※本コラムは2023年2月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社INFORICHはコンビニや駅、カラオケ店などの多くの場所で設置が進むモバイルバッテリーシェアリング「ChargeSPOT」を全国で展開しています。
圧倒的なシェア率に隠された事業成長の仕組みや今後の成長構想を教えていただきました。
株式会社INFORICHを一言で言うと
カルチャーやビジネスの垣根を超えた新しい当たり前を作る会社です。
創業の経緯
多様な可能性の中にスポットライトを当て、ビジネスを展開していくというビジョンのもと2015年に当社を設立いたしました。私は香港で生まれ、その後日本で育ったというバックボーンがあり、海外にあって日本にないものを持ち込み、「made by JAPAN」として日本国内に広げていきたいと考えたのです。
また、日本と香港を軸に、リソースを世界にブリッジし、日本が誇る匠技でブラッシュアップされたサービスを世界へ展開することもコンセプトとしています。
主力ビジネスであるモバイルバッテリーシェアリングサービスですが、すでに中国では2015年の時点で提供されておりました。当社は香港スタートアップを買収することで国内初のサービスとして2018年よりこれを展開いたしました。以降現在に至るまで堅実にシェアを伸ばし、日本でのシェアは85%に上ります。また、もともとは香港の会社ですので、もちろん香港、そして台湾・タイ・中国などでもグローバルに展開し順調に拡大しています。
このサービスを通じて、アジア圏でもタイムマシンビジネスが起きうることを実感しましたし、他の領域においてもまだこの可能性は大いにあると考えています。
新型コロナウイルスは、ビジネス面での打撃が大きかった一方、当社にとっての転換点になったとも言えます。例えば、コロナ禍においても「ChargeSPOT」の利用者数は増加を続けました。
人々が外出できない期間にも、先行してコンビニへの設置を行ったことで、人流が復活してきた際の需要を確実に捉えることができたのです。利用者がバッテリーを返却できる場所が増え、我々のサービスに対する安心感が与えられたことが、利用者数増に寄与したと考えています。
事業内容について
モバイルバッテリーシェアリングサービス「ChargeSPOT」を日本全国で提供ししています。コンビニや交通機関、キャリアショップなどを中心に設置台数は約3万8000台を超えております。
また、デジタルサイネージを搭載しており、国内および海外でのマーケティングサービスも展開しております。
当事業はロケーションベースでのリアルなタッチポイントを素早くかつ確実に押さえ、そして展開していくことに本質があります。まず、返却場所を充実させることが重要です。先ほども触れましたが利用者が返却場所を確実に見つけられることが利用者数の増加につながりますので、例えば極端な話、駅だけに設置されていても駄目なのです。
繰り返しになりますが、利用者が安心して利用できる環境を作り上げることが、これまでもそして今後においても利用者数の圧倒的増加に寄与するのです。また、パートナー様と呼ばせていただいている350以上の設置先には独占的な形で我々のサービスをご提供いただいています。
これがある種のエコシステムのような、大きな参入障壁となり強い地位を築くことができました。また、利用者にとっても他サービスに乗り換える理由があまりなくなりますので、サービス利用の習慣が定着していくのです。
さらに特徴的な部分としては、バッテリーシェアリングビジネス固有の「認知→利用→習慣化」の工程において、持続的なビジネス拡大を実現するフライホイール効果を期待することができます。まず、新たな設置箇所に関しては設置から認知に至るまで2〜3ヶ月程度を要すものとしてマーケティングの時間軸を設けています。
このフライホイール効果によって設置台数が増えることで、MAU(月間アクティブユーザー)が増加し、1人当たりの利用回数が増え、さらに習慣化していくという相乗効果が生まれます。また、この効果は特定の設置箇所における粒度が高くなることでさらに拡大していくと考えられます。
例えば、当初は日本国内の主要800駅の半径500m圏内を設置ターゲットとしますが、台数が増えればターゲットが1km、2kmというふうに広がっていき、これに乗じてフライホイール効果も拡大していきます。フライホイール効果が大きくなることで周りの利用者が増加すると、当初よりも認知のスピードが早くなり、稼働も早くなるということがあります。
このように、フライホイール効果は、訴求の原因にもなり得るため、事業拡大にとって重要な要素となっています。
社内では「ChargeSPOT」をトロイの木馬と表現しています。我々は当事業の拡大とともに不動産というリアルなタッチポイントを押さえており、そこでの第一点目のサービスが「ChargeSPOT」であります。
ただ、我々が持っている本質的な価値はタッチポイントの数(オフライン)と、MAU(オンライン)であり、これを活用したサービスは今後もどんどん七変化しながら追加していけるというわけです。
中長期の成長イメージとそのための施策
「ChargeSPOT」は、現在月間約50万人のユーザーにご利用いただいてますが、国内のスマートフォンユーザー9600万人に対してはまだ数%のシェアしか獲得しておりません。今後500万人、1000万人と段階的にユーザー獲得を目指してまいります。
バッテリーシェリングビジネスにはすでに強い社会的ニーズがありますし、停電や災害時などの非常時にも大きな役割を果たします。さらに、5Gの普及によってこれまで以上に必要な消費電力が上がっていきますので、我々のサービスにはますます需要が増すことが予想されます。
また、設置スピードについては、日々のデータを元に計画的に拡大していくことにパートナー様からも同意をいただいており、利用者や頻度・場所といった正確なデータをもとに決定していく方針です。85%というシェア率からしても、場所取り合戦は完全に終え、まさにオセロのコマをこれから揃えていくという状態にあります。
また、当事業のさらなるグローバル展開については、台湾を第一成功例とし、続いてタイなどの東南アジア圏にプライオリティ高く拡大してまいります。また、年内中のフランス展開も既に決定しておりまして、ヨーロッパでのフランチャイズの拡大も予定しています。
特に、5Gの普及によってバッテリーの需要が世界的に高まる中、モバイルバッテリーシェリングは日本だけでなく世界中で必要とされるサービスとなっております。
既存事業でこのようなしっかりとした成長波動を描きつつ、さらに新規事業としてシェアリングのプラットフォーム化を目指しております。ここにおいては、国内だけでなく国外から的確な情報を収集し、的確に扱えるという点が強みなります。また、すでにある海外拠点を活用したPoCを元に、最適なサービス展開ができるというメリットもあります。
具体的には、トリドリ社との提携も発表させていただきましたサイネージや、他のシェアリングサービスも入れ込んだスーパーアプリ化に着手するほか、ゲーミフィケーションにも取り組んでまいります。
また、ハードウェアの進化にも注力し、unerry社との連携を推進しています。具体的には、「ChargeSPOT」の台の中にソフトウェアとして内蔵されたビーコン※を活用し、人流の取得やプッシュ通知などの機能を提供しています。さらに、このような、本国内で既に認知されている実用的なサービスを、我々の海外拠点を通じてグローバルに展開することで、新たな価値を提供することもできると考えています。
海外から持ってくるサービスに関しては、先行して待ち構えている状態を作りつつ、日本にある良いものをどんどん海外に展開していくという、両方の橋渡し的な部分を担える存在であるとご認識いただければと思います。
- ビーコン:Bluetoothの信号を使って情報を発信する端末やその通信方法のこと。受信機能をもつアプリをインストール済のスマートフォンが電波受信範囲内に入ると、その電波をキャッチし、ユーザーがその場に来訪したことを認知することが可能となる。
投資家の皆様へメッセージ
Information + Rich = INFORICHいう社名の意味には、「ChargeSPOT」を1手目として、情報網を2手目、3手目として展開していくということも含まれており、また海外と日本を時差なく繋ぐことが、当社の成長へも繋がっていくのです。
日本国内では香港出身者初のIPOとなりましたので、日本にはまだない、もしくは日本が世界に誇る情報や技術をブリッジしていく役割を果たしていきたいと考えています。
IPOを新たなスタートとして、投資家の皆様に今後も注目していただけましたら幸いです。
本社所在地:東京都渋谷区神宮前6-31-15 A-6A
設立:2015年9月
資本金:218,707,000円(2022年12月31日現在)
上場市場:東証グロース(2022年12月20日上場)
証券コード:9338