※本コラムは2023年5月23日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ゲームのデバッグ事業に始まり、現在はソフトウェア全般のテストに事業領域を広げている株式会社デジタルハーツホールディングス。
代表取締役社長CEOの二宮康真氏に、事業領域選択の背景や今後の成長戦略についてお伺いしました。
株式会社デジタルハーツホールディングスを一言で言うと
ソフトウェアテスト専門企業として、安心安全なデジタル社会を創造する会社です。
代表就任の経緯
新卒でUSEN-NEXT HOLDINGSに入社し、営業、個人向け事業の事業本部長、U-NEXTの立ち上げを経験しました。
U-NEXTが上場し、その後USEN社と統合するタイミングで前社長の玉塚氏からお誘いを受け、2017年に当社に入社しました。
当社は元々ゲームの不具合を検出する“デバッグ”を軸とするエンターテインメント事業を中心としていましたが、ゲーム以外の領域に事業を拡大することとなり、このゲーム以外の領域での新しい事業であるエンタープライズ事業の立ち上げに携わりました。
このエンタープライズ事業が軌道に乗り、安定的な利益創出も見込めるようになった段階で、玉塚氏から引き継ぐ形で現職に就任いたしました。
当社のターニングポイントは2017年の第二創業期です。
新たにエンタープライズ事業をスタートさせ、注力事業と位置づけました。立ち上げて以来、5年間のCAGRは50%以上と、第2の収益基盤となるまでに急成長しました。
もう一つのターニングポイントはまさに今年です。
エンタープライズ事業の中核子会社であるAGESTのスピンオフ上場の準備を開始することで、エンタープライズ事業の成長をさらに加速させること、およびエンターテインメント事業の再成長を目指しています。
事業内容について
1つ目は、今急成長しているエンタープライズ事業です。こちらはゲームに限らず、ソフトウェア全般の品質を、最先端のQA※技術を用いて検査する部門です。一般的なテストでは、システムやアプリケーションが完成した後に、仕様書通りに作られているのかという点を検証します。
- ※QA:Quality Assuranceの略。品質保証のこと
当社はそれに加えて、開発の上流工程においても品質の向上に努めます。グローバルに見てもこの工程にフォーカスしているテスト専門会社はあまりなく、当社の持つ独自性となっています。
このポジションは、人材、プロセス、技術の3本柱が支えています。
まず人材に関してですが、開発とQA両方の知見を持ち合わせた“次世代QAエンジニア”の層を、採用と育成の両輪で充実させています。
採用においては会社としてのブランド力を活かしています。
育成においては「AGEST Academy」という独自の教育機関を通じて、ISTQB※の創業メンバーをはじめとするソフトウェアテスト業界のエキスパートの知見を凝縮したカリキュラムを提供しています。また、産学連携による先端技術研究も人材育成に活用しています。
- ISTQB:International Software Testing Qualifications Boardの略。国際ソフトウェアテスト資格認定委員会のこと。
次のプロセスについてですが、ISO/IEC/IEEE 29119 (ソフトウェアテストの国際規格)という国際基準のプロセスに準拠したグローバルスタンダードなサービスの提供をしています。
技術に関しては、世界最先端のツールを使える環境を整備しています。国際基準のプロセスに加えて、我々独自のツールもありますので、これらを組み合わせてテストを自動化できるような仕組みを構築しています。
もう一つのエンターテインメント事業は、創業以来取り組み続けている部門です。コンシューマーゲーム、モバイルゲームの、様々なジャンルのデバッグをしています。
この事業においては圧倒的に市場占有率が高く、ブランディングにも成功しています。そのため、ゲームを含むエンターテインメント好きな方が自然と集まるということが当社の強みです。
当社はこの領域に2001年から取り組んでいるため、デバッグで培ってきたナレッジは膨大なものとなっており、それぞれのタイトルの傾向や特徴を熟知している人材が揃っています。
また、ハード面に関しても、スマートフォンやコンソールの保有量が非常に多いです。ハードの保有量がこなせるタスク量に直結しますから、優れた環境を整備できていることは大きなメリットになっています。
一番大きな優位性は、「デジタルハーツに入社すると発売前のゲームに携わる仕事ができる」というイメージが世に浸透しており、非常に強い採用力を保有している点になります。
このソフトパワー、ハードパワー、ピープルパワーの3要素で築かれた参入障壁は非常に大きいです。。
中長期の戦略イメージとそのための施策
当社は、エンタープライズ事業とエンターテインメント事業それぞれの成長ポテンシャルを最大化させるため、AGESTのスピンオフ上場の準備を開始いたしました。
今後は、エンタープライズ事業では成長スピードのさらなる加速を、エンターテインメント事業では安定成長フェーズから脱却し成長軌道への転換を目指してまいります。
特に、これまで事業拡大に注力してきたエンタープライズ事業では、テストアウトソース市場は国内だけでも1兆円以上の規模があり、海外にはこの数倍の規模があると考えています。
開発ニーズは増え、システムは複雑化しているにも関わらず、IT人材は依然として不足しています。そのため、専門性を持つ人が中心となって品質向上に努める必要があります。
幸いなことにデジタルハーツという名前には“ゲーム”という強いブランド力がありますが、それが原因となって「デジタルハーツホールディングスの傘下にあるAGESTという会社ならばゲーム関連の会社だろう」というイメージを持たれる傾向にあります。
そのため、優秀なエンジニアを集めたり、最先端の技術を有する会社というイメージをクライアントから持たれにくいという課題がありました。
また、マネジメントにも“ゲーム”とは異なるエンジニアの知見といった専門性が必要不可欠です。
今回、AGESTをスピンオフ上場することで、新たなブランドを構築し、エンジニアの採用力や、テック企業としてのマネジメント体制構築を行うことで、より成長スピードを加速させることができると考えています。
また、資本が独立することで、今まで以上にM&Aも積極的に行っていきたいと考えています。
これまで同様、エンジニアを確保するため、新しい技術獲得のためのM&Aに加え、今後は、国内のみならず、海外市場におけるM&Aも強化してまいります。
また、エンターテインメント事業では、デバッグのサービス品質を追求し、付加価値向上に努めるとともに、グローバル事業の拡大や、メタバース・NFTといった新たな領域に挑戦することで、さらなる成長を目指していきたいと考えています。
投資家の皆様の中には、テスト事業会社としての当社に多少の興味を持っていただいている方もいらっしゃるかと思います。
ですが、我々としては、ぜひとも会社の中身にも目を向けていただきたいです。
単純な“人だし”で価値を提供している企業は多くありますが、クライアントにとってそれが本当に正しいことであるとは限りません。
一人一人のスキルを高め、省力化しながら、上流工程において品質を上げることが最適であると我々は考えています。
上流工程から品質を効率的に上げるため、グローバルでも最先端の技術を持った集団であることをご理解いただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
ITの世界において、技術力のない会社は淘汰されます。人が持つ技術含めて、テクノロジーの進化にキャッチアップすることは重要です。その中で我々は、まずグローバルで最先端の品質技術を持った会社を目指します。その先にあるのは、世界No.1のQAカンパニーという姿です。
投資家の皆様には、当社が技術にこだわって会社を成長させる会社であることを認知していただき、応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都新宿区西新宿三丁目20番2号 東京オペラシティビル41階
設立:2013年10月1日
資本金:300,686千円(2023年3月31日時点)
上場市場:東証プライム(2013年10月1日上場)
証券コード:3676