※本コラムは2024年1月29日に実施したIRインタビューをもとにしております。
Hamee株式会社はクリエイティブ魂に火をつけるプロダクトやサービスを展開する企業です。
主にEC展開をサポートするネクストエンジンとiFaceを中心としたプロダクトの製造から販売を行っています。
代表取締役社長の水島育大氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
Hamee株式会社を一言で言うと
クリエイティブ魂に火をつけるプロダクトやサービスを展開する企業です。
Hameeの沿革
創業経緯
1998年に現会長の樋口が学生時代に天然石のストラップの販売をはじめたことが創業のきっかけです。
そしてEC店舗を立ち上げて、売上を伸ばしていく際に大きな壁にぶつかりました。
楽天、ヤフー、自社サイトなど複数のEC出店を行っていく中でバックオフィスの業務が非常に煩雑になっていました。
煩雑なオペレーションを効率化するために様々な外部システムを試しましたが満足いく結果が得られなかったため、自分たちが使いやすいものを作ってしまおう、ということで自社システムの開発に至りました。
そして2007年11月に自社内で運用を開始し、使えることが実証されたので、2008年5月にECの多店舗展開に特化したネクストエンジンの外部へのサービス提供を開始しました。
スマートフォンの台頭と上場
携帯からスマートフォンへの移行に伴い、利用者数が増加する中で、事業はさらに成長しました。
またネクストエンジンにおいては、システム利用料金を基盤としたビジネスモデルで、EC市場の成長と共に拡大していきました。
2016年頃、私たちはiFaceというスマートフォンケースのブランドを、韓国の会社から事業譲渡の形で取得しました。
これまでの主要なビジネスモデルは、商品を仕入れて販売するという商社的なアプローチでした。
しかし、iFaceの取得を機に、自社で商品の企画・開発を行い、それを販売するという新たなモデルへとシフトしました。
これは商社からメーカーへの転換という、事業モデルの根本的な変化を経験した瞬間だったと考えています。
分社化とNEの拡大
プライム市場への変更を経験した後、事業は順調に成長を続けました。
そして2022年8月にネクストエンジンを中心としたプラットフォームセグメントを、NE株式会社として分社化しました。
さらに2023年7月にはこの新会社をIPO(株式公開)させる計画を発表しました。
当社のネクストエンジンは約6,000社の顧客が利用しています。
今後さらに独自性を追求し、多数のユーザーが直面する課題への解決策を提供するためにスピンオフすることで、更なる成長を目指しています。
Hameeの事業の概要と特徴
概要
当社の事業は大きく分けて2つのセグメントに分けることができます。
1つ目はプラットフォームセグメントで、ネクストエンジン事業、コンサルティング事業、ロカルコ事業が主力事業です。
まずネクストエンジン事業では、在庫の一元管理や、ルーティン作業を自動化することによる業務効率化を支援する、SaaS型EC Attractionsを提供しています。
またコンサルティング事業では、顧客のECに関わる業務に対してあらゆる角度からサポートしています。
そしてロカルコ事業では、ネクストエンジンで培ったノウハウを活かして法令に則ったふるさと納税に関わる運営業務をサポートしています。
2つ目はコマースセグメントで、モバイルライフ事業、ゲーミングアクセサリー事業、コスメティクス事業、グローバル事業を展開しています。
主なブランドとしては、スマートフォンアクセサリーのiFace、ゲーミングモニターブランドのPixio、韓国コスメブランドのByURがあります。
また海外向けには、誰でも手軽に音を出せる新しい楽器のオタマトーンなどを販売しています。
事業における優位性
ネクストエンジンへの高い信頼性
当社のネクストエンジンは非常に低い解約率を実現しています。
これはECの黎明期から早期にネクストエンジンをリリースし、自社製品を扱うHameeをモデルとしながら、高い製品クオリティを維持することができているためです。
また、解約する顧客のほとんどはEC事業からの撤退や事業の倒産等が多いという点も特徴です。つまりEC事業を続ける限りネクストエンジンはやめられない、という事実の裏返しの訳です。
楽天市場やAmazonなど複数の店舗に販売する業者がほとんどなので、ネクストエンジンはどの業者にもリーチできるサービスです。
このネクストエンジンの低い解約率は、顧客からの高い満足度とともに継続的なストックを積み上げることにも繋がっています。
製造から販売までワンストップのサプライチェーンとブランディング力
当社は製造から販売までワンストップで行うことができるメーカーとしての側面も持ち合わせています。
また、当社の従業員は若年層に向けた製品の企画において非常に長けており、高いブランディング力も持ち合わせています。
例えばスマートフォンアクセサリーブランドのiFaceはスマートフォンの普及とともに、若年層中心に広がりました。
この圧倒的な認知度を誇るブランドを作り出すためのノウハウを蓄積しているため、新しいブランドの立ち上げにも強みがあります。
ワンストップで製造から販売まで実現できる体制が、高速にPDCAを回すことに寄与し、ブランディング力の向上に繋がっています。
Hameeの中長期の成長イメージとそのための施策
分社化による経営資源の集中とスピンオフ
これまでコマース事業とプラットフォーム事業の両方を同時に推進し、両事業間のシナジーを重視して発展させてきた経緯があります。
しかし、事業の発展に伴い、それぞれのビジネスモデルが変化してきました。
2022年に各事業が独自の成長戦略を追求するために分社化し、今後はNE株式会社がスピンオフIPOを目指していきます。
その意図としては組織再編による株主価値の最大化、ガバナンス強化、意思決定の迅速化をしていきたいという狙いがあります。
2025年中の東証への上場申請を目標にしていきたいと考えています。
プラットフォーム:利便性向上と新規顧客の開拓
全てのコマース事業者とスモールビジネスをサポートし、顧客の成長を促進することを目的としています。
我々は、ネクストエンジンを核とするバックオフィスツールと、成長支援を具体化するコンサルティングサービスを組み合わせることで、一体的なソリューションを提供することを基本戦略としています。
この戦略の一環として、基本利用料を月額10,000円から3,000円に引き下げました。
これにより、特に小規模なEC事業者にとってシステムの利用がしやすくなりました。
ネクストエンジンの課金体系は受注処理件数に応じた従量課金制を採用しており、利用者の成長が直接我々の売上向上に繋がります。
しかし、ECが上手く行かずにサービスを解約する事業者もいるため、コンサルティングサービスを通じた成長支援でこの問題に対処し、事業撤退を減少させることを目指しています。
コマース:自社ブランドの育成と拡販
現在、新規事業の中でコスメ事業が顕著に成長しており、これを事業の第二の柱として確立させることに力を入れていきます。
当社の韓国コスメブランドのByURは韓国発のブランドiFaceとのシナジーを考えて企画しましたが、単体での成長が大きく見込めます。
今後はブランド価値を高めていくために、ECでの販売戦略に加えてオフラインでの販売にも注力し、積極的に拡販していく方針です。
海外展開では、アメリカ市場向け商品が好調で、低反発雑貨スクイーズなどのおもちゃの成長性があると考えています。
また海外での生産や開発拠点として、韓国に「Hamee global inc.」があり、アメリカ市場を対象とした「Hamee Us,Corp.」、中国市場向けに「Hamee Shanghai Tech & Trading Co.,Ltd.」があり、今後の成長可能性に期待できます。
注目していただきたいポイント
それぞれのビジネスの高い成長性に注目していただきたいです。
まず、プラットフォームセグメントについてですが、EC事業はコロナ禍を経ても特殊な動向を見せましたが、基本的には高成長を維持していると認識しています。
ネクストエンジンは、6,000社という広大な顧客基盤を持っており、この強みを活かして市場成長率を上回る成長を目指しています。
コマースセグメントに関しては、しばしばiFaceだけと見られがちですが、製品の企画から販売まで一貫して自社で行っている点においては大きな強みがあります。
現在はスマートフォンケース、コスメティクス、ゲーミングアクセサリーを展開しており、これらの分野でのブランド強化に向けた経験とノウハウを活かすことができると考えています。
これからのスマートフォン市場の変化に対しても、私たちは強固なビジネスモデルを持っており、この変化を乗り越えられると確信しています。
投資家の皆様へメッセージ
我々はプラットフォームセグメントとコマースセグメントの両軸で高成長を続けております。
プラットフォーム事業では6,000社を超える顧客基盤、コマースセグメントでは製品開発から販売までを一貫して手掛ける強みを持っています。
これからも市場のニーズを捉え、革新的なサービスとワクワクするような製品を提供していくことで、投資家の皆様の期待に沿えるような成長を実現して参ります。
本社所在地:〒250-0011 神奈川県小田原市栄町2-12-10 Square O2
設立:1998年 5月22日
資本金:598,262,000円(2024年2月アクセス時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2015年4月20日上場)
証券コード:3134