- 退職金の計算方法が知りたい
- 勤続年数によって退職金の金額がどのくらい変わるのか把握したい
- 企業規模や自己都合退職が退職金の金額に与える影響を理解したい
退職金がいくらになるのか、という点は多くの働く人にとって重要な関心事である。
この記事では、退職金制度の種類と計算方法の基本から、勤続年数ごとの退職金の目安、そして企業規模や退職の種類が退職金に与える影響を解説する。
この記事を通じて、退職金の基礎知識と退職金計算に関する疑問を解消し、将来のライフプランニングにも役立てることができるだろう。
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退職金計算の基本をおさえよう
支給される退職金の額を把握するためには、まずは計算方法の基本的なポイントを押さえておく必要がある。
ここでは、退職金制度の種類や計算方法、税金の仕組みを解説する。
退職金制度の種類
退職金制度は大きく以下の4種類に分けられる。
- 退職一時金制度
- 確定給付企業年金制度
- 企業型確定拠出年金制度
- 中小企業退職金共済
それぞれの内容を簡単に解説する。
退職一時金制度
退職一時金制度とは、従業員が退職するタイミングで退職金を一括で支給する制度のことだ。
勤続年数や役職、企業への貢献度などをもとに支給額を企業が自由に決定できる。
確定給付企業年金制度
確定給付企業年金制度は、従業員が退職してから一時金や一定期間にわたって年金形式で退職金を支給する制度だ。
企業が金融機関に掛金を拠出し、年金の原資を管理・運用しながら退職金を準備する。
企業型確定拠出年金制度
企業型確定拠出年金制度は、従業員自らが年金資金の運用を行う制度である。
掛金は企業が積み立てるものの、従業員個人が運用商品を選択する。
運用の成果に応じて受け取れる年金額が変動することが特徴だ。
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済(中退共)は、自社で退職金制度を設けることが難しい中小企業向けに運営されている国の退職金制度だ。
企業が共済に掛金を支払って退職金の積立を行い、退職後に共済から従業員に対して退職金が支払われる仕組みとなっている。
退職金の計算方法
退職一時金制度は企業が独自で給付額を計算する仕組みだが、一般的には以下のような計算方法を用いる。
定額制 | 勤続年数に応じた支給額をあらかじめ決める方法 |
---|---|
基本給連動型 | 退職時の基本給に勤続年数に応じた係数を掛けることで金額を算出する方法 |
ポイント制 | 基本給・勤続年数・役職・退職理由などの要素をポイント化し、累計ポイントに応じて金額を算出する方法 |
別テーブル制 | 勤続年数に応じた基準額を設定し、役職や退職理由を掛け合わせたテーブルを作成して金額を算出する方法 |
いずれの計算方法においても、勤続年数が金額に影響していることが分かる。
勤務先がどういった方法で計算しているのか知りたい場合は、退職金規程などを確認しておこう。
退職金にかかる税金の仕組み
退職金には、所得税及び復興所得税と住民税が課される。
いずれの税金も課税対象となる所得に対して所定の税率を掛けることで税額が求められる仕組みだ。
一括で受給する形式の場合、退職金は「退職所得」として税額が計算される。
退職所得は給与などのほかの所得とは分けて計算され、多額の退職所得控除が適用できるため、税負担は大きくなりにくい。
一方、年金形式で受給する場合、退職金は「雑所得」として税額を計算する。
雑所得はほかの所得と合算して計算を行い、公的年金等控除が適用される。
しかし退職所得控除に比べると控除額が小さく、税金の負担は退職所得に比べて大きくなりやすい。
また、一時金形式で受け取る場合の退職所得控除は勤続年数に応じて計算される仕組みだ。
勤続年数が長くなるほど控除額も大きくなり、税負担は小さく抑えられる。
退職金の手取り額を増やしたい場合は、勤続年数を長くすることがポイントとなる。
こうした税金の仕組みも踏まえた上で、退職金の手取り額を計算していこう。
勤続年数別に見る退職金の目安と変動要因
前述した通り、退職金の計算を行う際は勤続年数の長さが重要な要素のひとつとなっている。
勤続年数ごとにどの程度の金額が支給されるのかを把握しておくことで、自分が受給できる金額の参考になるだろう。
ここでは、勤続年数別の退職金平均額や退職金が変動する要因、退職金金額の推移を解説する。
勤続年数別の退職金平均額
厚生労働省中央労働委員会による「令和3年賃金事情等総合調査」では、職種・学歴・産業で区分した「モデル退職金」が公表されている。
モデル退職金とは、「学校を卒業してから直ちに入社し、標準的に昇進した」というモデル条件(学歴や年齢、勤続年数)に該当する者の退職金を指す。
以下の表は、調査で発表されたモデル退職金を勤続年数別にまとめたものだ。
勤続年数 | 事務・技術(総合職)・大学卒 | 事務・技術(総合職)・高校卒 | 生産・高校卒 |
---|---|---|---|
勤続3年 | 690千円 | 522千円 | 549千円 |
勤続5年 | 1,180千円 | 894千円 | 950千円 |
勤続10年 | 3,102千円 | 2,142千円 | 2,401千円 |
勤続15年 | 5,779千円 | 4,035千円 | 4,224千円 |
勤続20年 | 9,531千円 | 6,647千円 | 6,909千円 |
勤続25年 | 13,938千円 | 10,050千円 | 10,187千円 |
勤続30年 | 19,154千円 | 13,679千円 | 13,653千円 |
勤続35年 | 23,649千円 | 16,694千円 | 17,269千円 |
60歳 | 25,280千円 | 19,252千円 | 16,577千円 |
定年 | 25,639千円 | 19,712千円 | 18,397千円 |
大学卒・高校卒のいずれにおいても勤続年数が長い方が支給額は多い。
会社の意向や退職後のライフプラン、自分自身の能力・体力にもよるが、多くの退職金を受け取りたい場合は長く勤めることを検討しよう。
退職金の変動要因
勤続年数以外に支給額が変動する要因として、主に以下の3つが挙げられる。
- 学歴
- 役職
- 企業規模
本人の学歴は退職金支給額に影響を与える要因のひとつだ。
先ほど紹介した勤続年数別のモデル退職金の表を見ても分かる通り、高校卒よりも大学卒の方が全体的に支給額が多い。
また、本人の役職が支給額に影響するケースもある。在職時の役職が上になるほど支給額が増える仕組みを採用している会社が多く、同じ勤続年数でも差が生じる場合がある。
ポイント制や別テーブル制の計算方法を採用している企業は役職が影響することを頭に入れておこう。
そして、企業の規模も支給額の変動要因として挙げられる。
大企業を対象に調査を行った厚生労働省中央労働委員会の「令和3年賃金事情等総合調査」では、大学卒で定年退職をした場合の平均退職金額が22,304千円だった。
一方、中小企業を対象とした東京都産業労働局の「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」では、大学卒で定年退職をした場合のモデル退職金が10,918千円だった。
大企業と中小企業では約1,000万円の差が生じていることが分かる。
こうした違いを踏まえた上で、退職後の資金計画を立てていくことが大切だ。
退職金金額の推移とその背景
厚生労働省の「就労条件総合調査」では、およそ5年おきに退職金に関する調査を行っている。
以下の表は、大学卒で定年退職をした場合の平均退職金額を5年おきに比較し、推移をまとめたものだ。
平成15年 | 2,499万円 |
---|---|
平成20年 | 2,323万円 |
平成25年 | 1,941万円 |
平成30年 | 1,788万円 |
令和5年 | 1,896万円 |
令和5年調査では前回調査よりも支給額が増えているものの、基本的には平均的な支給額は減少傾向にある。
理由として「勤続年数以外の評価ポイントが増えた」という点が挙げられる。
従来は勤続年数によって支給額を決定する企業が主流であったため、長く勤めていれば支給額が増えていった。
しかし近年は勤続年数だけでなく、役職や会社への貢献度などを評価ポイントとして取り入れる企業が増えている。
勤続年数は絶対的な数字であるため企業側でコントロールできない一方、会社への貢献度などは客観的にはあいまいな評価基準となる。
成果に応じた金額を支給するという口実のもと、支給額をコントロールできるのだ。
こうした評価ポイントの変化が支給額の減少における要因のひとつと考えられている。
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退職の種類と退職金への影響
退職金支給額に大きな影響を及ぼす要素は勤続年数や学歴、企業規模だけではない。
「退職理由」も支給される金額に影響があるため、支給額の違いを目安として把握しておくことが大切だ。
ここでは、自己都合と会社都合による退職金の違いや特殊な退職状況のケース、退職金の交渉方法を解説する。
自己都合と会社都合の違い
厚生労働省中央労働委員会による「令和3年賃金事情等総合調査」では、産業別に退職事由ごとの平均退職金額を発表している。
以下の表は、退職事由ごとの平均退職金額をいくつかの業種を抜粋してまとめたものだ。
業種 | 定年(単位:千円) | 会社都合(単位:千円) | 自己都合(単位:千円) |
---|---|---|---|
調査産業計 | 18,729 | 11,972 | 4,473 |
製造業 | 19,005 | 11,228 | 5,282 |
建設 | 20,977 | 19,960 | 1,869 |
銀行・保険 | 8,788 | 14,410 | 1,189 |
私鉄・バス | 19,374 | 10,168 | 5,737 |
商事 | 20,528 | 25,203 | 10,355 |
上記の表を見ても分かる通り、自己都合退職は会社都合の退職に比べて支給額が少ない。
転職や結婚・出産、両親の介護などの自己都合で退職する場合は、支給額が減額される可能性が高いことを頭に入れておこう。
特殊な退職状況
会社都合・自己都合の違いによって支給額が異なるため、退職理由がどちらに該当するのかという点は退職金の受給において重要なポイントとなる。
特に、ハラスメントが原因の退職や病気による退職などがどちらに該当するのかという点は気になるところだろう。
ハラスメントが原因の退職の場合、会社側がハラスメントの事実を認めていれば会社都合での退職となる。
退職をする際にハラスメントが原因の退職であることを会社に伝え、会社都合での退職として処理してもらうことが大切だ。
会社側にハラスメントの事実を認めさせるためにも、心理的に余裕があれば証拠を確保しておくと良い。
もしメールや録音データなど客観的な証拠が残っている場合は、ハラスメントがあった事実を証拠とともに会社にしっかりと伝えておこう。
また、ケガや病気が原因で退職をする場合は自己都合退職となるのが一般的だ。
ただし、会社に責任がある事由によってうつ病などの精神疾患を発症した場合は、ハラスメントと同様に会社都合退職となる可能性がある。
会社都合退職は退職金の支給額だけでなく、失業保険の給付日数が長くなったり、待機期間が短くなったりするため、しっかりと証拠を準備して会社都合の退職であることを示せるようにしておこう。
退職金の交渉方法
会社の都合で退職勧奨をされた場合、退職金の増額を交渉したいと考える方も多いだろう。
退職後の生活のことを考えると、会社から退職を勧められても簡単には決断できない。
少しでも金額を増やしてもらい、退職後の安定した生活に繋げたいところだ。
一般的な退職金の交渉方法として以下のようなやり方が挙げられる。
- 特別退職金の交渉を行う
- 会社都合の退職として処理してもらう
- 有給休暇を買い取ってもらう
特別退職金は、退職勧奨に応じる場合に割り増しで支給される退職金のことだ。
退職勧奨に応じる代わりに特別退職金の金額を引き上げて欲しいなどの形で交渉を行う。
また、退職勧奨は会社側の都合による退職となるため、退職理由を会社都合として処理してもらうこともポイントとなる。
加えて退職時点で残っている年次有給休暇の買取なども請求しておくと良い。
ただし、退職金の交渉にあたってはトラブルになる可能性もあるため、弁護士などの専門家への相談をおすすめする。
退職金の賢い管理と活用法
受け取った退職金は「どのように使うか」という点も重要となる。
ここでは、退職金の賢い活用例や資産運用の必要性などを紹介する。
退職金の賢い活用例
まとまった金額が支給される退職金は、さまざまな使い道を想定できる。
なかでも賢い活用例として以下のようなものが挙げられる。
- 住宅ローンの返済に活用する
- 住居の修繕費用などに備える
- 資産運用に回す
住宅ローンの返済が終わっていない場合、ローンを完済しようと考える方も多いだろう。
退職後の生活において借金が残っていることにストレスを感じる方も多いため、残債を返済してしまうというのは退職金の使い道として有効だ。
また、マイホームを購入してから年数が経過している場合、外壁や屋根を修繕したり、内装をリフォームしたりと、長く住み続けるための出費を検討するケースも多い。
数十万円〜数百万円の出費が想定されるため、退職金の一部を備えておくと良いだろう。
そして、まとまった退職金を原資にして資産運用を行うというのもひとつの手だ。
退職後の生活を豊かにするためにも、退職金を預貯金で寝かせておくのではなく、運用に回すことを検討しよう。
個々の状況にもよるが、上記3つの使い道のなかで資産運用に回すことを中心に退職金活用プランを検討することをおすすめする。
退職金を活用した資産運用の必要性
退職金を活用して資産運用を行うべき理由として「公的年金だけでは不足する可能性が高い」という点が挙げられる。
退職金の運用を行い、不足する公的年金をカバーしなければならないのだ。
少子高齢化が進む日本では、現役世代の減少によって保険料収入が減る一方、高齢者の増加によって給付費は増えていく。
財源が不足していることが深刻な問題となっており、十分な年金が支給されないことが大きな課題だ。
また、今後継続的に物価が上昇した場合、生活費の負担は大きくなっていく。
公的年金でのカバーはどんどん難しくなっていくため、自助努力で資産を準備しなければならない。
こうした理由から、支給された退職金の運用を行って老後生活を安定させるための戦略を策定する必要があるのだ。
退職金運用における専門家の役割と効果
退職金の運用を行う際、資産運用の専門家への相談をおすすめする。
なぜなら、資産運用の専門家はあなたに最適な運用戦略の提案を行ってくれるためだ。
本来、資産運用は自分自身の資産状況や今後のライフプランによって戦略を変えなければならない。
しかし投資に慣れない方の場合、自分に合った投資先を見極めたり、資金計画を立てたりすることが非常に難しい。
資産運用の専門家は専門知識や豊富な経験をもとに、顧客の資産状況・ライフプランにマッチした投資先を判断し、アドバイスを行う。
カスタマイズされた提案を受けられるため、最適な運用戦略で退職金の運用を行うことが可能だ。
退職金運用を検討しているのであれば、ぜひ資産運用の専門家に相談してみよう。
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退職金計算には勤続年数や企業規模など複数の要素が関わる
退職金の金額は勤続年数や役職、企業規模、退職理由などが大きく影響している。
本記事でご紹介した退職金計算のポイントを踏まえ、自分自身がどの程度の金額を受給できるのか確認しておこう。
また、さまざまな使い道が想定される退職金だが、退職後の生活を安定させるためにも資産運用に回すことをおすすめする。
資産運用の専門家に相談し、カスタマイズされたアドバイスを受けて最適な戦略を策定しよう。
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