※本コラムは2023年3月6日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ニーズウェルは金融業界向けのシステム開発で培った強みを軸に成長を続け、近年では自社製品開発にも注力しています。
代表取締役社長の船津浩三氏へ、事業基盤の確立を通じた同社のさらなる成長ストーリーを教えていただきました。
株式会社ニーズウェルを一言で言うと
「Try & Innovation」を合言葉に、課題解決型人材を育成し、「広く経済社会に貢献し続ける」企業です。
代表就任の経緯
私は、2014年に社外取締役として当社に入社し、2016年に代表取締役に就任しました。当時、我々は上場へ向けた準備を始めており、前職で在籍していた企業にて上場準備に携わった経験のある私が、前社長の退任に伴い代表者として引き継ぐ形となりました。
その後、2017年9月にJASDAQ市場、2018年に東証2部、そして2019年6月には東証1部へ上場と、上場後は1年ごとに順調な成長を実現してきました。
当社の事業上の転換点は2017年頃から始まりました。従来の受託開発に加え、自社製品を開発しお客様に提供するソリューションビジネスに着手したのです。
加えて、2019年からは請負開発へのシフトを進めています。人材不足の問題が起こる中、コロナの感染拡大の要因も加わり、お客様が元請け開発比率を縮小させる傾向があったのです。
請負型での自社内開発への転換は2019年頃から取り組んでおり、この移行が成功しているという点も、我々の大きな強みとなっています。
このように、ビジネスモデルの変革は当社に持続的な成長をもたらす原動力となってきました。
そのため、マネジメント面でも自らプロジェクトをマネジメントするノウハウをつけさせることに注力してきました。
当社も元々はお客様に人材を派遣するビジネスモデルを取っており、人材を提供することが主でした。ですがそれが故に技術者やプロジェクトのマネジメント面では弱い部分があったのです。
現場および経営の両面から徐々に切り替え、請負型で取り組めるように進めてきたというわけです。
事業内容について
当社事業は二つに大別されます。
一つは事業基盤を確立するサービスラインです。金融業界向けを筆頭に、通信、流通、サービス等の幅広い業界に向けて業務系システム開発や基盤構築、コネクテッド開発を手掛けております。
業務系システム開発において、いわゆる2024年問題やネットショッピング利用率に増加などから物流ビジネスの成長余地は大きいと考えており、足元でも注力分野となっております。
倉庫管理システム「SmartWMS」は、ハンディーターミナルを活用したペーパーレス化やロボットによる省力化を図ること、課題の見える化を図ること、および使い勝手の良いソフトを提供することに力を入れています。また、システムの販売については物流のハードウェアメーカーと協力して拡販を進めており、今後は横展開による成長も期待できる領域となっています。
もう一つは事業拡大・付加価値向上を加速するサービスラインであるソリューションビジネスです。こちらは情報セキュリティ技術や AI 技術の活用でお客様企業の DX 化、高付加価値化をアシストする様々なソリューションを提供するものです。
まずは創業37年を迎えた我々が抱えるエンジニアの技術力が大きな差別化ポイントとなります。また、ニーズに対しては機動的に開発を行い、製品を提供することに力を入れています。
当社には技術者のノウハウを活用して開発できる製品が多数ありますし、何よりも我々はお客様のニーズに基づいて企業共にその開発に取り組みます。他社と比較しますと大幅な投資を行わずに製品開発をスタートできるという点も強みであります。
ソリューションビジネスは事業拡大とともに付加価値向上を加速する存在と認識しており、売上高構成比の将来目標としては15%を掲げています。
現状、自社製品はITエンジニアリングサービスを柱としておりまして、これは社内に導入されております会計システムと、勤怠や人事、給与計算などとの連携をサポートする製品です。そのため業種・業界を問わず拡販が可能であります。
また、ペーパーレス化を図るための電子契約・承認や、電子帳簿法の改正による電子化なども同様の理由から拡大を進めております。
創業以来の業務系システム開発で培われた高い技術力とともに、投資家の皆様には当社のエンドユーザー比率の高さにも注目していただきたいと考えています。
クラウド型での製品提供とその保守を行うことで、現状では60%を超える水準となっております。受注の安定化だけでなく、IT業界では珍しい、10%という高い収益率を維持しており、事業上のメリットとして還元されております。
中長期の成長イメージとそのための施策
派遣型ビジネスからの脱却と真のシステムインテグレータへの変革を目指し、当社の強みをさらに伸ばすことで成長を実現してまいります。
数値的な成長イメージといたしましては、売上高では20%の成長率を目指すともに、経常利益率および売上総利益率はそれぞれ10%、25%の水準をターゲットとしております。特に、2023 年9月期は売上高100億円、流通株式時価総額100億円の達成を目指しております。
具体的な施策についてですが、上場企業として将来まで安定した発展を遂げる事業基盤を確立するため、各事業で以下のような取り組みを進めてまいります。
業務系システム開発においては、先ほども申し上げたように金融以外にも物流など新たな領域への展開を進めます。お客様との中長期的な関係性を構築していくことでストックビジネス拡大による収益性の向上を狙います。また、新たに我々の製品という武器をお客様に提供し、ローコード開発、つまりは開発の生産性を高めるプラットフォームをうまく活用しながら、競争力も高めることを目指してまいります。
基盤構築系では、業務系システム開発でお取引のあるお客様と連携しサーバーやネットワーク構築を含めた領域をまとめて受注できるような体制を整備していきます。また、クラウド関連の案件も含めて受注して安定化も図ってまいります。
コネクテッド開発に関してですが、自動車や医療機器の領域で我々の持つノウハウを生かしていきたいと考えています。AIによる分析を行ったセンサーデータを提供し、IoT、ICT向けのコネクテッド技術を強化していく方針です。
当社はこれまでM&Aや資本業務提携による顧客基盤や技術を拡大・強化を図ってきましたが、こちらについても引き続き積極的に取り組んでまいります。
我々が目指すのは単に売上拡大だけでなく、双方の成長に繋がるシナジー効果の創出です。例えば、すでに子会社化したビー・オー・スタジオスタジオとの提携では、Web系のシステムに強みを持った同社が、当社傘下に入ることでより大型案件への入札が可能となり、ビジネスを拡大させていくことができます。
このようにパートナー企業ともお互いの強みや得意領域を活かし、共に成長していくことを目指しております。
また、人材面での基盤確立としては以下の取り組みを推進してまいります。
一点目はニアショア開発への注力です。日本国内での採用競争は激化する傾向にある中、地方の優秀な方を採用し人材を確保することを目的としております。拠点となっている長崎県では若者の地方離れが進んでおり、企業の採用活動を助成する政策も実施されており、2024年期までに100名体制を目指しています。
また、すでに長崎開発センターを利用した生命保険会社など金融機関の案件に従事しておりますが、このような国内の開発需要の取り込みにも活用してまいります。この点においては鹿児島県にあります約80名規模の会社にも出資をしまして、今後は新たなニアショア拠点として活用していく方針です。
二点目はコアパートナーとの連携強化です。今期の計画では、パートナー比率が46%、そのうちのコアパートナー率は60%ですが、この比率を将来70%まで引き上げる方針です。
これにより安定した技術者の構成を確保し、プロジェクトのトラブルを防ぐことが目的です。
三点目は課題解決型人材の育成への取り組みです。ソリューションビジネスのさらなる拡大を目指し、新卒採用に注力するとともに教育研修体系を整備し、自社内での高度人材の育成・定着化を目指していきます。
投資家の皆様へメッセージ
会社の永続性を重視し、派手ではないですが堅実な事業成長を目指してまいります。
また、プライム市場を維持しながら信頼性を高め、優秀な人材を確保し、育成するための教育体制を確立しています。さらに収益性の追求についても、ソリューションビジネスによってエンドユーザーを広げながら生産性を高めることで実現してまいります。
投資家の皆様に安心していただけるよう、確実にこれらの施策を実行していきますので、ぜひ応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都千代田区紀尾井町4-1 ニューオータニ ガーデンコート13階
設立:1986年10月
資本金:9億8百万円 (2022年9月30日現在)
上場市場:東証プライム(2017年9月20日上場)
証券コード:3992