※本コラムは2023年1月31日に実施したIRインタビューをもとにしております。
流通業界で用いられるパレットのレンタルにはじまり、物流に革新を起こしているユーピーアール株式会社。
代表取締役社長執行役員の酒田義矢氏に、事業拡大の原動力や、今後大きく変化する物流に対する会社としてのビジョンについて教えていただきました。
ユーピーアール株式会社を一言で言うと
「Social Sharing Supporter」として、消費社会から循環型社会への移り変わりを、モノのレンタルという側面からサポートするような会社です。
代表就任の経緯
1928年、山口県宇部市にて、私の祖父が酒田材木店を創業したのがユーピーアール株式会社のはじまりです。父が2代目、私が3代目となります。
1951年に宇部木材株式会社に社名変更し、父が事業を多角化する中で、当時高度経済成長期であった日本にもパレットの保管や、パレットを使った物流が浸透し始めたことに着目し、新規事業として木製パレットの製造業を始めました。
数年ほど続けたのち、この事業が将来的に伸びると考え、分社化し、1979年にウベパレット株式会社を設立するに至りました。私自身は新卒から7年間化学メーカーに勤めていましたが、1995年、30歳の時に地元に戻り、家業を継ぐ決意をし、1998年には社長に就任いたしました。
就任当時は、木製パレットの販売が90%以上を占めており、レンタルは今ほど大きな事業ではありませんでした。1990年代初頭にバブルが崩壊し経済の成長が止まりつつある中で、大量生産・大量販売という風潮は消えかけており、このまま製造業を続けていても会社の持続的な成長は難しいと感じ始めました。
一方、輸送コストがかからず付加価値も高いレンタルという領域が今後伸びると考え、このような外部環境の変化に順応するため、レンタル業をメインビジネスとして事業転換をしたのが就任後の転換点となりました。差別化の方針といたしましては、先行企業が一部の種類のパレットに特化したサービスを展開していたことを考慮し、当社は幅広い種類のパレットを取り扱うことに決めました。
また、地域密着型の事業展開も差別化の施策です。それぞれの地方、地区に多数の企業があるため、一度に多地域へと展開することなく、一つ一つの地域でお客様の信頼を獲得していき、地道に着実に増やすことを心がけてきました。
レンタル業は積み重ねのストック型のビジネスモデルですし、地域内での知名度が上がってくるとお客様からお客様への紹介も重なり、それが現在においても新規顧客の開拓に寄与しています。
その後、2003年の長期計画において、10年後に100億円規模の会社となることを目指し、それに加えて、株式公開できる体質の会社にしようと決意いたしました。
結果として、売上面では目標達成に10年以上かかりましたが、企業体質という面では、同族企業からパブリック企業になれるような体制を整えることができました。
その後、2016年には100億円規模という数字も現実的なものとなり、そこから3年間の準備期間を経て、2019年に上場を果たしました。上場してパブリックカンパニーになったことで社員の意識や内部体制も変わり、企業としての透明性はアップしました。
事業内容について
主な事業は物流のパレットレンタルになります。パレットには保管用と輸送用の2種類があるのですが、当社が扱っているのは保管用がメインになり、レンタルした枚数とその日数で料金を頂戴しております。通年でパレットの需要がある産業もありますが、多くの企業は季節によってその需要に変動があります。
これらの需要を多種多様な業界から拾ってきて、年間通じて安定的に売上を確保しております。この顧客基盤は売上を高める上で重要なファクターです。また、物流業界の「2024年問題」で取り上げられているように、長距離輸送のトラックドライバーの拘束時間が長大化しているのが現状でありますが、これは荷物の積み下ろしを手作業で行っているためです。
パレットを有効に使えればこの積み下ろし作業の時間を大幅に短縮でき、ドライバーの拘束時間短縮にも貢献できます。運送業の激務化に伴う人員不足も、作業の効率化の面からこの問題を解消する一助となるでしょう。これは総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)で取り上げられ、国土交通省や経済産業省など、国としても注目しているポイントになります。
一方、グローバルな視点で見ると、日本は海外に比べてレンタル化率が低水準なのが実情です。その原因としては、パレットの規格が産業・企業ごとに異なっており、パレットを自社の製品サイズに合わせたいというところから、所有の意識が強かったためです。
ですが、昨今SDGsが注目を浴び始め、各業界で所有から利用への流れができつつあり、パレットレンタル業界の一員である我々としては追い風となっております。パレットを、レンタカーの乗り捨てのようなレンタルサービスとして展開することにより、その使いやすさが格段に上がり、パレットが輸送業界にさらに普及していくことにつながると考えています。
そういった意味では”パレットシェアリング”と考えていただければイメージがしやすいと思います。
また、パレットレンタルは海外にも事業展開をしております。地域選定に際しては、パレット輸送が普及しておらず、国としてこれから伸びるような、かつ日系企業が多く進出している東南アジアが最適と考えました。
まずはシンガポールで3年間テストを行った後、タイ、マレーシア、ベトナムに展開いたしました。パレットレンタルが日本以上に普遍的なものとなっている欧米からも企業が進出していますが、当社並みに高品質なものは保有していません。
また、海外でも日本と同様に地域密着型の事業展開をしております。これからの東南アジアの成長という面から、この地域での事業はポジティブな将来を予想しています。
その他に、次世代対応型事業とし物流IoT事業、力仕事の際に用いるアシストスーツの販売、ICT事業、カーシェアリング事業を展開し、5つの柱で循環型社会を支える事業活動を展開しています。
中長期の成長イメージとそのための施策
まずはレンタルパレット事業についてですが、特に今後は「2024年問題」への対応のために企業側からの一段の需要の高まりが予想されます。パレットレンタルという単純なハードの提供と考えると、価格競争が発生してしまいます。
この点、我々は「物流の川上から川下まで」の一貫パレチゼーションという仕組みをご提案するほか、単純なパレットのレンタルだけでなくIoTを活用した、パレット自体の管理も伴って提供しており、他社にはないサービス内容になっております。
さらに、現段階でパレットを導入していない企業があるため、そこにも取り込むことができれば、新規の顧客獲得は可能であると考えています。
アクティブRFIDタグ搭載により所在管理ができるスマートパレットについては、製品自体の普及とともに、長期的な目線においてはデータ蓄積され、ビッグデータを取得することができます。
これを活用することによって、パレットと上に載っている商品の紐づけを実現しようと計画しています。パレット上の商品管理がしやすくなり、さらにそのデータをお客様に還元できれば、お客様の業務の効率化等もできるようになり、よりサービスの価値を高めることができるのではないかと考えております。
物流におけるパレットのレンタルはまだ一般的ではありません。ですが、「2024年問題」というのは物流業界のみならず多くの産業に関わってくるものであります。テレビや雑誌等にも取り上げられるようになり、少しずつ社会全体に問題提起がなされるようになってきましたが、まだ国民の皆様に知れ渡っているとは言い難いです。
今後、パレットなしでは物流は成り立ちませんし、やはり日本においてはまだまだパレットレンタルが普及していないため、成長産業であるといえます。「2024年問題」と合わせて、我々の事業領域の成長性についてもぜひ知っていただきたいです。
さらに、物流の川上から川下までをカバーするパレットレンタルにおいても、DX化の需要は一層伸びていきます。この需要動向によっても当社は成長できますし、その可能性を大いに秘めていると認識しています。
投資家の皆様へメッセージ
物流業界というのは地味なイメージを持たれてしまいますが、これからの数年で物流周りは大きな変革が起こります。
対応できる企業は限られますが、当社にはこれまで積み重ねてきたノウハウや実績があるため、十分に対応できる力があると考えています。そして何よりパレットレンタルはまだまだ成長する事業です。
将来的には1000億円程度の規模の企業になるという長期的な目標を設定しています。物流への変革をサポートするとともに、まずは中期経営計画を達成すべく努めてまいりますので、応援していただけましたら幸いです。
本社所在地:東京都千代田区内幸町1-3-2 内幸町東急ビル12F
設立:1979年3月
資本金:9,600万円(2023年2月アクセス時)
上場市場:東証スタンダード(2019年6月12日上場)
証券コード:7065