※本コラムは2024年2月22日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社フィル・カンパニーは「まちのスキマを「創造」で満たす。」のパーパスを掲げ、駐車場の上部空間や狭小地、駅から少し離れた土地などに空間ソリューションサービスを提供しています。
具体的には空中店舗「フィル・パーク」および ガレージ付賃貸住宅「プレミアムガレージハウス」を供給しています。
代表取締役社長の金子 麻理氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
株式会社フィル・カンパニーを一言で言うと
まちのスキマを「創造」で満たす会社です。
フィル・カンパニーの沿革
創業経緯
当社はコインパーキングの上部空間を活用するというアイディアに着目し、2005年に創業されました。
しかし、ビジネスモデルが確立するまでは苦労が続き、当初は赤字も経験しました。
その後2008年ごろから、現在建築を統括する高野をはじめとするキーパーソンが加わり、ビジネスモデルを確立しました。
私が当社に参画したのはIPOを視野に入れて準備を始めた2014年ごろです。
その2年後の2016年11月にマザーズ市場(現グロース市場)への上場を果たしました。
少数精鋭による事業拡大
我々は2019年12月の東証一部上場までの期間を第二創業期と呼んでいます。
マザーズ上場以後は、収益を生み出し続ける企業に成長していましたが、引き続き人員は少数精鋭で運営を続けていました。
この少ない人数でも、一人ひとりが高いパフォーマンスを発揮し、企業全体としても右肩上がりの成長を遂げ、売上は70億円まで成長し東証一部に市場変更をしました。
コロナ禍からの脱却と経営改革
皆さんもご存知の通り、2020年2月頃からコロナウイルスが世界的に広がり始め、商業系不動産を主要事業とする当社も大きな打撃を受け、事業が低迷してしまいました。
この状況から脱却するため、2023年2月に私が社長に就任し再建のための経営改革に着手しました。
現在は、第三の創業期として再び成長軌道に乗せるべく様々な施策を行っています。
フィル・カンパニーの事業の概要と特徴
概要
主に2つの事業を展開しています。
1つ目は「コインパーキング×建物=空中店舗フィル・パーク」という独自のコンセプトに基づくフィル・パーク事業です。
一般的なコインパーキングでは活用されていない上部空間を有効利用することで、土地の価値を最大限に引き出し、地主様に追加の収益源を提供します。
具体的には、駐車場の上に商業店舗を設置することで、従来の駐車場以上の価値を生み出す事業です。
2つ目は郊外エリアでも安定した収益を生み出しているプレミアムガレージハウス事業です。
駅から遠く、一般的なアパートやマンションでは活用の難しい郊外エリアにガレージ付賃貸住宅を提供しています。
事業における優位性
駐車場の上部空間を活用したフィル・パーク
これまでのコインパーキングは遊休地の一時的な解決策として選択されてきました。
しかしフィル・パークは先ほどもお話ししたように、コインパーキングの運営はそのままに、その上の空中を活用することで投資収益をUPさせようというコンセプトです。
また、コインパーキングがある都心部の裏路地には、駐車場としての活用だけではなく更なる活用方法が見込まれることが、入念なマーケット調査でわかっています。
そして最後のテナント誘致まで見越して計画をし、街に調和するデザイン性でガラス張りの明るい建物にすることで、新たな賑わいのシンボルとなります。
さらに、通常の商業ビルやマンション・アパートの経営と異なり、イニシャルコストがかからない駐車場と収益性の高い商業ビルを掛け合わせた運用を行うことで、利回りを高め回収期間を短くすることが可能になります。
高い入居率を実現するプレミアムガレージハウス
プレミアムガレージハウスの主なターゲットは、セカンドハウスを求める方や、メインの住居として趣味の空間を重視する方など、多岐にわたります。
他社が提供しているガレージハウスに比べて、当社では車2台分の広いガレージスペースを提供することで、単に車を保管するだけでなく、様々なライフスタイルに合わせた利用が可能です。
特にコロナ以降、需要が高まっており、現在までに7,000件以上の入居希望登録がありました。
そのため、新しいガレージハウスを建てるたびに迅速に入居者を確保することができ、約95%ほどの高い入居率を実現しています。(※2024年2月時点)
企画から管理までワンストップで提供
プロジェクトを企画から管理まで一貫して提供できることが強みです。
19年間にわたる経験から得たノウハウは、業界内で類を見ません。
例えば、我々は裏通りに位置するコインパーキングの活用を得意としていますが、独自のニーズを発掘してテナントの誘致まで責任を持って行います。
またコインパーキングの上に建物を建てる際には、耐震性を確保できる柱の位置の調整などの技術的に難易度が高く、容易に他社が真似できないのも事実です。
このように我々は、独自のノウハウと高い技術で始めから終わりまで責任を持って対応し、オーナーにとって最大の価値を生み出すことで稀有なビジネス展開を実現しています。
フィル・カンパニーの中長期の成長イメージとそのための施策
事業プロセス改革
1つ目の改革として事業プロセスの改革を行います。
従来、営業マンは案件の開拓から終了まで全てを一人で担当していました。
この一連のプロセスには、案件の開拓、オーナーとの密接な関係維持、建築・施工管理、テナントの確保、物件管理があります。
しかし、この方法では事業のスケールアップは困難であり、事業プロセスを改革することが再成長のために必要との結論に至りました。
営業改革
営業改革については既に着手しています。
現在、専門チームが効率的に案件を獲得し、顧客からの問い合わせに迅速に対応しています。
また案件開拓から、企画に至るまでをデータ化し可視化することで、適切な進捗管理や戦略や戦術の立案をサポートしています。
PM(プロパティ・マネジメント)の強化
長年にわたる事業運営で蓄積された物件に対しては、プロパティマネジメントを強化し、オーナーの満足度向上とリピート利用の促進を目指します。
フィル・パークを建ててから年月が経ってきたこともあり、修繕やメンテナンスが必要となってくるため、ビルの管理面も強化していきます。
組織改革
2つ目の改革として従業員エンゲージメントの向上に注力しています。
我々は、人材開発と組織開発において、会社のパーパス、ビジョン、および価値観を再定義しました。
この再定義された方針を基に、社員全員が同じ方向を向いて、組織全体としての一体感を高めていくことを目指しています。
特に、事業プロセスの改革が進むにつれ、組織としての機能性が強化されるので、必要な人材を適切に配置することが重要です。
また当社では、中途入社者と新卒入社者がほぼ半分ずつを占めており、彼ら・彼女らの成長意欲は非常に高いため、個々の成長が会社の成長に直結するような環境を整備していきます。
これまで、十分に整備されていなかった評価システムや目標管理システム、パフォーマンスマネジメントを整えることで、社員一人ひとりの成長と会社の成長を促進させる体制にしていきます。
事業ポートフォリオの変革
3つ目の改革として事業ポートフォリオの拡大を目指しています。
具体的には、特定事業へのクラウドファンディングの導入や、M&Aを通じて事業の多様化と拡大を検討しています。
また相続問題に関連するニーズに対応するためといったニーズに対応するため、税理士や顧問税理士といった専門家からの紹介も積極的に受け入れています。
さらに土地活用に関するプラットフォームサイトを含む、新しいチャネルの開発にも着手しており、これらを通じて事業の多角化を進めていく予定です。
注目していただきたいポイント
我々は事業を通じて、日本のまちに新たな価値をもたらし、住みやすく、魅力的なまちづくりに貢献していきたいと考えています。
大手のデベロッパーさんは駅前を長期的に大型開発し、街づくりを行うことがほとんどですが、我々は裏路地などを起点のまちづくりを目指しています。
ニッチな市場かもしれませんが、当社のコンセプトは日本の文化や日本という限られた土地の活用方法に非常にマッチしていると考えています。
ぜひ当社の展開していく『まちのスキマを「創造」で満たす』事業展開に注目していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
現在、我々は組織改革を通じて、社員が充分に活躍できる環境の整備に力を入れています。
これは当社が社員の成長=企業の成長と考え、人的資本投資を重要視しているからです。
投資家の皆様には、当社の事業がどのように日本の街づくりに貢献しているのかを積極的に伝えていきますので、引き続きご支援のほどよろしくお願いいたします。
本社所在地:〒104-0045 東京都中央区築地三丁目1-12 フィル・パークTOKYO GINZA Shintomi Lab.
設立:2005年6月3日
資本金:7億8,964万7,000円(2023年11月30日時点)
上場市場:東証スタンダード市場 (2016年11月18日上場)
証券コード:3267