※本コラムは2022年11月4日に実施したIRインタビューをもとにしております。
人口減少によって、日本企業の生産性向上が大きな社会課題となってきました。rakumo株式会社は、その課題に取り組み、着実に成長してきている企業です。今後の成長シナリオについて、代表取締役社長の御手洗大祐氏に話を伺いました。
rakumo株式会社を一言で言うと
「仕事をラクに。オモシロく。」するサービスを提供している会社です。主に共通業務を対象に社員の方の業務効率を高め、より付加価値の高い仕事に注力できるようにするITビジネスソリューションを、Googleが提供している「Google Workspace」や、セールスフォースの「セールスクラウド」などのクラウドサービスと共に提供しております。
創業の経緯
私は大学を卒業した後、日本電信電話株式会社(NTT)に入社しました。その後、バックテクノロジーズという会社を起業したのですが、これを米国のCNETネットワークス社に売却して、しばらくはシーネットネットワークスジャパンの代表取締役を務めました。
もともと新しいことをするのが好きな性格ということもあり、インターネットで何か新しいサービスを立ち上げようと思って、2004年に株式会社日本技芸を創業しました。この会社が今のrakumoの前身になります。
日本技芸では、ネットビジネスコンサルティングや受託開発事業を中心に展開しました。これらの事業を行っていくなかで、テクノロジー開発に関わるエンジニアの存在が極めて重要であることに気付き、そういう人たちの雇用を創造するために仕事を受託し、そこから新しい事業を生み出し、新しい会社として独立させていく。いわば、受託会社とインキュベーションを組み合わせたような事業を展開しようと考えたのです。
ただ、その最中にリーマンショックが起こり、ちょうど業務拡大に向けたオフィス移転の直後だったことなどから経営難に直面してしまいます。それで思い切って事業を変えようと考えました。受託事業の先行きが極めて厳しくなってきたので、自分たちでより付加価値の高い事業を生み出そうと思ったのです。
では、何をするか。たまたま当時、自分たちの仕事上のお付き合いのなかでSNS業界やSIerさんとのお付き合いがあったものですから、自然と新しい事業の方向性として浮かんできたのは、ゲームかクラウドサービスという2つのフィールドでした。
ただ、正直なところ自分自身では、ゲーム業界のように若い人たちが中心となって、いささか弾けた感じでビジネスを展開するのは苦手だったので、自然なうちにクラウドサービスへと目が向いていきました。
それまで日本技芸で行ってきた受託事業の辛いところは、エンジニアが昼夜を通して苦労を重ね、ようやく出来上がったシステムも、委託してくれた企業の都合によって、全く使われることなくお蔵入りしてしまうケースがあります。これは、やはりエンジニアにとって非常に辛いことなので、新しい事業領域を模索するにあたっては、人から感謝していただける仕事にしたいという想いがありました。
また、自分としては2000年初頭くらいから、ITを活用することによって生産性を向上する必要があると考えていたのですが、当時、オラクルなど巨大IT企業に生産性向上のためのシステムを構築してもらおうとすると、それこそ数千万円規模の予算でなければ受けてもらえませんでした。
しかし、日本の企業で、本当の意味で生産性を向上させなければならないのは、中小企業です。その中小企業に、数千万円の予算はかなりの負担となります。とはいえ、このまま何もしなければ、2050年には日本がとんでもない状況に追い込まれてしまう恐れがありますから、まさに今、真剣に手を付けなければならない。そういう焦りがあった時に、大手システムエンジニアリング会社から、Googleのプラットフォームを利用してアドオンのサービスをつくらないかという話をいただきました。当時はベンチャー企業にデータを預けることに不安を持つ企業が多かったのですが、データはしっかりと米大手クラウド企業に保管されるサービスなら、ベンチャーのSaaSを利用するうえでハードルが下がるのでは、と思ったのです。これがきっかけとなり、今のrakumoのサービスにつながっていったのです。
またタイミングも良かったのだと思います。クラウドの技術が軌道に乗ったのが2010年前後であり、それとほぼ軌を一にして、rakumoのサービスを立ち上げることができましたし、その後現在までrakumoを展開していくうえで、転換点となる2つの大きな出来事がありました。
ひとつは東日本大震災です。これによってパソコンや会社のサーバに置いてあったデータが、津波によって消滅してしまうという一大事が起こりました。結果、自社でデータを管理するよりも、クラウドに置いておく方が安全だという認識が、一気に広がりました。
次に2018年前後から関心が高まった働き方改革です。生産性を向上させるためにITを活用する必要性が高まりました。結果、その2つのタイミングで事業が大きく伸びて、上場に至りました。
事業内容について
Google Workspaceという、生産性を向上させるための業務基盤ツールと連携して、バックオフィスに必要な機能や、社員の共通ツールを提供しています。もちろん、Google Workspaceにも、さまざまな機能が実装されていますが、それだけではカバーできない、稟議や経費精算、勤怠管理といったコア業務を、rakumoが補完します。
Google Workspace版としてrakumoを開発したことをきっかけに、Salesforceからも相談を受け、Salesforceのスケジューラーを、日本企業の組織体系に合わせて、より見やすくしたrakumoソーシャルスケジューラーや、SalesforceカレンダーとGoogleカレンダーのスケジュール共有を実現したrakumo Syncなども提供しています。
要するに、Google Workspace版であっても、Salesforce版であっても、さまざまな形で組織内外のコミュニケーションを円滑にし、業務を楽にこなせるようにするための拡張ツールを、Google WorkspaceやSalesforceを導入した企業などに対して、SaaS方式により、手軽な料金で利用できるようにしています。
クライアント数は2022年第3四半期末において、2277社となっております。大企業からベンチャー企業までさまざまで、そこから多種多様なニーズを伺い、それに対応できる多種多様なプロダクトを提供しています。2022年6月末時点において、私たちのライセンス数は100万件を超えるところまで拡大しました。今後も、ライセンス数の拡大に向けて取り組んでまいります。
中長期の成長イメージとそのための施策
従業員1人あたりの労働生産性向上は、規模に関係なく、どの企業にとっても重要課題のひとつといって良いでしょう。ライセンス数が100万件を超えた事実があるように、私たちは企業全体の業務内容を常にウォッチし、そこで効率を引き上げるのに必要とされるツールを提供すると共に、隣接している領域にも積極的に展開していきます。その際には、すべてのサービスを自分たちで開発するのではなく、M&Aも積極的に展開していきたいと考えています。
ちなみに2022年6月に、株式会社gamba(https://www.getgamba.com/)を買収して100%子会社にしました。この会社は、社内SNS型日報共有アプリを開発・提供しているのですが、もともと中小企業を中心にしたサービス提供だったので、大手に導入するとなると、いささか難しい面がありました。しかし、当社の子会社になることで、私たちのクライアントである大企業を対象にしたサービス提供の道筋が出来るようになるので、ビジネスの拡大が期待できます。
また、最近私たちが見ているところだと、人事や労務など人に関係する部分に課題を抱えていたり、データが整理できていなかったりするクライアントが結構いらっしゃいます。そこに関連したツールを、私たちが自社で開発する、場合によってはM&Aによって時間を買うということも、検討していきたいと思います。
さらに、これからは教育関連での需要開拓を進めていきます。学校の教育現場はITのリテラシーが高いとは言えず、教員は長時間労働を強いられています。この分野での働き方改革は、これからとても重要になっていくでしょう。生徒・親を含めたコミュニケーションに、私たちのツールを導入していく可能性も考えられますし、同じくDXが進まず生産性の低い現場として、介護・福祉領域への進出も考えられます。
このように、生産性に課題を抱えている事業領域に私たちの製品を提供することで、社会課題を解決するのと同時に、私たちの成長にもつなげていきたいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
昨今、為替市場では円安が進みましたが、この原因のひとつは、やはり日本企業の生産性の低さにあると思います。今後、日本の人口が減少していくなかで、企業がいかに生産性を向上できるかが、日本という国の未来に関わってくる課題です。その課題解決に私たちは貢献していきますので、引き続き応援していただけると嬉しく思います。
本社所在地:東京都千代田区麹町3-2 垣見麹町ビル6階
設立:2004年12月17日
資本金:385,260千円(2021年12月末現在)
上場市場:東証グロース(2020年9月28日上場)
証券コード:4060