※本コラムは2022年11月9日に実施したIRインタビューをもとにしております。
国内で唯一、成長産業支援というセグメントで事業を展開するフォースタートアップス株式会社。代表取締役社長の志水雄一郎氏に、創業の経緯や、スタートアップ創出元年の今考える今後の成長戦略について教えていただきました。
フォースタートアップス株式会社を一言で言うと
総合スタートアップ支援会社です。
創業の経緯
2013年に私は人材業界におり、『DODA』事業の立ち上げ担当をしておりました。その時に「日本はもう豊かではない」と気づくとともに、この社会課題の解決に取り組んでいない自分自身に恥じらいを覚えました。
当時は自分の関わる事業が成長することを一番に考えていましたが、気づけば世界の時価総額上位企業は30年以内に誕生した新産業が席巻する状況になっていました。
日本が世界の中からどんどん劣後している状況となっており、その衰退の原因を考えると国内HR事業者が伝統的なキャリアの型に捉われていることが要因だと気づいたのでした。
日本におけるキャリアの当たり前とは、大手企業かコンサルティングファームで働くことです。高度経済成長期においては、日本は世界で相対的に成長している国でしたので、このような安定を手にいれることはある意味「勝ち組」と言えました。
しかし、この失われた30年においては、たとえ国内では勝ち組の企業であってもグローバルでの競争力はありません。本来は、個人や企業、および国の成長のために人材支援を行うべきなのです。ですが彼らが保有しているキャリア情報は大手企業やコンサルティングファームの情報であり、そのような企業のニーズがあるところに行って支援をしているのです。
世界で最もHR事業者が伸びたのが日本だと言われています。キャリア情報を保有すればそこに介在価値が生まれ、収益が発生する、この仕組みのみで本質的な人材や企業の支援を行わなかった結果に気づき、反省しました。
この状況を打破するべく、起業家やCXO、ベンチャーキャピタリスト投資領域特化型のヘッドハンターになることを決めました。2013年にウィルグループへ入社し、当初は事業としてスタートさせました。
一人でも多くの優秀層が挑戦してくれて、影響力を発揮してくれるような、そのための支援活動を行おうと考えました。そして、ただやるだけでは意味がない、カリスマにならなくてはという意思のもと、ビズリーチ主催『Headhunter of The Year』を2年連続頂いた他、国内初の殿堂入りヘッドハンターの認定もいただきました。
そんな中、2016年に法人化を決めたのは、国内と米国のベンチャーキャピタルの圧倒的な違いに気づいたからです。
米国では、当時からセコイア・キャピタルやアンドリーセン・ホロウィッツなどのトップティアのベンチャーキャピタルがいくつもの優良企業を生んでいました。それは、彼らの仕事が非常にクリエイティブだったからです。
「人類や地球はこうあるべきで、だからこの産業ドメインが必要だ!」というように先に事業ドメインを決定します。その上で、プレーヤーがいなければ人材から集め、さらに資金、戦略への集中投資を行い、社会や持続性のある未来を作っていたのでした。
これに気づいた時、いくら私が一人でヘッドハンターをやっていても意味がないと感じました。自分でもチームを組成し、米国のように優良企業を輩出できるよう、データドリブンのハイブリットキャピタルを作ろうと決意したのでした。
また、会社設立から1年後の2017年には上場を決めました。これは、「日本に重要なのはスタートアップ支援産業だ」と気づいたからです。産業が存在し、このジャンプ台があるから強いスタートアップが生まれる、という構造を作らなければと思いました。
当時、国内のベンチャーキャピタルの中に産業化できるほどのイニシアチブを取れる事業者はおりませんでした。そのため、我々が総合スタートアップ支援会社として巨大なチームを目指すこととなりました。ただ、産業化のイニシアチブをとることを目指している企業が、未上場で社会的信用力も曖昧なまま事業を展開しているわけにもいきません。こうして上場を目指したのです。
さらに、日本が既に遅れをとっているのに流暢に企業価値を伸ばす、と言っている暇もありません。結果として当時国内二番目の早さ(3年3ヶ月)での上場を達成しました。
事業内容について
タレントエージェンシー、オープンイノベーション、そしてベンチャーキャピタルの3つに大別されます。現在の基幹事業は起業と転職面で人材を支援するタレントエージェンシーで、全体の8割を占めています。
当事業の強みは希少人材の採用です。我々はどのスタートアップが次に成長するのかを可視化・序列化して把握しておりますので、五里霧中になって営業を広げることもいたしません。成長が確実な企業様に、一社ずつ集中して徹底的に支援します。
全ての企業様に対し徹底的に向き合うことで、満足度の向上、そして採用コンサルティングのエクストラフィーといった形での高単価の実現につながっています。
また、既存企業への支援だけではなく、会社作りから支援することも行なっています。これが起業支援です。これまでに計6社を支援し、ここまで全ての企業様が次の調達ラウンドに進行する順調な成長を続けております。
オープンイノベーション事業でマネタイズの中心になっている事業は二つあります。
一つ目は2019年から行なっているPublic Affairsです。スタートアップ産業が新興していくための仕組みづくりを官公庁から受託し取り組んでいます。
二つ目は『STARTUP DB』です。未上場企業の登記簿や官報等の情報を可視化した月額課金サービスとなっており、主に大手企業様に提供しています。
先ほど、創業時にデータドリブンのハイブリットキャピタルを目指したと申し上げましたが、当サービスの始まりはこの構想に起因します。
日本はスタートアップ支援のための資金がかなり限られており、現実的に全てを支援することは不可能です。つまり集中投資が求められます。ですが、未上場企業は情報開示の義務がなく、どの企業が成長するのかがわかりません。そのため、スタートアップマーケットを可視化させることが重要であったというわけです。
さらに当社はデータの可視化だけでなく序列化も行なっています。各ベンチャーキャピタルさんが個別に持つ情報を整理し、市場全体での順位に並べ直しています。こうして、真に支援をするべき企業様を見極めています。
この情報はメディアや大学での研究、銀行、政府等に提供し、利用されています。
また、昨年からスタートしたベンチャーキャピタル事業では、2022年9月末時点で、3社に投資をしており、今後もヒトと資金の両面でスタートアップ支援を行ってまいります。
2022年はスタートアップ創出元年と言われております。ベンチャーキャピタル、オープンイノベーター、アクセラレーターなど新産業を取り巻くマーケットにいる人たちがどんどん規模を大きくし、肩をくみながら共同経済圏で伸びることが非常に重要です。そしてここに挑戦することが当社の今の役回りだと認識しております。
中長期の成長イメージとそのための施策
まず人材支援においては、スタートアップ特化という専業としてはすでに国内最大規模ですが、転職市場全体で見ると当然大手企業様の存在がありますので、さらなる成長を続けていきます。
Public Affairsは現在順調ですが、当社の社歴や上場からの年月を考えると入札権限のトップを取れないのが現状でもあります。これに対する解決策は法律を変えるか、異なるアプローチで対応するかとなりますが、大前提今頂く案件に最大限取り組むことが重要だと認識しております。
大企業とスタートアップを繋げるという点では、資本業務提携やグローバルオファリングのサポートを進めており、さらにM&A支援にも派生できないかと考えております。
また、当社はこれまであくまでもスタートアップのために人材・資金の支援をしてきた会社であり、大企業向けにアクセラレーションやオープンイノベーションの支援をしていませんでした。今後は当分野も拡大領域の一つと捉えています。
現段階ではここくらいまでしか描けていないですが、今あげた事業の全てで国内ナンバーワンになることは大変難しいことでしょう。しかし2022年を元年とし今後5年でスタートアップ政策が動いていく中、そのイニシアチブを取り続けることに挑みたいと思っています。
「10X(=5年で全てを10倍)」という言葉が掲げられています。しかし、支援策や予算が決定しスタートアップが存在しても、この間をつなぐ支援会社がいないのが日本の現状です。
この役割を担い市場成長を支えつつ、自社も成長し続けることに、今よりも多くの仲間と共に取り組んでいきたいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
労働人口の減少や国際競争力の衰退により、このままでは私たちがこれまで歩んできた過去よりも、未来は悪いものになってしまうでしょう。
であれば今の世代でこの社会課題を解決すること、また解決しようと生き生きとした姿でいることが、次の世代を生きる子供達にとっても希望となります。
その際にどんなチームを支援するのか、ぜひお考えいただき責任あるご投資をいただけましたら嬉しく思います。
本社所在地: 東京都港区六本木1丁目6-1 泉ガーデンタワー36F
設立:2016(平成28)年9月1日
資本金:2億26百万円 (2022年6月末時点)
上場市場:東証グロース(2020年3月13日上場)
証券コード:7089