- 債券先物取引とは何なのか
- 債券先物の効果とメリットは何なのか
- 債券先物はどのように決済されるのか
先物取引とは、将来の売買について予約約束する取引のことである。
取引数量と価格を現時点で決め、売り手と買い手が将来の売り買いを約束する。
現時点では資金は動かず、約束の期限が来たときに売買や受け渡しがなされる仕組みだ。
江戸時代の米取引をきっかけとし、日本で発明されたと言われている先物取引は現在、株式や債券、為替、コモディティなどで導入されている。
その中でも今回は債券先物取引について、仕組みや国債先物のメリット・注意点をわかりやすく解説する。
債券先物取引の仕組みと取引対象の国債
債券先物取引とは
債券を取引対象とし、特定の期日(受渡日)に、あらかじめ決めた価格で債券売買を約束する取引を指す。
金融派生商品(デリバティブ)のひとつだ。事前に決めた価格での売買となるため、受渡日に債券価格が値上がりしていても、約束した日の価格で購入できる。
イメージをつかむために例を挙げてみよう。
ある自動車の発売日3ヶ月前に、予約時点で決められている価格で購入台数を指定し、予約する。
3ヶ月後、予約した購入価格で指定した台数分の支払いをし、自動車を受け取る。
債券先物のおおまかな流れも同様である。たとえ3ヶ月後に、その自動車の価格が値上がりしていても、予約時点の価格で購入できる。
ただ、予約した時の価格より受渡日の価格が下がっていることもある。
この場合も、約束しておいた価格で購入せねばならないため、損失が発生する。
先ほどの例に戻ると、500万円で購入予約した自動車が引き渡し日には400万円に値下がりしていても、予約価格500万円を支払わねばならない。
債券先物取引では買い・売り両方の注文を出せる。
たとえば3ヶ月後に500万円で手持ちの自動車を売る約束をし、期日が来たら時価に関わらず500万円で売ることになる。
時価が450万円になっていたら利益に、550万円になっていたら損失になる。
自動車の売買では「自動車」という実物の商品が存在するが、債券先物では実物が存在しない。
債券は償還までの期間や表面利率(クーポンレート)など様々な要因により条件が一定ではないため、市場で円滑な売買が行えるよう標準化した架空の債券を設定し、取引対象としている。
これを「標準物」と呼ぶ。
債券先物の取引対象
すべての債券で先物取引ができるわけではなく、日本では次の4銘柄が取引対象となっている。
- 中期国債先物取引(標準物クーポンレート3%・償還期限5年)
- 長期国債先物取引(標準物クーポンレート6%・償還期限10年)
- 超長期国債先物取引(標準物クーポンレート3%・償還期限20年)
- ミニ長期国債先物取引(長期国債先物と同じ/取引単位は10分の1)
国債先物は主に金融機関や機関投資家がリスク回避やポートフォリオマネジメントのために使われる手法である。
そのため取引単位は額面1億円となっている。
一方、ミニ長期国債先物取引は取引単位が10分の1の1,000万円に設定されており、決済方法も差金決済(※)で行われるため個人でも投資しやすくなっている。
※差金決済については後ほど解説する。
債券先物の投資効果とメリット
債券先物は投機的な取引にみられがちだが、主にリスクヘッジのために利用されている。
債券先物取引を通じて得られる投資効果を見ていこう。
債券先物に投資するメリット
- 投資家から見たメリット
- 現物債券の価格は償還までの間、変動し続ける。一方、債券先物で取引される国債の標準物は、証券取引所によってあらかじめ表面利率(クーポンレート)と償還期限が決められている。そのため、債券先物に投資することで金利や価格の変動のリスクを回避できる。
- 現物債券を購入する場合、金利上昇・価格下落時に利益が出る。債券先物の購入時は、金利がすでに決められている上で、価格上昇時に利益が出る。現物債券を持っているなら、債券先物取引を実施することで価格変動リスクを避けられる。これから現物債券を購入する場合は、債券先物をあらかじめ買い建てておき受渡日に現物債券を同時購入すれば、価格上昇による損失を相殺でき希望する価格で現物債券を購入できることになる。
- このように債券先物と現物債券における値動きの違いを活かすことで、より安定した資産運用を目指せるのだ。
- 市場から見たメリット
- 債券で資産運用している金融機関にとっても、金利変動リスク・価格変動リスクを避けられるメリットがある。現物債券の変動リスクを避けるために債券先物取引を併用すれば値動きを相殺でき、流通市場の安定にもつながる。
- また、債券発行体から見れば、債券の募集・売り出しを証券会社等が肩代わりする「引き受けリスク」を抑えることができる。債券発行による資金調達が円滑に行われ、債券市場は活況を維持できるメリットがある。
債券先物の理論価格と決済方法
債券先物の理論価格と計算式
- 理論価格とは
- 現物債券の価格を基準にして算出されるもので、債券先物を有利に行うための指標となる価格を指す。理論価格を使うことで、債券先物の標準物にどれくらいの価値があるかを測ることが可能になる。算出された理論価格と債券先物価格を比較すれば、先物売却・現物購入と先物購入・現物売却のどちらが有利か判断できる。
- 理論価格の計算式
- 標準物と同じ現物債券があると仮定すると、理論価格は以下の計算式で算出できる。
債券先物の理論価格
=現物債券の価格ー(クーポン収入ー資金調達コスト)
=現物債券の価格ー現物債券の価格×{(クーポンレートー短期金利)×受渡日までの日数/365日}
現物債券の価格には金利負担分が加味されている。債券先物の受渡日が近づくにつれ現物と先物の価格差が縮み、受渡日当日には日数が0になるので現物債券価格と同じ数値になる。
債券先物の決済方法
売買の単位や受渡期日(限月)など取引条件が定められている。
一定の証拠金を差し入れれば売買でき、受渡期日前の決済も可能だ。
債券先物を決済する方法はふたつある。通常は「差金決済方式」で行われる。
- 差金決済方式
- 限月までに反対売買をして差額を授受する方法である。反対売買とは「買った銘柄を売り、売った銘柄を買う」取引で、ここで発生した差額を利益または損失として決済する。
- 受渡方式
- 債券先物の受渡期日である限月に、現物債券を受け渡す方法を受渡方式と呼ぶ。債券先物では架空の債券が取引されているが、受渡方式での決済時は受渡適格銘柄から売り方が銘柄を選んで受け渡す。
まとめ
債券先物取引は仕組みが複雑で、個人投資家には馴染みが薄い傾向にある。
実際には債券をポートフォリオに組み込んだ投資信託やETFの運用にも債券先物が活用されており、リスク回避と安定したリターンの確保に一躍買っている。
先物取引をはじめ様々な投資手法がある中、自分に合う資産運用を探している人もいるだろう。
それを助ける一つの手段として、「資産運用ナビ」に相談をしてはいかがだろうか。
プロの視点から資産運用の疑問を解決し、納得した上で資産運用を行おう。
現在、下記ボタンから申し込むと無料で資産運用の相談にのってくれる。