※本コラムは2022年9月5日に実施したIRインタビューをもとにしております。
ITエンジニアの価値向上をミッションとする、株式会社Branding Engineer。ITエンジニアのキャリア形成をサポートするソリューションを提供すると共に、企業のシステム開発サポート、ITエンジニアと企業のマッチングなども展開しています。同社の強みは何か。この分野の成長性や展望について、代表取締役CEOの河端保志氏に伺いました。
株式会社Branding Engineerを一言で表すと
私たちは、ITエンジニアにとって良い会社であるかどうか、という点を追及してきた、ITエンジニアの価値向上に寄与するプラットフォームサービスを提供する会社です。
創業の経緯
小学生の頃からプログラミングをはじめました。当時流行していたサイトに関心を持ち、自分でもサイト制作を行っていました。もともとロボットに興味があったので、大学は「知能機械工学科」で学んだのですが、ビジネスにも興味があったので、営業の仕事にもチャレンジしたり、幅広く様々な経験をしていました。
ちょうどその時期に、GAFAを中心とした米国のIT企業の成長スピードが目立ってきました。2007年頃にスマートフォンが登場して、それまではパソコンでしかアクセスできなかったインターネットに、スマートフォンが介在できるようになり、インターネット人口が激増したのが、その背景にあると考えています。
企業成長が目覚ましい米国で何が起こっているのかを自分の目で見たくなり、米国のシリコンバレーに行きました。そこで気付いたのが、日本と米国ではITエンジニアの待遇に雲泥の差がある、ということでした。年収の差は言うまでもありません。さらに言えば米国では、フェイスブックにしてもグーグルにしてもそうですが、エンジニア出身者が起業して経営に携わり、世界を席巻するような企業に育てていました。
その様子を目の当たりにして、もしかしたら、エンジニアリングを理解して、かつビジネスもできるという人が、これからのビジネスをリードしていくのではないかと考えるようになりました。この頃は大学院で学んでいたのですが、アカデミックな世界よりも、ビジネスの世界で働きたいという気持ちが強くなり、たまたま当時、学外活動で知り合った高原と一緒に会社を立ち上げようと意見が一致し、起業に踏み切りました。
事業内容について
現在のビジネスモデルを構築していった経緯
事業が大きく伸びたのは、スマートフォンが登場してWEBサービスの幅が広がり、それを受けてITエンジニアの需要が一気に高まったからです。
それまでは、「インターネットはおたくの世界」というイメージで見られていました。スマホアプリのサービスが世の中に浸透していくにつれて、インターネットは生活に欠かせない生活インフラの1つになりました。
こういった背景からITエンジニアに対する需要が高まり、その需要に対応する形で人材会社がITエンジニアの転職・就職斡旋などを強めていったのですが、彼らはITエンジニアが何を考えて、何を求めているかを理解できていませんでした。
また、求人誌が求人サイトに移行していくなかで、当然のこととしてインターネット上のマーケティングが大事になっていったのですが、実は大手と言われる企業ほど、その部分がノウハウ化、体系化されていませんでした。
一方、私は自分自身がエンジニア出身者であるため、ITエンジニアの気持ちを理解することが出来ましたし、インターネットマーケティングのことも熟知していたので、大手に比べて半分の獲得単価で、ITエンジニアを集めることができました。これらの要因により、我々は事業を急速に拡大していくことが出来ました。
こうしたなかで、ITエンジニアにとって一番働きやすいのはどういう環境なのかを追及した時、私はフリーランスだと確信しました。
フリーランスの最大のデメリットは、ある日突然、仕事を失うリスクです。しかしながら現状ITエンジニアの有効求人倍率は10倍を超えている状態です。ですから、あるクライアントの案件が無くなったとしても、他にいくらでも仕事があるというのが実態です。
つまり、ITエンジニアの場合、仕事が不安定というリスクがほぼないと考えられます。そうなると、今度はフリーランスならではとも言うべき利点がどんどん出てくる。たとえば、ITエンジニアは情報感度の高い人が多いので、いろいろな仕事を経験したいし、働き方もリモートを含めて多様にしたいというニーズが強いので、やはりフリーランスが適しています。そこで、ITエンジニアを集めて、彼らが働きやすく、かつメリットのあるパッケージを創ろうということで生まれたのが、「Midworks」というサービスです。
ビジネスを拡大していくうえでの具体的な営業戦略
これまで、クライアントからITエンジニアを紹介してほしいという連絡をいただいていたため、営業活動にはそこまで注力してきませんでした。今後は、ITエンジニアのマッチングのみにとどまらずより多角的な支援ができるような営業戦略を練っていく必要があると考えています。
しかしながら、それよりも私たちが力を入れているのは、そのクライアント企業が、ITエンジニアにとって働きやすいかどうかのチェックです。
営業力を高めることよりも、ITエンジニアのためのキャリアカウンセリング力を高めることの方が大事であり、おのずとITエンジニアの満足度を高め、さらに好循環へつながっていくと考えています。
中長期の成長イメージとそのための施策
WEB3.0やメタバースなど、今流行語になっているものの大半には、ITエンジニアが必要です。ですから、この分野の需要は、今後もさらに伸びてくると考えています。
たとえばテスラを例に挙げると、電気自動車だから売れたのではなくて、ソフトウェアとしての魅力が高かったから、自動車も売れたのです。
自動車の燃費がリッター30キロから40キロに上がることはもちろん凄いことなのですが、ユーザーの体験には大したインパクトはなく、それよりも“寝ている間に箱根に到着していた”といった類の体験の方が重要です。テレビを例にしても、解像度の高さを競っていますが、もうこれ以上解像度を上げる必要もありません。要は、ハードに関しては十分、人間の満足度を超える領域まで進化している一方、ソフトウェアの進化はまだ十分に余地が残されています。だからこそ、ITエンジニアの活躍する場は、まだまだ増えていきます。
そのなかで何を成すべきかですが、私はITエンジニアの給料を、この5~10年間で大幅に上げようと思っています。米国におけるITエンジニアの給料は、日本の平均の4倍近くなっています。また、直近での為替の変動を考えるとさらに広がっており、物価差を考えても差があることは事実です。
しかし、実力に4倍の差があるわけではありません。したがって、このまま円安が進めば、恐らく米国のテック企業は、日本に開発拠点を設け、日本人のITエンジニアを雇った方がコストを抑えられると考え、日本への進出が増えてくるのではないかと考えています。
また、今やリモートで働くのが当たり前の時代です。営業などの仕事に比べてもITエンジニアはリモートでも働きやすく、プログラミング言語は統一ですし、英語などもテキストでのやりとりならみなさんできます。
このように日本のエンジニアが、日本にいながら米国のテック企業で働くことは、決して難しいことではないのです。 米国企業などの外資が日本の正社員雇用をしたがらないのは、日本の労働法が厳しいからです。でも、フリーランスなら雇用しやすい。日本において、フリーランスのITエンジニアが活躍できる場は、今後も拡がると見ていて、そこに私どもの成長ドライバーがあると考えています。
投資家の皆様へメッセージ
世の中の大半の人材会社は、対企業よりのスタンスをとる会社が多いのが事実です。たとえばクライアントから(※)Ruby人材が欲しいと要望された時、「(※)Rubyエンジニアを見つければいいのですね」と指示通りで終わりです。そうすると、往々にして人材のミスマッチが起こりがちで、エンジニア側だけでなくクライアントにとっても満足度が低いマッチングになってしまいます。
- アプリケーションソフトウェアを作成するためのプログラミング言語
そこで我々は、ITエンジニアのマッチングにこだわり続け、マッチングシステムをゼロベースから自社開発しました。こういった自社に開発部隊を抱えている人材会社は多くありませんし、かつウェブマーケティングも外注せずに、すべて自社内で行っていること。ここが最大の強みです。
人材会社は世にたくさんあるものの、ビジネスモデルに差別化要因があるのかと言われると、どこも大差ないのが正直なところです。
なので、人材会社にとっての生命線は、組織であり人です。IT領域は新しい分野なので、やはり若手でないと分からない部分がたくさんあります。私どもは起業家を目指す若手中心の組織なので、その点も強みのひとつだと考えています。
本社所在地:東京都渋谷区渋谷2-22-3 渋谷東口ビル6F
設立:2013年10月2日
資本金:136,789 千円 ※2022年9月アクセス時
上場市場:東証グロース(2020年7月7日上場)
証券コード:7352