※本コラムは2024年2月20日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社cottaはお菓子・パン作りのための日本最大級の総合サイト「cotta」を運営しています。
代表取締役社長の黒須綾希子氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社cottaを一言で言うと
「お菓子(作り)の日本最大のプラットフォーム」です。
cottaの沿革
創業経緯
当社は1998年に現会長が営業マンとして乾燥剤を販売していた経験から始まりました。
彼は主に和菓子店を担当しており、その際に目にしたのは、ほとんどが小規模ながら貴重なスペースを在庫保管のために使っている現場でした。
この業界では、商品を1ケース単位で仕入れるのが一般的でしたが、それが小規模事業主にとって大きな負担となっていることを痛感して当社を創業しました。
そこで、小規模のお菓子屋が在庫の問題に苦労することなく、必要な分だけ商品を仕入れ可能にするために小ロットでも商品を提供できるビジネスモデルを考案しました。
コンビニスイーツの台頭と顧客基盤の拡大
創業から10数年は順調に成長しており、2006年には、一般コンシューマーからプロまでをターゲットにしたECサイト「cotta」をスタートさせました。
しかし2010年頃にはコンビニスイーツが流行し、我々の主要顧客の小規模のお菓子屋が大きな打撃を受け、縮小や廃業を余儀なくされていました。
そこで、通販サイトcottaを運営する「株式会社TUKURU」を設立し、高度な技術と発信力で個人客獲得を推進しました。
そして顧客基盤をBtoBからBtoCに拡大し、当時約2万点あった包装資材やお菓子の材料などの在庫を個人顧客向けにも販売することに成功しました。
現在は商品販売だけでなく、有益な情報提供も組み合わせたECメディアとして他社ECサイトとの差別化を図りながら事業を展開しています。
cottaの事業の概要と特徴
概要
主にBtoB事業、BtoC事業、メディア事業を展開しています。
BtoB事業では製菓・製パンの仕入れサイト「cotta businesss」を展開し、食材から包装資材を取り揃え、販売しています。
BtoC事業ではお菓子・パン作りのEC×メディアとして「cotta」を展開し、食材から資材やレシピ、お役立ちコンテンツを提供しています。
また、メディア事業では食品メーカーや資材メーカーに対してブランドコンサルティングを提供し、自社ECの視点から施策立案やマーケティングの推進をしています。
そして個人に対しては通信講座やオンラインレッスンなどのお菓子・パン作りの教室も提供しています。
事業における優位性
BtoB事業における当社の提供価値
我々の主な顧客層は、創業当時から変わらず、年商約3000万円以下の小規模なお菓子屋さんや家族経営の事業主です。
彼らは中規模から大規模な事業主と異なり、キャッシュフローや在庫スペースの観点から大量の商品を一度に仕入れることができません。
また、仕入れ先が多岐にわたるので在庫管理業務も事業規模に対して、煩雑となり非常に負担となっています。
こうした顧客のニーズに応えるため、「cotta businesss」では必要な分だけの商品を多品種にわたって提供し、倉庫の代わりとして利用していただくことが可能です。
全てがオンライン上の「cotta businesss」で完結できるため、小規模店舗の悩みを解決しています。
品揃えも広く、食材から包装資材まで揃えることができる点も多くの事業者に選択されている理由です。
BtoC事業における当社の提供価値
「cotta」はお菓子作りに必要な道具や材料、情報に至るまで手に入れることができるサイトです。
個人でお菓子作りを楽しんでいる方々に特化して1万件を超えるレシピを公開しているため、それぞれのニーズに合った最適なレシピを見つけることができます。
また、「cotta」はメディアとしてレシピから直接Eコマースサイトへのスムーズな導線を構築し、ユーザーが「今すぐにでも作りたくなる」ようなワクワクする体験を提供しています。
これは他のレシピメディアでは成し得なかった成功です。
さらには、SNSを積極的に活用することで、より多くのユーザー層にリーチしています。SNSでは、「美味しそう」「可愛い」「作ってみたい」という感情を呼び起こし、ユーザーがお菓子作りやパン作りを始めるきっかけを提供しています。
現在(2022年10月〜2023年10月の平均)の「cotta」の月間アクセス数は約2,100万PVと非常に注目度の高いメディアとなっています。
小ロットを実現するノウハウと物流体制
通常のマーケットプレイスと異なり、実際に在庫を保有し、それを小口に分けて流通させる体制を整えている点は大きな強みです。
我々は大分県津久見市という地方都市に大きな倉庫を構えており、そこで熟練したスタッフによる手作業による出荷作業を行っています。
在庫管理においても、私たちは自社で開発したシステムを使用し、現在約3万点の在庫を効率的に管理し、ピッキングの効率化を図るための配置の最適化も日々行っています。
この体制は20年にわたってノウハウを蓄積し、改善し続けてきたので新たに同様のビジネスモデルを確立しようとする場合の競合の参入障壁は非常に高いと考えます。
直近では新潟物流倉庫も稼働スタートしました。
これにより2拠点からの出荷体制を確立させたことで更なる出荷能力の増強と人員コスト削減を実現しました。
cottaの中長期の成長イメージとそのための施策
市場環境と戦略
現在の市場環境はBtoBもBtoCも拡大しているとは言い難い状況です。
我々が対象としている小規模事業者は新規出店と廃業を繰り返しているので、店舗数の増加は見込めません。
ただ、仕入れ市場においては中小の飲食店、菓子店、パン店は3兆円と、顧客層の拡大やサービスの拡充を行うことで更なる売上の積み上げが可能です。
またBtoCにおいては少子高齢化と働く女性の増加、出産率の低下などにより、手作りのお菓子市場の拡大は限定的と見られています。
そこで顕在層や準顕在層を含む約840億円の市場を取り込むことで更なる売上の積み上げを目指します。
BtoB事業方針
まずは引き続き品揃えの強化やPR施策の改善、新規顧客との接点を増やしていくことで仕入れ需要をキャッチアップしていきます。
現在、我々が提供できるマネタイズの機会は主に仕入れに限られていますが、お菓子屋さんが直面している課題はそれだけではありません。
例えばマーケティング、CRM、在庫管理、採用、財務管理など、多岐にわたるニーズがあります。
そこで、これらの課題に対して包括的に対応できるブランドを目指してサービスの拡充を図っています。
特に小規模な店舗では、限られた人数で運営しているため、新規顧客の獲得やリピート顧客の定着や効果的な接客やアプローチに対して課題を抱えています。
また、紙ベースの管理や電話での注文受付といった、非常にアナログな運営方法が残っています。
そこで、当社は小規模事業者に対してワンストップ提供できるサービスを目指しM&Aや新規事業開発を行いながら事業を獲得していきます。
BtoC事業方針
BtoC市場に関しては、実際に日常的にお菓子やパンを作る女性は全体の約2%に過ぎず、対象となる顧客層は限られています。
しかし、この限られた層の中には、手作りを楽しむ、キッチンに立つことが好きという情熱的な顧客が多く存在します。
現在は提供していないまな板や包丁、エプロン、カトラリー、食器、お鍋など、キッチンでの時間をより豊かにする商品を拡充し、私たちのブランドを通じて提供していきたいと考えています。
さらに健康意識や食の安全性への意識の高まりに対して、2023年5月に新サービス「cotta tommorrow」をリリースしました。
これまでのサイト運営のノウハウを活かして他社とのコラボレーションも積極的に行い、更なる成長を目指していきます。
注目していただきたいポイント
EC事業が安定したキャッシュフローを生み出し続けている点に注目していただきたいです。
これまでの20年以上にわたる運営で、成功のノウハウを蓄積し続けてきました。
ただし、現状のポジションからECの売上を倍増させる計画は立てていません。
それよりも、我々がコントロールできる物流や商品の製造、管理という強みを活かし、お菓子とパンの市場でさらに大きな影響力を持ちたいと考えています。
このために、M&Aや新規事業への投資に力を入れるフェーズに差し掛かっています。
今後は安定したECの売上を基盤に、成長投資も積極的に行っていく方針です。
投資家の皆様へメッセージ
現在は事業モデルを積極的に変革し、新たな領域へと進出することを目指している非常に重要な段階にあります。
このような変化の時期ではありますが、投資家の皆様には我々の投資戦略にご注目いただきご支援いただければと思います。