※本コラムは2023年4月12日に実施したIRインタビューをもとにしております。
トビラシステムズ株式会社は詐欺犯罪やグレーゾーン犯罪の被害をゼロにすることを目指し、迷惑情報フィルタサービスを軸に創業以来、成長を続けています。
代表取締役社長の明田篤氏に、事業の強みや今後の展開を教えていただきました。
トビラシステムズ株式会社を一言で言うと
テクノロジーで社会課題の解決に挑む会社です。
創業の経緯
創業前はソフトウェア会社で主に受託開発の仕事に従事しており、その後2004年にはフリーランスのエンジニアに転身いたしました。
個人事業主として取り組む中で徐々にいただく依頼が増えていったため、体制を強化するために2年後の2006年に今の会社を創業しました。
法人化してからも引き続き受託事業に取り組んでいましたが、リーマンショックを契機に受託業務が不安定となり、自社製品の開発へと転換いたしました。
ちょうどその頃、私の祖父が原野商法と呼ばれるほとんど価値のない土地を売りつける悪徳商法の被害に遭ってしまいました。被害のあと、悪質な迷惑電話が祖父にかかってくるようになり、国内の迷惑電話防止サービスを探したもののほとんど見つかりませんでした。
サービスがないなら自分で作ろう。
メールのフィルタリング機能に近いものが固定電話にもあれば、特殊詐欺や悪徳商法による被害を大幅に減らせるのではないかという発想に至り、迷惑電話フィルタ製品の開発をスタートさせました。
開発着手から1年後の2011年より迷惑電話フィルタ「トビラフォン」として販売を開始し、今でも多くの方々から好評をいただいております。
当初、完成した際には愛知県警と連携した実証実験を行うなど、注目度・信用度ともに順調なスタートを切ることができ、ここから当社の安定した収益源になると考えていました。
しかしながら盲点だったのが、詐欺に引っかかってしまう人ほどセキュリティへの意識が低いということでした。そのため、想定していたほどの売上を上げることができず、厳しい時期が続いていました。
このような状況下でターニングポイントとなったのが大手通信キャリアとの連携で、事業環境を一変させました。
当社の技術を、固定電話としてではなく、迷惑電話ブロックアプリケーションとして、スマートフォンユーザーへ提供することが可能となったのです。これにより安定した収益を得ることができ、会社の成長ドライバーとなりました。
事業内容について
主力となるのは迷惑情報フィルタ事業で、大別すると「モバイル向け」「固定電話向け」「ビジネスフォン向け」の3つがあります。
詐欺犯罪やグレーゾーン犯罪※の被害額はおよそ4兆円と推定されています。我々はこれをゼロにすることを目指しており、創業来売上高は一貫して前年度を下回ることなく成長してきました。
- グレーゾーン犯罪:犯罪として検挙されないもの・されづらいものであるが、生活者が生活を行う上で「迷惑、不快」と感じ「安心・安全」を脅かされる行為のこと。
モバイル向けフィルタサービスでは、迷惑電話や迷惑SMS、ユーザーにとって不快な広告などをブロックする機能を通信キャリアのアプリとして提供しています。
迷惑情報フィルタ事業の75%超を占めるメインビジネスで、当社の安定的な収益基盤となっております。
また、2021年10月に合同会社280blockerをM&Aし、不快な広告を表示させないアプリ「280blocker」も提供しています。
固定電話向けフィルタサービスは、不要な営業電話や詐欺電話を検知し、遮断するサービスを提供する事業になります。
プロトタイプの「トビラフォン」は外付け型でしたが、現在は機器内蔵型、ネットワーク型など、複数のタイプでプロダクトを提供しています。
そしてビジネスフォン向けフィルタサービスは、法人向けのサービスで、設置型の機器やクラウド型のビジネスフォンなどを提供しています。
「トビラフォンBiz」は迷惑電話対策だけでなく、聞き逃しや顧客とのトラブル防止に役立つ通話録音機能、通話履歴や電話帳などの管理をクラウドサーバ上で可能にする集中管理機能等、ビジネスフォンに必須なあらゆる機能を搭載しています。
さらに、今年の2月には新たにIVR(自動音声応答)機能を追加するなど、常に変化するニーズをとらえたPMF※を継続しながら、将来の収益の柱とするべく足元で注力している分野です。
- PMF(プロダクトマーケットフィット):商品やサービスが市場に適切に受け入れられている状態を指す言葉。
また、このように把握したニーズを、機動的に機能として開発していく実装力は、当社の高い技術力に裏付けされたものです。
2010年に迷惑電話フィルタ開発を開始して以来、長年蓄積されたノウハウがあり、また社内に多くのエンジニアも抱えています。
迷惑情報フィルタ事業における最大の強みは、我々が持つ迷惑情報データベースにあります。
2015年に警察庁との間で特殊詐欺電話に関する覚書を締結しており、実際に犯罪で使用されたと見られる電話番号等のデータを提供していただいております。
また、当社サービスの利用者数は1,500万人を超えており、ユーザーから膨大なログや統計情報も取得することができます。
加えて、電話番号やSMS・URLに関する自社独自の調査も実施しており、これがデータベースの優位性を維持・強化しています。
結果として当社サービスの利用者は増え続け、さらにデータベースの精度が高まるという好循環を確立できており、事業上のメリットと言えます。
中長期の成長イメージとそのための施策
モバイル向けフィルタサービスに関しましては、事業KPIの一つである月間利用者数の増加に取り組んでまいります。
あえて現状のボトルネックとなっている部分を挙げるとすると、それは当社サービスの認知度だと思います。マーケット規模としても、キャリアのオプションパックを契約済であり、追加料金なしでフィルタサービスをご利用いただけるユーザーが約4,020万人いるのに対し、足元の月間利用者数は約1,469万人です。
このため、それだけ認知度向上と開拓の余地は大きいと認識しています。
実際には、通信キャリアが営業およびマーケティング活動を実行していますので、月間利用者数の増加に向けて、当社はアプリの精度向上に努めつつ、連携強化にも取り組んでまいります。
加えて、MVNO事業者や金融機関などの複数領域へ当社の強みである迷惑情報データベースを展開したり、セキュリティ企業とも連携することで、より高い成長を実現できると考えております。
他企業との連携においては、そのプロダクトが元々持つストロングポイントをしっかりと引き継ぎつつ、当社が得意とする技術を組み合わせることで、高付加価値サービスを提供することを意識してまいります。
固定電話向けフィルタサービスですが、2025年頃にNTT東日本・NTT西日本の固定電話用信号交換機の維持が限界を迎えると言われております。そのため、中長期的には固定電話回線からIP電話への移行需要が増加するという追い風の外部環境があります。
IP電話契約者数は2022年公表データで約4,558万件の一方で、当社月間利用者数は44万人であり、まだまだ大きな開拓余地があると考えています。
現在はKDDI社との連携により、同社が全国のケーブルテレビ各社と提携しているオプションサービスとしての提供がありますが、引き続きケーブルテレビ利用者向けの販促活動を行いつつ、固定電話回線で高いシェアを占める、NTT2社に対する提案活動にも努めてまいります。
このような既存事業の成長余地、および安定的な売上の確保にぜひ注目していただきたいと思います。
また、中長期的な市場の拡大が見込まれるビジネスフォン向けフィルタサービスについても足元で順調に成長してきていますので、第2の収益の柱を目指す当事業にもご期待いただきたいと思います。
投資家の皆様の中には、迷惑電話や迷惑SMSをただブロックするだけの会社というようにイメージされる方もいらっしゃるかと思います。ですが、我々は高い技術力で、まだ誰も解決できていない社会課題を解決していく力を持った会社です。
M&A戦略等も進めておりますので、投資家の皆様におかれましても当社をそのようにご認識いただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
繰り返しになりますが、我々の優位性は迷惑電話フィルタサービスだけにとどまりません。
足元では、ユーザーに対するショートメッセージ詐欺対策分野において当社の高い技術力が証明できており、ビジネスフォン向けフィルタサービスも非常に順調に成長しています。
また、当社には、さらなる機能追加や新製品開発を電話に限らず開発していける優秀な技術者が多数在籍しています。
今後もテクノロジーで世の中の役に立つ製品を開発して利益を上げ、それをまた次なる成長に向けて投資することで、持続的な成長を実現したいと考えております。引き続き、当社の挑戦を応援していただけますと幸いです。
本社所在地:愛知県名古屋市中区錦2-5-12 パシフィックスクエア名古屋錦7F
設立:2006年12月1日
資本金:3億3,191万円(2023年1月末時点)
上場市場:東証プライム(2019年4月25日上場)
証券コード:4441