世界には多様な投資商品があるが、その中でもオルタナティブ投資は時代とともに種類・手法の進化を続けている。
そんなオルタナティブ投資を上手に活用すれば、伝統的な運用方法では実現できない収益性が期待でき、リスク回避も狙える。
そこで本記事では、オルタナティブ投資の特徴から具体的な実践法、さらに資産運用への活用術までを解説する。
オルタナティブ運用とは何か
オルタナティブ(alternative)とは、「代替の」「代替案」といった意味を持つ単語である。そしてオルタナティブ運用とは、株式や債券などの伝統的資産の代替となる、新しい資産・戦略へ投資し運用することだ。
伝統的資産とは異なるリスク・リターン特性を持つことから、分散投資先として国内・海外からの注目度が高まっている。
例えば年金積立金の管理・運用をする年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でも、オルタナティブ運用が進められている。投資実績は、2022年3月時点で2020年3月と比較すると、約228・5%上昇している。
また世界の年金基金の動向も、運用の一部をオルタナティブ資産へシフトしている傾向が見られる。以下でオルタナティブ運用の基礎知識を見ていこう。
伝統的な運用との違い
株式や債券など、昔から投資対象とされた資産を運用することを伝統的な運用と呼ぶ。原則として、国内・海外株式と国内・海外債券、およびこれらが組み込まれる投資信託が該当する。
これらの運用手法によって得られる利益は、資産の売買によるキャピタルゲインと、配当金・分配金・株主優待・利息などによるインカムゲインである。
オルタナティブ運用の種類
オルタナティブ運用は伝統的な運用以外のものを指すことから、非常に種類が多い。ここでは代表的なオルタナティブ運用を紹介する。
ヘッジファンド | 限定された投資家から調達した資金を元手に、さまざまなな資産・戦略で、市場の上下にかかわらず収益を追求する私募ファンド |
プライベート・エクイティ | 証券取引所に上場していない未上場株(未公開株)へ投資し、事業売却や上場による利益を狙う運用 |
コモディティ | 貴金属(金・銀・プラチナなど)、エネルギー(ガソリン・原油・電力など)、農産物(トウモロコシ・大豆・小麦など)、美術品(アンティーク・絵画など)といった実物の運用 |
デリバティブ | 先物取引やオプション取引、信用取引など、金融商品から派生した投資商品の運用 |
不動産投資 | 不動産の家賃収入や売却益などによる利益を狙う運用 |
暗号資産 (仮想通貨) | 銀行などの第三者を介さず、インターネット上でやり取りする財産的価値のある暗号資産の運用 |
NFT (Non-Fungible Token・非代替性トークン) | ブロックチェーン技術を用いた固有の価値を持つデジタルデータである、NFTの資産的価値へ投資する手法 |
不動産
土地・建物など不動産関連の投資商品。不動産投資信託(REIT)や国内外のREITに投資する投資信託、私募ファンドといった金融商品の他、現物不動産を保有・運用することもオルタナティブ投資に含まれる。
コモディティ
金・銀などの貴金属、原油や天然ガスなどのエネルギー、小麦や大豆などの農産物など、商品先物取引所で売買されている商品へ投資する。
仮想通貨(暗号資産)
インターネットで不特定多数間のやりとりが可能な、法定通貨・法定通貨建の資産ではない新たな通貨。電子データのみで取引され、国や地域、中央銀行などの管理による影響は受けない。
金融派生商品(デリバティブ)
株式や債券などの金融商品について、高い収益性を目指したり各種リスクを抑えたりする手法で運用するもの。先物取引、オプション取引などがある。
ヘッジファンド
高度な金融技術を駆使して収益を追求する私募ファンド。市場の上下に関わらず利益を出し続けることを目的にしている。
インフラファンド
鉄道や空港、発電所などの社会インフラに投資するファンド。
プライベート・エクイティ
上場していない株式のことを「プライベート・エクイティ」と呼ぶ。未上場企業の株式を保有しておくことで、将来、他企業への事業売却や株式市場への上場が叶ったときの売却益を狙うというもの。
事業再生ファンドやベンチャーキャピタルもこのカテゴリーに含まれる。
証券化商品
ローンやリースといった将来的に収益が期待できる資産についてキャッシュフローを裏付けにした有価証券を発行したもの。代表的なものはMBS(不動産担保証券)、CBO(社債担保証券)など。
オルタナティブ運用のリスクとリターン
オルタナティブ運用の最大の特徴は、伝統的資産と異なるリスク特性を持つ点である。
例えば食物系のコモディティへの投資であれば、地政学・天災などの状況に大きく左右される。NFTであれば著作権・所有権の問題、不動産なら建物の経年劣化などが挙げられるだろう。
またオルタナティブ資産は即座の売買が難しく、流動性の低さが目立つ。一方で、伝統的資産よりも高い利回りで運用される傾向があり、高いリターンを期待できる。
このような特性を持つことから、オルタナティブ運用はマス層向けというより、投資の知識・経験を持つ富裕層向けと言えるだろう。
とはいえ近年では、フィーダーファンドやREIT(不動産投資信託)など、少額から購入できるオルタナティブ資産も登場している。
オルタナティブ投資の特徴
オルタナティブ投資の基礎が理解できたところで、ここではさらに詳しく特徴を紐解いていく。
自身の資産運用に上手に組み込めるよう、オルタナティブ投資の特徴への理解を深めてほしい。
オルタナティブ投資の特徴①分散投資効果を得やすい
資産運用のコツは、様々な資産クラスに分散して投資を行うことだ。
オルタナティブ投資に分類される資産クラスには、株式や債券などのいわゆる伝統的資産とは異なる値動きをするものが多い。
そのため、運用資産に組み入れることで分散投資の効果を得やすくなるのだ。
オルタナティブ投資の特徴②収益源を多様化できる
また、先述の通りオルタナティブ投資の種類は多岐にわたっており、一般的な個人投資家では直接投資ができないものも含まれている。
様々な投資手法で運用できる分、相場が様々な局面を迎えても利益を追求できるメリットもあるのだ。
このように、運用資産の分散先だけでなく、収益源を多様化できるのも大きな魅力である。
オルタナティブ投資の特徴③価格変動リスクが高い
絶対収益追求型のオルタナティブ投資は、ハイリターンが狙える分、価格変動リスクも高くなる。
投資信託などで見られるベンチマーク(運用の基準)が設定されていない商品もあるため、値動きが予測しづらく変動要因を把握しにくい。
オルタナティブ投資の特徴④玄人向けの投資
証券取引所で売買されていない私募形式の投資商品は、公開されている情報(ディスクロージャー)が少ないことも多いので注意したい。
また、運用者へ支払う手数料の基準が高めに設定されていたり、換金タイミングに制限があったりと注意したいポイントが多数ある。
総じて、オルタナティブ投資は玄人向けの投資法と言えるだろう。
オルタナティブ投資を個人の資産運用に活かすポイント
多彩な投資先があり、公募されていない商品もあるなど、オルタナティブ投資は馴染みにくい印象を受けるかもしれない。
そのため、個人投資家の資産運用に活かすためには、いくつかのポイントを押さえるようにしてほしい。具体的には次のとおりだ。
金融機関などで取り扱っている投資商品から選ぶ
不動産なら賃貸物件の保有やREITや投資信託、コモディティなら貴金属の現物購入や投資信託、ETF、先物取引やCFD取引などでオルタナティブ投資ができる。
証券会社では個人が投資できるヘッジファンドやインフラファンド、デリバティブ商品の取り扱いもある。
預金やMMF、FX(外国為替証拠金取引)などで外貨を持つこともオルタナティブ投資のひとつである。
上記の投資商品や外貨は日本での取引実績が豊富にあり、商品説明も丁寧に行われていることが多い。
まずはこれらの金融商品から始めることをおすすめする。
私募形式のオルタナティブ投資は慎重に行う
一般公開されていない投資商品は投資先やリターン予測など魅力的なポイントが多い。
その分、自分には高すぎるリスクが隠れていることもある。商品内容を丁寧に把握し、納得してから投資しよう。
なお、オルタナティブ投資を検討するときは、事前に資産運用のプロからのアドバイスを受けるとよい。
「資産運用ナビ」に所属しているIFA(資産アドバイザー)はオルタナティブ投資に関する経験も豊富な方もいる。
個人投資家が見落としがちなオルタナティブ投資のリスクもきちんと指摘してくれるはずだ。
広義での「オルタナティブ投資」も視野に入れる
たとえば骨董品や腕時計、自動車などに投資することもオルタナティブ投資となり得る。
個人投資家は資産配分の自由度が高いため、金融商品以外の投資対象も選択できる。
まとめ
資産運用では分散投資が基本である。株式や債券など伝統的な投資商品でも資産分散は可能だが、オルタナティブ投資まで視野を広げてみることでさらなる運用効果を期待できる。
オルタナティブ投資は主に機関投資家や年金基金、政府系ファンドなどがリスクヘッジを目的に行ってきた手法であり、仕組みが複雑ではあるが、個人投資家にも十分チャンスはある。
資産形成における次の一手として検討してみてはいかがだろうか。
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