※本コラムは2024年2月14日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社クラダシは「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」をミッションに社会課題でもあるフードロスをビジネスとして解決していく会社です。
代表取締役社長の関藤竜也氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社クラダシを一言で言うと
日本で最もフードロスを削減する会社です。
クラダシの沿革
創業経緯
私が新卒で入社したのは商社で、いわゆる直線経済1、つまりリニアエコノミーを基盤とするビジネスを行っていました。
1998年から2000年にかけて中国に駐在していました。
世界からより商材を安く大量に輸入し、安い労働賃金で大量に加工・製造させ、メイドインチャイナとして大量に輸出していく、まさに中国が「世界の工場」といわれていた時代でした。
この流通のプロセスの中で、規格外商品を含めた莫大な廃棄物が生じることに直面し、これが放置されればやがて環境問題へと発展することを痛感しました。
そこで2014年にフードロスを削減するために当社を設立しました。
社会全体でのSDGs意識の高まりと上場
我々は「ソーシャルグッドカンパニーでありつづける」というミッションの下、2014年7月の設立以来、ビジネスを通じて社会課題の解決に取り組んでいます。
フードロス削減に対する取り組みは、2015年2月のサービスローンチから始まり、SDGsが制定されるよりも先駆けてスタートしました。
そして2019年10月1日に施行された食品ロス削減推進法により、自治体や企業がフードロス削減に対応していく気運も高まりました。
さらに、大手メーカーなどへのアプローチをしていくために必要な社会的信用を得ることを目的に上場を目指しました。
そして2023年6月30日に東証グロース市場に上場を果たしました。
クラダシの事業の概要と特徴
概要
当社は、B Corp2認証を取得してIPOを果たした日本初の企業です。
国内で13番目に認証を受けた事例であり、取得時点では日本のB Corp認証企業で二番目に高いスコアを取得しました。
このB Corpの基準を満たしながら、事業を展開している点が特徴となっています。
事業内容はフードロス削減という大きな社会課題に特化し、主に食品メーカーと消費者のマッチングプラットフォームを運営しています。
そこで3つのソーシャルグッドなサービスである、ソーシャルグッドマーケット「Kuradashi」、「Kuradashi Hub」、「Kuradashi Stores」を展開しています。
主に取り扱う商品は、賞味期限が迫った食品や規格外、季節商品などの理由で廃棄になる可能性のある商品です。
商社、メーカー、卸問屋まで幅広く取引先としてフードサプライチェーンをカバーしています。
事業における優位性
特徴的なビジネスモデル
人々は美味しいものを思う存分楽しみたいと考えますが、それを我慢してまで社会支援を行うということは、持続可能な行動とは言えません。
「Kuradashi」では、消費者が商品をお得に購入しつつ、その購入金額の一部が社会貢献に役立てられるシステムを提供しています。
例えば被災した地域への支援や動物保護など、さまざまなSDGs関連活動に貢献することができます。
この仕組みは、消費者にとっては金銭的な面でもお得感があり、さらに社会への貢献という形での人徳も得られるわけです。
これが私たちのコンセプトに対して多くの方から賛同を得ることができている理由となっています。
また企業にとってはクラダシと連携することにより、ブランドイメージが向上し、ECを通じたBtoCのマッチングを促進しています。
私たちはこのノウハウを活かして、オフライン販売を行う「Kuradashi Hub」や企業向けのマーケティング・ブランディング支援事業「Kuradashi Stores」事業を展開しています。
このように、私たちのビジネスモデルは、消費者にも、取引企業にも、そして社会全体にも利益をもたらしています。
参入障壁が高い1.5次流通での事業展開
1.5次流通はクラダシの大きな強みですが、その運営には難しさが伴います。
なぜなら流通プロセスの細部に至るまで理解を深めること、食品ロスの商品を扱うためメーカーと直接取引が重要になるからです。
現状のサプライチェーンでは、メーカーと小売の間には多数の卸問屋が存在し、商品が消費者に届くまで非常に複雑なものとなっています。
当社はこのような既存の流通構造を変革しようと現在のビジネスモデルを考えました。
このビジネスモデルを行う上で、企業のサプライチェーンを正しく理解し、当社が在庫を抱えるビジネスとなるため適切なコスト感覚やマネジメント能力が必要です。
そこで当社には商社やサプライチェーンに関わるスペシャリストが数多く所属しています。
この専門性を兼ね備えた人材とビジネスモデルによって、消費者は楽しく、かつお得な買い物が可能になり、三方良しのソーシャルグッドマーケットを実現しています。
クラダシの中長期の成長イメージとそのための施策
EC事業の拡大
企業と消費者の双方向に様々な施策を展開することで、EC事業を拡大させていきます。
例えば、商品の大量購入がハードルとなっている消費者向けに、より手軽に購入できるよう、「えらんでKuradashi」小分け販売のサービスも導入しています。
これによって、より多くの消費者がクラダシを利用しやすくなり、ユーザビリティの向上を図ります。
また、出品メーカーへは賞味期限切迫商品の一括買取を案内するといった様々なソリューションを提供し、様々な課題を抱えている新たな企業を出品パートナーとして獲得していきます。
このようにパートナー企業と会員の潜在ニーズを引き出していくことで、更にフードロス削減に関わる市場を開拓していきます。
サプライチェーンにおける機能拡張
2つ目の戦略として、サプライチェーン機能の拡張に注力しています。
ECマーケティングサービス・OMOサービス
まずマーケティングに対しては、「Kuradashi Stores」として、オンライン販売やブランディングのノウハウを提供するコンサルティングも行っていきます。
さらに販売チャネルを強化するために、オフラインショップの展開も行っています。
2023年にたまプラーザ テラスにて店舗をオープンしました。
この店舗設立の最大の目的は、オンラインとオフラインの融合を実現し、消費者からの直接のフィードバックをオンライン戦略に活かすことにあります。
フルフィルメントサービス
今後は、商品販売データの可視化を進め、賞味期限やイベントごとの消費者行動を分析することで、より精度高いサプライチェーン戦略を展開していく予定です。
これにより、環境に配慮した商品のブランド訴求や、サステナブルな素材利用など、新たなマーケティング戦略も展開できるようになります。
また、EC市場における食品販売の遅れを逆手に取り、2024年問題を含む物流の問題解決に貢献する取り組みも強化していきます。
倉庫管理や賞味期限管理をはじめとするサービスを通じて、フードロスを発生させない商品供給の実現を目指しています。
PB商品の開発
プライベートブランド戦略として、新たな商品開発にも注力しています。
これまで蓄積してきたダイナミックプライシング機能での食品ECで培ったデータを活用し、需要予測や新商品開発などのサプライチェーン上流にもアプローチします。
そのトライアルとして、食品事業者の未利用食材や低利用魚などを加工・製品化し、PB商品として「つくってKuradashi」を販売しています。
今後はこの購買データを活用して、新たな商品開発や商品の改善などにも役立てていきます。
非連続な成長のためのM&A
3つ目の成長戦略はM&Aです。
我々は既存事業の領域において、現在のパートナーとの関係を強化し、相乗効果を生み出して事業の成長を目指しています。
そのうえで、必要なリソースの確保や開発に時間がかかる分野において積極的にM&Aを活用することで新たな機会を模索していきたいと考えています。
注目していただきたいポイント
当社のターゲットの市場である、1.5次流通に注目していただきたいです。
環境省の実証事業を踏まえて算出したフードロス市場の総市場規模(TAM)は、約8500億円に達しています。
これは、当社の事業にとってまだ大きな成長の余地があるということです。
我々はこの機会を活かし、フードロス削減のインフラとして成長する準備をしています。
目指す方向性としては、それぞれの事業をミルフィーユのように重層化し、事業の多角化を図りながら非連続的な成長を目指していきます。
最終的な目標は、1.5次流通の提供価値を最大化し、フードロスを可能な限りゼロに近づけることです。
この戦略により、フードロス問題の解決に貢献し、持続可能な社会づくりに向けて成長し続けていきます。
投資家の皆様へメッセージ
当社の取り組みは、従来のボランティア活動とは異なり、ビジネスの手法を用いて社会課題の解決を目指しています。
これがソーシャルビジネスと呼ばれる理由です。
フードロスの削減は、国も注力している分野であり、我々の事業が拡大すればするほど、社会に対する貢献も大きくなります。
投資家の皆様には長期的な視点でのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。
本社所在地:141-0021 東京都品川区上大崎3-2-1 目黒センタービル 5F
設立:2014年7月7日
資本金:310,080千円(2024年3月アクセス時点)
上場市場:東証グロース市場 (2023年6月30日上場)
証券コード:5884
- 大量生産・大量消費・大量廃棄の一方通行の経済のこと。
出典:経済産業省 資源循環経済政策の現状と課題について ↩︎ - 「B Corporation」の略称で、米/ペンシルベニア州に拠点をおく非営利団体B Lab (Bラボ)が運営する、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度のこと。ガバナンス、従業員、コミュニティ、環境、カスタマーの5つの分野から構成される評価を受けることが認証条件となる。株主に限らない、すべてのステークホルダーに対する利益へのコミットメントが求められる。
出典:クラダシが国際認証「B Corp(B Corporation)」を取得~日本の企業としては13社目 ↩︎