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【6543】株式会社日宣代表取締役社長 大津裕司氏「コミュニティを基点に顧客の顧客を創造する」

※本コラムは2023年1月26日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社日宣は創業75年という長い歩みの中で基盤事業の成長と新規事業への投資を継続し、成長してきました。

今回は代表取締役社長の大津裕司氏に同社の沿革や組織の強み、中長期戦略を伺いました。

目次

株式会社日宣を一言で言うと

コミュニティを起点としたマーケティングを軸に顧客の顧客を創造し、その維持・拡大をすることで継続的な成長を目指す会社です。

代表就任の経緯

当社は、私の祖父により1947年に神戸で創業されました。デザインの仕事を祖業に印刷やイベントなどにも業容拡大し、1963年には東京にも進出しました。また、祖父以外にも親族には経営者が多く、私自身も就職前から学生企業に携わるなど、将来は自身で会社を興したいという思いがありました。

当時株式会社設立には資本金が1000万円必要であり、有限会社では信用力がないという理由から、将来の起業を見越しつつまずは資金を準備しながら業界知識を身につけることにしました。そこで、大学卒業後は資本が大きくいらないという観点で比較的起業しやすい領域、かつ人気職種でもあった広告業界に入社いたしました。

4年半ほど経ち、そろそろ起業をと考え始めたタイミングで、現日宣メンバーから会社に入って欲しいとの相談を受けました。このような依頼は初めてで、また起業のチャンスはあると考え、1998年に当社へ入社いたしました。その後、30代前半で営業責任者も経験し人事や経理を含む中小企業の多様な側面を見る中で、経営の面白さを知っていきました。

そのような中、2000年代半ばくらいからは現在の事業体が確立され会社も安定し始めましたので、2008年に三代目社長として現職に就任いたしました。

現在までを振り返りますと基盤事業の確立から中長期的な成長を見越した組織体の強化を通じた新規事業への投資を続け、継続的な成長を実現してまいりました。ケーブルテレビ局向けの販売促進サポート事業の黒字化、および現在もメインクライアントの一つであるヘーベルハウスとのお取引において、従来のデザインや印刷物作成からマーケティング分野への事業拡大を開始したのはどちらも2005年頃であり、当社にとっては一つの転換点と言えます。

また、2010年代からはデジタル人材や質の高いコンサルタント営業の採用も積極的に進め、既存のビジネスが安定的に収益化できる仕組みを確立させ新しい事業への投資も可能な体制を構築してきました。

また、経営面においては2013年頃から稲盛さんの盛和塾に通い、「アメーバ経営」を取り入れていきました。事業ごとに成長のための指標を見える化させることで、加速・ブレーキの判断を組織内で自立して行い、自分たちで成長できる仕組みを整えることを意識しました。

会社規模も徐々に大きくなり、ミドルアップないしはボトムアップでなければ事業成長のスピード感にも追いついて行けなかったと思います。上場は私が代表に就任した当初からの父の夢でもあったのですが、基盤事業の確立・組織体の強化を経て生産性の向上が進んだことで業績が順調に推移し、2017年に達成することができました。

事業内容について

放送・通信および住まい・暮らしの領域を中心に広告宣伝事業を展開し、直近の連結売上は50億円強に上ります。そのうちの約4割はケーブルテレビ局を中心とした放送・通信業が占めています。

ケーブルテレビ局は、主要な市単位で全国に約250局以上ありますが、2023年1月付で同業の株式会社東京ニュース通信社の事業を一部譲受ける契約を締結し、取引局数は約140局にまで拡大してきました。「チャンネルガイド」という番組情報誌の発行を仕事としながら、我々は全国のケーブルテレビ局のマーケティング支援をする存在であると認識しています。

加入者の獲得やロイヤリティの向上を通じた解約率改善、また成熟産業における新しい事業開発など、地方の中小企業で人材や情報が乏しいケーブルテレビ局を、マーケティングの観点からサポートさせていただいています。全国のケーブルテレビ局のネットワークをもち、彼らの経営情報を把握しながら産業自体を盛り上げるプラットフォーマーとご認識いただければと思います。

また、住まい・暮らし領域ではヘーベルハウス、およびホームセンター向けに自社メディアの紙媒体での発行とウェブ上での配信で行っています。双方はお客様層が一部重複するところがあり、自社のメディアで培ったノウハウを住宅メーカーのマーケティングに活かしながらマーケティング戦略の立案から制作・実行までをワンストップで提供しています。

当社は大手企業をターゲットに継続的に受注をいただける関係性の構築を重要視してきました。広告業界的にも一業種一社的な特徴があり、大手企業に深く入り込み長期的にお取引をすることでストックビジネスのような形で安定的な成長を見込めるというわけです。

そのため、顧客ポートフォリオの一定程度の分散を意識しつつも無闇に業界を広げることはせず、特定の業界に特化しているというのも特徴の一つです。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

一方、成長領域として近年注力しているのは外食チェーンビジネス領域です。具体的には4年前からサブウェイの責任代理店として全マーケティング活動を支援しています。もともと同社はテレビCMを主体にネット広告を断片的に実施していたのですが、当社はSNSを主体に取り組んでいます。

現在Twitterの企業アカウントフォロワー数が100万人に到達しているのですが、これは全企業アカウントの中でも19位(2023年2月時点)にランクインしています。トップには大手コンビニエンスストアなど店舗数や利用頻度が圧倒的な業態が並ぶ中、同社がここまでの成長率を見せていることは一定の成果だと認識しています。

また、総インプレッション数も14倍となり、SNSがメディアとして成長することで「サブウェイ」というコミュニティが形成される中でフォロワー以上に相乗的に広告効果が現れており、まさに「顧客の顧客を創造すること」「コミュニティを起点にしていること」の実体験になったと感じています。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

足元では同じく外食チェーンのゴンチャのマーケティング支援も開始していますが、潜在的なファンを抱える類似ターゲット層としては、アパレルブランドやスポーツ球団にも展開できると考えています。

横展開においては付加価値の高いものを可能な限り内製化し、ノウハウを蓄積してきたことが優位性になると考えています。正社員140人のうちグラフィッククリエイティブや編集などのディレクション工程担当は約100人おります。細胞分裂していく過程でもコアな技術を社内に残しつつ、安く外注できるものとバランスを見て全体の生産性を上げてきたことは当社の強みです。

また、我々の事業領域にはデジタルネイティブと言われる世代のアイディアも非常に重要です。新卒採用を強化するとともに、育成と定着化を目的に若手でも実績が積めるような組織体制を整え、実績が仕事を呼び込むことでスピード感のある成長を実現しています。 

中長期の成長イメージとそのための施策

まずは3年を目処に売上全体をバランスよく成長させてまいります。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

放送・通信領域においては先の事業譲受により加速度的な成長を見越しております。業界内でのシェアが一気に高まり、テレビ局と一緒に業界自体の成長を支援するポジションを確立できたと認識しています。業績面でも安定的なストック収益の拡大に貢献していくと思います。

住まい・暮らし領域においては「顧客の顧客を創造する」というコンセプトの元、例えばペットやDIY、またはガーデニングといった関心事に応じたコミュニティを創造し、顧客の生の声を取り入れたマーケティング支援を引き続き実行します。

その他領域はサブウェイやゴンチャといった外食チェーンビジネスがメインとなります。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

また、新電力販売事業については昨今の国際・経済情勢から営業活動を控え、事態の平常化を待っている状態ですが、ケーブルテレビ局はその変遷からも特に地方生活者にとっては信頼のおける生活インフラに位置しています。

新たな収益機会や顧客の囲い込みを狙う彼らがよりインフラ企業としてのポジションを強固にできるよう、しかるべきタイミングでサポートしていきます。成功事例ができれば、まさに全国のネットワークを活かして実績が仕事を呼ぶ状況が生まれると考えており、そのための準備を進めてまいります。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

加えて、非オーガニックな成長としてM&Aや提携・出資にも積極的に取り組んでまいります。特にM&Aについては、同業で優良なお客様を抱えながら人材不足でDX化が遅れているような企業を対象に過去に数社実施してきました。

ノウハウも一定程度ついてきましたので、次の5年でも数社は手掛けたいと考えています。

株式会社日宣 2023年2月期第2四半期 決算説明資料 より引用

投資家の皆様へメッセージ

創業75年を迎え、「古い広告会社」とみられる方も多いかと思います。ですが、長い社歴の中で大手企業を相手に継続的・安定的に取引をしてきたという実績をまずは当社の信頼と思っていただきたいです。

加えて、さらなる成長を目指した新規事業にも投資を行いチャレンジも続けていますので、期待して応援していただけますと幸いです。

株式会社日宣

本社所在地:東京都千代田区神田司町2-6-5 日宣神田第2ビル

設立:1953年3月(創業:1947年4月)

資本金:341,104千円(2022年2月末現在)

上場市場:東証スタンダード(2017年2月16日上場)

証券コード:6543

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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