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【6184】株式会社鎌倉新書代表取締役会長CEO 清水祐孝氏「巨大な潜在市場に挑み、終活領域のインフラとなる」

※本コラムは2022年12月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。

二代目として経営を引き継いで以降、ビジネスモデルの変革を重ねながら一時は倒産寸前であった会社を30年以上に渡り成長させてきました。

今回は株式会社鎌倉新書代表取締役会長CEOの清水祐孝氏に、代表就任後からのターニングポイントや中長期戦略について伺いました。

目次

株式会社鎌倉新書を一言で言うと

マッチング機能をもった終活領域のプラットフォーマーです。

代表就任の経緯

当社は仏教書の出版社として私の父が1984年に創業した会社です。私も学生時代にビジネスをやった経験がありますが、大学卒業後は就職をし、会社を継ぐという意識も当初はありませんでした。ところが、私が社会人4年目となった1990年に父から手伝って欲しいとの依頼を受け、経営に参画することとなったのです。

そして、実は売上の3倍ほどの借金を抱え倒産寸前の状態であったことを、会社を継いだ後に知りました。仏教書の出版という仕事は社会的な意義はあるもののマーケットが非常に限定的で事業をスケールさせることは難しかったのです。

そのため、会社の存続のためにも新ビジネスの模索が必要となりました。既存事業の関係で寺院に出向いたり、住職さんと会話していく中で、私は徐々に供養という領域の産業について知り始めました。また、葬祭・仏壇・お墓を合わせるとその市場は年間で2兆円規模にもなり、目立たないもののかなり大きな個人消費マーケットであることに気がついたのです。

そこで、この産業に携わる業者向けのサービスをしようと考え、情報通信誌や業界誌の販売を開始しました。これが仏教書から関連産業向けの書籍へと転換させた当社の第一の事業変革です。

徐々に売上が拡大し従業員も増えていく中、書籍というのは情報を届ける手段であり、我々のお客様は中身の情報を真に求めているのだと考えるようになりました。今でこそ情報流通の手段としてはインターネットを当たり前に思い浮かべますが、当時はまだ普及していません。

そのため、収集した情報をもとに経営に関するセミナーを開催したり、規模の大きな企業に対しては単独で経営会議に参加するなどのコンサルティングサービスを展開し、この事業の拡大により当初の借金を全て返済することができました。

また、情報提供の媒体としてインターネットが世間に広く普及し始めた頃、私自身もインターネットの勉強会に参加し、具体的な情報提供ビジネスの開始を模索し始めました。「出版社」として設立した当社ですが、価値のある情報を売る「情報加工会社」への変革を試み、今振り返れば2度目の転換期であったと思います。

我々の顧客層はシニア層であるため、他業界に比べるとその普及には時間がかかりましたが、2000年代中頃になりますと当事業の売上の割合が出版事業よりも拡大し始めました。

当社の上場は2015年ですが、一番の目的は社会的信用力と知名度の向上により、優秀な人材を確保することでした。インターネットビジネスと出版業との大きな違いは、「ヒト・モノ・カネ」のうち何よりも人材が重要であるという点であり、これからの企業の業績差異は人材の質によって決まるのだと考えたためです。

現在も当社には多様な知見を持つ優秀な人材が集まっており、周辺領域への新規事業展開を実現する上での重要な要素となっています。

事業内容について

現在、日本では65歳以上の高齢者の割合が約3割に上り、いずれ4割に達すると言われています。ますますの超高齢社会の進展に伴い、そのような方々がやるべきこと・やっておきたいことを終活領域で支援するのが我々の役割です。

具体的には、当領域での適切な情報や価格を求めるユーザーと、顧客接点の拡大やサービスの提供を求める事業者との間に当社が立ち、マッチング機能を持った情報メディアを運営しています。

株式会社鎌倉新書 2023年1⽉期 第3四半期 決算説明資料 より引用

上場までは祖業が仏教書の出版業ということもあり葬祭・お墓・仏壇という供養領域のみを扱っていました。ですが足元では相続や保険、不動産といった周辺領域にも拡大させています。それは、サービスを提供する中でお客様の方から遺産分割や相続手続きの相談をいただくようになり、終活領域における消費者の課題は派生して10や20はまだあるのだと気がついたことがきっかけです。

また、その課題はお客様の生前にも存在していました。ニーズのあるところに情報を発信していくことは社会的に重要な役割だと考え、それ以来「終活インフラ」と我々の事業も再定義をいたしました。


株式会社鎌倉新書 2023年1⽉期 第3四半期 決算説明資料
 より引用

このように、周辺領域での新規事業を短期間で立ち上げることができるところに、当社の組織としての強みがあると考えています。まず、情報を起点としたビシネスなので、しっかりとコンテンツを作り、多くの方に見ていただくためのマーケティングをして、最終的にサービスに落とし込む必要があります。

そして繰り返しになりますが、当社にはこの一連の流れを支える豊富な人材がそろっているのです。

また、領域は違くとも「有益な情報を届ける」「webを通じて展開する」という二点は共通項です。そのため、これまで長年培ってきた供養事業のノウハウを各業界に活かること、webを活用したビジネスの必勝パターンを持ち合わせていることも大きな強みとなっています。

中長期の成長イメージとそのための施策

マッチングポータルサービスを展開する会社から、終活ビジネスのインフラとなることを目指し、「サービス」「集客数」「クロスユース」の三点を拡充させていきます。

株式会社鎌倉新書 2023年1⽉期 第3四半期 決算説明資料 より引用

超高齢社会の進展は大きな社会課題ですし、最近では単身高齢世帯も増加傾向にあります。現段階でみなさまにお伝えしているサービス領域は12個ですが、例えばこのような分野でもサービスメニューを拡充させていければと考えています。実際、現段階では見守りサービスの提供等を開始していますが、まだ数字をグラフに書き込める段階ではありません。

また、例えば終末期医療の相談のように収益化が難しいビジネスがこの領域には多く存在します。ですが、インフラと名乗っている以上は儲からないことであっても企業体力の適切な範囲の中で取り組むべきであると考えています。

そのため、このような事業の分も賄えるように、しっかりと利益が取れるところで事業を成長させることが必要ですし、会社地は社会貢献の器ですので当社のこのような取り組みが最終的には会社のブランドにも繋がっていくだろうと思っています。

集客の強化という面では全国の自治体や金融機関との連携をさらに進めていきます。特に地方では、市民の半数を高齢者が占めるなど事態は深刻であり、自治体も住民サービスとして終活領域に重点をおかなければならないという意識が高まっています。

株式会社鎌倉新書 2023年1⽉期 第3四半期 決算説明資料 より引用

また、当領域のサービスはお墓・介護施設・相続など多岐に渡るため、ワンストップで終活のサービスメニューが整っている当社に優位性があると認識しています。さらに、自治体としては特定の企業と提携することは利益誘導などの観点から現実的ではなく、その点あくまでもメディアであり選択肢を提供する当社のポジションが、今後も提携を進めるにあたり優位に働くと考えています。

我々が目指すのは、未だ多くのニーズが顕在化されていない終活マーケットにおいて、先に市場を創造する「待ち伏せ型企業」となることです。潜在ニーズの段階でサービスを作ることはもちろん難しいことで取り組む企業が多くありません。

ですが、だからこそそこに利潤が生まれるのです。これまでのノウハウと実績、および優秀な人材を軸に供養領域から相続や介護といった周辺領域の潜在マーケットを確実に捉えてまいります。

株式会社鎌倉新書 2023年1⽉期 第3四半期 決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

我々はまだ誰も取り組んでいない市場でビジネス展開を進めており、その結果は短期間で数字に現れるものではありません。また、葬祭などユーザーの需要を時間軸でコントロールできない事業もあり、長期目線でのチャレンジを続けている会社です。

そして、新しい取り組みをしながらも同時に収益化できている事業から堅実にキャッシュフローも生み出しています。適切な企業体力の中で、収益の一部を投資していき、そのチャレンジの間に数年前に仕込んであった事業がまた新たな収益源となる、というサイクルが組織としても出来上がっています。

投資家の皆様にはぜひこの点をご理解いただき、温かく見守っていただけますと大変嬉しく思います。

株式会社鎌倉新書

本社所在地:東京都中央区京橋2丁目14-1 兼松ビルディング3階

設立:1984年4月17日

資本金:10 億5630万(2022年12月31日現在)

上場市場:東証プライム(2015年12月4日上場)

証券コード:6184

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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