- 退職金の手取り額の正確な計算方法がわからない
- 退職金受け取り時の税金と控除の仕組みを理解したい
- 退職金の最適な活用術と管理方法を知りたい
退職金は、長年の勤務の集大成とも言える報酬である。
しかし、その手取り額はどのように計算されるのか、税金や控除はどう影響するのか、さらには受け取った後の管理をどうするべきか、退職金に関しては様々な疑問がつきないだろう。
そこでこの記事では、退職金の基礎知識である手取り額の計算から、受け取り時の税金対策、効率的な活用法についてを徹底解説する。
ぜひ参考にして、退職金を最大限に活用するためのガイドラインとして役立ててほしい。
退職金の手取り額の求め方
長い時間をかけて得られる「退職金」だが、金額が大きいが故に「手取り額はいくらになるかな…」と不安に感じる人も多いのではないだろうか。
ここでは、退職金に対して発生する税金について解説していく。
退職金で発生する「退職所得」の求め方
まとまった金額を得られる「退職金」だからこそ、納めなければならない税金額がいくらになるのか気になるだろう。
理解を深めていくために、「退職所得」について学んでいこう。
「退職所得」は、10種類ある所得のうちの1種類だ。
会社から得た退職金が対象になり、他の所得に比べると差し引ける金額(控除)が多い傾向にある。
上記の式を使えば、退職所得を求められる。
退職所得控除については下記で紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
退職所得控除額と税金額の求め方
ここでは、退職所得控除と税金の求め方を解説する。
自分の状況に合わせて実際に計算し、イメージを深めてみよう。
退職所得控除額の求め方
勤務した年数が19年以下 | 40万円×勤務した年数 |
---|---|
勤務した年数が20年以上 | 800万円+70万円×(勤務した年数-20年) |
40万円×15年=550万円
参考②:勤務した年数が30年のBさん
800万円+70万円×(30年-20年)=1,500万円
税金の求め方
ここで言う税金とは、「所得税」「復興税(復興特別所得税)」「住民税」を指す。
所得税 | 得た収入に対して発生する税金 【求め方】退職所得×税率-控除 |
---|---|
復興税 (復興特別所得税) | 2037年まで、東日本大震災の復興財源として納める税金 【求め方】所得税額×2.1% |
住民税 | 都道府県と市町村に納める税金 【求め方】退職所得×10% |
復興税は所得税額に税率をかけるので、計算する際は注意しよう。
なお、所得税の税率は課税対象額によって違うため、下記の表を参考にしてほしい。
課税対象額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97万5,000円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
退職金の手取り額の求め方
実際に手取り額を求める流れを解説していくので、どのように求めていくのか流れをつかんでいこう。
今回は、以下の条件で得られる手取り額を求めていく。
- 金額
- 2,000万円
- 勤務した年数
- 35年
- 受け取り方
- 一時金
流れ | 求め方 |
---|---|
①退職所得の控除額を求める | 800万円+70万円×(35年-20年)=1,850万円 |
②退職所得の金額を求める | (2,000万円-1,850万円)×2分の1=75万円 |
③所得税・復興税・住民税を求め、合計する | 所得税:75万円×5%-0円=3万7,500円 復興税:3万7,500円×2.1%=787円 住民税:75万円×10%=7万5,000円 所得税+復興税+住民税=11万3,287円 |
④退職金から税金を引いて手取り額を求める | 2,000万円-11万3,287円=1,988万6,713円 |
以上の流れで手取り額を求められるので、実際に得た金額や予想金額で求めてみてはいかがだろうか。
退職金の手取り額が変わる?受け取り時の税金と控除の仕組み
ここでは、退職金を受け取る際の税金と控除について解説していくので、理解を深めていこう。
退職所得とは
「退職所得」について理解するために、「所得税」について把握しよう。
「所得」とは、その年の1月1日〜12月31日までに得た利益から必要経費を差し引いた金額を引いた金額を指す。
そして、その金額に対して発生する税金を「所得税」と呼ぶのだ。
上記「退職金で発生する「退職所得」の求め方」でも紹介した通り、所得にはさまざまな種類がある。
では、具体的にどのような種類があるのだろうか。
名前 | 対象所得 |
---|---|
給与所得 | 給与・賞与など |
事業所得 | 卸売業・製造業・サービス業などの事業から得た所得 |
利子所得 | 預貯金から得た利子など |
配当所得 | 株主が受け取った配当金など |
不動産所得 | アパートを貸して得た収入(家賃)など |
一時所得 | 懸賞金・生命保険の満期保険金など |
譲渡所得 | 土地・建物などの資産を譲り受けたとき |
山林所得 | 5年以上所有していた山林で得た所得など |
退職所得 | 退職する際に得た退職金 |
雑所得 | 年金や上記に当てはまらない所得 |
このように、得た収入の種類によって当てはまる種類が変わる。
種類によって、税金の求め方が違うので注意しよう。
「退職所得」とは、上記表で解説している通り会社を退職する際に得られるお金が対象になる。
今までの努力が評価されたお金でもあるため、通常の給料と同じ扱いにするのは公平ではないと考えられている。
そのため、退職所得は他の所得よりも差し引ける金額(控除額)が大きいのだ。
手取りを増やしたい方必見!退職所得から控除できるもの
「医療費控除」「社会保険料控除」などのキーワードを聞いたことはあるだろうか。
所得から差し引ける(控除)のことで、うまく活用すると節税効果を発揮できるのだ。
控除を利用することで所得を減らすことで、最終的に納めなければならない税金(所得税)を減らせる。
では、どのような種類の所得控除を活用できるのかを一部紹介していく。
名前 | 内容 |
---|---|
医療費控除 | 被保険者(配偶者)などの「医療費」を支払った際に、一部の金額を差し引ける |
生命保険料控除 | 「生命保険など」の保険料を、一部金額分差し引ける |
社会保険料控除 | 被保険者などの「社会保険料」を、一部金額分差し引ける |
地震保険料控除 | 被保険者が加入している「地震保険料」の一部金額分を差し引ける |
寄付金控除 (ふるさと納税) | 国や地方自治体等に対して「特定寄付金」で支援した際に一部金額分差し引ける |
このように、所得から差し引ける保険料などがあるので、積極的に使っていくと退職金を最大限生かせるだろう。
【退職金の受け取り方別】税金対策のポイント
節税対策を意識する際に最も注目してほしいポイントは、退職金の「受け取り方」についてだ。
退職金には受け取り方が2種類あるので、以下の表を参考にしてほしい。
一時金形式 | 一時金形式で受け取ると、「退職所得」に該当する 【求め方】(退職金額‐退職所得控除)×2分の1 ※控除:上記「退職所得控除額と税金額の求め方」を参照 |
---|---|
年金形式 | 年金形式で受け取ると「雑所得」になり、受給期間中は控除を超えた金額分の税金を納める 【求め方】公的年金等:受給金額-公的年金にかかる雑所得の金額※控除:下記表を参照 |
年金形式での控除額
年齢 | 受給金額 | 公的年金等にかかる雑所得の金額(合計金額) |
---|---|---|
64歳以下 | ~60万円 | 0円 |
61~129万円 | 受給金額-60万円 | |
130~409万円 | 受給金額×0.75-27万円5,000円 | |
410~769万円 | 受給金額×0.85-68万5,000円 | |
770万円~999万円 | 受給金額×0.95-145万5,000円 | |
1,000万円~ | 受給金額-195万5,000円 | |
65歳以上 | ~110万円 | 0円 |
111~329万円 | 受給金額 -110万円 | |
330~409万円 | 受給金額×0.75-27万5,000円 | |
410~769万円 | 受給金額×0.85-68万5,000円 | |
770~999万円 | 受給金額×0.95-145万5,000円 | |
1,000万円~ | 受給金額-195万5,000円 |
以上のように、受け取り方によって控除される金額が変わるため、個人の状況などに合わせてどちらの方法を選ぶかを考えるといい。
退職金の平均額と注意点
平均的に、どれくらいの退職金を受け取ることができるのだろうか。
ここでは、全体的な平均額だけではなく勤務した年数別にも紹介していく。
受け取る際の注意点も解説するので、ぜひ今後の参考にしてほしい
退職金の平均額は?
学歴と退職理由で金額が違うため、以下の3つの表を参考にしてほしい。
学歴別
退職理由 | 大学・大学院卒 | 高校卒※事務・管理・技術職 | 高校卒※現業職 |
---|---|---|---|
定年退職 | 1,983万円 | 1,618万円 | 1,159万円 |
早期優遇退職 | 2,326万円 | 2,094万円 | 1,459万円 |
会社都合 | 2,156万円 | 1,969万円 | 1,118万円 |
自己都合 | 1,519万円 | 1,079万円 | 686万円 |
勤務年数・企業規模別:会社都合
勤務年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 52万円 | 27万円 |
5年 | 89万円 | 49万円 |
10年 | 214万円 | 122万円 |
15年 | 404万円 | 215万円 |
20年 | 665万円 | 328万円 |
25年 | 1,005万円 | 466万円 |
30年 | 1,368万円 | 605万円 |
35年 | 1,669万円 | 758万円 |
42年 | 1,925万円 | 849万円 |
勤務年数・企業規模別:自己都合
勤務年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 31万円 | 19万円 |
5年 | 52万円 | 36万円 |
10年 | 138万円 | 91万円 |
15年 | 289万円 | 171万円 |
20年 | 557万円 | 273万円 |
25年 | 863万円 | 397万円 |
30年 | 1,197万円 | 533万円 |
35年 | 1,546万円 | 673万円 |
42年 | 1,679万円 | 742万円 |
以上の金額が平均額になるので、「どれくらいの退職金を得られるのか」を判断するための1つの基準として活用してみてはいかがだろうか。
勤務年数は退職金の手取り額に反映されるのか?
結論から言うと、勤務した年数は退職金に反映されるケースが多い。
一般的には3年以上働いた人に退職金が支払われる傾向にあり、勤務した年数が長ければ長いほど得られる金額は増額していくことが上記「退職金の平均額は?」の表を見ると分かるだろう。
しかし、「必ず勤務年数が長い人の退職金は高額になる」とは言えない。
なぜなら、会社オリジナルのルールによって金額が決められているためだ。
各ルールに合わせて、年数・退職理由・今までの成績などさまざまなポイントから判断されるケースが多いのを理解しておこう。
退職金を受け取る際の注意点
受け取る際に注意すべきポイントを紹介していくので、実際に受け取る際はしっかりと確認してほしい。
①通常は確定申告不要
通常、会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出するため、申告書を提出した人は確定申告をする必要がない。
②還付金を受け取れる可能性あり
①で紹介した「退職所得の受給に関する申告書」を提出しなかった人は、多く税金を支払っている可能性があるため、確定申告を行うと還付金を受け取れる可能性がある。
③短期間の勤務で退職金を受け取るケースは要注意
5年以内の勤務で退職金を受け取る場合は、一時金で受け取ったとしても通常の退職所得控除を受けられないので要注意だ。
- 役員として勤務(特定役員退職手当等)
- 退職金-退職所得控除
- 従業員として勤務(短期退職手当等)
- 退職金が300万円以下:(退職金-退職所得控除)×2分の1
- 退職金が300万円超え
- 150万円+{退職金-(300万円+退職所得控除)}
手取り額から増やすことは可能?退職金の管理法と活用術とは
退職金をうまく活用することで将来の生活が豊かなものに変わるため、まとまった金額を得たタイミングで資産運用を行うことが重要だ。
ここでは、退職金を活用する方法などを中心に紹介していくので今後の役に立ててほしい。
退職金の賢い活用例
「今まで頑張ったから」と、退職金を使って旅行などの趣味にお金をかけたいと考えてしまう人も多いだろう。
しかし、まとまった金額だからこそ、うまく活用することがおすすめだ。
では、具体的にどのような方法があるのかを解説していく。
おすすめの活用方法
貯蓄型保険 | 養老保険などの貯蓄性が高い保険に加入し、解約返戻金・満期保険金を受け取る方法 |
---|---|
定期預金 (退職金向け) | 預入期間に応じて利息を受け取れる方法退職金向けの定期預金の場合、金利が高めに設定されているものもある |
個人向け国債 | 固定金利3年・5年、変動金利10年から選べ、金利0.05%が最低保証されているため、コツコツと資産を増やせる方法 |
投資信託 | プロが投資家の代わりに運用を行うため、投資初心者でもチャレンジしやすい方法 |
不動産投資 | アパートや家などを貸し、家賃収入を得る方法不動産価格が上がれば売却することもできる |
株式投資 | 配当金を受け取る・株主優待を受けられる・株式の購入時と売却時の差額で利益を得られる方法 |
上記方法は「すべての人におすすめの方法」ではないため、どの投資方法が自分に合っているかをしっかりと見極めよう。
退職金を活用した資産運用の必要性と効果
退職金を資産運用するべき理由は「お金が増えるから」ということだけではない。
ここでは、具体的な理由や得られる効果を紹介していく。
①資産を「現金」として保有することはリスクになる
「〇〇投資」というキーワードを聞くと、「損してしまうのでは?」と不安に感じる人も多いだろう。確かに、株式投資などは元本割れ(購入価格よりも価値が下がること)リスクがあるため、しっかりとした専門知識が必要になる。
だが、資産の100%を現金に振り分けてしまうこともリスクにつながるのだ。たとえば、昨今の低金利状態において現金のみを保有することにはインフレリスクがあると言える。
②長生きするために、お金を備える
医療技術は進歩しているため「人生100年時代」と言われるほど、寿命が長くなると予測されている。
何歳まで生きるか分からないからこそ、長生きするリスクに備える必要があるのだ。
経済的に安定した生活を送るには、将来のことを見越した上で退職金を計画的に資産運用する方がいいだろう。
③目標を達成する
個人によってさまざまな目標があるが、具体的な例を挙げると以下の通りである。
- ローンの返済をしたい
- 公的年金を繰り下げ受給したいため、受給するまでの期間を退職金でまかなう
- 老後の生活を豊かにしたい
- 子ども(孫)の金銭的なサポートをしたい など
退職金を活用して資産運用を行うと、上記のような目標を達成しやすくなるので、ぜひ行って欲しい。
退職金の運用にIFAを活用するメリット
資産運用といっても、個人の資産・家族構成などさまざまな状況によって最適な方法は異なる。
そのため、どの手段を選ぶかは非常に重要だ。
また、すべての資産を100%同じ資産にしてしまうのもリスクがあるため、ベストな割合を考えなければならない。
しかし、投資の知識がない人などからすれば、選ぶことが難しく感じるだろう。
そこでおすすめしたい方法は、「IFA」に相談するということだ。
IFAとは、資産運用に関する知識を深く持ち合わせており、リアルな事情を知っているからこそさまざまな視点から最適な提案ができるプロフェッショナルのことを指す。
退職金は高額になる傾向にあるため、よりよい選択をしたいと考えている人には特におすすめしたい方法である。
「資産運用ナビ」では、安心して任せられるIFAを検索できるサービスを提供しているので、ぜひ活用してほしい。
退職金の手取り額は勤続年数と受け取り方で変わる
退職金の手取り額の求め方は専門的な知識が必要になるが、1つ1つの計算は難しくないため、丁寧に解いていけば求められるだろう。
退職金の受け取り方法には「一時金形式」と「年金形式」の2種類あり、ベストな方法は個人の状況により分かれる。
そして、退職金は定期預金・国債・投資信託などの方法を活用するのがおすすめだ。退職金を活用した効率的な資産運用は、将来の生活を安定させるだろう。
IFA検索サービス「資産運用ナビ」を活用して自分に合ったアドバイザーを見つけることが、よりよい将来への第一歩になるので試してみてはいかがだろうか。