資産形成の王道は「長期・分散投資」といわれる。
株式や債券などの有価証券、不動産、金投資などが一般的な資産形成の手段だ。
近年は、暗号資産への投資も広がりを見せている。
そうした中、分散先の一つとして着目されつつあるのが「非上場株式」への投資だ。
非上場株式とは、文字どおり証券取引所に上場していない株式のことだ。
東海東京証券によれば、日本には500万社を超える企業があるものの、取引所に上場している会社は1%以下という。
非上場株式を視野にいれることで、投資対象としてのアセットクラスだけでなく、物色対象となる銘柄の選択肢も各段に広がる。
この記事では非上場株式の購入方法と取引の概要を紹介する。
最後まで読むことで、非上場株投資の魅力やリスクを理解できるはずだ。
非上場株式を購入する3つの方法
非上場株式を購入する方法は、
- 非上場の企業から直接購入
- 「株主コミュニティ」に参加して購入
- 株式投資型クラウドファンディングから購入
の3種類がある。
非上場の企業から直接購入する方法「顔が見える相手から購入」
従業員や取引先など会社関係者から購入する方法だ。非上場株式の伝統的な入手方法である。
株主コミュニティに参加して購入する方法「地元有名企業に投資」
株主コミュニティは「 非上場株式の取引・換金ニーズに応えることを目的として、2015年5月に創設された非上場株式の流通取引・資金調達の制度」だ。
制度が想定している参加者は、役職員、地域住民など、企業の身近な人々だ。
「株主コミュニティ」は各銘柄ごとに組成され、銘柄ごとに運営する証券会社が異なる。
株主コミュニティ 運営会員の取扱状況
年月日 | 運営銘柄数 | 運営会員数 |
---|---|---|
【年次】 | (単位:銘柄) | (単位:社) |
2015 | 11 | 2 |
2016 | 13 | 3 |
2017 | 16 | 3 |
2018 | 20 | 5 |
2019 | 19 | 6 |
2020 | 21 | 6 |
2021 | 29 | 7 |
2022 (8月26日現在) | 36 | 8 |
2022年9月現在、36銘柄の株主コミュニティが、野村証券、今村証券などを含む8社で運営されている。
どの銘柄の株主コミュニティを、どの証券会社が運営しているのかは、日本証券業協会のサイト内「株主コミュニティの統計情報・取扱状況」のページで確認できる。
「株主コミュニティの統計情報・取扱状況」のページには株主コミュニティの名称、運営する証券会社に加えて、コミュニティの組成日、参加者数、さらには約定価格などの取引情報が週次でまとめられている。
非上場株への投資を考えているのであれば、必ず目を通しておきたい。
- 引用:日本証券業協会「株主コミュニティ制度」
株式投資型クラウドファンディングで買う方法「新規案件も続々公開」
株主コミュニティと同様、株式投資型クラウドファンディングも2015年5月に創設された非上場株式の発行を通じた資金調達を行うための制度である。
2022年2月1日登録されている取引業者は以下の5社。
株式投資型クラウドファンディングは、非上場株式を購入する方法としては、もっとも簡便な方法だ。
株式投資型クラウドファンディングでの手続きは、ネット上ですべて完結する。
次々と新規案件も登場するので、物色対象の幅が広いことも魅力だ。
取扱業者名 | 加入日 |
---|---|
イークラウド株式会社 | 2020年4月24日 |
エンジェルナビ株式会社 | 2019年8月15日 |
株式会社CFスタートアップス | 2017年9月1日 |
株式会社FUNDINNO | 2016年11月1日 |
株式会社ユニコーン | 2019年2月1日 |
2016年に加入、2017年に国内初のサービスを開始した株式会社FUNDINNO(ファンディーノ)社のユーザ―数は11万人。累計成約金額は88億円にのぼるという。
増加トレンドにある成約額からは、非上場株への投資が注目を集めていることがよくわかる。
今後の拡大も期待されるところだ。
非上場株投資って儲かるの? 投資詐欺との見分け方は?
非上場株投資は、買値の1.5~2.0倍で売却する人が多い
上場株の利益確定方法は、市場での売却によるものが大半だ。
非上場の場合は、事業会社による一部買付、ファンドからの買付による利益確定(=出口)も一般的である。
大手株式型クラウドファンディングサイト「ファンディーノ」社によれば、このケースの場合の投資リターンは1~3年で1.5倍程度だ。
一方、同社が運営する非上場株式取引サービス「FUNDINNO MARKET」で売却した場合の実績としては、最大10倍、おおむね1.5~2倍程度であった(2022年9月調査)。
非上場株式は、流動性・株価の変動が少ない
上場株式とは異なり、機関投資家などの大きな資金量をもつマーケット参加者がいない。
クラウドファンディングサイトで購入する場合は「All-or-Nothing方式」が採用されていることも多い。
この場合は投資家からの需要金額が目標額に達しないと購入できない。買いたい時に買えるとは限らない点には注意が必要だ。
同様に売却(出口)の機会も限定されている。
個別企業がサービスとして展開している売買サイトでの売却を除くと、リターンが得られるのは、事業会社による買付、ファンドからの買付に応じる場合などだ。
売買が活発ではなく、流動性が低い。結果として株価の変動も少ない。
非上場株式は倒産する?詐欺案件も耳にするけれど・・・
投資上限金額が1企業あたり50万円なのは、倒産確率を考慮?
非上場株式の中には、いわゆるベンチャー企業とよばれる新興の企業も多い。
ベンチャー企業は成長が著しい一方、倒産や解散の確率が高いと言われている。
1企業に対する投資金額の上限が50万円となっているのも、こうしたことが背景になっているものと思われる。
投資詐欺は、金融商品取引業者との取引に限定することで防げる
「数年後に上場するから、今のうちに株式を買っておくと儲けが出る」
非上場株式を素材にした投資詐欺のはなしが時折持ちあがる。非上場の取引ができるには発行企業の他に、登録を受けた金融商品取引業者(証券会社)だけだ。
日本証券業協会のサイトで該当する金融商品取引業者を確認してから投資をしよう。
記載された証券会社から購入することで、投資詐欺にあう確率は圧倒的に低くなる。
税制優遇 「エンジェル税制」
ベンチャー企業への投資を推進するために、エンジェル税制という制度がある。
優遇措置を受けるには、「ベンチャー企業要件」「投資家要件」両方の要件を満たす必要がある。
条件に適合すれば購入・売却両方のタイミングで優遇措置を受けられる。
非上場株式へ投資する際には、自分の取引が該当するのかをまず確認後に取引をスタートさせたい。
非上場株への投資は情報収集が肝
本稿で、非上場株の3つの購入方法や、取引の概要や注意点を紹介した。
株式投資型クラウドファンディングサイトに掲載される案件は、成長著しい企業が多い。
しかしながら、すべての企業が順調に成長するとは限らない。
業績が良好になる過程では、会社存続が危ぶまれるような局面に見舞われることもあるだろう。
そのような時に必要なのは、該当企業に対する情報や決算の分析、業界に対する基礎的な考え方・データだろう。
企業を自力で見定めるのに不安がある方は、「資産運用ナビ」に相談をしてはいかがだろうか。
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