立しました。
IBJを設立後3年目に、この組織を永続性のあるものにするには上場する必要があると考えるようになりました。当時はまだ広義の「出会い系」というイメージが強く、そもそも婚活事業という事業セクターが無かったので、上場は困難だろうと思っていたのですが、株式を上場すれば業界に対する信頼度が高まると考えていました。
事業内容について
結婚にフォーカスした複合的な婚活事業を展開しており、日本最大のお見合い会員基盤と、加盟店基盤を保有しています。これらをコアに、お見合い等のお引き合わせから交際後の成婚に至るまでのサポート体制をきめ細やかに行うことで、高い成婚率を実現しています。
また当社の主な事業は「マッチング事業」、「直営店事業」、「加盟店事業」、「ライフデザイン事業」です。
まず「マッチング事業」には、婚活パーティー「PARTY☆PARTY」や合コン・サシ飲みのセッティングサービス「Rush」を提供するパーティー事業と婚活サイト「ブライダルネット」や30~40代がメインの婚活・再婚マッチングサービス「youbride」のアプリ事業があります。マッチング事業は結婚相談所の予備軍となるマッチング会員が合計で約18万人(2021年12月末時点)います。
次に結婚相談所を運営する「直営店事業」と「加盟店事業」です。直営店事業は「IBJメンバーズ」や「サンマリエ」、「ZWEI」の3つの直営結婚相談所ブランドを運営しており、全国に計74店舗展開しております。また加盟店事業には全国3,530社(2022年9月末時点)の結婚相談所が加盟しています。直営店事業と加盟店事業合わせたお見合い会員数は8.7万人(2021年12月末時点)です。
またIBJグループの2021年度成婚組数は、1万402組と、日本の年間婚姻組数の約2%を創出しています。成婚後には、ウエディングを挙げたり、新居を探したり、指輪を購入したり、あるいは生命保険に加入する必要性が生じてきます。こうした結婚を取り巻く生活全般をサポートするのが、「ライフデザイン事業」です。
IBJの強みは「システム×ヒト」です。日本最大級の結婚相談所ネットワークである「IBJお見合いシステム」を運営し、婚活のDX化だけでなく、人を介したサポート体制やIBJメソッドを構築し、高い成婚率を実現しています。一方、多くの恋活・婚活マッチング事業者は、入会主義で広告出稿等によって会員数を増やし、マッチング(出会いの場を提供すること)をゴールとしてサービスを提供しております。
IBJは成婚数を重視する成婚主義のため、成婚率を上げるには人材の育成がIBJのビジネスの肝です。
中長期の成長イメージとそのための施策
よく投資家の方から言われるのが、「人口減少社会で婚姻組数も減少傾向のため事業の成長性は期待できないのでは」というご意見をいただきますが、独身者のうち約8割は、機会さえあればいつか結婚したいと思っており、この割合は、過去何十年にもわたって変わっていません。
事業というのはニーズもウォンツもあれば、広告を出すだけでお客様が集まりますが、婚活業界はニーズがあっても、ウォンツがないため、独身者の8割は結婚したいという意思があっても、結婚できない人が大勢います。
この潜在的な需要をしっかり掘り起こすことができれば、まだまだ婚活マーケットは拡大すると思います。
その一因として、近年、結婚相談所の新規参入が増えています。昔から結婚相談所というと、個人事業として開業するというイメージが大半だと思いますが、実は法人事業者の新規参入も増えており、IBJの結婚相談所ネットワークを利用しています。
恐らく新規事業者は、「結婚したい」というのは、人間の根源的な欲求に基づくものであり、環境変化や景気動向に左右されにくい特性を持っているため、結婚相談所を安定したビジネスとして参入してきていると思います。
また、結婚後の周辺事業においてはこれから拡大させていきますが、IBJは日本最大級の会員基盤を活用して成婚組数を増やし、結婚式場や宝飾店、不動産、保険など、さまざまなクロスセル需要を捉えるとともに、結婚が決まる前の婚活段階でも、デートやお見合いに使うカフェなどの飲食店を紹介するといった周辺事業を構築することが出来ると考えています。
こうした様々な事業展開によって、2027年には売上高300億円、営業利益50億円の達成を目指しています。
投資家の皆様へメッセージ
世の中にはたくさんの婚活サービス、マッチングアプリがあります。でも、その違いが分かっている人はあまりいません。私たちは単なるマッチングサービスではなく、高い成婚率を実現するための、人の手を介したサポートを展開しており、そこに大きな価値があることを是非、ご理解いただきたく思います。
本社所在地:東京都新宿区西新宿1-23-7 新宿ファーストウエスト 12F・17F
設立:2006年2月
資本金:699,585,000円(2022年1月)
上場市場:東証プライム(2012年12月6日上場)
証券コード:6071