※本コラムは2023年9月13日に実施したIRインタビューをもとにしております。
小説・漫画投稿サイトを運営し、数々の人気作品を出版、近年では多数のアニメ化作品を生み出している株式会社アルファポリス。
代表取締役社長の梶本雄介氏に事業概要や中長期戦略を伺いました。
株式会社アルファポリスを一言で言うと
インターネットを軸とした次世代型の出版社。
さらにインターネットを軸とした次世代型のエンターテインメント企業となります。
創業の経緯
私は1993年に新卒で広告会社に入社しました。
その会社ではイベント業務に携わり、当時からいつか独立したいと考えておりました。
社会人になって3年目の1996年にインターネットが日本でも普及し始め、初めてインターネットに触れた際にこれは凄いメディアだと感じました。
自分の書いた文や撮った写真をインターネットに上げた瞬間に世界中の人がそれを見てくれることが可能となる。なんて凄いメディアだと。
インターネットは様々な世界にイノベーションを起こしましたが、その中でも私は元々好きだったエンターテインメントメディアとしての可能性に強く惹かれました。
そしてインターネットを使ったエンターテインメントビジネスを独立して立ち上げたいと感じるようになりました。
エンタメ関連では映画やTVなどの映像をはじめ様々なジャンルに興味がありました。
しかし、映像を作るのと書籍を作るのとではかかるコストが2桁3桁違います。
そのため、まずはインターネットで人気があるコンテンツを出版するビジネスから始めようと思い、2000年に当社を創業いたしました。
ターニングポイント
最初の転換点は2003年に当社の小説が連続TVドラマ化されたことです。
結果、本も10万部を超えるヒット作品となりました。そこで当社の存在が書店さんや、インターネットで小説・エッセイなどの作品を書き出版を目指す人に認知されました。
その後も、その時々にネットで人気のあるコンテンツを継続的に編集・出版し、ヒットさせながら成長してきました。
しばらくすると個々のネットで人気のある作品でなく、ジャンルを形成して人気となる作品群がネットに現れ始めました。
当時書店ではロマンス小説は海外の翻訳ものしかなかったのですが、ネット上で日本人同士のロマンス小説が爆発的に人気になり、それを立て続けに出版し、ヒットさせ、レーベル化しました。
次に、異世界ファンタジーものの小説がネット上で人気になり、これもレーベル化あるいはまとめて出版することで着実に成長していきました。
このように、当初は様々なジャンルの人気コンテンツにバラバラに対応していたところから、恋愛小説や異世界もののように、そのジャンルごと出版・ヒットさせ、今までなかった書籍化市場を創りあげていったことが2つ目の転換点です。
その後2014年の上場前後から、漫画事業に力をいれ始めました。
ライトノベルの市場は約300億円であるのに対して漫画の市場は3000億円以上あること、漫画は電子書籍との親和性が高いことを考えると、漫画の出版によりさらに成長できると感じていました。
当初はリソース・経験不足の部分もありましたが、事業は大きくなり現在は売上のシェアが70%にまで成長しました。
このように漫画事業を強化したのが3つ目の転換点です。
事業概要
当社は小説や漫画といったコンテンツを投稿する、自社運営のプラットフォームを持っています。
その中から人気のある作品や、出版したらヒットしそうな作品を調達して出版するというビジネスモデルです。
ある程度作品に人気が出ると、投稿者は出版申請が可能となります。
申請後、編集部が出版可能か検討します。また、毎月ジャンルを変えてWebコンテンツ大賞を開催しています。
多いときは3000以上の作品をチェックして出版できそうな作品を調達します。
また、調達した作品を、もちろんただそのまま文を整えて出版するのではなく、作品としての質を高め、ターゲット層にあうように狙いを定め、徹底的な編集・書籍づくりをし、市場に送り出していきます。
事業の強み
旧来型の出版社では、作家さんに原稿を依頼して、あるいは賞を開催するなどして、出版する作品を集め、選んでいきます。
それに対して当社は自社のネット上のプラットフォームで作品を調達することができます。
そのため、すでに流行に敏感なネット上で、読者に一定の支持を得た作品を継続的に調達することができ、さらに市場での販売力を高めるため、泥臭い編集作業にも非常に力を入れていることが当社の強みだと認識しています。
マーケット環境とそれに合わせた取り組み
出版業界は長く不況が続き、業界は縮小していました。
しかし、新興であり今までのやり方にとらわれない当社にとっては、逆説的に非常に良い環境だったと感じています。
ここ3、4年では、電子漫画が非常に伸びています。この市場の変化と同時に当社の漫画事業も成長してきました。
市場の変化は常に当社事業の成長の追い風で合ったと考えています。
また、当社はネットで人気のある小説をコミカライズして出版している作品が多いため、ネットで売り買いされる電子書籍市場との親和性が高いことも有利に働いています。
さらに、紙のリアル書店と異なり、電子書籍は各ストアによって売れる作品が大きく異なっているため、各々のストアに合わせてきめ細かくミーティングを重ねています。
ただし、電子ストアも競争が激しく、結果を出さないと当社の作品を押し出してもらえません。
そのため、電子でヒットする書籍を毎月必ず出すことで各ストアからの信頼を獲得してきました。
中長期の成長イメージとそのための施策
「小説・漫画投稿サイトとしての地位確立に向け、自社メディアのパワーを高める」というのが成長戦略の一番の方針です。
小説、漫画投稿サイトとしての地位確立
事業拡大の障壁は、インターネットを活用した事業がレッドオーシャン化していることです。
各出版社が自前の投稿サイトや漫画アプリを持ち始めるなど、ネットに力を入れ始めました。また、漫画作家の取り合いやライトノベル投稿者の取り合いも起きています。
さらに、出版社だけでなくゲーム会社も出版業界へ進出しており、出版業界の競争は非常に激化しています。
それに対する当社の優位性のひとつは、自社でエンジニアを抱えており、ほぼ100%自社開発・自社運営であることだと思っています。
判断が早く、またいつでも直接編集部や営業部と話を進められます。
当社はワンフロアで運営しており、声をかければすぐに集まって会議室でなくてもいたるところで打合せをすることができます。
このように他社に何か依頼する必要がなく、さらに非常に高い機動力を持つことが当社の強みとなっています。
さらに、新興の出版社であるため、今までの常識にとらわれないことを意識しながら経営してきました。
漫画や小説を編集してヒットさせることはそう簡単なことではありません。
変化の激しいネットからヒット作を出していくことを続けてきた。その風土や実績の蓄積は他出版社にはない大きな優位性となっています。
メディア化事業の強化
また、中長期の成長戦略で重要なのが、当社IPのメディア化事業の強化です。
アニメ化戦略は当社のメディアパワーやウェブサイトの影響力を向上させる上で非常に有効です。
ウェブ広告と比較してもアニメ化は非常に効果的です。
さらに事業を押し進めて、原作の出版社としてだけではなく、アニメ業界での地位確立も目指していきます。
当社の持つコンテンツはアニメと非常に親和性が高いです。また、これまで様々なアニメ業界のプレイヤーとの繋がりを確保してきました。
当社のIPのアニメ化実現のために力を入れ、着実に結果がついてきていると感じています。
製作委員会では他社との共同幹事で多額の出資を行っている作品もあります。
この取り組みによりアニメビジネスを当社の事業の一翼として位置づけ、ただ原作の書籍の売上増だけでなく、アニメ自体でのビジネスを拡大、収益を上げていくことを目指しています。
投資家の皆様へメッセージ
当社はインターネットを軸として、面白いものを皆様に届けるという信念を持ち成長して参りました。
今後さらに大きく成長していくために、今までのやり方にとらわれることなく、新しいもの・新しいビジネスに挑戦していきます。
非常に士気の高い社員が集まっていますので、ぜひご支援していただけたらと思います。