※本コラムは2022年11月17日に実施したIRインタビューをもとにしております。
自社のバランスシートを用いた不動産投資に加え、個人の資産運用にも活用できる、不動産特化型のクラウドファンディングサービスをグループで運営するロードスターキャピタル株式会社。不動産という伝統的な資産が持つ可能性を、代表取締役社長の岩野達志氏に伺いました。
ロードスターキャピタル株式会社を一言で言うと
不動産投資のプロであり、常にチャレンジングなことに取り組む会社です。これまでと違うこと、新しいことにチャレンジして、世の中を変えることに貢献し、不動産ビジネスの地位向上につなげていきたいと思います。
創業の経緯
1996年に日本不動産研究所でキャリアをスタートさせた後、2000年にゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパンに転職し、自己投資・運用ファンドの不動産取得部門を担当してから、2004年に米系不動産投資会社の日本法人であるロックポイントマネジメントジャパンLLCに移籍しました。ずっと不動産畑です。
私は転職する際にひとつのルールを自分に課しています。それは、前にいた組織よりも小さいところに行くというもので、日本不動産研究所が300人程度、ゴールドマンサックスの不動産取得部門が80人程度、そしてロックポイントが5人程度からのスタートでした。
そうなると、次に転職する時は5人よりも小さい規模になるので、これはもう自分で起業するしかないなとも思っていたのですが、起業は老後の楽しみに取っておこうという気持ちもありました。
ですので、2011年にロックポイントを辞めた時は、もう一度、会社勤めをしようなどと考えつつ、自分で開業していた飲食店を経営しつつ、時機をうかがっていました。
そんな時、後にロードスターキャピタルを共同で創業した人物が、私が以前勤めていたゴールドマンサックスを辞めたので、一緒になにかしようと声を掛けてきました。
それが2012年のことです。まだリーマンショックの余波があって、不動産マーケットははっきり言って面白みが全くない状況でした。
そんな状況だから、まずは会社を立ち上げて「何かしよう」という程度の意識で起業しました。壮大な野望があったわけではなく、何となく肩書がないと肩身が狭いしね、という程度の感覚です。
とはいえ、会社を立ち上げた以上、売上を立てる必要があるだろうということで、とりあえずコンサルティングや不動産仲介などを始めました。
その最中、中国系のSNS会社であるRenrenの社長と副社長から、日本の不動産に興味があるから日本の不動産会社を買いたいという相談を受けました。ただ、ちょうど良い案件がないという話をすると、「それならお前の会社を売ってくれ」という話になり、10億円の新株を発行して引き受けてもらいました。
Renrenは、出資はしたけれども、経営について事細かに口を挟んでくるようなことはなく、言うなればメンターのような存在でした。それと共に、彼らはIT企業なので、そこから「クラウドファンディング×不動産投資」というビジネスモデルを始めました。それが2014年のことです。
その後も、ロードスターキャピタルで良い物件を取得できたこともあって、業績が堅調に拡大し、徐々に利益が増えていきました。そのなかでRenrenから株式を上場させたらどうだという提案を受け、上場に必要な会社の体制づくりをして、2017年9月28日に東証マザーズ(現在の東証グロース市場)に株式を上場したというのが、当社のおおまかな経緯です。
また上場については、クラウドファンディング事業を拡大するうえで必要だったとも言えます。
クラウドファンディング事業は1年で収益化できるようなものではなく、ある程度の長期戦を覚悟しなければなりません。許認可の問題や業務停止リスクもあります。したがって慎重に事を進めていく必要があります。何よりも、個人からお金を集めることになるため、信用の裏付けとして株式を上場するべきだろうと考えました。
事業内容について
不動産投資領域とフィンテック領域という2つの領域で事業を展開しています。
不動産投資領域の中核事業は、コーポレートファンディング事業で、当社のなかでは最も売上の大きな事業です。具体的には、自分のバランスシートを用いて不動産を取得し、その管理運営を行いながら家賃収入を得て、適度なところで売却して売却益を得るというものです。
それともうひとつ、アセットマネジメント事業があります。これは物件の規模感によるのですが、たとえば20億円、30億円規模の物件だと自社のバランスシートで十分にできるのですが、100億円規模の物件に投資するとなると、自社のバランスシートでは重すぎるので、そういう場合は他にも投資家を募って投資します。これがアセットマネジメント事業です。
もうひとつの領域であるフィンテック領域では、不動産特化型で「OwnersBook」というクラウドファンディングサービスを展開しています。前述したRenrenの出資を受けて海外の最新トレンドを知る機会に恵まれたからこそ、日本で初めてチャレンジできたビジネスアイデアです。
案件のほとんどは、不特定多数の個人からお金を集め、資金が必要な不動産会社に貸し付けて、利息収入を得るという仕組みです。1口=1万円から投資できる手軽さを魅力としています。運用期間は2年前後で、予定利回りとしては年4%程度を狙っています。手軽でありながら、日本円で安定的な配当を期待できるという点も魅力のひとつといって良いでしょう。
私たちが扱っている物件は、基本的に東京都内が中心です。なぜなら、不動産ビジネスはアウェーだと非常に難しいのです。よく「地の利」という言い方をしますが、要するに地元のネットワークがないと、不動産ビジネスで成功するのは非常に難しいのです。
たとえば私たちと米国の超有名な不動産投資会社があって、東京の物件情報はどちらが確かかと言えば、当然のことですが私たちであって、だからこそ私たちの方が有利なディールを行うことができます。
これとは逆に、私たちが米国の不動産マーケットで勝負しようとしても、まず勝てないでしょう。
今の私たちの会社の規模で言えば、東京都内の物件のみにフォーカスしても、十分に回すことが出来ますので、当面は東京を中心にして投資を進めていきます。
不動産に投資して家賃収入を確保し、売却して売却益を得るという手法は昔からあるビジネスで、そこが私たちの収益の大半を占めているわけですが、そのなかで私たちの差別化要因はどこにあるのかというと、結局のところは「人」になります。
そもそも不動産は人に付いてくるものですし、信頼性のあるところに情報や、より良い条件の話が集まってきます。
たとえば、持っている物件を売却する時、その売主に個人的な事情があるとしたら、あまり大勢の人にそれを言いたくないので、あらかじめ入札者を数社に絞って声をかけることが、結構あります。大事なのは、その時の数社に入れてもらえるかどうかなのです。そして、そのためには常に信頼していただける自分であるかどうかが、何よりも大事になってくるのです。
中長期の成長イメージとそのための施策
冒頭でも申し上げましたが、私たちは不動産投資のプロであり、不動産投資で利益を出すという事業には、もう20年以上にわたって関わっています。
正直、それだけをやっていると飽きてしまいますから、新しいことにチャレンジし続けていきたいと考えています。
まずはアセットマネジメント事業をAUM(受託資産残高)で2000億円規模にしたいと思います。2022年第3四半期時点のAUMは約760億円なので、まだまだ先は遠いのですが、目先としてはまず1000億円。そして将来的には2000億円を目指しますが、アセットマネジメント事業は資金が流入するだけでなく、流出することもあるので、3000億円まで積み上げるなかで1000億円が抜けて、2000億円になるというイメージで捉えています。2024年12月末までにAUM2000億円を達成したいと考えています。
あと、クラウドファンディング事業については、不動産投資市場の資金調達プラットフォームとして更なる個人向けファンドの組成を目指しており、そのひとつとしてSTOを用いたファンドについても検討を進めています。
STOとはブロックチェーン技術を用いたデジタル証券発行による資金調達です。当社グループは2021年から開発に取り組み、既に準備はほぼ整っています。ただこれについては、法整備もまだですし、現在は信託銀行ありきの制度になっており今の仕組みではコストも非常にかかります。何よりも中央集権的で使い勝手が良いとは言えません。今後、法整備をどうするかという問題がクリアされれば私たちも進めていきます。仮にSTOマーケットが花開かなかったとしても、大勢に影響はありません。ただ、実現可能性がある以上は、準備を進めておくということです。
投資家の皆様へメッセージ
これから新しい不動産マーケットを創造していきますので、末永く応援のほどをよろしくお願いします。
本社所在地:東京都中央区銀座1丁目10番6号 銀座ファーストビル2F
設立:2012年3月
資本金:14億2百万円(資本準備金とあわせて27億94百万円)
上場市場:東証プライム(2017年9月28日上場)
証券コード:3482