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【3415】株式会社TOKYO BASE 代表取締役CEO 谷正人氏「中価格帯マーケットを攻めるグローバルニッチ戦略」

※本コラムは2023年7月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社TOKYO BASEは、現在5業態のセレクトショップとブランドを東名阪に展開し、その裾野は海外にも広がりを見せています。

グローバルニッチ戦略で差別化を図る同社のビジョンと挑戦について、代表取締役CEOの谷正人氏へ伺いました。

目次

株式会社TOKYO BASEを一言で言うと

「日本発を世界へ」をミッションに掲げ、日本のファッション業界の社会的地位向上を目指す会社です。

創業の経緯

当社は、「日本発を世界へ」というミッションを掲げ、2009年に創業いたしました。

従来のファッション業界は、主に海外の優れた商品を日本に輸入するという方向性で進んでいたのに対し、我々はその逆を試みることにしました。

最初の1号店として立ち上げたのが、「STUDIOUS」というセレクトショップで、日本の優れたブランドを集めたお店を作ることがスタートでした。

当初は新事業に取り組む社内ベンチャーとしてスタートし、成長を続けてきました。その後、現取締役CFO中水氏の共同でMBO(Management Buyout)の形で独立する道を選びました。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

ターニングポイント

大きな転機となったのは2015年の上場です。創業来目指してきた上場を果たしたことで、会社としての責任感はさらに高まりましたし、会社の視座もより上がったと感じています。

上場企業である以上、そこには大きな社会的責任がありますし、他の会社と比較・評価をされる環境に置かれます。

比較される競合企業とは時価総額や売上・利益規模といった面でも開きがありますので、上場を機にもう一段階も、二段階もステップアップし、これらの企業と肩を並べるよう努力していかなければならないと考えています。

そして、ただ単に儲かるだけの企業ではなく、社会的な存在意義を持つことが重要であると認識しています。

単なる収益追求だけでなく、社会に対してインパクトのある会社であり続けたいと願い、そのために、海外展開や新事業の開始など、さまざまな挑戦に取り組み今日まで事業を拡大させてきました。

マネジメントスタイル

経営においては、気を衒った派手さよりも、”あるべき論”を徹底するという地道な積み上げを重視しています。

一時的な成功や株価の上昇はともかく、真摯に業績に向き合い続けることが大切だと考え、今までもそして今後も愚直に成長を積み上げていく姿勢を大切にしていきます。

事業の概要と特徴

当社は現在、5つの異なる業態を展開しています。それぞれが独自のターゲットや商品テイストを持っており、多様な顧客層にアプローチしています。

まず、セレクトショップ事業として「STUDIOUS」と「THE TOKYO」の2業態を展開しています。

「STUDIOUS」は20代から30代を主なターゲットにしたトレンドセレクトショップであり、一方「THE TOKYO」は比較的富裕層の30代から40代を対象にしています。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

また、ブランド事業では3業態を展開しています。

「UNITED TOKYO」が20代をターゲットにしたALL MADE IN JAPANのモードブランド、「PUBLIC TOKYO」は20代を対象としたコンテンポラリーカジュアルブランドです。

そして、「A+ TOKYO」は20代から30代を狙った、機能素材やスポーツ素材を活用したアクティブブランドです。

今後も新たな業態を増やしていく予定ではありますが、現段階ではこれらの業態に注力しています。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

市場環境について

一口にアパレル業界と言ってもターゲットとする市場は各企業によってもちろん異なりますが、全体としては二極化が進行しており、業績の良い企業が伸び続け、落ち込んでいる企業は伸び悩んでいます。

エリアという面では、近年はコロナ禍によって外部環境が変動し、郊外の大型商業施設での需要が高まるといった傾向も見られましたが、足元では都心に集中する傾向が強まっています。

また、価格面では中価格帯のマーケットは徐々にシュリンクしており、価格の安いものと高いものに二極化していくと見られています。

そのような中、我々は、出店については都心部に注力していますが、価格面では中価格帯マーケットに注力するという逆張りの戦略をとっています。

不特定多数の人へ幅広くアプローチするのではなく、然るべきファン層の獲得を重視するグローバルニッチ戦略、とご認識いただければと思います。

事業の優位性について

世界的に成功している日本のアパレル企業といえば、ユニクロを思い浮かべる方が多いと思います。そして彼らは低価格帯マーケットを主戦場としています。

一方当社は、中価格帯以上の領域において、世界で成功できる唯一の可能性を持っていると自負しています。

我々の事業の最大の特徴は、何より「日本発を世界へ」というビジョンに基づき、日本の良いブランドや商品を海外へ発信していくというスタンスをとっていることです。

そのため、海外展開においても直営店を積極的に展開し、他社とは異なるアプローチをとっています。

他社が代理店やフランチャイズを活用する中、我々は日本の優れた商品を積極的に世界に提供し、直営店を通じてチャレンジしています。

足元、中国事業で苦戦を強いられる展開もありますが、この営業力やブランド開発のノウハウは、未来へ向けた当社の強みになると認識しています。

また、ECの売上比率の高さも特徴の一つです。もともと若い世代をターゲットにしたブランドを展開しており、加えてEC上での品揃え力が強いことが要因です。

さらに、都心集中型の出店戦略も相まって全体の生産性を高めることに貢献しています。

中長期の成長イメージとそのための施策

進行期の取り組みとしては、以下の2つの重要な要素があります。

まず、既存事業の収益性向上と新業態の黒字化です。これに関しては、粗利率の向上と既存店の強化が重要な戦略となっています。

セレクトショップ業態のオリジナル商品の強化や、在庫回転率の向上を図ることで収益性を高める取り組みを進めていきます。

また、新規出店に関してですが、2023年内は戦略的に抑制し、販売力の強化に集中する方針です。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

さらに、中国事業の強化にも注力しており、当社がこれまで培ってきた営業力や商品開発力を活かしつつ、現地需要を捉えた品揃えで成長を目指してまいります。

これら取り組みの鍵となるのは人材育成です。例えば中国事業の強化には営業力と商品力が不可欠であります。

ですが、中国で成功する日本のアパレルブランドほとんどないことからも、当社が必要とする人材の総数は非常に限られています。

そのため、中国で売れるメイドインジャパンの商品を作れるデザイナーや、当社の営業ノウハウを踏襲し中国で展開できる人材を、我々は自社で人材を育成し、これを成長に繋げていくことが重要であると認識しています。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

出店戦略について

2023年中は新規出店を抑制しますが、中長期的には引き続き出店を継続していきます。

当社の出店戦略は、日本は東名阪にエリアを絞り、感度の高い都市にドミナントで出店することを重視しています。

中価格帯以上の商品に敏感な顧客層が集まる場所に出店することで、営業力を担保し、成功の確率を高める戦略です。

そして今後は業態を増やしてさらに都心部での出店を進める過程では、現在の5業態にとどまらず、10業態、20業態とブランドやセレクトショップが増やしていくことも検討しています。

中国事業においても同様で、上海、北京、深セン、広州などのいわゆる一線都市に絞り、店舗展開を進めていきます。

また、現地のローカルEC事業も積極的に展開する計画であります。また2024年にはニューヨークでの出店も計画しています。

さらなる成長へ向けて

さらに長期的な目線では新規事業や大型M&Aを通じたさらなる成長を目指していきます。

新規事業の創出においては、我々の最大の強みである営業力と新ブランドの開発力を活かし、異なる年齢層やニーズをターゲットにした新たな業態を展開していきます。

M&Aについては、会社の規模がもう一段階大きくなったタイミングで、世界に誇れる有力なデザイナーズブランドや、業態を取得することを視野に入れています。

株式会社TOKYO BASE 2024年1月期 第1四半期決算説明資料 より引用

足元はコロナウイルス感染終了後の個人消費低迷にともなう中国事業の業績に不安を覚える投資家の方もいらっしゃるかと思いますが、改めて営業力やブランド開発ノウハウを武器に直営店で海外展開を続ける当社の成長性を、長期的な視点で考えていただければと思います。

自社で取り組んでいる分、苦しい部分もありますが、そこには見えない資産が存在していると感じています。

創業以来、我々は変わらぬ信念に基づいて着実に成長してきました。リーマンショック、東日本大震災、そして今回のコロナといった外部環境の変化にもしっかり立ち向かい、経営の軸はぶらさずに進んできました。

これは当社の強みであり、今後もビジネスモデルは進化させつつも、基本的な姿勢を変えるつもりはありません。

このような組織面の強みにも目を向けていただければ幸いです。

投資家の皆様へメッセージ

今日の市場において、安定的な成長を続けバリューも高い会社は、外部環境の変化にもぶれずに同じことを続けてきた会社であると思います。

繰り返しになりますが、我々は今後も進化を続けながらも、ビジネスモデルの大きな変更やピボットをするつもりはありません。

これまで当社が着実に成長してきた実績と、今後のさらなる成長への展望の双方に、ぜひご注目いただければ嬉しく思います。

株式会社TOKYO BASE

本社所在地:東京都港区南青山3-11-13 新青山東急ビル4F,10F,11F

設立:2008年12月12日

資本金:564,537千円(2023年4月30日現在)

上場市場:東証プライム(2017年2月17日上場)

証券コード:3415

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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