- 退職金運用は豊かな老後生活のために必須
- 退職金運用の代表的な方法は定期預金・投資信託・株式投資など
- 退職金の全額投資・一括投資・集中投資は失敗のもと
- 退職金を安全かつ効率的に増やす投資戦略を立てるなら「退職金ナビ」でアドバイザーに相談がおすすめ
定年が近づいたり、実際に退職を迎えると、老後の生活に向けて退職金をどのように使うべきかが気になり始めるだろう。
平均寿命が伸び、受け取れる退職金の金額も減少傾向にあることから、結論、老後の生活のためには退職金運用が必須だ。
しかし、実際のところは「どうやって始めればいいのか分からない」「どの金融商品を選べばいいのか分からない」と頭を悩ませている方がほとんどではないだろうか。
そこでこの記事では、退職金におすすめの運用法を解説していく。また、初心者でも安心して退職金運用を始めることができるよう、退職金運用の基礎知識や気を付けるべき退職金運用のリスクについても合わせて解説する。
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おすすめを知る前に!押さえておきたい退職金運用の基本原則
厚生労働省が2023年10月31日に発表した「就労条件総合調査」によると、勤続20年以上の従業員における退職金は、大卒で1,896万円だった。高卒でも1,682万円となっており、退職金としては2,000万円近い金額を一気に受け取ることになる。
しかし、退職金は長い老後生活を支える貴重な資産なので、無計画に使い始めることは決してしないでほしい。そして、先述した通り受け取った退職金は運用することが大切だ。
そこでまずは、なぜ退職金を運用するべきなのか、また退職金運用によくある失敗とこれを踏まえて運用を始める前に知っておきたい基本原則を解説する。
なぜ退職金運用が必要なのか
退職金を運用することは豊かな老後生活に欠かせない。ただ、ここでの「豊かな老後生活」とは決して贅沢な生活だけを指しているのではない。
退職金運用が老後を安心して過ごすために必須であるその要因には以下の2点が挙げられる。
- 平均寿命の伸び
- 公的年金の実質的な目減り
厚生労働省が2023年7月28日に発表した「令和4年簡易生命表の概況」によると、男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳となっている。30年前の1993年では男性が76.25歳、女性は82.51歳であったように、事実平均寿命は伸び続けている。
また、生命保険文化センターの調査では、老後にゆとりある生活を送るためにかかる費用は月37万9000円とされている。一方厚生労働省が発表した令和6年度の厚生年金月額をみると、夫婦2人の標準モデルケースで23万483円となり、老後の生活費は月々約14万円が不足することになる。
この平均寿命の伸びと年金の減少によって問題となっているのが「資産寿命」である。
資産寿命とは、老後生活を送るにあたって、それまでに自分が形成してきた資産が尽きるまでの期間のことを意味する。つまり、お金の心配をしなくていい期間と言い換えられる。
ところが、昨今平均寿命が長期化したことにより、平均寿命よりも先に資産寿命が来てしまう恐れが出てきた。
これらのことから、定年後は退職金を中心に自身の資産を運用に回し、資産を効率的に増やしていく必要があるのだ。
退職金運用によくある失敗
とはいえ、いきなり2,000万円近い退職金を受け取ってしまうと、「投資して損するのが怖い」と思う方が大半だろう。もしかしたら退職金を運用して大きな損失を出したという話をSNSや身近な人から聞いている人もいるかもしれない。
では、退職金運用で失敗する原因にはどのような要因があるのだろうか。その要因は大きく3つ挙げられる。
- 受け取った退職金の全てを運用に回してしまう
- 同じタイミングで一括投資してしまう
- 一つの商品に集中投資してしまう
退職金運用に限らず、前提として資産運用は余剰資金の範囲内で行なうべきだ。最適な割合は人によって異なるが、一般的には総資産のうち運用に回すのは3割程度に抑えるべきだと言われている。
運用資産の評価額がマイナスになった場合、仮に資産の大半を投資に回していると、日々の生活費などにも影響を及ぼしかねないからだ。
また、退職金を時期をわけずに一括投資することも失敗の原因だ。マーケットや経済動向、国際情勢は日々移り変わり、これに伴う投資商品の価格変動を完璧に予測することは非常に難しい。
そのため、後から振り返ると値段が最も高い時やすでに下降トレンドに入っている時に投資していた、という可能性も十分にあり得る。そのような状況で一括投資してしまっていると、そこから資産の回復を目指すのも難しくなってしまうだろう。
そして、退職金を一つの商品でしか運用しないのも失敗のもとだ。
長期的に見れば上昇傾向にある投資先でも短期的には価格変動を繰り返している。また、たとえばコロナウイルスやリーマンショックなどの大きな事象が発生した時にそれまで成長が期待されていた分野に陰りが見えたように、必ずしもその投資先で利益が出るとは言い切れないのだ。
退職金運用は老後生活を安心して過ごすためのものなので、このように無闇に高いリスクを取って収益性を求めるよりも、安定性を追求して必要以上にリスクをかけない運用を心がけると良い。
退職金運用の計画は長期視点で立てる
退職金運用の成果を安定させるためには、「いつまでお金の寿命を延ばすか」を考えて長期目線で計画を立てることが必要だ。
期間別の運用パフォーマンスの違いについては、Bloombergの過去データを基にした以下のようなデータがある。
保有期間 | 最大値 | 最小値 |
---|---|---|
1年 | 38.2% | -30.4% |
5年 | 13.0% | -6.5% |
10年 | 9.9% | 0.1% |
同じ資産でも、保有期間が1年の場合にはリターンの最大値が38.2%、最小値が-30.4%であったのに対し、10年保有した場合のの最大値・最小値はそれぞれ9.9%、0.1%となった。
リターン値が限定的になったものの、長期保有することで保有期間を通してのリターンがマイナスになる確率が著しく低下していることがわかるだろう。
定年後から始める退職金運用では給与などの安定的な収入源がないため、積極的なリターンよりも、できるだけリスクを抑え資産を守る長期運用が有効なのだ。
なお、長期運用の有効性は過去の指数からも確認できる。金融庁によると、世界の主な株価指数に積立投資した場合の運用成果は、20年間でいずれもプラスであった。
もちろん過去のデータが将来の運用成果を保証するわけではない。
しかし、上記のグラフで短期的に下落している時期もあることを踏まえると、長期で保有することが退職金を安全に運用していくための鍵であることがわかるはずだ。
おすすめはこの5つ!退職金の運用方法を紹介
ここまでの解説で、退職金を運用することの重要性や失敗を防ぐ方法については理解できただろう。
ただ、では実際にどうやって運用すれば良いの?と疑問に思っている人が多いはずだ。そこでここからは、退職金運用におすすめの方法として、代表的な5つの手法を解説していく。
退職金専用定期預金
1つ目に紹介するのは退職金専用定期預金だ。預金だとあまり資産が増えないのでは?と思う人もいると思うが、銀行をはじめとする金融機関では、預け入れる資産が退職金である場合通常よりも高い金利を設定した独自のプランを設けていることが多い。
退職金を定期預金で運用する最大のメリットは、預け入れ期間が終了すれば必ず元本が戻ってくることだ。「守る運用」がテーマの退職金運用においてこの点は非常に大きなメリットとなる。
一方、デメリットとしてはやはり他の運用方法と比較すると期待できるリターンが低いことが挙げられる。またその他にも、金利優遇の期間が短い、投資信託など定期預金以外の運用手法と組み合わせることが金利優遇の必須条件になっている、などの注意点もある。
そのため、退職金定期預金は一時的な資産の預入先として活用するのがおすすめだ。また、その後資産をどのように運用するかを考えておく必要もあるが、それについてはこの後紹介する運用法を参考にしてほしい。
投資信託
2つ目に紹介するのは投資信託だ。投資信託は、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロや投資会社が選定した、様々な投資先に分散投資ができる金融商品である。
投資信託には様々な種類があり、例えば投資先によって株式投資信託・債券投資信託・不動産投資信託(REIT)などに分類される。また、特定の指数に連動することを目標とするインデックス型や指数以上のパフォーマンスを目指すアクティブ型などもあり、運用の目的や望むリターンに合わせて投資先を柔軟に選択できる。
また、投資先の定期的な見直しや入れ替えなども任せておけるので、退職金を機に運用を始める初心者の方にも安心の運用法だといえる。さらにNISA枠で購入することもできるので、税制メリットも得られるチャンスがある。
もちろん、プロが運用しているからといって絶対に損が出ないというわけではない。また、保有中は信託報酬というコストが発生し、これが利益から間接的に差し引かれている点も認識しておこう。
退職金を投資信託で運用するなら、同じ金額を一定期間ごとに投資し続ける積立投資で長期運用を実践するようにしよう。
株式投資
3つ目に紹介するのは株式投資だ。株式投資といえば株価の値上がりによる利益を想像する方が多いはずだ。株価が低い時に購入し、高い時に売却すればその差益がリターンとして受け取れる。
今回紹介する運用法の中では最もリスクが高いが、その分大きなリターンも狙えるということである。
なお、元本割れのリスクを抑えるには投資する企業の分析や株式市場全体のトレンド分析、さらに経済動向や国際情勢などの情報もチェックする必要があるため、株式投資は信頼できる相談先を見つけた上で取り組むのが良いだろう。
また、株式投資のメリットにとしては値上がり益以外にも配当金や株主優待などがある。
特に配当金は半期、または四半期ごとの決算のタイミングで受け取れるため、年金以外の定期収入とすることができる。配当株を選ぶ際は、業績の安定性と成長性を考慮した上で、高配当の実績がある銘柄を選ぶと良いだろう。
個人向け国債
4つ目に紹介するのは個人向け国債だ。そもそも国債とは国が資金調達のために発行する債券のことで、このうち個人投資家が購入しやすいような特徴をつけて販売されているのが個人向け国債だ。
変動10年、固定5年、固定3年の3タイプから運用期間を選ぶことができ、最低投資額は1万円と少額取引にも対応している。さらに、一定期間経過後は、投資家からの請求に応じて国が買い取る中途換金制度もあるため、運用期間の終了を待たずしてそこまでの利息と投資元本を受け取ることもできるのだ。
一方デメリットとしてやはり利率の低さが挙げられる。また、中途解約するともちろん最後まで保有した場合と比較して受け取れる利息は少なくなってしまう点にも注意が必要だ。
貯蓄型保険
そして最後に紹介するのは貯蓄型保険だ。資産運用と保険が結びつかない方もいるかもしれないが、この貯蓄型保険であれば万が一に備えながら資産の成長も期待できる。
貯蓄型保険の最大の特徴は、解約返戻金を受け取れることだ。解約返戻金は保険会社が予定利率に応じて運用しているため、支払った保険料の総額以上の解約返戻金を受け取れるケースがあるのだ。また、生命保険料控除の対象にもなるため、確定申告をすれば所得税が還付されるというメリットもある。
特に注意したいのは、外貨建ての貯蓄型保険だ。円建てよりも高い利回りが期待できるが、為替リスクが大きく損失を出す可能性も高い。また、保険料も割高になりがちだ。
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おすすめの運用法で成功するために!退職金運用の注意点
先述したように、退職金は資産を守ることを前提に運用することが重要であり、そのためには元本割れを起こすリスクを限りなく軽減する必要がある。
安定性を追求しながら収益性を出すために注意したいポイントを解説する。
高リスク・高リターンの金融商品は避ける
退職金の運用では、できるだけハイリスク・ハイリターンの商品を選ばないようにすると良い。
退職金は老後の生活資金として大切な資金のひとつなので、できるだけ目減りさせず運用することが求められる。
収益性ばかりに気を取られてリスクの高い商品に退職金を預けて、仮に運用成果がマイナスになった場合、元本を大きく欠損することになるだろう。
退職金をうまく運用するためには、必要以上にリスクが高い商品に預けないようにすると良い。
退職金の運用額は余剰金の範囲内に
こちらも先述した通りだが、受け取った退職金を全て運用に回すのはリスクを取りすぎている。
一般的に、資産は「すぐに使うお金」「緊急時やすでに用途が決まっているお金」「それ以外のあまったお金」に分類できる。
まずは退職金を受け取った後の総資産を把握した上で、日々の収支やこれから有るライフイベントにあわせて資産の分類分けを行い、余剰資金が明確になったらこれを投資にまわすようにしよう。
このように、退職金をいくら運用にまわすのかはリスクをコントロールする上で非常に重要な要素となる。
退職金の運用成果は定期的に見直しを
老後生活を支える退職金の運用期間は10年、15年と長くなる。その間には、短期的なトレンドに伴う市場変動や政策、また国際情勢などで運用成果も日々変動していくだろう。
長期的に安定した利益を積み上げていくには、定期的にパフォーマンスを振り返ることが重要だ。また、必要に応じて売却して利益を確定させたり、買い増しや別の商品に切り替えることも考えられる。
このような細かな調整が運用成果につながっていくのだ。
“万人におすすめの”退職金運用プランは存在しない
そして最後に理解しておきたいのが、すべての退職者に当てはまるようなおすすめの運用プランは存在しないということだ。
もちろん、先に挙げた定期預金や投資信託などはおすすめの運用手法である、ただし、「これらをどのような割合で組み合わせるのか」また「具体的にどの商品をいくら購入するのか」などの、いわゆるポートフォリオについての共通解はないのだ。
それは、受け取る退職金の金額、これまでの投資経験や今後のライフプランなど、あなたに最適な退職金の運用法を決める要因はいくつもあるからだ。
そのため、最終的には自分にあった運用プランをここまで解説してきた基本原則やリスクを避ける方法を踏まえて決めていく必要があるのだが、なかなか初心者に難しいと感じる人が大半ではないだろうか。
そこでおすすめしたいのが、株式投資のところでも少し取り上げた、「プロに相談しながら退職金運用をすすめる」という方法だ。次の章で詳しく解説しよう。
退職金運用の相談先は「退職金ナビ」で見つけるのがおすすめ
ここまで退職金におすすめの運用法を解説してきたが、「自分にこの方法があっているのかわからない」「本当にこれで利益が出るの?」などと、なかなか自分で決断できない人もいるだろう。
実際のところ、退職金運用は銀行を中心に証券会社やFPなど、専門家と相談しながら進めている人が多い。
そして結論からいうと、退職金運用は自分一人でやるよりも信頼できる相談先を見つけてプロと進めていくことが好ましい。それは、退職金が貴重な老後生活の財源であるからだ。
そこでこの記事の最後では、信頼できる相談先を見つける方法を紹介しよう。
退職金運用は専門家と進めるのが鍵
一口に「おすすめの退職金運用」といってもそれは投資家によってさまざまだ。それは、受け取る退職金の金額、これまでの投資経験や今後のライフプランなど、あなたに最適な退職金の運用法を決める要因はいくつもあるからだ。
また、例えば株式や投資信託は初心者にもおすすめできる運用法ではあるものの、常に変動するためマーケット動向や経済・国際情勢の動向について最新の情報をチェックする必要もある。
これらのことを完璧にこなすのは、初心者はもちろん、たとえ経験者であっても決して簡単なことではないはずだ。
ただ、退職金の運用で継続的に利益を積み上げていくためには、自分にあった運用法で適切なアフターフォローを行っていくことが鍵となる。
だからこそ、退職金の運用は金融のプロと相談しながら進めていくべきなのだ。
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退職金運用の重要性は、平均寿命の伸びと公的年金の実質的な目減りを背景にますます高まっている。
ただし、退職金は老後生活の貴重な財源であるため、運用する際はリスクを限りなく軽減する必要がある。そのため、収益性よりも安定性を追求し必要以上にリスクをかけない運用を心がけると良い。
また、あらかじめ計画を立て、資金管理と定期的な見直しを徹底することでさらに運用成果を安定させていこう。
そして、最も大切なことは万人にではなくあなたに合った運用プランを選ぶことだ。そのためには金融の専門家に相談することが鍵となる。
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