- 退職金運用は豊かな老後生活のために必須
- 退職金運用の代表的な方法は定期預金・投資信託・株式投資など
- 退職金の全額投資・一括投資・集中投資は失敗のもと
- 退職金を安全かつ効率的に増やす投資戦略を立てるなら「退職金ナビ」でアドバイザーに相談がおすすめ
定年が近づいたり、実際に退職を迎えると、老後の生活に向けて退職金をどのように使うべきかが気になり始めるだろう。
平均寿命が伸び、受け取れる退職金の金額も減少傾向にあることから、結論、老後の生活のためには退職金運用が必須だ。
しかし、実際のところは「どうやって始めればいいのか分からない」「どの金融商品を選べばいいのか分からない」と頭を悩ませている方がほとんどではないだろうか。
そこでこの記事では、退職金におすすめの運用法を解説していく。
また、初心者でも安心して退職金運用を始めることができるよう、退職金運用の基礎知識や気を付けるべき退職金運用のリスクについても合わせて解説する。
退職金は老後のために運用に活用するのがおすすめ

退職金はそのまま切り崩すのではなく運用し、資産の目減りを少しでも緩やかにしたい。
その理由は、以下のとおりだ。
退職金運用が必要な理由1:老後資金が不足するから
これからセカンドライフを満喫する世代に必要な老後資金は、退職金だけでは心もとない。
まず気になるのは、退職金の減少だ。厚生労働省の調査による退職金額の推移を5年ごとに見てみよう。
退職金額の平均と推移
調査年 | 大学(大学院)卒 | 高校卒 |
---|---|---|
2008年(平成20年) | 2,280万円 | 1,970万円 |
2013年(平成25年) | 1,941万円 | 1,673万円 |
2018年(平成30年) | 1,983万円 | 1,618万円 |
2023年(令和5年) | 1,896万円 | 1,682万円 |
近年の平均額は横ばいであるものの、15年前と比べると大学(大学院)卒が約380万円、高校卒が約280万円減少している。
そもそも、退職後の生活原資となっていた資金自体が減っているのだ。一方で平均寿命は伸びている。
厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」によると、2023(令和5)年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳だった。
昭和50年の平均寿命である、男性が71.73歳、女性が76.89歳と比較すると、10年近く延びている。
今後も医療の発展で、平均寿命はどんどん伸びていくだろう。退職後の時間は十分あり、それだけ生活費が長くかかるともいえる。
長生きは喜ばしいことだが、一方でリスクともなりえるのだ。とりわけ懸念されるのが、医療費負担の拡大である。
日本では、公的保険の導入で医療費は一部負担で済むとはいえ、高齢となり病院に行く回数が増えれば医療費もかさんでいく。
公的保険の適用は、診療費のみである点も注意が必要だ。差額ベッド代や先進医療費は自己負担となる。
また、見逃しがちだが退職後も健康保険料の支払いが発生する。
- 参考:厚生労働省「令和5年簡易生命表の概況」
退職金運用が必要な理由2:インフレ対策が必要だから
昨今、食料品や生活用品の値上げを実感している人も多いだろう。
国は物価上昇を施策として掲げ、消費者物価を前年比2%上昇させることを目標値として定めている。
今後も物価高となるインフレが続く可能性は高い。インフレが続くと、現金の価値は衰えていく。
退職金を預金のままにしておくと、価値が目減りし、これまでと同じ水準の生活ができなくなることも考えられる。
大きな額の退職金を手にし、資産が十分にあると感じていても、複数の要因が絡み合い、生活の途中で資金が足りなくなる可能性があるのだ。
生命保険文化センターの生活保障に関する調査(令和4年版)によると、夫婦2人世帯の最低日常生活費は月23.2万円、ゆとりのある生活には月37.9万円が必要とされている。
一方、年金支給額の平均は会社員で約14万7,000円、主婦や自営業の場合は国民年金のみで約5万7,000円だ。
会社員と主婦の世帯をモデルとして考えると、平均収入は月あたり約20万円である。
趣味やレジャーを楽しむゆとりある生活には、毎月約18万円の差額が発生する。
差額を補てんするには、資金を切り崩していく必要があるがそれだけでは心もとない。
- 参考:生命保険文化センター「生活保障に関する調査(令和4年版)」、厚生労働省「令和5年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
退職金運用が必要な理由3:老後の収入減と年金受給までの生活費をカバーするべきだから
老後資金を取り巻く状況が変化していることから、自ら積極的に資金確保を行わなければならない時代がやってきている。
そのため、退職金の運用で資産を育てるという考え方が必要だ。
投資は、富裕層の人だけが行うものではなく、誰しも安定した生活を維持するために欠かせないものになってきた。
自発的に運用をしなければならない状況は、決して悪いことばかりではない。個々のニーズに合わせて資産形成をアレンジし、自分の資金を育てられる。
運用の仕方は豊富で、選択しだいで老後の生活をより豊かにできる可能性も秘めている。
退職金運用に積極的に取り組み、安心した老後を過ごすための準備を行おう。
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おすすめはこの6つ!退職金の運用方法

退職金の運用で検討したい投資方法を解説する。
おすすめは、以下の6つの資産による運用である。
リスク | リターン | 流動性 | 運用期間 | |
---|---|---|---|---|
定期預金 | 低い | 小さい | 高い | 1年が多い |
個人向け国債 | 低い | 小さい | 普通 | 3年・5年・10年の選択が可能 |
投資信託 | 低い~高い | 小さい~大きい | 普通 | 長期 |
ETF(上場投資信託) | 低い~高い | 小さい~大きい | 普通 | 長期 |
株式投資 | やや高い | やや大きい | 普通 | 中期から長期 |
不動産投資 | やや高い | やや大きい | 低い | 長期 |
なお、最適な投資方法は人それぞれの状況によって異なるため、精査が必要だ。
各資産の特徴や向いている人を詳しくみていこう。
定期預金
メリット | 元本割れリスクがなく破綻時も一定額の保障がある |
---|---|
デメリット | 低金利が続いていることから大きな収益は見込めない |
定期預金は、退職金運用の選択肢として長年にわたり選ばれてきた運用方法だ。
預けた元本が保証され、満期まで確定した金利で運用できるため、安全性が高い。
普通預金と比べると金利が高く、預入期間も自由に選べるため計画的な資産形成が可能だ。
また、金融機関の破綻時でも預金保険制度により1,000万円までの元本と利息が保護される。
金融機関によっては退職金専用の金利優遇定期を用意しているところも多く、まとまった資金の預け先として活用しやすい。
一方で、現在の低金利環境下では期待できるリターンが限定的だ。
メガバンクの1年ものの定期預金金利は、0.125%程度にとどまっており、今後のインフレを考慮すると実質的な資産価値は目減りするリスクも存在する。
老後の生活資金確保を目指す場合、定期預金だけでは十分な運用益を得ることが難しい。
向いている人
- 元本割れのリスクを極力避けたい人
- 資金をいつでも引き出せる流動性を重視する人
個人向け国債
メリット | 安全性が高く元本割れのリスクがほとんどない |
---|---|
デメリット | 中途換金ができない制約がありリターンが控えめ |
個人向け国債は、国が個人投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券だ。
「固定3年」「固定5年」「変動10年」の3種類があり、最低1万円から購入できる手軽さが魅力である。
半年ごとに利息の受け取りが可能で、満期時には元本が戻される。
最大の魅力は、国が発行する債券であることから、債権の払い戻しができなくなるといった債務不履行のリスクが極めて低いという点だ。
また、金利や満期日が固定されているため、将来の収益が予測でき、計画的な資産形成が実現しやすい。
運用期間中の値動きも小さいため、長期の安定運用に適している。
一方デメリットとして購入から1年間は、中途換金ができない制約がある。
また、途中で換金をした場合は想定していた利回りを下回る可能性があり、市場金利の変動によっては元本割れのリスクも存在する。
運用期間が長期に限定されるため、資金の流動性も低くなる。
向いている人
- 安全性を重視し、長期での資産形成を目指す人
- 定期的な利息収入を得たい人
投資信託
メリット | 1つの商品で複数の資産に分散投資ができる |
---|---|
デメリット | 購入手数料や信託報酬手数料などがかかる |
投資信託は、投資家から集めた資金をプロの運用者が複数の資産に投資する金融商品だ。
1つの商品を選ぶだけで複数の資産に分散投資できるため、リスクを抑えながら着実に資産を増やせる。
金融機関によっては最低投資金額が1万円と少額から始められ、投資初心者でも運用の仕組みを学びながら投資を始められる。
さらに、商品が豊富でリスクやリターンの高さもさまざまだ。
国内外の株式や債券を中心に運用する銘柄や、不動産投資に特化している銘柄など自分の投資方針に合った商品を選べる。
毎月定額を積み立てることも可能で、市場の値動きに左右されにくい安定的な資産形成も実現できる。
しかし、投資信託はプロの運用者が投資先の選定や管理を行うため手数料負担が大きくなる傾向がある。
購入時の申込手数料や保有期間中の信託報酬、売却時の解約手数料など、複数の手数料が発生する。
数パーセントの手数料であっても長期的に運用すれば、成果に影響を及ぼすこともある。
向いている人
- 投資の銘柄選定や管理をプロに任せたい人
- リスクを抑えた分散投資を目指す人
ETF(上場投資信託)
メリット | リアルタイムで取引ができる |
---|---|
デメリット | 分配金を自動で再投資する仕組みがない |
ETF(上場投資信託)は、株式市場に上場している投資信託の一種である。
日経平均株価などの株価指数に連動して値動きする商品が多く、安定的な運用が可能だ。
様々な銘柄で構成されているため、個別企業の株式投資よりもリスクを抑えられる特徴がある。
通常の投資信託との違いは、株式と同じように取引所で売買できる点だ。
投資信託が1日1回の基準価額でしか取引できないのに対し、ETFは市場の動きを見ながらリアルタイムで売買ができる。
指値注文や成行注文など、価格を指定した注文も可能で、機動的な投資判断が叶う。
ただし、ETFは証券会社でしか購入できず、銀行や郵便局などでは取り扱っていない。
また、分配金は自動で再投資される仕組みがないため、再投資をする場合は手動で買い付けを行う手間が生じる。
向いている人
- 市場の値動きを見ながら機動的な売買をしたい人
- 指数に連動した効率的な分散投資を目指す人
株式投資
メリット | 銘柄が豊富で最適なものを選べる |
---|---|
デメリット | 価格下落時の心理的ストレスや情報収集の手間がある |
株式投資は、企業が発行する株式を購入し、値上がり益を得る投資方法だ。
企業の成長とともに株価が上がれば、購入価格との差額が利益となる。
また、企業が利益を上げた際に支払われる配当金や、株主優待として企業の商品やサービスを受けられる特典も魅力的だ。
投資対象となる銘柄は豊富で、成長性の高いベンチャー企業から安定的な配当が期待できる大手企業まで、投資家の目的に応じて選択できる。
自身で企業や市場を分析し、成長株や割安株を発掘する楽しみもある。
一方で、株価は景気動向や企業業績、市場心理などの影響を受けて大きく変動する。
最悪の場合、投資先企業が倒産すれば資産がゼロになるリスクもある。
また、売買の判断には企業の財務状況や業界動向、経済情勢など幅広い知識と情報収集が必要となり、相応の時間と労力が求められる。
向いている人
- 積極的な資産運用で高いリターンを目指す人
- 企業分析や市場分析に意欲的な人
不動産投資
メリット | インフレの影響を受けづらく安定した収益を得られる |
---|---|
デメリット | 大きな資金が必要かつ空室リスクや災害リスクがある |
不動産投資は、物件を購入し第三者に貸し出すことで家賃収入を得る投資方法だ。
退職金のようなまとまった資金があれば物件購入が可能で、入居者がいる限り継続的な収入が期待できる。
定年後の資産形成手段として注目される理由は、コツコツと収入を積み上げられる点だ。
株式などと比べて価格変動が少なく、毎月の収入見込みが立てやすい。人気エリアの物件であれば、長期的に安定した家賃収入が見込める。
将来的に不動産価値が上昇すれば売却益を得られることもある。注意点は、空室が続けば収入が途絶える可能性があるということだ。
空室リスクは、他の金融商品にはない不動産投資特有のもので、入居者ニーズを見極めた物件選びや設備投資も重要な課題となる。
また、物件の維持管理費用や修繕費用も必要だ。
災害による物件の損壊など、運用計画通りにいかないケースも想定される。
向いている人
- 長期的な視点で安定収入を目指す人
- 物件管理に積極的に関わる意欲のある人
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退職金は分散投資で「減らさない運用」を目指すべき!

時間をかけて資産運用をしていく際に重要なのが「分散」という考え方だ。特徴の異なる複数の資産へ分散をすることでリターンは小さくなるかもしれない。
しかし退職金の運用は、資産寿命を長くするという考え方が重要だ。ここでは「減らさない運用」をするための分散投資の方法について詳しく解説する。
異なる資産クラスへの分散
投資対象は、株式、債券、投資信託、不動産など多様に存在する。
退職金の運用時は、これらの資産に分散投資することが重要な戦略の1つだ。
特定の資産に集中するのではなく、値動きやリスクの特徴が異なる複数の資産を組み合わせることが推奨される。
例えば、株式のみに投資している場合、株価が大幅に下落すると大きな損失が生じてしまう。
そこで、株式とは異なる値動きをする債券にも投資することで、ポートフォリオ全体としての損失を抑制する効果が期待できる。
同じ資産クラス内でも、特徴の異なる投資対象を組み合わせることで分散効果を得られる。
株式投資を例にとると、大企業の株式とベンチャー企業の株式の組み合わせが考えられる。
取引量が多く株価が比較的安定している大企業と、成長期待が高いベンチャー企業の両銘柄を保有することで、より効果的な運用成果を目指すことが可能だ。
異なる特性を持つ資産を適切に組み合わせることで、リスクを分散しながら安定的なリターンを追求してほしい。
異なる国・地域への分散
投資先の国や地域を分散させることも、効果的なリスク管理の手法だ。
日本・米国・欧州といったエリアごとの分散や、「先進国」と「新興国」という経済発展度による分散、さらには流通通貨の特性による分散などが挙げられる。
1つの地域にのみ投資をしてしまうと、その地域で自然災害や紛争、政治的混乱などが発生した場合、金融市場が大きく変動し、深刻な損失を被るリスクが高まる。
一方で、世界を見渡せば、ある地域で情勢不安が続いていても、別の地域では急速に経済発展を遂げ、高い成長率を維持している国も存在する。
発展著しい国や地域に資産の一部を振り分けることで、経済成長の恩恵を享受できる可能性があるのだ。
ただし、投資先の選定には、各地域特有のリスクとリターンを慎重に見極め、バランスの取れた組み合わせを検討することが重要である。
異なるセクターへの分散
セクターとは、業種や業界のことを指し、特に株式市場において上場企業を業種別に分類した銘柄群のことを意味する。
例えば日本株式の場合、TOPIXの構成銘柄を33の業種に分類した「東証業種別株価指数」や、これを17業種に集約した「TOPIX-17シリーズ」などが代表的な分類となっている。
投資では、異なるセクターへの分散が欠かせない。
セクターごとに景気変動への感応度が大きく異なるためである。
例えば、電気機器や輸送用機器などは「景気敏感セクター」とされ、景気上昇時にはスマートフォンや自動車などへの購買意欲が高まることで株価が上昇しやすい特徴がある。
一方、食料品や医薬品などは「ディフェンシブセクター」と呼ばれ、生活必需品を扱うことから景気後退期でも株価が比較的安定している。
このような特性の異なるセクターを戦略的に組み合わせることで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減しながら、安定的なリターンを目指せる。
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退職金運用の資産配分はどうする?リスク許容度に応じたプランを紹介

低リスク安全重視プラン
運用ニーズ | 投資は不安なので少しずつ始めたい |
---|---|
リスクとリターン | ★★☆☆☆ |
資産配分 | 定期預金:50% 国債:20% 投資信託:30% |
リスクを極力避けたい方に適した投資配分とした。
「定期預金」と「国債」を主軸とし、元本の安全性を確保しつつ、低リスクの「投資信託」を30%組み入れることで、少しでも資産を成長させる狙いがある。
運用戦略としては、国債は長期国債よりも中短期国債を中心に、投資信託は債券型やインデックス型を選び、安定的な利回りを目指す。
市場変動リスクを抑えつつ、控えめなリターンを得る保守的な運用が叶う。
ミドルリスク安定プラン
運用ニーズ | 老後資金をしっかり確保したい |
---|---|
リスクとリターン | ★★★☆☆ |
資産配分 | 定期預金:20% 投資信託:30% 株式:30% ETF:20% |
安定性と収益性をバランスよく追求するプランである。
「定期預金」で安定資産を確保しつつ、「投資信託」や「ETF」を活用して分散投資を図った。
株式は市場変動リスクがあるが、中長期的な成長を狙って適度に組み入れる。
ETFは低コストで分散投資が可能なため、特に株式や債券型のインデックスETFを選ぶと良い。
安定性を維持しながら、資産の成長を目指す戦略だ。
ややハイリスク積極運用プラン
運用ニーズ | 趣味やレジャーなどゆとりある生活の資金にしたい |
---|---|
リスクとリターン | ★★★★☆ |
資産配分 | 投資信託:30% 株式:30% ETF:20% 不動産:20% |
高いリターンを追求する積極的な配分にしている。
「投資信託」と「株式」を合わせて60%とし、長期的な資産成長を狙う。
ETFも組み入れ、特に発展が著しい市場やテーマ型ETFなど成長が期待できるものを活用する。
「不動産」は収益物件を中心に、家賃による定期収入と価格上昇による売却利益の両方を狙う。
なお、このプランは市場変動リスクが高いため、資産価値の変動を許容できる方や、長期運用が可能な方に適している。
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賢く退職金運用を続けるためのポイント

退職金の運用を成功させ、長期で続けるためのコツを紹介する。順番にみていこう。
老後に合わせた資金計画を立てる
退職金の運用で意識するべき目的は、リタイア後の資産寿命を延ばしながら充実した生活を送ることだ。
そのため、資産の目減りを可能な限り抑える安定的な運用計画が求められる。
急激な資産増加を目指すのではなく、着実に収益を積み上げていく方針が望ましい。
退職後は、現役時代とは異なる収入支出の変化が予想される。具体的な資金計画を立てる際は、以下の3点を明確にすることが重要だ。
- 退職後も副業などで収入を得る可能性があるのか
- 退職金の取り崩し時期をいつにするか
- 年金の受給開始時期をどう設定するのか
これらの要素を踏まえ、年齢ごとの収入と支出を詳しく算出することで、必要な資金額が見えてくる。
長期的な視点で資金計画を立てることで、安定した老後生活の実現が可能となる。
退職金の運用額は余剰資金の範囲内にする
退職金を臨時収入と捉えて、全額を投資に回すのは賢明な判断とは言えない。
手元に大きな資金があるからといって、全額を運用するのは避けるべきだ。
退職後は生活スタイルが大きく変化し、それに伴う新たな支出が発生する。
例えば、自宅で過ごす時間の増加による光熱費の上昇、通勤手当のない移動費用の負担、住居の改装、趣味や余暇活動の増加などが考えられる。
思わぬ出費がかさみ、早い段階で運用中の資産を取り崩すことのないよう注意してほしい。
投資商品によっては流動性が低く、必要な時にすぐ現金化できない可能性もある。
そのため、運用する金額は余剰資金の範囲内に抑え、万が一の場合に備えた緊急資金も確保しておくことが重要だ。
将来的な住宅のリフォーム費用や医療費、充実したセカンドライフのための資金も考慮に入れておこう。
長期目線で運用する
退職金の運用で、短期的な資産増加を狙うことはかえってリスクを高める結果となりかねない。
一方で、長期投資であれば時間をかけながら着実に資産を成長させることが期待できる。
一般的に運用期間が長期化するほど、リターンは平準化し、より安定した収益を得られる可能性が高まっていく。
「もう退職だから投資をする時間がない」と焦る必要はない。退職金の運用期間はまだ10年、20年という長い時間が残されている。
そのため、短期的なリターンを追い求める必要はなく、時間分散を意識しながら投資を進めてほしい。
長期投資は、運用時の心理的なダメージが少なくなるというメリットもある。
一時的な価格変動が発生しても、「回復するまで待てばよい」という余裕を持つことで、精神的な負担を大きく軽減することができる
新NISAを活用して積立投資する
投資において気になるのが、各種コストの存在だ。
売買時の手数料や運用中の管理手数料に加え、分配金や売買益に対しては20.315%の税金が課せられる。
運用成果に大きな影響を及ぼすため、税制優遇制度であるNISAの活用を積極的に取り入れ、資産形成の効率を高めることが望ましい。
NISAは、投資による利益が非課税となる制度だ。なかでもつみたてNISAは、毎月一定額を自動投資できるため、着実に資産形成ができる。
2024年の制度改定では非課税投資枠が拡大され、より効率的な資産運用が可能となった。
新しいNISA制度の仕組みを十分理解し活用することで、従来以上の運用効果が期待できる。
ハイリスク商品への集中投資を避ける
高リスク商品への投資が必ずしも否定されるわけではない。
運用ニーズや資産状況によっては、積極的な運用戦略が適している場合もある。
しかし退職金の投資は、あくまでも個々のリスク許容度の範囲内で検討されるべきものだ。
インターネットや口コミで見かける成功体験を鵜呑みにして、自身の状況を十分に考慮せずにハイリスク商品に手を出してはならない。
特定の情報だけを信じ込んで、全額投資や特定の商品への集中投資を行うことは、大きな失敗を招く可能性がある。
大きなリターンを追い求めすぎると、市場の動きに一喜一憂し、短期的な売買を繰り返してしまいがちだ。
退職金運用の本来の目的から外れてしまいかねないため、注意してほしい。
退職金の運用成果は定期的に見直しする
退職金の運用は、投資を始めてからが本番だ。運用計画を立て、投資を開始した後の管理も重要である。
特に、相場変動によって変化した資産配分を、当初の計画に沿って調整する「リバランス」が欠かせない。
例えば、当初の運用計画で株式への投資比率を30%と設定していても、相場が好調に推移すれば、保有比率が30%を超えてしまうことがある。
この場合、株式の一部を売却し、他の投資商品を買い増すことで、資産全体のバランスを整えられる。
自身のリスク許容度に見合った投資を継続するためにも、このような定期的な見直しを心がけたい。
さらに、投資目的やリスク許容度の変化に応じて、資産配分自体を見直すリアロケーションも大切だ。
特にライフステージが大きく変化する際には、改めて配分の見直しを検討する必要がある。
このように退職金の運用では、緻密計画や厳格な管理が必要となるため、独自に実施するのは容易ではない。
そのため、銀行や証券会社といった信頼できる金融アドバイザーに相談することも選択肢の1つである。
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この章では、退職金運用を専門家に相談するメリットや、信頼できるアドバイザーの探し方について解説する。
退職金運用の難しさ
これまで見てきたように、退職金の運用では、まず老後に合わせた綿密な資金計画を立て、余剰資金の範囲内で運用額を決定する必要がある。
長期目線での運用を心がけ、NISAなどの税制優遇制度を活用しながら、ハイリスク商品への集中投資は避けなければならない。
また、定期的な運用成果の見直しとリバランスを行うことも重要だ。
しかし、退職金の運用には独特の難しさがある。
投資経験者であっても、何千万という大金を運用しながら取り崩すという経験は初めてであり、これまでの投資ノウハウをそのまま活用することはできない。
知識不足のまま独断で投資判断を行えば、想定していた資産管理が困難になるリスクがある。
また、退職後は年金以外の大きな収入源がないため、ひとたびマイナスを出すと収入で補てんすることが難しい。
運用での損失は、直接生活に影響を及ぼす可能性がある。
退職金運用を専門家に相談するメリット
退職金運用の難しさを考えると、専門家のサポートを受けながら、個々の状況に適した運用プランを策定し実行することが賢明だ。
専門のアドバイザーに相談すれば、投資や運用に関する専門的な知識を活用でき、安心して退職金運用を進められる。
アドバイザーによっては資産運用だけでなく、保険や不動産、相続などに関しても、的確な助言ができる。
当初は退職金運用の相談だけのつもりでも、ライフステージの変化に応じて不動産売買や相続など、新たな相談ごとが生じることもある。
そうした際にも、専門的な支援を受けられるのは心強い。
退職金の相談に強みを持つのは、銀行や証券会社の担当者などが挙げられるが、IFA(独立系フィナンシャルアドバイザー)も積極的に検討したい。
IFAは単なる金融商品の販売だけではなく、資産全体のコンサルティングを担う運用のエキスパートである。
特定の金融機関に属さない独立した立場であり、営業方針や販売促進の制約がないため、顧客本位の中立的なアドバイスが可能だ。
また、転勤や異動がなく、生涯にわたって一貫したサポートを提供できる。
長期運用が不可欠な退職金運用において、いつでも気軽に相談できる体制は大きな強みとなるだろう。
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退職金運用では、大きな金額を扱うことに長けたアドバイザーを選ぶことで、個別のニーズやリスク許容度を考慮した最適な運用戦略の策定ができる。
そんなアドバイザー探しに効果的なのが「退職金ナビ」だ。
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各アドバイザーの得意分野や保有資格、経歴に加え、担当顧客の年齢層や資産額も公表されているため、同じような資産背景を持つ顧客への相談実績も確認できる。
気になる担当者がいれば、そのまま直接相談依頼が可能だ。
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本記事では、退職金運用の効果的な投資方法とそのコツを解説した。
退職金を効果的に運用することは、老後の資産寿命を延ばすために欠かせない。
現代では退職金の減少、平均寿命の伸長、年金受給額の低下など、老後資金に関する課題が多い。
そのため、退職金を適切に運用し、資産寿命を延ばす必要がある。
おすすめの運用法は、定期預金、個人向け国債、投資信託、ETF、株式、不動産の6つを紹介した。
退職金運用を始める際は、これらの資産を目的やリスク許容度に合わせて適切に組み合わせていこう。
一方で、どの資産に投資すべきか迷ったり、運用に不安を抱えたりした場合は専門家の助けを借りることが重要だ。
退職金運用に強いアドバイザーと計画を立てることで、リスクを抑えながら効率的な運用が期待できる。
特に投資の初期段階では、プロの助言を受けて運用プランをしっかり構築することがその後の成果に大きく影響する。
ぜひ「退職金ナビ」を活用し、あなたに合った心強い専門家と出会ってほしい。
そしてアドバイザーとともに最適な運用戦略を検討し、退職後の安定した生活を実現させよう。
退職金の運用に関するQ&A
