※本コラムは2023年3月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
noco-noco Pte. Ltd(以下、noco-noco)は2019年の創業来、「真に環境問題を解決する」を追求し、持続可能な技術とビジネスモデルの活用に取り組んできました。
CEOの松村正大氏に、この度の上場に至るまでの背景や事業の強み、そして成長戦略を伺いました。
noco-nocoを一言で言うと
脱炭素のソリューションプロバイダーです。
代表就任の経緯
当社は2019年に株式会社スリーダムアライアンスの子会社として設立されました。
スリーダムアライアンスは2014年に創業し、バッテリの部材開発から始まり、次世代向けにバッテリ自体の開発事業などの展開を進めてきました。
しかし、バッテリをただ単純に作って売るだけでは収益性が低く、実際にはその製造過程で大量のCO2を排出することにも課題意識を持っておりました。
そこで我々はシンガポールに3DOM Singapore(現 noco-noco)を設立し、当社で新しいビジネスモデルの構築を模索しながら事業展開を進めることといたしました。
私は親会社スリーダムアライアンスにて取締役等を務めたのち、設立前年の2018年に同社の代表取締役へ就任しておりました。
当社についてはもともとバッテリ開発などの専門分野に精通された方をトップに迎えておりましたが、ビジネスモデルの確立とともに上場をめざした本格的な準備を見据える中で、2022年11月に現職へ就任いたしました。
ターニングポイント
現在までを振り返りまして当社の転換点を挙げるとすると、それはバッテリのセパレータ開発だと思います。
そもそもセパレータとはバッテリの絶縁体のことでして、これがなければ短絡(ショート)を起こして発火してしまう可能性があります。
一般的にこのセパレータには目に見えないほどの大きさの穴があいており、充放電を行う際にイオンが行き来するための役割を果たしています。従来のセパレータはこの穴が不規則に開いていたため電池の効率が低くなっていました。
我々は大学の研究チームと協力し、規則的に穴が空いたセパレータを開発することでその効率を大幅に改善させることを目指しました。
ここにおける一番の壁はセパレータの量産でした。
細かい話ですが、20ー30ミクロンという非常に薄い膜でありながらもシワがよらず、かつ引っ張っても破れないだけの強度を持たせなければなりません。
さらに、穴の割合は全体の約72%とほとんどスカスカとも言える状態であり、この全てを兼ね備えた量産機の開発には多大な努力を要しました。
一昨年(2021年)に量産機を稼働することに成功し、また今年の2月にはサンプル出荷も実施されました。
積み重ねてきた努力が一定の成果となって現れたものとして、我々にとって非常に大きなターニングポイントであったと認識しています。
事業内容
主なビジネスモデルは、カーボンニュートラルのEVリースサービスと、長寿命バッテリインテリジェンスを持たせたIoT技術の開発です。
EVリースサービスについて
当事業には輸送業界におけるラストワンマイルの配送を担う自動車の電動化を促進するという意味合いが込められています。
先ほどご説明差し上げたセパレータをバッテリに使うことで、その寿命が倍に伸びるというデータがございます。
これにより、一回あたりの充放電コストは低下し、収益性を高めることができます。
このビジネスモデルには当社だけではなく、多くの潜在的なアライアンスパートナー企業が関わることになりますが、長寿命バッテリによって収益性が上がれば、メーカーからサービス事業者まで、サプライチェーン中の企業に利益をもたらすモデルを構築できます。
また、現状、大手バッテリメーカーですら車両が持つデータは共有されておりません。
彼らには改善の手立てがなく、それが故にバッテリの事故が多発している状況にあります。
当社は、世界規模の脱炭素化を加速させるためのアライアンスを組んでいきたいという思いがあります。
IoT技術の開発について
また、この長寿命性という技術を普及させバッテリの一次・二次利用そしてリサイクルにまで繋げていき、プロフィットを還元しながら環境に優しい形でのビジネス展開を進めていきたいと考えています。
現状は、我々の持つ高い技術力をサービスやプロダクトとして実装させる工程にあります。
具体的にはまだ申し上げられない部分ではありますが、東南アジアを中心に配送の車やバイク、公共バスなどに対し、サービスをプラットフォーム上で提供するプロジェクトを推進させております。
この地域は環境対応を求めており、すなわち素早いプロジェクト進行が可能であるという点が挙げられます。
このように、当社のビジネスにおいてバッテリは非常に重要なポイントであり、アライアンスの関係性を良好にするなど事業上のメリットにも還元されています。
事業における特徴は、我々がこの度上場にいたった背景にも繋がります。
環境に良いものとされているEVですが、実際生産時に発生するCO2は普通のガソリン車と比べて2倍にのぼるという実態があります。
また、そもそもバッテリの劣化が進んでしまうために、中古車市場ではなかなか値がつかず、それが故に電動化が促進されないという問題があります。
我々はバッテリの劣化を抑える仕組みを知財化し、またEVリースサービスにおいては、バッテリを車体から切り離した状態で保有することで、EVの初期導入費を抑えCO2をカーボンクレジットでオフセットします。
これにより、持続可能なビジネスモデルを構築することができ売上や事業拡大の目処がたったことでこの度上場するにいたりました。
中長期の成長イメージとそのための施策
現在、当社ではビジネスモデル自体に特許を出願中です。
また、価値提案やビジネスモデルをご評価いただきバッテリ、車両、配送企業など様々な層の潜在的なアライアンスパートナーからの引き合いを受けており、このポジショニングに大きな優位性を感じています。
特にバッテリのセパレータについては、その規則性をコントロールすることができるため、従来は困難とされていたシミュレーション開発を加速させる材料の一つとして、まだまだ大きな可能性を秘めていると言えます。
また、高エネルギー密度のバッテリや高温地域に対応できるバッテリの開発も進めています。
世界中のバッテリメーカーに使っていただくことにより、ビジネスモデルのコンビネーションで成長を目指しています。
我々のビジネスモデルは非常に新しく、まさに開拓者に近いものでありますので、投資家の皆様にそのマーケット規模や成長性を把握していただくのも中々難しいかと思います。
ですが、事業環境の大きなトレンドとしては、GAFAを初めとする欧米企業が2030年までにカーボンゼロにするという目標を掲げていることから、サプライチェーンに対して圧力がかかっている状況です。
これを受け、国内のメーカーとしてもEVへの対応を余儀なくされますが、そこには多くの課題があることでしょう。
当社は、本当の意味で環境に優しいビジネス展開を最優先した上で、アライアンスを組みながら企業をサポートし、マーケットを拡大していきたいと考えています。
注目いただきたいポイント
ご注目いただきたいのは、バッテリにIoTデバイスを搭載し、データの軽量化、エネルギーの最適化を実現する未来に向けて取り組んでいるということです。
また、当社は国や企業が避けられない排出をオフセットするためのカーボンクレジットを創出するプロジェクトをアジア太平洋地域で模索しています。
昨今、カーボンクレジットの取得を試みる企業が増えたことで規制強化の傾向もありますが、やはり世の中の流れとしては推進されるものに変わりはないと思います。
また、大量生産・大量消費から脱却し、モノをサービスで提供することやシェアリングをするという時代に合わせたビジネスモデルであるとも考えています。
創業来変わらず、そして今後の成長においても我々が目指すのは、本質的に環境を良くすることです。
スリーダムアライアンスでの8年間の技術開発を経て、今後は我々がどれだけ実際にCO2の削減やエネルギーの効率化という側面で成果を出していくのか、この部分にひとつご注目いただきたいと考えています。
環境問題は非常に危機迫った課題でありますので、当社としても上場後もこれを果たしていくことが使命であると考えています。
投資家の皆様へメッセージ
昨今、環境に配慮しているように表面上では見せかけ誤解を与える、グリーンウォッシュと表現されるような事例が増えています。
ですが、繰り返しになりますが我々は本当の意味で真に環境問題に取り組んでいる企業であると自負しています。
また、我々が持つソリューションを使えば、環境問題の解決に貢献できると信じています。
今後も皆様にご注目いただけるよう、引き続き努力してまいります。
本社所在地:4 Shenton Way #04-06 SGX Centre 2 Singapore 068807
設立:2022年
資本金:不明
上場市場:ナスダック(2023年8月28日上場)
ティッカーコード:NCNC