※本コラムは2024年2月19日に実施したIRインタビューをもとにしております。
コーア商事ホールディングス株式会社は「ジェネリック医薬品のベストパートナー」として変化する社会に対応し、加速する超高齢社会で必要とされる医薬品企業であり続けます。
代表取締役社長の首藤利幸氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
コーア商事ホールディングス株式会社を一言で言うと
「New Business Model Innovation」を実現する会社です。
コーア商事ホールディングスの沿革
創業経緯
創業者の首藤利幸が1970年に留学したころ、留学先のカナダにはジェネリック医薬品がすでにありました。
同じ効果があるなら価格が安いジェネリック医薬品の方が良いと漠然と考えていましたが、起業を考えたとき、高齢化が進む日本ではジェネリック医薬品が大きな意味を持つと確信しました。
また、海外(主にイタリア)に多くの友人がいて、コーア商事の起業の際には背中を押してくれました。
事業拡大と上場
2011年に注射剤に60年、凍結乾燥技術に40年の経験を有するイセイ(現コーアイセイ株式会社)とコーア商事が資本提携しました。
この提携は微量でも摂取すると人体に強い薬理作用をもたらす、高薬理活性領域のジェネリック注射剤の市場成長を見込み実現しました。
そして2015年に、さらなる飛躍を決意し、コーア商事ホールディングス株式会社を設立し、原薬販売事業と医薬品製造販売事業の2つのセグメントを持つグループとなりました。
また2016年には、コーアイセイ蔵王工場が竣工され、2018年東証二部へ新規上場しました。
その後2022年にはプライム市場に上場変更しています。
2024年2月に蔵王産業団地内に医薬品倉庫(常温・保冷)を竣工し、2026年6月にはプレフィルドシリンジ製造専用の蔵王第二工場が竣工予定です。
コーア商事ホールディングス株式会社の事業の概要と特徴
概要
医薬品原薬1の輸入・販売を行う「原薬販売事業」と医薬品の製造販売や製造開発受託、また製剤の包装受託を行う「医薬品製造販売事業」があります。
原薬販売事業では、開発の初期段階から原薬メーカー様に対し、特許を回避した製法の提案をしたり、日本の市場予測を提供したり、日本当局の査察基準に適合する管理体制の指導など、安心・安全な原薬の提案をしています。
また、輸入した原薬は、安定供給のため国内3か所の倉庫で保管され、自社施設である医薬分析センターにて最先端の機器を用いた厳しい品質管理を行ってから出荷しています。
そして品質試験方法・規格の確立から、当局の審査対応までサポートする事で、製薬会社様の開発業務の負担軽減も担っていると自負しております。
医薬品製造販売事業では、長年の注射剤製造経験と凍結乾燥技術を活かし、内服薬とバイアル・アンプル・シリンジの3剤形の注射剤を製造しています。
事業における優位性
原薬販売事業の強み
ジェネリック医薬品の市場は約1.3兆円あり、そのうち輸入原薬(外国から輸入される医薬品の材料)を使用している製品が半分以上を占めています。
ジェネリック医薬品に使われる原薬の市場規模は正確には分かりませんが、原料のコストや毎年行われる薬の価格改定の影響を考慮すると、市場全体の約20%を占めていると推測されます。
当社の原薬販売事業は、2023年6月の時点で売上が約160億円あります。
また輸入原薬を扱う商社は約90社ある中で、この数字は当社が原薬販売市場で高い地位を占めていることを示しています。
特長的な注射剤を製造する設備
一般的に注射剤は、直接体内に入れるため、非常に高い品質が必要です。
また、安全な輸送のために、国内で製造されることが望まれます。当社グループは60年以上にわたり、このような注射薬を製造してきた長い経験があります。
蔵王工場では治験薬から最終製品まで製造可能で、少量多品種、高薬理活性、高品質・安全性を実現しています。
さらに注射剤は、錠剤に比べて量が少ないため、製造への投資を決めるのが困難ですが、既に蔵王第二工場への投資を決定しました。
この新しい工場では、プレフィルドシリンジという高薬理無菌製剤の量産が可能です。
プレフィルドシリンジとは、あらかじめ薬液が充填された状態の注射器のことで、感染予防と医療安全向上の観点から医療従事者にとって有用とされており、このような付加価値を備えた特長のある注射剤です。
グループシナジー
当社は商社とメーカーの2つの機能を併せ持つ独自のビジネスモデルを構築しているため、グループ内の連携により一貫したプロセスで受託が可能です。
コーア商事は海外原薬・製剤メーカーから原薬・製剤輸入や医薬分析センターを活用し品質分析や高品質な医薬品を安定して製造するためのプロセスを確認して検証、手順化するバリデーションを行います。
その後コーアイセイで開発・受託製造を行い、コーアバイオテックベイで製剤の包装受託を行います。
このように当社はワンストップで原薬・製剤輸入から製造まで行うことができる事業体制を確立しています。
コーア商事ホールディングス株式会社の中長期の成長イメージとそのための施策
現在は原薬販売事業が基盤となり、グループ全体の利益構成が高くなっておりますが、今後、医薬品製造販売事業が成長することで、中長期的には両事業の利益規模が同等になることを目指しています。
その実現のためにも2つの事業領域で以下のことを推進していきます。
原薬販売事業
当社は原薬販売事業で、ジェネリック医薬品の原薬を輸入する商社から、より幅広い医薬品を扱う専門商社へと成長を目指しています。
この目標達成のため、私たちはジェネリック医薬品だけではなく、長期収載品2やAG(Authoraized Generic)3への進出も図っています。
さらに、医療技術の進歩により、治療法はより多様化し複雑化しており、個別化医療の需要も高まっています。
このような状況を「モダリティ4革命」と捉え、中分子医薬品5、再生医療、遺伝子治療などの新しい分野にも対応することで、ジェネリック医薬品業界内での私たちの役割を拡大していきます。
また、サプライヤーとの関係強化と品質管理の徹底を進め、より信頼される事業展開を目指します。
医薬品製造販売事業
まずジェネリック医薬品については、政府が目標としてきたジェネリック医薬品の数量シェア80%は達成しましたが、ジェネリック医薬品の金額シェアとなるとまだ40%程度です。
今後、政府は新たに金額ベースの目標を検討しており、まだまだ伸びしろがあると考えております。
また医療用の注射剤の製造販売では、特に特長を持つ注射剤に焦点を当て、その分野でのトップメーカーを目指していきます。
足元では2024年2月に蔵王産業団地内に医薬品倉庫(常温・保冷)が竣工し、2026年6月には蔵王第二工場が竣工予定です。
その蔵王第二工場ではプレフィルドシリンジという高薬理無菌製剤の量産が可能になるため、増産体制の強化と拡販を見込んでいます。
注目していただきたいポイント
中長期的に成長していくためには事業への投資が不可欠です。
そのためにも、高付加価値で採算性の高い製品の販売や発掘を継続していくことで安定的に利益を出していきます。
その利益を設備投資に回し、常に必要とされる製品を安定的に供給することで超高齢社会で必要とされる医薬品企業であり続けます。
もちろん、利益に応じて適切に配当の分配を行っております。
この持続可能な成長を実現する好循環のビジネスと当社の事業戦略に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
当社グループの前期連結業績は過去最高の売上高と利益を記録しました。
原薬販売事業では採算性の高い新規採用品目が寄与し、医薬品製造販売事業では、収率向上などによって生産性が向上しました。
今後も設備投資→収益拡大→配当増大というサイクルを回し、持続的・安定的に配当を増やしていきたいと考えております。
本社所在地:〒223-0061 横浜市港北区日吉7丁目13番15号
設立: 2015年1月30日
資本金:522,277千円(2024年3月アクセス時点)
上場市場:東証プライム市場 (2018年6月21日上場)
証券コード:9273
- 原薬とは = 医薬品有効成分。医薬品や医薬部外品に含まれる成分のうち目的である効果を表す成分のこと。出典:コーア商事ホールディングス株式会社 個人投資家向け説明会資料 ↩︎
- 明確に定義されていないが、一般的には、再審査期間が終了しており、既に特許も切れている、後発医薬品(ジェネリック医薬品)のある先発医薬品を言う。薬価基準に長期間収載されていることから「長期収載品」といわれるようになった。出典:日本ジェネリック製薬協会 | 長期収載品について ↩︎
- オーソライズド・ジェネリック(英: Authorized generics, AG)とは、先発医薬品の製薬会社が特許権をオーソライズ(公認)したジェネリック医薬品で、先発医薬品とは別の会社が販売するものである。ジェネリック医薬品は先発医薬品と有効成分が同等であるが、AGの場合は、さらに先発製剤と原薬・添加物・製法・形状・色・味が同一で、製造工場・効能・効果も、一部の例外を除き先発医薬品と同一である。出典:後発医薬品 – Wikipedia ↩︎
- モダリティ(modality)とは、低分子薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞治療、遺伝子細胞治療、遺伝子治療といった治療手段の種別のこと。また、核酸医薬の中のアンチセンス医薬、siRNA医薬などのように、同一のモダリティの中でも作用機序が異なるものを別のモダリティとして区別する場合もある。出典:モダリティとは:日経バイオテクONLINE ↩︎
- 中分子は、低分子薬などの低分子と、抗体医薬など高分子の中間に位置付けられる分子。厳密な定義は無いが、500kDaから数千kDa程度の分子量とされ、特殊ペプチドや環状ペプチド、核酸をベースとした創薬が中分子創薬に当たる。出典:中分子創薬:日経バイオテクONLINE ↩︎