- 1,000万円の退職金を受けとる際の手取り額がいくらになるかを知りたい
- 退職金に課せられる税金の計算方法を理解したい
- 退職金を受け取る際の注意点とその後の管理戦略を学びたい
退職金を受け取る際にかかる税金や手取り額については、多くの人が正確な情報を求めていることだろう。
そこで今回は、1,000万円の退職金を具体例に、勤務年数と退職金額の関係性から退職金にかかる税金の仕組みと手取り額の計算方法、さらには受け取った退職金の賢い使い道までを、あらゆる角度から詳細に解説する。
本記事を通じて退職金の扱い方に関する疑問を解決し、賢い財政計画を立てよう。
長期勤務における退職金の見込み
退職金をうまく活用するために、退職金の基礎知識を解説していくので、1つずつ理解していこう。
ここでは、退職金(勤務年数別)の目安金額も記載するので、参考にしながら将来の計画をより具体的に考えてみてはいかがだろうか。
退職金の基礎知識
退職金とは、従業員が退職するタイミングで支払われるお金のことを指す。
今まで会社に貢献してきたことが金額として評価され、今後の生活などに充てるケースが多い。
種類は4つあり、どの退職金を受け取れるかは会社ごとに違う。
各種類の具体的な特徴を紹介していくので、確認していこう。
退職一時金
一般的に「退職金」と聞いてイメージされるのが、退職一時金である。
ルール・支払い方などを会社ごとにオリジナルで定めており、従業員に自社で用意した金額を支払う。
会社が定めた条件に当てはまる人(例:3年以上働いた正社員など)が、退職金を受け取れるようになっている。
- 金額:会社のルールによって決まる(例:基本給×勤続年数など)
- 受け取り方法:一時金
確定拠出年金(DC)
掛け金を会社が拠出し、従業員が資産運用を行い、運用結果を受け取れる制度のこと。
得られる金額は、結果によって変動する。
- 金額:掛け金×納付月数+運用結果
- 受け取り方法:一時金、年金、一時金+年金
確定給付年金(DB)
事前に受け取れる金額が確定しており、会社が運用を行う。
万が一、運用がうまくいかず、決まっていた金額よりも少ない場合は会社が補填する。
- 金額:掛け金×納付月数+その他(利回りなど)
- 受け取り方法:一時金、年金、一時金+年金
退職金共済
中小企業が退職金制度を導入するのは難しい傾向にあるため、外部で退職金の準備を行う。会社が定めた対象者のみ、退職金を受給できる。
- 金額:掛け金×納付月数
- 受け取り方法:一時金(条件を満たした人のみ、年金・一時金+年金も可能)
以上が各種類の基礎知識になり、導入されている退職金は違うため、「就業規則」などを確認してみるといいだろう。
勤務年数と退職金額の関係性
一般的に、一定期間以上勤めなければ対象金をもらえない傾向にある。
「一定期間」は会社によって異なるが、3年以上働いた従業員が退職金を受け取れるケースが多い。
また、退職する理由が「会社都合」「自己都合」かによって受け取れる割合が違う。以下の表を参考に、どのような割合になっているのか確認していこう。
勤務した年数 | 自己都合 | 会社都合 |
---|---|---|
1年未満 | 3.2% | 8.5% |
1年以上2年未満 | 15.0% | 21.8% |
2年以上3年未満 | 9.7% | 8.7% |
3年以上4年未満 | 56.2% | 42.2% |
このように、勤務した年数が3年以上になると、約半数もの割合で受け取れるようになっている。
では、定年退職が理由で[退職金1,000万円]を受け取るには、具体的にどれくらいの期間勤めている人が対象になる可能性が高いのだろうか。
以下の表では、1,000万円を受け取るケースを紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。
会社の規模 | 大学卒業 大学院卒業 | 高校卒業 ※管理・技術職・事務 |
---|---|---|
30~99人 | 不明 | 35年以上 |
100~299人 | 25年以上 | 35年以上 |
300~999人 | 20年以上 | 35年以上 |
1,000人以上 | 20年以上 | 30年以上 |
上記の表から、会社に勤めた期間は退職金の金額に大きく反映されることが理解できる。
しかし、注意すべきポイントは「退職金をすべての会社で受け取れる訳ではない」ということだ。
退職金制度を導入している会社のみが退職金を受け取れるようになっており、退職給付を導入している会社は80.5%という結果が「平成30年就労条件総合調査」から発表されている。
言い方を変えると、約20%は退職金制度を導入していないことになるので注意しよう。
勤続年数別の退職金の目安
「どれくらいの期間働くといくら受け取れるのか」というポイントを、具体的に知りたい人は多いだろう。
ここでは、勤続年数別の退職金の目安を紹介していく。
定年退職
最終学歴 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
大学卒 | 2,230万4,000円 | 1,091万8,000円 |
短大・高専卒 | 2,155万3,000円 | 983万2,000円 |
高校卒 | 2,017万6,000円 | 994万円 |
【退職金】自己都合
勤続年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 31万円 | 19万円 |
5年 | 52万円 | 36万円 |
10年 | 138万円 | 91万円 |
15年 | 289万円 | 171万円 |
20年 | 557万円 | 273万円 |
25年 | 863万円 | 397万円 |
30年 | 1,197万円 | 533万円 |
35年 | 1,546万円 | 673万円 |
42年 | 1,679万円 | 742万円 |
【退職金】会社都合
勤続年数 | 大企業 | 中小企業 |
---|---|---|
3年 | 52万円 | 27万円 |
5年 | 89万円 | 49万円 |
10年 | 214万円 | 122万円 |
15年 | 404万円 | 215万円 |
20年 | 665万円 | 328万円 |
25年 | 1,005万円 | 466万円 |
30年 | 1,368万円 | 605万円 |
35年 | 1,669万円 | 758万円 |
42年 | 1,925万円 | 849万円 |
以上が、勤続年数・企業規模・退職理由別の退職金額の目安である。
業種によっても金額は異なるため、1つの基準として参考にしてほしい。
退職金の金額別の税金について、より詳しく知りたい人は下記の記事を参考にするといいだろう。
「退職金に関する税金」を解説
会社から退職金を受け取ると、給与と同じように退職金に対して税金が発生する。
しかし、税金額の求め方は給与とは異なるのだ。
ここでは、「退職金に関する税金」について解説していくので、1つずつ学んでいこう。
退職金=退職所得
「◯◯所得」というキーワードを聞いたことはあるだろうか。
例えば、「給与所得」や「譲渡所得」などが挙げられる。
「所得」は10種類に分けられており、退職金を受け取った場合は「退職所得」に該当するのだ。
- 退職所得:退職金などが対象
- 給与所得:給料やボーナスなどが対象
- 事業所得:商業などの事業から得た収入が対象
- 配当所得:株式投資で得た配当金などが対象
- 利子所得:公社債で得た利子などが対象
- 不動産所得:不動産の賃貸から得た家賃収入などが対象
- 山林所得:5年以上所有していた山林から得た収入が対象
- 譲渡所得:資産を売った際に得た収入などが対象
- 一時所得:満期保険金などが対象
- 雑所得:年金や、上記に当てはまらない収入が対象
以上が所得の種類になり、得た所得の種類によって税金の求め方は異なるのだ。
退職金をうまく活用していくためにも、税金や税金の計算方法を理解する方がいいだろう。
退職所得の金額を求める方法
退職所得を一時金として受け取った場合、退職所得額は以下の計算式で求めることができる。
このように、退職所得額を求める場合は退職金額から控除額を差し引いた後に1/2にできるので、課税対象になる退職金額を大幅に減らせるのだ。
退職所得控除の金額を求める方法は、下記「退職所得控除額の計算方法」で詳しく解説しているので確認してほしい。
どの方法で受け取るべき?メリット・デメリットを解説
退職金を受け取る方法は、上記「退職金の基礎知識」で紹介した通り、一時金形式と年金形式がある。
会社によって選べる選択肢は異なるが、ここでは各方法のメリット・デメリットについて解説していく。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
一時金形式 | 「超過累進課税制度」という制度が使われているため、通常は所得が多ければ多いほど納める税金は増えていくが、退職金を給与と同じ扱いにするのは公平ではないと判断されているため、他の所得に比べると控除が大きい | 退職金を使い込んでしまう可能性が0ではない |
年金形式 | 一時金で受け取る金額が運用され運用で得た利益分が上乗せされているので一時金よりも多く金額を受け取れる 趣味などで退職金を使い込んでしまう心配がなくなる | 雑所得の控除額を超えた金額に対して毎年税金を納めなければならない 退職後の収入が「公的年金+退職金(年金)」になるため、社会保険料の金額が高くなりやすい |
以上が、各受け取り方のメリット・デメリットになる。状況などによって適した受け取り方は違うため、慎重に選んでいくといい選択ができるだろう。
1,000万円の退職金から実際に手に入る金額
ここでは、実際に「1,000万円の退職金」を受け取った場合、手取り額はどれくらいになるのかを求める方法を紹介していくので参考にしてほしい。
退職所得控除額の計算方法
退職所得から差し引ける控除額は、他の所得に比べると大きい傾向にある。
どれくらいの金額を控除できるかについて解説するので、確認していこう。
【計算式】
- 勤続年数20年未満:40万円×勤続年数
- 勤続年数20年以上:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
この計算式に数字をあてはめると、退職所得から差し引ける控除額を求められる。
実際に数字をあてはめて計算してみると以下のような式になるので、実際に計算してみよう。
- 勤続年数15年のAさん:40万円×15年=600万円
- 勤続年数25年のBさん:800万円+70万円×(25年-20年)=1,150万円
このように計算でき、上記で求めた数字を退職金額から控除可能なため、手元に残る現金が多くなる。
所得税の計算方法と控除の仕組み
退職金で得た税金をどのようにして求めていくかについて解説していくので、実際に計算してみてはいかがだろうか。
上記の計算式が、退職金に対する税金額を求める計算式だ。
税率と控除額は得た所得額によって違うため、以下の表を参考にしてほしい。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円~194万9,000円 | 5% | 0円 |
195万円~329万9,000円 | 10% | 97万5,000円 |
330万円~694万9,000円 | 20% | 42万7,500円 |
695万円~899万9,000円 | 23% | 63万6,000円 |
900万円~1799万9,000円 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円~3,999万9,000円 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円~ | 45% | 479万6,000円 |
退職金1,000万円の手取り額を計算
退職金1,000万円を受け取った場合の手取り金額を実際に計算していくので、計算の流れを把握していこう。
【Aさん】
退職金:1,000万円
勤務した年数:21年
計算の流れ | 計算式 |
---|---|
①退職所得の控除額を求める | 800万円+70万円×(21年-20年)=870万円 |
②退職所得の金額を求める | (1,000万円-870万円)×1/2=65万円 |
③所得税・復興税・住民税を求める | 所得税:65万円×5%-0円=3万2,500円復興税:3万2,500円×2.1%=682円 住民税:65万円×10%=6万5,000円 所得税+復興税+住民税=9万8,182円 ※復興税「復興特別所得税(東日本大震災の復興財源)」は、2037年まで2.1%加算 ※住民税一律10% |
④退職金から税金を引く | 1,000万円-9万8,182円=990万1,818円 |
以上の流れで計算すると、退職金の手取り額を求められるので、ぜひ参考にしながら計算してほしい。
退職金1,000万円の活用法
今までの頑張りが形となった退職金だからこそ、将来のためによりよい使い方をしたいと考える人も多いだろう。
ここでは、退職金1,000万円をうまく活用するための方法を紹介していくので、ぜひ参考にしてほしい。
退職金を活用する方法
退職金を得ると、「リフォームをしたい」「長期旅行に行きたい」などの希望が出てくるだろう。
また、これらの目標のために、「運用して資金を増やしたい」と考える方もいるかもしれない。
ただ、まとまった金額を得られる退職金だからこそ、しっかりと考えてから運用を行う方が今後の生活を安定させられる。
では、どのような方法で退職金を活用するのがいいのだろうか。
以下で紹介していくので、自分に適した方法を探してみよう。
おすすめの退職金活用方法
①投資信託 | プロが代理で運用を行うため、投資に関する深い知識は不要。 |
---|---|
②個人向け国債 | 金利や償還期限が異なる3種類から選べる。最低でも金利0.05%(変動10年)が保証されているため、コツコツと資産を増やせる。 |
③不動産投資 | アパートなどを購入し、家賃収入を得る方法で、不動産価格が上がれば売却することも可能。 |
③株式投資 | 配当金を受け取る・株主優待を受けられる。株式の購入時と売却時の差額で利益を得られる。 |
④定期預金(退職金向け) | 預入期間に応じて利息を受け取れる。退職金向けの定期預金であれば、他の商品より金利が高く設定されているケースもある。 |
⑤貯蓄型保険 | 貯蓄性(終身保険など)の高い保険に加入し、解約返戻金などを受け取る方法。 |
上記はいずれも資産運用する方法としておすすめの方法になるが、各方法のメリット・デメリットを把握した上で慎重に決めることが大切なポイントだ。
また、株式投資などはリスクのあるため、資産の100%を株式投資で資産運用するのではなく、「株式投資20%・国債20%…」などのように資産の種類を分散させるようにしよう。
退職金を現金として保有する=リスク
「損はしたくない…」と考え、現金として退職金を保有し続けることは「リスクになる」のだ。
なぜなら、インフレによるリスクがあるためだ。
インフレとは、インフレーションの略で、物の価格が上がり続けていくことを指す。
買い物に行くと、「昔は100円で買えたのに…」などのように感じたことはないだろうか。
自分が子どもの頃に100円で買えたものが、現在130円出さないと購入できないと考えると、お金の価値が下がっていることが分かるだろう。
インフレリスクを考慮すると、将来の退職金の価値は1,000万円以下になっている可能性がある。
そのため、現金で保有し続けるのではなく、投資信託などの方法で資産運用を行うのがおすすめである。
また、退職金を活用するべき理由には以下のような内容もあるので、1つ1つ学んでいこう。
- 年齢を重ねれば重ねるほど、収入を確保するのが難しくなるため
- 定年退職(60歳)から年金受給年齢(65歳)まで期間が空いてしまうため
- 長生きするリスクに備えて、お金を増やしておく必要があるため
このような理由から、退職金を計画的に活用することが大切だと言える。
特に公的年金の受給額が少ない人や個人年金保険などで老後の資金準備を行っていない人は、退職金で資産運用を行いながら理想的な生活に近づけるのがおすすめだ。
退職金運用なら「IFA」に相談
まとまった金額が退職金として受け取れるため、「資産運用をするとしても、どれがいいか分からない…」と悩んでしまう人も多いだろう。
株式投資などのさまざまな資産運用方法があるため、どの方法が自分にとって最適か把握するのは難しい。
そのような人におすすめの方法は、資産運用のプロフェッショナル「IFA」に相談することだ。
資産運用に関する深い知識を持ち合わせているため、さまざまな視点から考えた「おすすめのプラン」を提案してもらえる。
相談者の状況などによって最適な運用方法は異なるため、将来のためによりよい選択をしたい人こそ、IFAに相談するのがいいだろう。
「資産運用ナビ」では、その人に合ったアドバイザーを探せるため、ぜひ気軽に利用してほしい。
退職金を1,000万円受け取ったら上手に活用しよう
今回の記事では、退職金(退職所得)への理解を深めるための情報を提供した。
退職金を受け取る際にかかる税金について理解することが、退職金を受け取る上で重要なポイントだ。
退職金は、勤務年数が長いほど金額が上がる傾向にあり、企業の規模・役職・業種なども金額に反映される。
また、受け取った退職金をうまく活用すれば将来安定した生活を手に入れられるので、資産運用を行うのがおすすめだ。
「投資信託」「定期預金」などの退職金の活用例を参考にしながら、効率的に資産運用を行って欲しい。
自分にとって最適な方法が分からないと悩んでいる人は、ぜひ「資産運用ナビ」から自分に合ったアドバイザーを探してみてはいかがだろうか。
1,000万円の退職金に関するQ&A
ここでは、よくある質問に回答していくので、今後の参考にしてみてはいかがだろうか。