※本コラムは2023年1月10日に実施したIRインタビューをもとにしております。
「リペアサービスは、建材についたキズを直すと同時に、住宅に住まう人の心の傷を治すサービスである」という考えのもと、事業展開を続けてきた株式会社キャンディル。
代表取締役社長の林晃生氏に、巨大な潜在マーケットである「アフター・ストック市場」に挑む今後の成長戦略を教えていただきました。
株式会社キャンディルを一言で言うと
住宅から商業施設まで建物のライフサイクルにおける「修繕(リペア)・改修・維持・管理」にこだわったサービスを提供する会社です。
創業の経緯
創業の根本には、「不・非」といった人が感じるさまざまなストレスを解消するサービスを提供したいという思いがあります。創業前には不動産系の各種学校で講師をしていたのですが、当時賃貸物件の退去時に家賃9万円に対して70万円ほどの補修代を請求されたことがありました。
幸いにも職業柄生徒の大半が建築関係や不動産関係でしたので、彼らに助けを求めました。そしてその際、賃貸住宅のフローリングや壁についたキズを直すサービスは存在しておらず、材料を買って自身で補修するしか方法がないという事実を知りました。
私は助言をもとに何とか修繕を行いまして、大家さんにも最終的には了承をもらえたのですが、まさにこの不安と不快を感じた体験が起業のきっかけとなっています。
賃貸住宅に2年住んでどこにもキズをつけずに生活できる人はほぼいないと思います。つまり、修繕に対するニーズは確実に存在しているというわけです。
ところが建築時の予算にフローリングや壁の修繕の費用は含まれていないため、各ハウスメーカーや修繕の材料を扱う業者も、このサービスには取り組んでいなかったのです。いつかは起業をしたいという思いは元々ありましたし、私自身の経験とこのような業界の実態を理解したことで、1995年に株式会社バーンリペアを設立いたしました。
創業当初、リペアサービスはブルーオーシャンであったことから、全国規模の拠点とサービス網をもつまで事業を順調に拡大していくことができました。2000年にはリペアサービスが建築業界に広がり、住宅引渡し前の仕上げ段階でリペアを行うことが定着するなど、外部環境も整備されていきました。
その後2005年には業界初の定期点検サービスを開始、2008年には商業施設の内装施工機能も強化し、商環境へとサービスの幅も広げていきました。
その後、グループ再編などを行い、ホールディングス体制に移行し、2018年に東証に上場をいたしました。その目的は会社のブランドを確立させるためでした。
住宅の点検サービスは、ハウスメーカーからの委託を受ける形で引渡し後に行うのですが、住宅オーナー様からするとハウスメーカーと点検業者(当社グループ)の名前が違い、当社が未上場企業であったことから知名度も低く、点検サービスのために当社グループのサービススタッフが訪問しても、家の中に入れていただけないという事態もたびたび発生していました。
そのため、我々自身と当社グループのサービスが一言で信用を得るために上場を目指すこととなったのです。また、IT企業のように上場時の調達資金で新たな投資をするという発想ではなく、ブランド力を向上させることで結果として企業の成長につながると考えていました。
事業内容について
現在は主に4つの領域で事業を展開しています。1つ目はリペアサービスでして、建築現場で施工中に発生した建材のキズや、生活中に発生したキズ・不具合を、部材の交換ではなく修復することで美観を回復するというものです。部材を交換しないため、コスト効率と時間効率に優れており、無駄な廃材を出さないという意味で環境にもやさしいサービスです。
2つ目は商環境向け建築サービスです。ホテルや店舗などの商業施設、またはオフィスにおける内装工事や什器の設置、家具の組立・設置工事などを行っております。チェーン店などで見られる多店舗一斉工事(改装)や複数業者一斉入場などの同時多発的な現場対応に精通しており、機敏性に富んだサービスの提供が可能です。
労働集約型のビジネスですので、住宅・建築業界の技術者に限らずいかに人材を獲得できるかというのは非常に重要です。過去を振り返ってみても人材の確保を優先させてきましたし、コロナ禍においては中長期的に新たな人材を獲得することのコスト・労力を検討し、2020年9月期においては創業から初の赤字決算となりましたが、人員カットという選択肢はいたしませんでした。
新型コロナ感染症拡大初期においては大きなダメージを受けた商環境向け建築サービスも足元では受注環境が回復基調にありますが、当社グループはこのように人員を維持していたことで、現在の高まる需要を確実に取り込めていると実感しています。
また、独自の育成プログラムやマニュアルを駆使し、均一レベルのサービスを提供できる、かつ、サービスマンの意識を持った技術者の育成に力を入れていることが強みだと認識しております。
3つ目は住環境向け建築サービスです。住宅引渡し後の定期点検、メンテナンス、コールセンター、住宅設備機器の延長保証サービスなど既存住宅向けアフターフォロー関連のサービス提供が中心です。
特に、屋根や外壁の定期点検は高所カメラからドローンを活用した点検に切り替え、対象エリアを全国に拡大中です。点検用の足場組みが不要となりますので、作業者の安全性も確保しながら確認作業を進めることが可能という点では災害時にも有効です。
4つ目は商材販売です。プロ向けから一般エンドユーザー向けまで、幅広いユーザーに対するリペア材料、メンテナンス材料を取り扱っており、全国のホームセンターや量販店、ECサイトなどで販売をしています。
中長期の成長イメージとそのための施策
日本は歴史的にも大量生産・大量消費の文化であり、特に住宅においては修繕して長く住み続けるという考え方自体そこまで普及していないのが現状です。一方で、今後国内においては人口減少や空き家の増加などが社会的に問題視されています。
また、近年ではメルカリサービスに代表されるような中古マーケットが業界を問わず浸透してきており、今後は住宅においてもアフター・ストック市場へ需要が集まり、当社グループのサービスへのニーズも一層高まっていくと考えています。
2005年の定期点検サービスの開始以来、総点検数は約60万件に達しており、現在も毎年約8万戸ずつ増加しています。今後は、住宅について何か困り事が発生した際の相談先としてワンストップでそのニーズに応えていける存在になれるか、というのが最大のテーマとなっていきます。
当社グループは、アフター・ストック市場における、住宅事業者向けサービスの強化にも取り組んでおります。その一つとして2021年8月より住宅販売会社と住宅オーナーをつなぐクラウドサービス「ツナゲルクラウド」の提供を開始しました。
住宅オーナー向け専用サイトの構築、運用から生涯顧客化支援をするオーナーズクラブ型コミュニケーションツールとなっています。
「ツナゲルクラウド」について住宅事業者様により導入していただきやすいように2つの大きな活動を行いました。
1つ目は、IT導入補助金の対象ツールとして認定されたことです。 補助金対象となったことで、住宅事業者様が本サービスを導入される際のコストが軽減されることとなりました。また、補助金交付申請の事務サポートも行いますので、住宅事業者様にとっては、導入時のハードルがかなり軽減され、大きなメリットとなっています。
2つ目は、情報セキュリティの観点から、「ISMS認証」を取得したことです。 ISMS認証は、情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であり、既に取得済みのPマークに続き、第三者機関の監査により、認定基準を満たすセキュリティ体制が構築されていることが評価されました。
お客様の大事な情報資産を守ること、そして、「ツナゲルクラウド」をより安心・安全にご利用いただくために大変重要な認証であると考えております。この国際規格に基づいてしっかりと日々のサービス運用を行い、状況監視を継続してまいります。
また、アフター・ストック市場における「住宅オーナー様への長期サポート体制」の構築をより一層の協力関係の下で進めていくことを目的にとして、2022年8月には一建設株式会社様と包括的業務提携契約をいたしました。
具体的には、一建設様の35年長期保証システムに伴い住宅オーナー様に向けて5年毎の定期点検やドローン点検、メンテナンスの提供、「ツナゲルクラウド」を通じたコミュニケーション基盤の強化、リフォーム工事相談対応、さまざまなサービスの提案活動など、リアルとデジタルの双方でサポート体制を充実させ、収益化につなげてまいります。
投資家の皆様へメッセージ
時代が変わっても、変わることのない私たちの使命は「人々が抱える建物に対するストレスを解消し、安心・快適な環境づくりに貢献していくこと」です。
これからもその実現に向けて歩みを止めることなく、当社グループの成長と企業価値の向上に情熱を傾けてまいりますキャンディルグループのご支援をよろしくお願いいたします。
本社所在地:東京都新宿区北山伏町1-11 牛込食糧ビル3階
設立:2014年8月7日
資本金:5億6,178万円(2022年6月末現在)
上場市場:東証スタンダード(2018年7月5日上場)
証券コード:1446