※本コラムは2024年2月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。
霞ヶ関キャピタル株式会社は社会課題を解決していく会社です。
現在は冷凍冷蔵倉庫需要の高まりに向けた物流事業、地方創生のためのホテル事業、超高齢社会のためのヘルスケア事業を中心に展開しています。
代表取締役社長の河本幸士郎氏に事業戦略の変遷や今後の成長方針を伺いました。
霞ヶ関キャピタル株式会社を一言で言うと
「変化を起こす側へ、回れ。」を社是に、社会課題を価値に変えていく事業家集団です。
霞ヶ関キャピタルの沿革
創業経緯
2011年9月の創業で、これは東日本大震災があった年に当たります。
創業の契機は、宮城県の大河原町にある被災したショッピングセンターを再生させることから始まりました。
その後、安定したキャッシュフローを目指し、2012年に施行された太陽光発電の固定価格買取制度(FIT1)を活用するためにショッピングセンターの屋上に太陽光発電施設を設置し、これを契機に自然エネルギー事業を開始しました。
そして2008年のリーマンショックの経験から、中長期の市場リスクを避けるべきだと考え、資金を効率的に回転させるモデルを採用し、これが現在のビジネスモデルの原型となりました。
社会貢献事業の更なる拡大と上場
2015年には、組織的に事業展開するために株式会社化し、さらに信用力と借入能力を高めるために上場を目指していきました。
その後、自然エネルギー事業で構築したビジネスモデルを展開する形でホテル事業に参入しました。
そして2018年11月には東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場しました。
2020年には、コロナウイルスの影響で物流施設への社会的ニーズが高まったため、物流事業へ進出しました。
当初は賃貸型の冷凍冷蔵倉庫に懐疑的な意見が多かったものの、実際には多くの物件が竣工前にテナントが決まっており、需要の高さが実証されました。
新たなる事業の柱とプライム市場へ
2022年には、超高齢社会への対策としてヘルスケア事業を新たな事業の柱として立ち上げました。
そして2023年10月には更なる事業拡大を目指して、東証プライム市場に上場市場区分変更を行いました。
また現在は、海外事業としてドバイでの不動産開発にも積極的に取り組むとともに、新規事業開拓も推進しています。
霞ヶ関キャピタルの事業の概要と特徴
概要
当社は主な事業として4つの柱があります。
当社は主な事業として4つの柱があります。まず1つ目は、物流施設ブランド「LOGI FLAG」シリーズを手がける物流事業で、2つ目が、多人数向けホテルブランド「FAV HOTEL」シリーズを手掛けるホテル事業で、そして3つ目は、駅近で快適なホスピスを手がけるヘルスケア事業、4つ目はドバイでの不動産開発を中心とした海外事業です。
事業における優位性
特徴的なビジネスモデル
当社のビジネスモデルの始まりは太陽光発電施設の開発に携わったことがきっかけです。
具体的には、山林などの太陽光発電施設に適した土地を購入し、開発許可を取得等を行い、太陽光パネルを設置できる状態にすることで、土地の価値を大きく高めて投資家に売却していました。
実は金融プレーヤーは不動産関連の泥臭い作業が苦手で、不動産ファンド出身メンバーが多くいる当社がその部分を担います。
これを応用して、現在のビジネスモデルを展開しています。
まず、当社は取得した土地を販売用不動産として保有し、開発計画を立てて付加価値を上乗せして開発ファンド投資家に売却します。
これは先ほどお話しした太陽光発電施設開発の手法を発展させたものです。
当社はこの段階で土地を売却することで、金融機関からの融資を返済することが可能です。
その後、開発のためのコストや工期の管理を行うことでプロジェクトマネジメント報酬を頂戴します。
そして、開発ファンド投資家が不動産ファンド投資家への売却時に上振れした収益分を、当社が一定の割合で成功報酬として頂きます。
そして、売却後の不動産のアセットマネジメントを行うことでアセットマネジメント報酬をいただきます。
この独自のビジネスモデルで、リスクを最小限に抑えて短期間でのビジネス拡大に成功しています。
多人数向けで省人化を実現した「FAV HOTEL」
当社の主力事業の1つである「FAV HOTEL」はコロナ禍でも黒字化を達成しました。
通常ホテル業界では最低40%の稼働率が必要とされていますが、「FAV HOTEL」は約20%の稼働率で損益分岐点に達することができます。
この損益分岐点稼働率の低さは設計段階から省人化運営のモデルでなければ実現できません。
また、基本的に東京や大阪のような都市ではなく地方都市にフォーカスしました。
例えば、熊本のように観光資源が豊富な地域には多人数で泊まれるホテルは非常に少ないです。
そこで当社は50室程度の小規模なコンセプトで展開し、メインターゲットである国内外の3名〜6名程度の旅行者がゆったりと落ち着けるような空間を提供しています。
また特徴として省人化したシステムがあり、予約・チェックイン・チェックアウトを人を介さずに行うことができます。
また、地元の魅力的なカフェなどを無料でテナントとして受け入れ、ロビーの案内を手伝って貰うことで人件費の削減とブランド力の向上を同時に実現しています。
冷凍冷蔵倉庫ニーズの高さ
現在の日本において、冷凍冷蔵倉庫のニーズは高く冷凍食品メーカーだけでなくコンビニチェーン等が自社製品を展開する際に必要な物流施設です。
また、築30年以上の古い冷凍冷蔵倉庫は、特定フロン規制と温室効果への対応から、自然冷媒を用いた新しい倉庫への建替需要が高まっています。
当社はそのようなニーズの高まりを背景に、冷凍冷蔵倉庫を中心に開発しています。
既に15施設(内3施設は竣工済)の冷凍冷蔵倉庫(冷凍自動、3温度帯含む)を開発しており、当社の中期経営計画期間(2021年9月~2025年8月)において国内で最も竣工予定件数が多い冷凍冷蔵倉庫の開発事業者となっています。
新しいホスピスの提供
ヘルスケア事業への取り組みは、市場ニーズの高まりと、既存ホスピスとは異なる価値を創造したいとの思いから始まりました。
まず市場調査を進めていくうちに、現状のホスピスには快適性の低い施設が多く、強い違和感を覚えました。
そこで、家族を入れたい、自分自身が入りたいと思えるような、快適なホスピスの提供を目指すことにしました。
私たちが目指すのは、駅近でアクセスが良く、分譲マンションのように外観も内装も美しいホスピスです。
私たちは、患者さんだけでなくその家族も気軽に訪れ、リラックスできるような空間を提供することを目指しています。
現在、複数のプロジェクトが順調に進行中で、これからも快適なホスピスを増やしていく予定です。
霞ヶ関キャピタルの中長期の成長イメージとそのための施策
賃貸型の自動の冷凍倉庫の開発
今後は冷凍自動倉庫の開発を積極的に進めていく方針です。
これは近い将来予測される慢性的な人手不足と倉庫業界の非効率な管理方法を変えていくために注力していきます。
従来の倉庫業界では、荷物を預けたい荷主が倉庫を探す際の手続きがアナログで、荷物の預け入れや引き取りに関しても多くの無駄がありました。
このレガシー的な慣習は物流の2024年問題にも繋がっています。
この問題を解決するためには、管理や倉庫内での作業を自動化した冷凍自動倉庫が必要です。
また、賃貸型の冷凍自動倉庫として提供することで1パレットでも、1日からでも預け入れができ、荷主の柔軟なニーズに対応することが可能です。
今後はマーケットの動向を見極めながら拡大していきます。
各オペレーションの内製化
今後の物流事業・ヘルスケア事業の拡大とともに、施設開発だけでなくオペレーションやシステムにも踏み込んでいく方針です。
例えば、先ほどの冷凍自動倉庫に関してはSREホールディングスと冷凍保管サービスの効率化システムによる予約、入出庫、在庫管理を担う合弁企業(JV)を設立しました。
また、ヘルスケア事業ではホスピスのオペレーション企業を買収して自ら運営したり、システム開発したりしていきます。
そして、ホテル事業においても既存のシステムの問題点である連動性の無さを改善するために、独自のシステム開発に着手しています。
これらのオペレーションやシステムを独自で開発し、内製化していくことで更なる利益の獲得と還元を目指していきます。
注目していただきたいポイント
当社には非常に優秀な人材が集まっています。
我々は人材を集める際に「面白いアイディアがあれば、私たちのプラットフォームを使って実現しよう」というメッセージを発信しています。
不動産事業を始めるには大きな投資が必要なため、個人で事業を行うことは難しいですが、何かアイディアがあれば資金力のある当社なら実現することができます。
また、BSに負担をかけない特殊なビジネスモデルのおかげで短期間で事業拡大に成功しています。
先ほどもお話ししましたが、例えば物流事業は発足から3年程で国内有数の冷凍冷蔵倉庫開発事業者となりました。
また、既にヘルスケア事業も形になり始めており、今後はオペレーションの領域でのチャレンジが始まります。
当社が求める高いクオリティを維持しつつ、開発を進めることは組織としての大きな課題です。
そこで不足している部分はM&Aで補いつつ、組織づくりとカルチャーの浸透を継続していきます。
今後も「事業家集団」である当社の成長に注目していただきたいです。
投資家の皆様へメッセージ
現在、私たちは第三ステージに進んでいると考えています。
第一ステージは上場まで、第二ステージでは事業の柱を確立し、プライム市場への昇格でした。
第二ステージでは事業基盤が固まり、本格的な土台が築かれたと感じています。
今後は事業をさらに拡大し成長していきますので、投資家の皆様には是非期待していただければと思います。
本社所在地:〒100-0013 東京都千代田区霞が関3丁目2番1号 霞が関コモンゲート 西館 22階
設立:2011年09月05日
資本金:17,938,130,000円※資本準備金を含む(2024年2月アクセス時点)
上場市場:東証プライム市場 (2018年11月28日上場)
証券コード:3498
- 「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」は、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度。電力会社が買い取る費用の一部を電気をご利用の皆様から賦課金という形で集め、今はまだコストの高い再生可能エネルギーの導入を支えている。この制度により、発電設備の高い建設コストも回収の見通しが立ちやすくなり、より普及が進むと考えられている。
出典:なっとく!再生可能エネルギー|資源エネルギー庁 ↩︎