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【4382】HEROZ株式会社代表取締役Co-CEO 林隆弘氏・髙橋知裕氏「AI SaaS戦略で想像を超える未来を創る」

※本コラムは2022年12月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。

「将棋ウォーズ」や「棋神アナリティクス」など、マインドスポーツの領域で事業を開始し、以来AIトップランナーとして事業を成長させてきたのが、HEROZ株式会社の創業者であり代表取締役Co-CEOの林隆弘氏と髙橋知裕氏です。

同社の組織としての強みや「HEROZ2.0」と題した今後の目指す姿についても教えていただきました。

目次

HEROZ株式会社を一言で言うと

AI革命を起こし、未来を創っていく会社です。単に研究開発で終わるのではなく、各業界で課題に向き合い、どのようにビジネスに転化させるのか、そしてその先で次の未来をどのように創っていくのか、という実装力を常に意識しています。

創業の経緯

当社は2009年の創業です。外部環境としては、ちょうどスマートフォンという新たなデバイスが登場し、それに紐づくビシネスやサービスが生まれ始めた頃でした。

我々は共に、前職ではエンジニアとして技術開発に携わっていたこともあり、このような時代の変化のうねりを掴むことが大事であると考えていました。そこで、自分たちでも会社を起こそうと話し合い、テクノロジーベンチャーとして当社を設立することとなりました。

当初はスマートフォン向けのモバイルアプリ開発に特化し事業を開始しました。一方、2007年に発売されたiPhoneの他、FacebookやTwitterに代表されるように、当社の創業前後はテクノロジーで世の中を変革する会社が主軸になっていったタイミングでもありました。

そのため、「エンジニアを中心とする組織がテクノロジーファーストで企業の業務成果をいかに変革させることができるか」という視点に我々の事業の軸も移っていきます。

第三次AIブームと言われているのが2015年から2016年にかけてですから、当時世界的に見てもAIビジネスはまだほとんどない状態でした。また、リーマンショックからの厳しい市況も継続しており、資金調達を含め決して容易な事業環境ではありませんでした。

ですが、我々はアプリ開発に特化したゲーム会社として成長しようと思っていたわけではありませんでしたし、実際大手IPホルダー等と勝負できる力もありません。

このような経緯に加えまして、実際にプレーヤーとして第一線で活躍していたという(林の)経歴をふまえ、設立直後の2010年初頭からは将棋AI領域にフォーカスし、2年後の2012年には日本将棋連盟公認ネイティブアプリ「将棋ウォーズ」をリリースしております。

さらに、2015年頃からはこのBtoC領域でのマインドスポーツを強化するとともに、テクノロジーを活用した事業をBtoBにも展開していくことで、よりAIにフォーカスしていくという経営判断をし、現在に至ります。

事業内容について

グループ全体の事業構造としては、「AI/DXサービス」および「AIセキュリティサービス」の二つに分類されます。

HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

前者では、まず当社単体としては「将棋ウォーズ」をはじめとするBtoC領域のSaaS事業、およびBtoB領域における業務への活用を目的としたAI開発を行っています。また、2022年に連結子会社化したストラテジット社はSaaS導入やAPI連携のシステム開発等を担っています。

足元、Microsoft社のTeamsが単なるチャットツールの域を脱しているように、このようなSaaSツールのコミュニケーションプラットフォーム化が進行しています。

同社は、SaaSベンダー向けに連携APIシステムを開発する他、顧客自らAPI連携のアプリケーションを開発するための環境を提供することで、利便性の向上をサポートしています。

HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

後者の「AIセキュリティサービス」では、こちらもグループ会社のバリオセキュア社にてマネージドセキュリティとインテグレーションサービスを提供しています。同社は、中小企業向けの商品設計や手厚いサポート体制を強みに、圧倒的な中小企業ネットワークを確立してきました。

また、昨今は中小企業におけるセキュリティ強化の意識がより一層高まっています。ゼロトラストという文脈の中で、当社の強みであるテクノロジーをどのように活用し、提供価値を高めていくかがポイントとなっています。

  • ゼロトラスト(セキュリティ):社内外のネットワーク環境における、従来の「境界」の概念を捨て去り、守るべき情報資産にアクセスするものはすべて信用せずにその安全性を検証することで、情報資産への脅威を防ぐという、セキュリティの新しい考えのこと。
HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

冒頭でも申し上げた通りAI革命を起こし、未来を創っていくことが当社の目指すことであり、そのためには概念実証を経てその先でソリューションに落とし込む実装力が必要となります。この点、当社は以下の理由から競争優位性を発揮することができています。

まず、この場合の差別化要因としては、アルゴリズム、マシーンパワー、ビックデータおよび事業のドメインナレッジの有無が挙げられ、この項目を満たすほど優位性が高まると言えると思います。

一点目のアルゴリズムは、まさにエンジニアの力量とも言える部分ですが、当社には将棋AIの大会で優勝経験のあるチームが所属しており、高度人材の豊富さには自信があります。

また、将棋界のAI変革の歴史を経験しているという点や、実際に業務に活用されるAIを事業会社共につくりにいくという点が魅力となり、我々が選ばれ続けているという事実もあります。

さらにこの点についてはマシーンパワーに関しても通ずる部分があります。決算資料でも開示していますように、サーバー環境には相当な投資を行っており、このような環境もエンジニアにとっては非常に魅力的です。

実は自社でGPUを購入しているのですが、クラウドで使用するよりもコストは抑えられており、結果としてマシーンパワーを活かしやすいという当社側の競争優位につながっています。

以上の二点は当社がすでに持っている強みであり、残りの二点を満たせるかという視点で、建設・金融・エンタメ領域に事業を展開してきたというわけです。特定の領域で事業が成長することで、ビックデータやナレッジは蓄積され、それがビジネスに転化する実装力へと繋がります。

また、例えば不動産業界のような隣接する領域においてはこの二点を満たしやすくなりますので、今後の事業展開としても狙いやすいところといえるでしょう。

HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

中長期の成長イメージとそのための施策

これまで当社が蓄積してきたノウハウや新たに加わったグループ会社2社の強みを活かし、グループ全体で理想的なSaaSの利用環境の提供を支援する「AI SaaS戦略」を進めてまいります。また、その過程においてはEBITDA(営業利益+償却費)を重要な指標とし、これを最大化させることを目指していきます。

我々のルーツとも言える将棋界は、他業界よりもAI革命が10年ほど早く起こった領域です。2013年にはすでにプロ棋士に勝利するAIがつくられ、その後ディープラーニング等の機械学習へと発展していきました。

そして当社は、まさにこのAIを開発した立場であるように、将棋界のテクノロジーの変革の歴史を経験しているという特徴かつカルチャーとしての強みがあります。かつて競争相手であったAIは共創相手へと変化し、「先生」と呼ばれるまでになりました。

このような経験を持つ数少ない事業会社として、現在事業を展開している建設・金融・エンタメ業界を中心に、同じような変革の歴史を内側から作っていこうと考えています。

HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

注力領域の一つであります建設業界では、人手不足や資源価格の高騰から潜在的なAI導入ニーズが足元でより一層高まっています。このように、国内におけるSaaS市場は潜在的には約10兆円といわれており、拡大の余地は大きく残されています。

一方、事業環境の急速な変化に伴うニーズの多様化や、複数のSaaSを一元的に管理するニーズ、またセキュリティ分野におけるゼロトラストへの対応など、SaaS導入への障壁があることもまた事実です。

HEROZ株式会社 2023年4月期 第2四半期 決算説明資料 より引用

ここに対し、当社のAI導入ノウハウやエンジニア集団としての組織の強み、データの分析力を活かすことができると考えています。

投資家の皆様におかれましては、このAI SaaS戦略をどこまでやってくれるのかと様子見をされている方が多いかと思います。我々も、事業の成長を通じ、どのような未来とユーザーのエクスペリエンスを提供できるのかが試される期間であると認識しています。

現段階で未発表のものも含め、これまでとは違った成長で想像を超えた未来を創ることに挑んでいきたいと考えています。

投資家の皆様へメッセージ

繰り返しになりますが、当社はAI革命を起こし、未来を創っていく会社です。

今後は、既存の将棋AIやプラットフォームの事業から発展し、先般発表させていただいたAI SaaS戦略を一層進めていきます。

コロナ禍からのリカバリーはもちろんのこと、「HEROZ2.0」と表現させていただいたように新たな成長を実現し投資家の皆様の期待を越えてまいりますので、ぜひ応援のほどよろしくお願いいたします。

HEROZ株式会社

本社所在地:東京都港区芝5-31-17 PMO田町2F

設立:2009年4月

資本金:10,128千円(2022年10月末時点)

上場市場:東証プライム(2018年4月20日上場)

証券コード:4382

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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