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【4258】株式会社網屋 事業概要と成長戦略に関するIRインタビュー

※本コラムは2024年3月11日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社網屋はAIやクラウドの活用により、「セキュリティの自動化」を実現し、日本のサイバーセキュリティ人材難を解決することで、高水準のセキュリティを誰でも享受できる社会を目指していきます。

代表取締役社長の石田晃太氏に事業の変遷や今後の成長戦略を伺いました。

目次

株式会社網屋を一言で言うと

サイバーセキュリティの総合プロバイダです。

網屋の沿革

株式会社網屋代表取締役社長 石田晃太氏

創業から現在のビジネスモデルに至るまで

当社は1996年に企業LAN/WANの設計構築事業を行う目的で設立しました。

創業当時は労働集約型の事業を行っていましたが、エンジニアの稼働率低下などにより収益が悪化し債務超過に陥りました。

そこで2005年にサーバアクセスログ製品「ALog ConVerter」の自社開発・販売を開始し、労働集約型ビジネスから自社製品を提供するメーカーへ事業転換を行いました。

開発当時、派遣社員が外部に名簿を不正に持ち出し、売却するという内部不正事件が横行していました。

そこで当社は複雑・膨大なアクセスログを「いつ、誰が、どのファイルに、何をしたか」という情報に自動変換する特許技術を開発し、同製品のリリースに至りました。

クラウドネットワーク事業への拡大と上場

その後ALogに続く収益の柱を作るため、2010年にクラウドVPNサービス「Verona」、2013年にクラウド無線LANサービス「Hypersonix」をリリースし、2018年には人手を介さないSaaS型のネットワーク自動化サービス「Network All Cloud」をリリースしました。

「Network All Cloud」は「Verona」、「Hypersonix」およびクラウド情シスサービス「ランサポ」から構成され、当社がお客様に代わりインフラ環境をクラウドから設定・管理・障害対応まで行うため、お客様はIT人材不足の解決や導入・運用コストの大幅な削減が実現できるようになりました。

そして、業績を着実に伸ばし、2021年12月に東証マザーズ市場(現 東証グロース市場)に上場を果たしました。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

網屋の事業の概要と特徴

概要

当社は、二つの事業を展開しています。

一つ目は、IT全体のシステムやネットワーク機器の稼働や操作等の履歴を記録するログ管理製品『ALogシリーズ』の開発・販売を行うデータセキュリティ事業です。

これまでは「売り切りのライセンス販売+月額保守」の販売体系でしたが、2023年2月の「ALog Cloud」のリリースより月額基本利用料金をベースとするサブスクリプションモデルにシフトしています。

また、データセキュリティ事業ではクラウドCSIRTサービス「セキュサポ」や企業のサイバーセキュリティに関するあらゆるニーズを包括的に提供する「セキュリティサービス」があります。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

二つ目は、企業のネットワークインフラ環境をクラウドから運用代行する『Network All Cloud』を提供しているネットワークセキュリティ事業です。

従来、ネットワークサービスの導入時には、現場にエンジニアが出向いて作業を行う必要がありましたが、「Network All Cloud」ではクラウド管理により、人手を介さずに導入・運用することが可能になりました。

こちらの事業はSaaS型のビジネスで収益を上げています。

また、ネットワークセキュリティ事業では祖業であるオフィスのネットワーク設計・構築などを行うインテグレーションサービスも手掛けています。

株式会社網屋 より提供

事業における優位性

データセキュリティ事業:ALogの高いシェアと製品力

ALogは国内のサーバアクセスログ管理市場で70%のシェアを誇ります。

SIEM製品としての競合であればSplunk社のSplunkやIBM社のIBM Security QRadar Log Insightになりますが、こちらは大量のデータと大規模なシステムを有し、高度な分析や運用を自社で行うことができる超大手企業やセキュリティ企業の利用が中心になると思います。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

これに対して当社のALogは、セキュリティの自動化運用をより簡単に実現することを目指し複雑な設定や操作を必要とせず、直感的に利用できるUIを提供することで、お客様自身がセキュリティ管理を行えるようにしています。

このシンプルさと使いやすさが、我々の製品の大きな優位性です。

また機能面ではログを自動変換する特許技術を持っています

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

この特許技術によって、機器ごとに独自の形式で出力されるログデータを自動で解析可能な統一形式に変換し、視認性を高めることができます。

さらに、AIがユーザのファイルアクセス履歴を自動学習し、通常とは異なる行動をリスクスコアリングし、リスクを自動検知する機能を持っています。

たとえば、営業部の社員が普段アクセスしない開発部のファイルにアクセスした場合、その異常な振る舞いを検出し、リスクを自動判定することが可能です。

この高度な「振る舞い検知」の機能はセキュリティにおいて極めて重要です。

以上のようなALogの製品力が強みだと考えています。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ネットワークセキュリティ事業:自社製品と顧客ネットワーク

ネットワークセキュリティ事業の競争力は大きく分けて二つです。

一つ目は自社で独自製品を持っているという点です。

当社はSDN(Software-Defined Networking)やSASE(Secure Access Service Edge)といった最先端技術のネットワークセキュリティソリューションを自社開発し、提供しています。

このようにトータルソリューションをお客様に提供できるため、複数の製品を個別に購入・導入する手間を省き、コスト削減にも繋がっています。

株式会社網屋 より提供

二つ目は圧倒的な導入数です。多拠点・多店舗を有する企業、教育機関、医療機関などを中心に、4,800社に導入し、契約末端接続台数は178万台を突破しています。(※2023年12月末時点)

このように日本における市場では先駆者として全産業向けのサービスでお客様を確実に獲得してきました。

企業のICT化やIT技術者の人材不足、リモートワークの急速な普及を背景に、お客様のニーズは人手を介さないネットワーク運用とセキュリティ強化だと考えています。

これらの社会的なニーズこそが「Network All Cloud」の強みとなっています。

株式会社網屋 より提供

網屋の中長期の成長イメージとそのための施策

新成長戦略

FY2023-2025の3ヵ年で 売上高 200%(CAGR25%) 営業利益 228%達成を目指しています。

世界のセキュリティ市場からみると当社の規模は0.3%程度なので、更なる拡大余地があります。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

そこで『ALog』をサブスクリプションモデルへ移行することで収益性を改善し顧客の裾野を大企業から中小企業へ、国内から世界へ目を向けて拡販していきます。

また、足元での深刻なエンジニア不足に対して、クラウドで管理が可能なNetwork All Cloudの需要は高まります。

今後はこれからの通信インフラは、クラウドですべて管理される世界になるので当社サービスの成長が見込めます。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

さらにセキュリティに関わる事業領域をM&Aやアライアンスを行いながら拡大していく方針です。

また、当社は総合サイバーセキュリティプロバイダとして、顧客の求めるニーズに対して必要な事業やサービスを拡充していきます。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

ALogサブスクリプションモデルによる収益性改善

2023年2月にリリースされたALog Cloudに続き、2024年4月1日にはALogオンプレミス版のサブスクリプションモデルをリリースしました。

これまでは、ライセンスを一度購入すると更新時に再購入の必要がなく、月額の保守料のみでサービスを継続できるというモデルでした。

これからはサブスクリプション契約のみを提供していくことでストック収益を安定的に積み上げていきます。

また我々の製品と競合する米国社製品の料金はALogと比べて、3倍以上の水準となり、価格面でも優位性をもっています。

これまでのビジネスモデルでは主なお客様は大手企業が中心でした。

しかし今後はALog Cloudにより当社がお客様のログを収集し、運用代行することが可能となったため、自社での運用が難しかった中堅・中小企業に対しての販売も見込めます。

更なる拡販とストック収益の積み上げが期待できます。2024年12月期はセグメント売上を前期比31%増と見込んでおります。

株式会社網屋 より提供

ALogの世界市場進出に向けた機能向上

国内では特に円安が進んでいる現在(2024年)は米国社製のシステムの購入にコストがかさみ、国内では国産製品を活用する動きも活発です。

この動きに対して、海外製品との機能的差異を少なくするために機能の拡充を行います。

株式会社網屋 より提供

また生成AIを活用して、蓄積したデータを基に全産業に対応できるデータ分析プラットフォームを目指していきます。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

フルマネージドSASEの追加とセキュリティサービスの提供

先ほどお話ししたSASEという概念ですが、ネットワークにまつわるセキュリティをひとつに統合し全ての機能をクラウドで提供するため、運用を効率化できるモデルです。

従来はネットワーク(通信インフラ)とセキュリティがバラバラに管理されており、それぞれで機器を購入し、導入する必要がありました。

今後はNetwork All Cloudを導入することでSASEもサービスとして利用することができます。

株式会社網屋 FY2023-25 中期経営計画 事業計画及び成長可能性に関する事項 より引用

しかし、お客様から単にセキュリティツールを購入するだけではなく、監視・分析などの運用サービス、セキュリティポリシーの策定、さらには社員に対するセキュリティ教育まで、セキュリティに関するあらゆるニーズに対応してほしいという要望が寄せられています。

そこで当社が中堅・中小企業が必要とするセキュリティ運用を包括的に提供する、クラウドCSIRTサービス「セキュサポ」やセキュリティ診断、コンサルティング、セキュリティ教育を提供する「セキュリティサービス」などを提供していくことでお客様のニーズに対してアプローチしていきます。

株式会社網屋 より提供

注目していただきたいポイント

ALogのサブスクリプションモデルへの移行に注目していただきたいです。

今後は収益性が大幅に高くなり、ストック収益を積み上げていくビジネスモデルに切り替えていくことで更なる安定した経営を実現していきます。

投資家の皆様へメッセージ

当社の事業であるサイバーセキュリティは、IT人材不足や増え続けるサイバー攻撃を背景に、今後も高い需要がある分野だと考えております。

2024年12月期はALogの収益構造の拡大に注力し、中期経営計画の達成を目指してまいります。

投資家の皆様には是非当社に注目していただき、ご支援いただければと思います。

株式会社網屋

本社所在地:〒103-0007 東京都中央区日本橋浜町3-3-2 トルナーレ日本橋浜町 11F

設立:1996年12月12日

資本金:6,034万2,000円(2023年6月末時点)

上場市場:東証グロース場 (2021年12月22日上場)

証券コード:4258

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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