※本コラムは2023年3月9日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社サンワカンパニーは、ネット通販モデルによるエンドユーザーへの直接販売という形で独自のビジネスモデルを確立しています。
代表取締役社長の山根太郎氏へ、他社との差別化ポイントや今後の成長ストーリーを教えていただきました。
株式会社サンワカンパニーを一言で言うと
デザイン性の高い住宅設備機器・建築資材の企画開発・輸入・EC販売を行う会社です。
代表就任の経緯
私は2008年に大学を卒業し、大手総合商社の繊維部門やアパレル部門でスポーツアパレルを手掛けていました。ところが、2012年に創業者である父が急逝したことから、2年後の2014年には海外商品部長として当社に入社し、同年の6月に開かれた臨時株主総会で現職に就任いたしました。
当時はアパレル業界出身で、住設・建材EC事業や住宅事業については詳しくありませんでしたが、代表に就任してからは組織改革やシステム刷新などを通じた筋肉質な体質作りを進めてまいりました。
代表就任後のターニングポイントは、2019年に9年間の中長期計画を新たに作ったことです。
構造変革期、成長加速期、飛躍期の三段階に分け、それぞれを3年ごとのスパンで実行しております。最初の3年間は組織の入れ替えや年功序列・終身雇用の撤廃、給料やボーナス体系の改定などの人事制度を改革いたしました。
また、ショールームについても費用対効果の高い立地に移転するなど、コストパフォーマンスを意識した取り組みを進めました。さらに、システムにつきましては2016年にモデルを入れ替えておりましたが、その償却期間が5年でしたので、ちょうど構造変革期の終わりと同じタイミングとなりました。
これらの取り組みにより、人件費や固定費などが相当改善され、一気に損益分岐点を下げることができました。損益分岐点を超えた売上は全て営業利益としてプラスされ、これがまさに2021年からの成長加速期であります。
売上・利益共に2桁成長を実現できております。また、システム刷新により「ロイヤルカスタマー化するためのロジック」を組み立てることができるようになったため、広告宣伝効率も大幅に改善いたしました。
そのほか、入社当初は組織形態や権限移譲の遅れ具合、クレーム対応などのサービス品質に違和感がありましたが、現在はデータを活用したマーケティングや原価をしっかり把握するための管理会計などを導入し、戦略的な取り組みを進めております。
事業内容について
デザイン性に特化したキッチンや洗面台、ガラスドアなどの住宅設備や、タイルやフローリングなどの建材を自社で企画開発し、ネット通販モデルで消費者向けに販売しております。
このビジネスモデルにより、当社は膨大な数のエンドユーザーと直接接点を持つことができます。これは、消費者の趣味・嗜好やトレンドをフィードバックすることで、商品開発を行うことができるという事業上のメリットとして還元されています。
商品特性上は住宅設備事業者も競合となりますが、彼らはB to Bのビジネスであるため取引先の商社にとって販売しやすいもの、つまり規格化されており利幅の得やすいものが好まれる傾向にあります。
ここは当社との一番の違いであり、我々の商品のヒット率が上昇している要因でもあります。
また、そもそも中間事業者を挟まないビジネスモデルを確立していることも高い参入障壁であると認識しています。
B to B to Cのモデルのため、我々は意思決定者であるエンドユーザーに寄り添いマーケティングを施すこととなります。ですが工務店等にはインセンティブを付与しているわけではありませんので、彼らとしても当社製品を能動的に販売するメリットは少なく、ここにこのビジネスモデルの難しさがあります。
当社も元々輸入卸業をやっていたところから6年かけてこのモデルを確立しており、大手含めた既存プレーヤーがここまでの長期的なスパンをかけて事業をピボットさせることは非常にハードルが高いと考えています。
また、商品の企画から商品投入までには約2年かかりますし、我々の商材は高額なためにお客様の検討期間も長くなる傾向にあります。そのため、自社で新商品をコンスタントに企画し、固定費を抱えることはベンチャー企業にとっても難しいことなのです。
この点、当社には、創業来少しずつ増やしてきたオリジナルアイテムがあります。このように自社でデザイン性の高い商品を保有していることが、我々の優位性であります。
また、住宅事業にも取り組んでおりまして、当事業は施主と工務店の橋渡しポジションとしての役割を果たしております。工務店とのネットワークや、住設・建材EC事業同様、エンドユーザーとの接点とそれにより蓄積された顧客データが差別化ポイントとなっています。
足元では、福岡にて工務店を1社グループ化いたしました。今後は、彼らのネットワークを活用し、キッチンの取り付けやタイルの張り替えなど多様なサービスをネット上で一括請負契約することも計画しています。
一律パッケージのような形で販売することで、全国の工事と建材のシェアをネット上で獲得していくことが我々の次なるステップであり、これにより企業価値はまだまだ伸ばしていく余地があると考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
当社の目指すべき姿は自社事業を通じた持続可能な社会への貢献であります。そのために、「国内事業の収益基盤強化」「海外事業の成長拡大」「新事業の創造」を成長の三本の柱としております。
まず国内事業に関してですが、現状業界内のシェアは0.1%であり、大いに開拓余地が残されています。
そのため、認知度向上とそれに伴う会員数の大幅増加を施策の一つとしています。特に1年以内に住宅購入やリフォームを検討しているような顕在層をターゲットにSEO、SNS、MEOの3つのマーケティングを実施いたします。
また、商品開発においても「カテゴリの柱となる商品づくりと新分野への挑戦」を方針に定めており、毎年話題性のある商品を投入してまいります。
加えてショールームの横展開も加速させ、全体としてブランド力の向上を通じた売上成長率のアップと利益率の一層の改善に取り組んでまいります。
次に海外事業ですが、まずは2022年7月に現地法人を設立したアメリカでの事業展開を進めてまいります。相対的にカントリーリスクが抑えられるというのが進出の理由です。
ビジネスモデルとしては、国内の住設・建材EC事業とは異なりまして、日本の大手ハウスメーカーとの協力関係を築き、彼らの物件に対して営業をかけ、採用していただきながら堅実に財務基盤を整えていく方針です。
このようにB to Bの売上を積み上げたのち、LAやニューヨークなどにショールームを構えた上でB to Cのネット通販モデルも段階的に展開する予定でございます。
海外事業による副次的な効果として、先に海外でお取引のあった大手企業から、商品性にご満足いただいた上で国内でもお取引が始まるケースも出てきており、進行期においても下期からは業績にも反映される見通しでございます。
最後に、新事業の創造に関してですが、引き続きM&Aの推進を図ってまいります。
直近では2022年に株式会社ベストブライトをグループ化いたしました。同社は、九州を中心にハウスメーカーとして成長しており、今期は計画ベースで売上が20億円、営業利益が1億円規模の企業となっています。
先ほども申し上げた通り、我々の目指すところは彼らをはじめとする工務店のサービスをネット上で一律価格販売することであります。今回もそのためのインフラとしてM&Aを実施しておりますので、今後はエリアを全国に拡大することを進めていきます。
ベストブライト社自体を全国規模の工務店にしていくのか、同規模の工務店を各地方で取得していくのかについては、今後のPMIの進捗次第ではありますが、まずは当事業の成長方針をご理解いただければと思います。
また、3Dプリンターを作る事業会社や素材開発系企業との連携も検討しており、彼らのソフト面での強みと我々のハード面での強みを掛け合わせることで、建材販売を一気にスケールさせることができるのではないかと考えています。
これらの戦略を通じ、2027年までに売上高400億円、営業利益100億円を目指しております。今後の飛躍期においては、一気にインフラを整備させるとともにマーケティングコストをかけて成長速度を加速させてまいります。
作期初めて営業利益が単体で10億円を達成し、投資家の皆様におかれましては、この目標の達成についてまだ懐疑的な方もいるかもしれません。達成に向けた進捗の過程においては、売上高の他、営業利益率およびROIC※に注目していただきたいと思います。営業利益率は20%水準を維持するとともに、ROICは9%程度を目指し、事業全体の生産性を高めていきたいと考えております。
- ROIC(Return On Invested Capital):投下資本利益率。企業が事業活動のために投じた資金を使って、どれだけ利益を生み出したかを示す指標。
投資家の皆様へメッセージ
当社は建築業界において唯一無二のEC企業を目指している会社です。
短期的な成長ももちろん実現してまいりますが、業界としてはボラティリティが相対的に高くないという特徴があると思います。そのため、中長期的な我々のビジョンに共感していただき、応援していただけますと嬉しく思います。
本社所在地:大阪市北区茶屋町19番19号 アプローズタワー21階
設立:1979年8月22日
資本金:798百万円(2022年9月30日現在)
上場市場:東証グロース(2013年9月13日上場)
証券コード:3187