厚生年金に国民年金は含まれる?2階建て構造と受給額の違いを図解

日本の公的年金制度は、国民年金(基礎年金)と厚生年金保険の2階建て構造です。

結論から言うと、会社員や公務員など厚生年金保険に加入している人は、原則として国民年金にも加入しています。そのため、厚生年金保険料を給与から天引きされている人が、国民年金保険料を別に納める必要はありません。

給与明細には「国民年金保険料」とは表示されないため、「会社員は国民年金を払っていないのでは?」と疑問に感じる人も多いでしょう。

しかし、厚生年金保険に加入している会社員・公務員などは、国民年金の第2号被保険者でもあります。つまり、厚生年金保険料を納めている人は、厚生年金保険と国民年金の両方に加入しているということです。

この記事では、厚生年金と国民年金の違い、会社員が国民年金保険料を別に納めなくてよい理由、厚生年金の加入条件・受取条件、二重払いが起きたときの対応をわかりやすく解説します。

「厚生年金は支払っているが、国民年金の支払い状況はどうなる?」

「そもそも国民年金と厚生年金の違いは何か?」

「厚生年金の加入条件や受け取る条件が知りたい」

上記のような疑問がある方は、まず制度の全体像から確認していきましょう。

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目次

会社員は国民年金を支払っていない?別納は不要

年金制度を学ぶイメージ

会社員や公務員は、国民年金保険料を自分で納付するわけではありません。そのため、次のように誤解されることがあります。

  • 「厚生年金保険料は給料から天引きされているが、国民年金保険料は払っていない」
    → だから将来、老齢基礎年金を受け取れないと思ってしまう

これは誤解です。厚生年金保険に加入している会社員・公務員などは、厚生年金保険の加入者であると同時に、国民年金の第2号被保険者でもあります。

第2号被保険者は、加入している制度から国民年金に拠出金が支払われる仕組みです。そのため、厚生年金保険料とは別に、国民年金保険料を自分で納付する必要はありません。

将来、受給要件を満たせば、会社員や公務員などは「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」の両方を受け取れます。

現在の働き方ごとに、加入する制度と保険料の納め方を整理すると次のとおりです。

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現在の働き方加入する主な公的年金保険料の納め方
会社員・公務員など国民年金+厚生年金保険厚生年金保険料として給与から天引き
自営業・フリーランス・学生・無職など国民年金納付書・口座振替などで自分で納付
第2号被保険者に扶養される配偶者国民年金本人の自己負担なし

ただし、現在フリーランスや自営業であっても、過去に会社員として厚生年金保険に加入していた期間があれば、その加入期間に応じて老齢厚生年金を受け取れる場合があります。

また、第3号被保険者に該当する配偶者は本人負担なしで国民年金に加入しますが、配偶者の退職、離婚、自身の収入増加などで扶養から外れた場合は、種別変更の手続きが必要です。

なお、65歳以上の厚生年金保険加入者で、老齢または退職を理由とする年金給付の受給権がある方など、一部では国民年金の第2号被保険者として扱われないケースがあります。この記事では、主に一般的な会社員・公務員などを前提に解説します。

国民年金と厚生年金の違い

国民年金と厚生年金は、加入する対象者や保険料の仕組み、将来受け取る年金の名前が異なります。

混乱しやすい点を整理すると、次のとおりです。

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項目国民年金厚生年金保険
制度の位置づけ1階部分の基礎年金会社員・公務員などが加入する2階部分
主な加入者20歳以上60歳未満の人適用事業所に勤務し、条件を満たす70歳未満の人
保険料定額標準報酬月額・標準賞与額に応じて計算
保険料の負担第1号被保険者は自分で納付事業主と本人が原則として半分ずつ負担
老後に受け取る年金名老齢基礎年金老齢厚生年金

「国民年金」「厚生年金保険」という制度名と、「老齢基礎年金」「老齢厚生年金」という受取時の名称が異なるため、混乱しやすい点には注意しましょう。

受け取る年金の名称

  • 国民年金:老齢基礎年金
  • 厚生年金保険:老齢厚生年金

厚生年金についての基本知識

厚生年金の条件を確認するイメージ

厚生年金保険は、会社員や公務員など、適用事業所に勤務し一定の条件を満たす人が加入する公的年金制度です。

ここでは、厚生年金保険の保険料、加入条件、受取条件を順番に確認していきます。

保険料は事業主と本人で半分ずつ負担する

厚生年金保険の大きな特徴は、保険料を事業主と被保険者が半分ずつ負担することです。

国民年金の第1号被保険者や任意加入被保険者が自分で納める国民年金保険料は、毎年度見直される定額の保険料です。令和8年度の国民年金保険料は、月額1万7,920円です。

一方、厚生年金保険料は、標準報酬月額・標準賞与額に保険料率をかけて計算します。一般の厚生年金保険料率は18.3%で、事業主と本人が原則として半分ずつ負担します。

たとえば、標準報酬月額ごとの厚生年金保険料は次のとおりです。

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標準報酬月額保険料総額本人負担分事業主負担分
8万8,000円1万6,104円8,052円8,052円
65万円11万8,950円5万9,475円5万9,475円

実際の給与からは、厚生年金保険料のほかに健康保険料や雇用保険料、所得税、住民税なども差し引かれます。給与明細を見るときは、各項目を分けて確認しましょう。

扶養配偶者は第3号被保険者になる場合がある

厚生年金保険に加入している第2号被保険者に扶養される配偶者は、一定の要件を満たすと国民年金の第3号被保険者になります。

第3号被保険者になると、配偶者本人が国民年金保険料を自分で納付する必要はありません。

この保険料は扶養している本人が個別に追加で支払うのではなく、第2号被保険者の加入制度が負担する仕組みです。

ただし、配偶者の働き方や収入が変わった場合は、第3号被保険者のままでよいか確認しておきましょう。扶養から外れると、第1号被保険者または第2号被保険者として手続きや保険料負担が必要になる場合があります。

厚生年金の加入条件

厚生年金保険の加入対象は、適用事業所に常用的に使用される70歳未満の人です。

正社員だけでなく、パートタイマーやアルバイトでも、働き方によっては厚生年金保険の加入対象になります。

  • 1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が、通常の労働者の4分の3以上である
  • 4分の3未満でも、短時間労働者の要件を満たす

短時間労働者として加入対象になる主な要件は、次のとおりです。

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項目主な要件
勤務時間週の所定労働時間が20時間以上
賃金所定内賃金が月額8.8万円以上
※2026年10月に撤廃予定
雇用見込み2カ月を超えて雇用される見込みがある
学生区分原則として学生ではない
勤務先特定適用事業所、任意特定適用事業所、国・地方公共団体に属する事業所など

2027年9月までは、特定適用事業所は厚生年金保険の被保険者数が51人以上となることが見込まれる企業等です。ただし、短時間労働者の適用範囲は段階的に拡大されます。

具体的には、企業規模要件は2027年10月から36人以上、2029年10月から21人以上、2032年10月から11人以上へと段階的に拡大され、2035年10月には従業員数10人以下の企業も対象となる予定です。

また、所定内賃金が月額8.8万円以上という要件は、2026年10月に撤廃予定とされています。最新の加入条件は、勤務先や日本年金機構の情報で確認してください。

なお、日々雇い入れられる人や、2カ月以内の期間を定めて使用される人などは、原則として被保険者とされません。ただし、一定期間を超えて引き続き使用される場合や、当初から2カ月を超えて雇用される見込みがある場合などは、被保険者となることがあります。

加入手続きは事業主が行います。勤務先で厚生年金保険に加入する場合、原則として本人が年金事務所に出向いて加入手続きをする必要はありません。

厚生年金の受取条件

老齢厚生年金を65歳から受け取るには、主に次の条件を満たす必要があります。

  • 老齢基礎年金の受給資格期間が10年以上ある
  • 厚生年金保険の被保険者期間がある

受給資格期間には、国民年金の保険料納付済期間、厚生年金保険や共済組合等の加入期間、保険料免除期間、合算対象期間などが含まれます。

そのため、厚生年金保険だけで10年加入していなくても、国民年金と厚生年金保険の期間を合わせて10年以上あれば、受給資格期間を満たす場合があります。

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加入期間の例受給資格期間考え方
厚生年金保険10年10年要件を満たす
国民年金5年+厚生年金保険5年10年要件を満たす
国民年金10年+厚生年金保険1年11年要件を満たす
国民年金1年+厚生年金保険5年6年10年に満たない

60歳までの時点で受給資格期間が10年に満たない場合でも、60歳以降に国民年金へ任意加入して保険料を納めることで、受給資格期間を満たせる場合があります。ただし、厚生年金保険や共済組合等に加入している人は、国民年金の任意加入対象にはなりません。

自分の加入期間は、毎年誕生月に届く「ねんきん定期便」や、スマートフォン・パソコンで利用できる「ねんきんネット」で確認できます。

また、老齢年金は受け取る権利が発生しても自動的に支給が始まるわけではありません。受け取るためには、年金の請求手続きが必要です。

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国民年金と厚生年金の二重払いは起こる?

年金保険料の二重払いを確認するイメージ

厚生年金保険に加入している人は、国民年金保険料を別に納める必要はありません。

ただし、国民年金保険料を前納している人が年度途中で就職し、厚生年金保険に加入した場合などは、国民年金保険料が重複して納付された状態になることがあります。

たとえば、自営業者やフリーランスの人が国民年金保険料を1年分まとめて前納し、その年の途中で会社員になった場合などです。

重複して納付されたことが判明した場合、日本年金機構から「国民年金保険料還付請求書」が送付されます。書類が届いたら、必要事項を記入して提出しましょう。

還付金は、国民年金保険料還付請求書の受付から約1カ月で支払われる予定とされています。書類が届かない場合や、二重払いに該当するか不安な場合は、最寄りの年金事務所などに確認すると安心です。

二重払いが疑われる場合は、ねんきんネットで加入状況や国民年金保険料の納付状況を確認したうえで、必要に応じて年金事務所へ相談しましょう。

詳しい手順は、以下の記事でも紹介しています。

公的年金制度を理解して有効活用すべき

公的年金制度を確認するイメージ

厚生年金保険と国民年金は別の制度ですが、日本の公的年金制度は2階建て構造です。

会社員や公務員など厚生年金保険に加入している人は、原則として国民年金にも加入しており、国民年金保険料を別に納める必要はありません。

受給要件を満たせば、将来は老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れます。一方で、厚生年金保険に加入したことがない人は、公的年金としては原則として老齢基礎年金が中心になります。

また、年度途中の就職などで国民年金保険料を重複して納めた場合でも、還付手続きを行えば払い戻しを受けられます。

まずは、自分の加入記録を「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で確認してみましょう。厚生年金保険の加入期間、国民年金保険料の納付状況、免除期間、標準報酬月額などを把握しておくと、将来の年金を考えやすくなります。

具体的にいくら厚生年金がもらえるか、いくら国民年金制度の保険料を支払うか、などについてはこちらの記事で紹介している。保険料に関して知りたい方はご覧いただきたい。

年金制度や手続きに関する不安がある場合は、まず日本年金機構や年金事務所で確認しましょう。

そのうえで、老後資金や資産形成まで含めて考えたい場合は、必要に応じて資産運用の専門家に相談するのも一つの方法です。

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出典

日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」(更新日:2023年4月3日)
日本年金機構「た行 第2号被保険者」(更新日:2023年11月22日)
政府広報オンライン「年金の手続。国民年金の第3号被保険者のかたへ。」
日本年金機構「国民年金保険料」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「厚生年金保険の保険料」(更新日:2024年8月9日)
日本年金機構「令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和8年度版)」
日本年金機構「適用事業所と被保険者」(更新日:2025年7月31日)
厚生労働省「社会保険加入の要件」
日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」(更新日:2026年4月17日)
厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」
日本年金機構「老齢年金の請求手続き」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「任意加入制度」(更新日:2025年9月11日)
日本年金機構「重複して納めた国民年金保険料を返してもらうにはどうしたらいいですか。」(更新日:2020年9月2日)
日本年金機構「国民年金保険料還付請求書を提出しましたが、いつごろ還付されるか教えてください。」(更新日:2020年9月2日)
日本年金機構「大切なお知らせ、『ねんきん定期便』をお届けしています」(更新日:2026年4月1日)
日本年金機構「『ねんきんネット』によるご自身の年金記録の確認」(更新日:2023年10月26日)

執筆者

資産運用ナビ編集部は、アドバイザーナビ株式会社が運営する金融専門ライターチーム。資産運用アドバイザーと投資家をマッチングするプラットフォーム「資産運用ナビ」を通じて、延べ10,000名を超える相談を支援。おすすめの資産運用おすすめのIFAなど、読者が自身に最適な資産運用の相談先を見つけることができるよう、適切な情報発信に努めている。