※本コラムは2023年1月25日に実施したIRインタビューをもとにしております。
2013年の創業以来、株式会社ALiNKインターネットは少数精鋭のプロフェッショナル集団で天気情報専門メディア「tenki.jp」を継続的に成長させてきました。
昨今の事業環境の変化を受け、第二創業期と位置付けた今後の成長戦略を代表取締役CEOの池田洋人氏に教えていただきました。
株式会社ALiNKインターネットを一言で言うと
天気予報をきっかけにした行動変化・態度変容を支える存在を目指す会社です。
創業の経緯
ヤフー株式会社にて「Yahoo!天気」のフルリニューアルに携わったのち、独立して日本気象協会と「tenki.jp」という天気予報メディアを共同事業で運営を開始しました。日本気象協会は財団法人であったため、独立後に個人事業主となった私では直接契約することができませんでした。
そこで、埼玉で印刷業を営む父の会社(株式会社ありんく)に所属し、当法人と契約をして協業を開始しました。その後、別会社を設立したほうが好ましいだろうという結論に至り2013年に当社を設立いたしました。
そもそも私自身は起業や上場を目標とはしていませんでしたが、目の前の仕事をしていく中でそれをすべきタイミングがあり実行してきたという感覚です。
業界内では会員制・課金制のサブスクモデルを取り入れるサービスも多い中、当時から課金制ではなく気象情報をオープンで公開し、広告をつけてマネタイズするというビジネスモデルをとっています。我々がこのビジネスモデルを選択した背景としては、当サービスを社会インフラ化していきたいという思いがあったためです。
当社の扱っている気象情報は、場合によっては生死に関わることもあります。実際に、大雨や積雪など天候が大きく変わる時に当サービスへのアクセスも大きく伸びる傾向にあり、そのような万が一の際に必要な情報が無料で取得できないのはやはり不便です。
このような情報の特性や事業性と社会的意義のバランスを踏まえ、現在のビジネスモデルを確立してきました。
事業開始以来、増収増益を継続しており堅実に成長をしてきました。ちょうど創業前後のタイミングではSSP※やDSP※などの誕生によりアドネットワークが市場でブームになった頃でした。
その中で、複数のアドネットワークを駆使しながら、高い広告単価のものを「tenki.jp」に掲載するという「トレーディングデスク」を適切に行えたことが成長ドライバーになったと感じています。
- SSP(Supply Side Platform):媒体社やメディアの広告枠販売や広告収益最大化を支援するツール
- DSP(Demand Side Platform):広告主向けの広告の費用対効果の最大化を支援するツール
当社の上場は2019年ですが、これも当初から目指して事業展開をしていたわけではありません。主幹事の野村證券で利用していた貸与携帯に「tenki.jp」がインストールされていたらしく、利便性を感じた営業員の方が訪問をしてくださったことが最初のきっかけです。
「気象インフラを作って社会に貢献して行きたい」という構想をお伝えしたところ、共同で事業展開する日本気象協会は一般財団法人であり上場が難しいので、当社が上場し「tenki.jp」サービスがパブリックになることが、インフラ化のための一つのステップになるとご提案いただいたのです。
すでに利益も出ていたことも寄与し、2017年頃から事業ハンドルを一気に上場へと舵を切っていきました。
事業内容について
天気情報専門メディア「tenki.jp」を日本気象協会と共同事業として運営しています。基本的に全ての情報は社会的意義を踏まえ無料で公開しており、広告で収益を得ています。
なお、直近では「tenki.jp登山天気」など一部課金サービスも展開しています。気象業務法という法律に基づき業法上不特定多数の方に無料で公開してはならず、利用規約や情報の特性を理解した方にのみ公開できると定められた情報については課金制を導入しています。
台風接近時に10倍近く、また東京都心など人口密集地での有感地震の際には数千倍にアクセスが跳ね上がるなど、やはり気象の大きな変化の時にアクセスが引っ張られる部分はありますが、SEO対策と多様なメディアとの連携によりサービスを成長させてきました。
例えば、「天気 東京」や「花粉情報 天気」といった天気に関わる検索ワードにおいてはほぼGoogle検索上で1.2位に位置しており、強固な流入経路を獲得できています。また、「Yahoo!ニュース」をはじめ、直近でいうとキュレーションメディアと言われる「SmartNews」等ネットのニュースメディアには当社のコンテンツが配信されています。
コンテンツの一部を見ていただき、関心を持ったユーザーが我々のサービスに遷移してくるといたかたちで継続的にPV数を伸長させてきました。
天気予報は信ぴょう性の観点からその発信元が非常に重要視されます。当事業は許認可事業であり現在事業者は100社ほどおりますが、そのほとんどがあるエリアに特化した予報や雷や波など専門性のあるコンテンツを扱う天気会社です。
全国レベルで全ての情報を安定的に供給できるのは日本気象協会とウェザーニューズ社の2社のみで、この2社で市場の大部分のシェアを占めています。
我々の組織体の特徴としては少数精鋭という点があげられます。SEO対策の基本であるPDCAサイクルの循環において、天気予報サイトの運営に関する高い専門性を持つプロフェッショナル集団が天気連動形広告の開発および広告の最適化を実行することで、高単価な広告販売が可能となっています。
現状、流入に関しては順調であり、かつ今後も伸ばしていけると捉えているため、人員増強はすぐには検討していません。一方、今後目指していく我々の新しい姿を実現するためには人材が必要になりますので、そこには先行投資していく方針です。
中長期の成長イメージとそのための施策
新型コロナウイルス感染症による広告出稿を控える動きやプライバシー保護の観点によるCookie規制のため広告単価は低迷基調が続いています。
また、感染症との関係性はないように見えるかもしれませんが、行動規制により外出機会が減少したことで天気情報への関心も落ち、「tenki.jp」のPV数は伸びてはいるが本来想定していたところに到達していないのが現状です。
創業以来PV数の大幅な増加に寄与してきたサイト内回遊や検索エンジン最適化等の施策は引き続き実施するとともに、収益機会の多角化と新規事業の構築を経営課題と捉え、人材とサービス開発に積極的に投資してまいります。
現状、「tenki.jp」は天気予報を提供するインフォメーションサービスにとどまっていますが、ライフスタイルや暮らしの領域に展開することで今後はユーザーの行動変化を支えるソリューションサービスへと変えていきたいと考えています。
これまでの当業界の変遷を解くと、まず気象データをテレビ局などの媒体に展開する事業は気象協会を初めとする気象会社の一丁目一番地のビジネスモデルです。当社はここを「天気1.0」捉えており、引き続き成長市場であると認識しています。
また、気象会社がメディアを活用してエンドユーザーと繋がった世界が「天気2.0」です。当社の「tenki.jp」もここに該当し、当領域での知見は十分に備えています。さらに、今後は業種業態を問わずビッグデータ活用であらゆるものが繋がる「天気3.0」の時代が来ると考えており、この世界において色がない気象データはハブ的な存在になっていくでしょう。
汎用性と独自性という表裏一体な特徴を活かし行動変化・態度変容を促していくことが狙いです。例えばディズニーランドの天気を頻繁に見ているユーザーはその週末におそらく出かける予定があるとの憶測が立ちます。
仮に雨天の予報であれば代替施設や周辺の飲食店、および交通手段のレコメンド機能を備え、提供するのが我々の目指す姿です。
また、2021年にはトラフィックの連携を目的に課金サービス「tenki.jp登山天気」と登山地図アプリ「YAMAP」との協業を開始しましたが、これからはID連携を目的にパートナーと連携して事業を作り上げていくことも検討しています。
スキー場予約の際に天候に応じてチケット価格にダイナミックプライシングを導入するなど、コマースを生み出すことも可能だと認識しています。
このような新たな取り組みの過程では競合も存在しますが、最終形態としては「Weather forecast」から「Life forecast」への変革を目指し新しい発信の仕方を作っていきたいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
第二創業期として事業と組織の改編を今まさに両軸で行っています。
もともと従業員9名で上場した当社ですが、Life forecastとなるべくエンジニア増強や社内制度の整備を進め、今年は企業価値向上の結果が出てくる元年に当たります。
新しいインターネット天気の世界に、期待していただき是非応援していただけます嬉しく思います。
本社所在地:東京都豊島区南池袋2-29-11京王プレッソイン池袋2F
設立:2013年3月15日
資本金:138,087千円(2023年2月アクセス時)
上場市場:東証グロース(2019年12月10日上場)
証券コード:7077