※本コラムは2024年1月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社ODKソリューションズは教育・金融・医療業界等のシステム開発を担う会社です。
大学受験ポータルサイト「UCARO®」の提供を中心に、「データに、物語を。」というコーポレートメッセージの下、新たな世界の創出に挑戦しています。
代表取締役社長の勝根秀和氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社ODKソリューションズを一言で言うと
60年の歴史を持つ「老舗のITベンチャー」です。
ODKソリューションズの沿革
創業経緯
当社は1963年に創業し、IT企業として長い歴史を持っています。
創業時は大阪証券金融(株)グループとして親会社向けの証券金融業務に関わるシステム開発を行い、その翌年からは大学入試業務を受託し始めました。
そして2000年代初頭からは、大学入試のWeb出願サービスの提供を他の業者に先駆けて開始しました。
上場と経営危機
2007年3月、グループ会社だけではなく一般企業にも事業を拡大することを目的に、ヘラクレススタンダード市場(現東証スタンダード市場)に上場しました。
しかし2013年の日本証券金融(株)と大阪証券金融(株)の合併、グループ解体に伴って、売上が半減の危機に直面してしまいました。
そこで教育事業と証券・金融事業に専念することを決断し、従業員を守ることを第一優先に、細部にわたる経費削減に努めました。
業績の回復と新サービスの展開
事業の見直しとコストカットの結果、2016年には業績が回復し、大学受験ポータルサイト「UCARO®」の提供を開始しました。
その後は着実に大学入試業務を中心に売上を伸ばし、2020年12月に東京証券取引所第一部(現東証プライム市場)に上場しました。
なお、現在は事業規模や成長戦略の観点から東証スタンダード市場に移行しています。
ODKソリューションズの事業の概要と特徴
概要
当社のコア事業は4つです。
1つ目は、大学受験ポータルサイト「UCARO®」を中心とした教育関連サービスです。
「UCARO®」は大学に代わって受験の出願から合格発表、入学手続きに至るまでをシステムで一元管理することができる、プラットフォームサービスです。
これまで各大学が個別で作っていたシステムを大学横断型のシステムとして提供することにより、コストの削減と管理の簡素化を実現しました。
2つ目は、証券会社のバックオフィス業務に利用するシステム、IFA事業者向けの証券管理システム、証券保管振替機構との接続システムなどの金融関連サービスです。
3つ目は臨床検査システムを扱う医療関連事業、そして4つ目は2022年度に事業譲受により開始をした、人材育成サポート事業です。
事業における優位性
参入障壁の高い業界で存在感
当社がサービスを提供している各業界は非常に参入障壁が高く、長い歴史を持つ我々には大きなアドバンテージがあります。
これまで大学入試、証券・金融、臨床検査システムなど、信頼性が求められる業務のシステム受託を通じて、データを安全に処理する技術を蓄積してきました。
例えば、「UCARO®」という教育関連サービスは、学生の出願や入学手続きといった重要な時に活用されます。
そして当社は60年にわたり関西の大手総合大学の入試業務を手がけ、業界で最も多い志願者データの処理実績を持っています。
このように、長年培ってきたシステム構築のノウハウと各業界との高い信頼関係は優位性の1つです。
独自性の高いサービスの展開
教育関連での「UCARO®」は、サービスの独自性と信頼感から約110の国公立・私立大学に導入されています。
このプラットフォームでは、大学と受験生・保護者を繋ぐことで、保護者アカウントから受験の状況を確認できるなど、保護者の要望にも応えるサービスです。
さらに金融関連では、地場の証券会社やIFA事業者等の顧客に対して独自性の高い金融ソリューション「SAKIX サキガケ」を提供しています。
証券市場は制度変更が頻繁にあり、変動が激しい業界です。
当社のシステムであれば、他社製品と比較して顧客の事業規模やニーズに応じたカスタマイズが容易にでき、かつ低コストで提供可能です。
このような柔軟性も、当社のサービスが多くの金融機関に採用されている理由の1つです。
ODKソリューションズの中長期の成長イメージとそのための施策
目指す世界観
テクノロジーの進化とともに、人と企業、人とモノが現実でもインターネットの世界でも、自由に繋がる世界がくると考えています。
これはWeb3.0の考えに基づいており、個々人に関するリアルな情報の活用が増えると考えています。
そして情報の共有が進むにつれて、収集されるデータを個人の実際の価値として使いこなし、自分の手で将来を形作るような世界を我々は目指しています。
そのためにも既存事業・新規事業ともに専門性の強化に取り組んでいきます。
新事業ポートフォリオの推進
まず、4事業における事業ポートフォリオを拡大させていきます。
例えば、個人の体験を価値化して成長を応援するWeb3.0サービス「アプデミー®」については、電通グループと共に実装に向けた研究を進めています。「アプデミー®」は、日常の体験実績を NFT でデジタル化することで、生涯にわたる学習歴の証明や、蓄積したデータを自身の資産として活用する世界観の実現を目指しています。
2023年12月からは、体験実績NFTと生成AIを用いた大学生向けキャリア支援に向けたエージェント・システムの実証実験を近畿大学にて行っています。
これはほんの1つでしかありませんが、教育関連や金融関連事業を中心に新たなサービス開発に注力していく方針です。
グループシナジーの創出
今後、当社は子会社3社とのグループシナジーを高めていきます。
特に、(株)ポトスが持つ専門知識や、Web3.0サービス「アプデミー®」を通じて得た情報を集めて、共感や共同創造を支援する分野での新たなビジネスの可能性を探っています。
その取り組みの1つとして、新しいサービスとして「キャリポート」の提供を開始しました。
「キャリポート」は、大学1、2年生からキャリア体験機会を提供し、その体験を企業(採用)ブランディングに転換する新しいブランディング支援サービスです。
大学生は低学年から様々なキャリア・社会体験に参加し、社会とのつながりを得ることができます。
また、体験を証明するバッジの蓄積を通じて自身の取組みを可視化することで、目指す将来像の実現に向けて必要なスキルを身につけることができます。
このように、当社のグループ内で持っている経営資源を共有し、活用することで更なる事業の成長を目指します。
M&A・アライアンスの推進や人的資本投資
成長戦略を早く実現するために、不足している経営資源を外部との関係を強化することで補います。
例えば人材に関してですが、私たちは常に、「人が中心(まんなかに、人)」の人事方針を採用してきました。
新しいシステムやサービスの開発は人によって行われます。
そのため、従業員の成長を重視し、長期的に働いてもらえる環境を提供することに注力しています。
欧米ではジョブ型採用が普及していますが、当社はメンバーシップ型雇用にジョブ型要素を組み合わせ、専門性が求められる職務に柔軟に対応する制度を目指しています。
当社は単にシステムを構築するだけでなく、その運用を継続することも大切にしているため、人材育成に力を入れているのです。
また、人的資本の強化だけではなく、その他の不足している技術などに関してはM&Aや業務提携を通じて強化していきます。
注目していただきたいポイント
当社は60年以上、教育関連のシステム構築や運用に携わってきました。
特に大学入試のシステムにおいては国内トップシェアを持ち、小規模ながらも受験生の半数以上が使うサービスを提供することは大きな強みです。
これは、インターネットが広く普及する前から先取りしてシステム開発に着手していたことも大きな理由の1つです。
また、今後は受験生だけではなく就活生に対してもサービスを展開していきます。
人生の大切な決断の時に携わってきた当社は、今後もテクノロジーの進歩を先取りして新しい世界観を実現できるよう事業拡大に努めてまいります。
我々は長い歴史を持つ老舗のIT企業ですが、常にベンチャーの精神を持ち続けています。
この点にぜひ注目してください。
投資家の皆様へメッセージ
当社は長い歴史を持つIT企業として、信頼と実績により機密性の高い大量データ処理に強みを持つと自負しています。
投資家の皆様への還元も積極的に行い、過去4年間で個人株主数が4.6倍に増加しましたが、株価はまだ当社の成長を反映していない状況だと考えています。
2023年の3月期の実績では4.19%から5.86%の株主優待等を含めた総合利回りを実現しました。
当社の目指す世界観と事業の成長に期待していただけると嬉しいです。
本社所在地:大阪府大阪市中央区道修町1-6-7 JMFビル北浜 01
設立:1963年4月1日
資本金:637,200,000円(2023年9月30日時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2007年3月8日)
証券コード:3839