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【4415】株式会社ブロードエンタープライズ代表取締役社長 中西良祐氏「安定と成長の2軸でマンション管理をスマート化する」

※本コラムは2022年10月27日に実施したIRインタビューをもとにしております。

差別化が難しいとされる通信の領域で、ネットとセキュリティの掛け合わせで優位性を確立してきたのが株式会社ブロードエンタープライスです。代表取締役社長の中西良祐氏に足元の現状や今後の成長戦略を伺いました。

目次

株式会社ブロードエンタープライズ一言で言うと

賃貸マンション向けビジネスを展開しており、マンションオーナー様向けには「マンション経営における収益最大化の支援」、管理会社様向けには「マンション管理のDX化支援」を行なっている会社です。

創業の経緯

大学時代に飲食店を経営していたこともあり、卒業後もいつかは起業したいという思いがありました。

新卒では教材販売会社、その後NTTの代理店である通信会社に勤めましたが実務経験を基に2社を比較した際、通信領域の方が比較的参入障壁が低く、また営業力も教材販売に比べるとそこまで高度なものは必要ないという認識がありました。

さらに自分自身にある程度のノウハウも溜まっていたため、このタイミングで一度チャレンジしてみようと思い、2000年に創業しました。

とはいうものの勢いのみで独立してしまったこともあり、当時は家賃以外どん兵衛にしかお金を使わないようなギリギリの生活でした。とは言ってもどん兵衛は好きなので苦ではなかったですが。

また、NTTの3次代理店としてスタートしてから2年後、取引先の2次店に売上を持ち逃げされるという悲劇が起きました。ビジネスモデル上、キャッシュフローが回るまでに3ヶ月ほどのブランクがありましたので必死に食い繋いだという経験もしました。

振り返ってみて、事業が大きくスケールした転換点は、主力サービス「B-CUBIC」の料金体系を初期費用0にしたことです。

契約するとマンションのインターネット工事をしますので、業界では「初期費用80万円、毎月の保守費用1万円、6年契約」のような型が一般的です。しかしながら、通信業界はなかなか差別化ポイントがありませんので、相見積もりを取られると各社利益を削って単価を下げていき、最終的にどこかの業者が受注するような状態でした。

収益性も悪いですしもっと簡単に受注できないものかと考えた結果、初期費用を頂かない代わりに保守費用を毎月2万円とするプランを作り提供するようになりました。

マンションオーナー様にとっても初期費用やそのためのローンやリースの審査が一番のネックになっていることが多かったため、当社はたとえ新卒の営業員がお客様のところに伺っても、見積書をお出しすれば料金プランで圧倒的な差別化要因となり他社に勝てる仕組みを作ることに成功しました。上場を実現できたのも、これがあったからと言っても過言ではないと思います。

株式会社ブロードエンタープライズ 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

また、上場を目指したきっかけは、事業展開を描いた上での華々しいものではなく危機感を抱いたことが一番の原因でした。

2018年頃、10年来の仲であった同業ギガプライズさんの役員と食事に行く機会があり、上場企業かつ会社規模の違いがありながらも、取り扱うインターネット機器の価格差に衝撃を覚え、これでは全く価格競争ができないと感じました。

また同年に上場されたファイバーゲートの猪俣社長とは元から親交があったのですが、彼も上場を目指すようなタイプではないと思っていたのに、突然上場を目指していき上場したことです。

二つの出来事を通じ、当初は全くその気がなかった上場に対し、業界の大手に入らなければいけないという危機感に動かされ、2019年から本格的に準備をしていったのでした。

事業内容について

二つに大別でき、一つ目は入居者無料の高速インターネットサービス「B-CUBIC」です。通常個人が負担する通信契約料をマンションオーナー様に負担してもらい、消費者から見た物件価値を向上させることで収益最大化をサポートします。2005年にスタートさせ、現在全国約7000棟、15万室に導入いただいている当社の主力サービスです。

この事業で全国のマンションオーナー、管理会社様とのネットワークができていますので、クロスセルでIoTサービスを提供しているのが二つ目の事業です。2021年リリースのスマートカメラをはじめ、マンションのエントランスをオートロック化させるための「BRO-LOCK」、さらには宅内をIoT化するサービスなどを展開しており、一棟まるまるスマートマンション化実現を目指し、今後もプロダクトを拡充していきます。

株式会社ブロードエンタープライズ 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

「B-CUBIC」の一番の強みはやはり初期費用0の料金設定です。先に費用を頂かなくとも、金融機関に売上債権を売却し現金化することで導入工事費用を当社で負担しています。この債権流動化の仕組みは上場企業を含め他社では真似のできない仕組みとなっています。

また、最近では地域の管理会社様との連携を通じ全国展開を加速させております。全国に4600社ある管理会社様のうち、契約があるのはまだ700社程ですので、新規開拓で数を増やすことはもちろんのこと、当社にはクロスセルできるIoT商品が多くありますから一社あたりの単価を引き上げることも重要な要素であると考えています。


株式会社ブロードエンタープライズ 2022年12月期 第2四半期決算説明資料
より引用

新築デベロッパーさんとの提携も並行しているのですが、少子高齢化の観点から今後は新築物件も従前と比較するとそこまで建たないと予測されており、供給量にこだわったビジネスモデルよりも、一棟あたりを深掘りすることで成長していけると考えております。

また、当社の事業領域全体のマーケット環境としては、コロナ禍における物件価格の高騰および利回りの低下、外国人投資家による都心物件への投資の加速、地方での深刻な空室率の悪化等の複数の課題があり、物件の価値を高めるための当社のサービスやプロダクトには今後も大きなニーズが集まるでしょう。

先ほど新築物件の戸数について触れましたが、そうは言っても今も毎年約35万戸が新たに建設されています。これも先ほど申し上げた通り、今後日本はさらに少子高齢化が進行していきますので一定量が継続的に供給されながら需要は減っていくという、物件所有者には厳しい状況に対して、当社の存在価値が高まっていくと思います。

さらに別の観点では、行動制限の緩和や大阪万博、IR(統合型リゾート)計画などで観光客のみならず留学生等日本に住みたい外国人も今後増加する見通しです。彼らが入居する際の障壁となりうる個人ベースでのネット契約を「B-CUBIC」で代行し、またマンションオーナーにとってもスマートカメラやオートロックの導入で治安の問題を解決することができます。そのような意味でも、ネットとセキュリティの組み合わせが物件にとってより一層必要になると考えております。

中長期の成長イメージとそのための施策

IoTサービスを拡大させ、高い成長率を維持、具体的にはCAGR30%以上を今後も実現していきます。そのために、管理会社様だけでなくリフォーム会社様など自社でインターフォンを販売しているような企業様と提携しておりまして、当社の商品を代わりに販売していただくようなモデルも増やしていく方針です。

株式会社ブロードエンタープライズ 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

Wi-Fiネットワーク市場全体の中で、当社のコアビジネスにあたる領域の算出はなかなか難しく、5年後にマーケットシェアを何割まで増やします、と表現しにくいのが事実です。

しかし、私が注目していただきたいのは「B-CUBIC」事業におけるストック収益の部分です。収益認識基準の適用により、従前イニシャルで売上を計上していた分はなくなりましたが、代わりに契約最低期間の6年に渡り計上されることで全社的なストック割合が増加しています。

株式会社ブロードエンタープライズ 2022年12月期 第2四半期決算説明資料 より引用

少し具体的に申し上げますと、現在1棟あたりの単価が月額約2万円であり、年間2000棟の契約をとると売上が4000万円となりまして、そこから最低でも6年間は28.8億円という数字が未来に渡って確定していることになります。IoTサービスに比べて地味な成長率ですがバカにならないのが当事業のストック収益です。

さらに、契約期間の6年終了後も9割のお客様には継続して利用していただいております。解約される1割のお客様は取り壊しや物件売却等の理由ですので安定性があるとご理解いただけると思います。

また、「B-CUBIC」事業においては現在約5000名のマンションオーナー様と繋がりを持っておりますので、さらに長期的な目線では日本最大かつ唯一のマンションオーナープラットフォームを立ち上げたいと考えております。

オーナー様には物件を買いたい、売りたいというニーズが常にありますし、そういった方々向けに賃貸住宅フェアを開催するなどのアプローチをしたいと考えている周辺業者様も巻き込んで、売買ニーズのマッチングや、広告事業、さらに仮想空間での住宅フェアの開催等を展開できないかと考えています。

来期以降、年間2000棟の新規契約を掲げておりますので、約1500人の新たなオーナー様が毎年増えていくイメージです。この数字をしっかりと達成するためにも他社様との連携を進めていくことが重要であると考えております。

投資家の皆様へメッセージ

当社の強みは「B-CUBIC」事業での安定性とデバイス事業での成長性の2軸で成り立っている会社であるという点です。IoTサービスの成長率ばかりに目がいってしまうかもしれませんが、伸び代があるとはいえ人力で成長させていく必要があることも事実です。

また、当社の経営の軸は人のために何ができるかを実現していくという経営理念にあります。上場し、株主様という新たなステークホルダーができた当社は、今後も2つの事業を通して企業価値向上のため邁進してまいりますので、是非とも中長期的な応援をお願いいたします。

株式会社ブロードエンタープライス

本社所在地:大阪府大阪市北区太融寺町5-15 梅田イーストビル9階

設立:2000年12月15日

資本金:751,459,200円 (2022年11月アクセス時)

上場市場:東証グロース(2021年12月16日上場)

証券コード:4415

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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