- おすすめの劣後債を知りたい
- 劣後債がどんなものなのか知りたい
- 劣後債に投資するメリットやデメリットを理解したい
債券投資を検討する方の中には、劣後債に興味を持っている方がいるかもしれない。
劣後債は、普通社債と異なるメリットやデメリットが存在する金融商品だ。
本記事では、劣後債の仕組みやメリット・デメリット、劣後債の選び方などを詳しく解説する。
最後にはおすすめの劣後債を紹介するので、ぜひ最後まで読んで欲しい。
劣後債とは
劣後債は、「債券」の一種ではあるが、一般的な債券とは仕組みや特徴が異なる。
まずは、そもそも劣後債とはどのような債券を指すのかを確認していこう。
劣後債の仕組みや種類
劣後債とは、企業が発行する社債の一種だ。
発行体の企業が破綻(デフォルト)したときに元利金が返済される順番が一般債務よりも低いことから「劣後」債と呼ばれる。
一般的に、債券の発行体である企業が破産すると、優先債務から順番に返済されていく。
劣後債の投資家は、普通社債の投資家よりも返済される順番が遅くなるため、優先債務の全てが返済されるまで劣後債に対して元本や利息の支払いが行われない。
劣後債は、一般的な社債に比べてデフォルトした場合のリスクが高いため、利率が高く設定されやすいのが特徴だ。
普通社債(一般無担保社債)に比べてハイリスク・ハイリターンではあるが、株式に比べるとローリスク・ローリターンであると言える。
劣後債には、「永久劣後債」と「期限付劣後債」が存在する。
永久劣後債は、償還時期が決まっていない劣後債で、期限が付いた劣後債よりも高いリターンを得やすい。
永久劣後債のほとんどには期限前に償還できる条項が付けられており、発行体の任意の時期に早期償還できる仕組みになっているケースが多い。
期限付劣後債は、償還期限があらかじめ定められた劣後債だ。
5年以上の期間で発行され、5年目に任意償還日が設定されていることがほとんどだ。
償還期限が決められているため、将来使う予定のあるお金の置き場所の選択肢になり得るが、永久劣後債に比べてリターンは低くなる点に注意しよう。
劣後債と他の債券の違い
まず、劣後債と普通社債との違いをまとめると次のとおりだ。
種類 | 普通社債 | 劣後債 |
---|---|---|
弁済順位 | 高 | 中 |
利回り | 低 | 中 |
値動き | 小 | 小〜中 |
最大の違いは、上記で解説した通り「劣後特約」が付けられているかどうかだ。
劣後債は、劣後特約によって普通社債よりも返済の順番が劣るため、デフォルト時に元利金が支払われる順番が後回しになるという特徴がある。
簡単にいうと、破綻した企業の残余財産が100億円で、普通社債の発行総額が120億円だった場合、残余財産の全てを普通社債の投資家への返済に充ててしまうため、劣後債の投資家へ返済ができなくなる。
返済が行われる場合も、普通社債に比べて返済タイミングが遅くなるケースがある点にも注意が必要だ。
なお、普通社債はストレート債、シニア債などと呼ばれることもある。
企業が劣後債を発行する目的とメリット
企業がこのような金利の高い債券を発行する理由はあるのだろうか。
発行体である企業には、一定の条件下で劣後債の発行額の一部を「資本」としてみなされるというメリットがある。
株式を発行することでも当然資本を増やせるが、その結果発行済み株式の希薄化によるROEの低下が懸念される。
劣後債を活用することで、株式発行時のデメリットを避けつつ、資本比率を引き上げられるという点が大きなメリットだ。
特に、銀行の場合は劣後債を発行して資本性を高めつつ、同時に資金調達を行うという手法が多く見られる。
なぜ劣後債投資がおすすめなのか
ここまで解説した特徴を踏まえて、劣後債に投資する魅力や注意点にはそれぞれどのようなものがあるだろうか。
具体的に確認していこう。
劣後債投資がおすすめな理由
最大のメリットは、一般的な社債よりも利率が高いという点だ。
同じ発行体であっても普通社債より高いリターンを得やすいため、あえて劣後社債を選ぶという投資家もいる。
また、デフォルト時の取り扱い以外は、基本的には一般的な債券と同じ商品性という点も特徴だ。
複雑な条件を用いた仕組債や転換社債などのように難しい商品性ではないため、投資の初心者でも始めやすいという点はメリットとなるだろう。
満期までの期間が決まっている銘柄の場合は、あらかじめ運用期間がわかっているため、運用計画を立てやすいのも特徴だ。
数年間だけ運用を行いたい、毎年○%の利回りがほしい、と具体的に運用目標を立てたい方にも適している。
劣後債投資の注意点
さまざまなメリットがある一方で、特有のリスクには注意が必要だ。
特に、以下の5つのリスクは必ず事前に理解しておこう。
劣後リスク | 発行体がデフォルトした際に普通社債に比べて返済の順番が劣るリスク |
---|---|
期限前償還リスク | 期限前に償還されることで本来の償還期限までの利息を受け取れないリスク |
元利金支払債務免除リスク | 実質破綻時債務免除特約が付いた新型劣後債の場合、実質的にデフォルト状態だとみなされると元利金の支払いが免除されるリスク |
信用リスク | 発行体の業績や財務状況が悪化することで元利金の支払いが滞ったり支払われなかったりするリスク |
流動性リスク | 途中で換金したいと考えた時に希望のタイミングや価格で売却できないリスク |
上記のリスクに加えて、劣後債は個人向け国債や普通社債、株式、投資信託などの他の金融商品に比べて、購入できる場所が限られているのもデメリットとなる。
株式の場合は、証券会社を通じて証券取引所で取引されるため、どの証券会社で購入しても原則として同じ価格で購入できる。
しかし、債券の場合は証券会社との相対取引となるため、証券会社によって取引できる銘柄が限られる。
特に、永久劣後債は個人向けに発行されているものは少なく、自分で調べて購入するのは難しい場合もあるだろう。
取引価格も証券会社によって異なるため、人気のある銘柄や在庫の少ない銘柄は割高な価格になることもある。
投資する劣後債を選ぶポイント
投資を検討する際は、以下のポイントをチェックしよう。
- 発行体
- 格付け
- 利率/利回り
- 発行通貨
まずは、発行体がどんな企業かをしっかりと把握する。
劣後債はデフォルト時のリスクが高いため、財務状況や決算内容などを確認して、問題ないと考えられる銘柄を選ぼう。
その際に併せてチェックすべきなのが格付けだ。
格付けは、格付け機関が第三者の目線で発行体の信用力を記号で表したものだ。
一般的に、BBB以上の格付けが付与されている銘柄を投資適格格付、BB以下の格付けが付与されている銘柄を投資不適格格付(投機的格付)と呼ぶ。
続いて、利率や利回りをチェックしよう。劣後債の場合は、早期償還日以降に変動金利が適用されていることが多く、計算方法が複雑になることもある。
早期償還した場合、早期償還しなかった場合のそれぞれをシミュレーションしておくことが重要だ。
また、どの通貨で発行されているかも確認する。
ドル建やユーロ建など海外の通貨で発行されている銘柄の場合は、為替リスクが発生する。
為替の状況によっては、円ベースで損益が発生することもあるため、あらかじめ確認しておこう。
なお、日本企業が海外通貨建で発行するケースも多いため、日本の企業だからといって円建てとは限らないことを覚えておこう。
おすすめの劣後債を紹介
続いて、これまで発行された銘柄や現在販売されている銘柄をいくつか紹介していく。
ただし、既発債の販売条件は日々変わる点に注意しよう。
おすすめの永久劣後債
現在販売されている永久劣後債には、以下のようなものがある。
銘柄名 | 楽天グループ米ドル建永久劣後特約付社債 |
---|---|
利率 | 2031年4月21日まで 固定利率:年率6.25%(30/360ベース) 2031年4月22日以降 2051年4月21日まで 変動利率:5年米国国債利回り +4.956%(ISMA30/360ベース) 2051年4月22日以降 変動利率:5年米国国債利回り+5.706%(ISMA30/360ベース) |
購入単価 (2024年5月7日時点) | 81.396 |
初回コール利回り (年率・税引前) | 10.029% |
利払日 | 毎年4月と10月の各22日 |
発行日 | 2021年4月15日 |
初回コール日 | 2031年4月22日 |
申し込み単位 | 200,000米ドル以上100,000米ドル単位 |
取得格付け | 【発行体格付】-【証券格付】(S&P)B |
上記は、楽天グループが発行する米ドル建の永久劣後債だ。
2021年に発行された債権で、JTG証券で取り扱っている。
初回早期償還日までの利率は6.25%だが、販売価格が81.396に割引されているため、実質的な利回りは10%を超える。
ただし、上記の債券は取得格付けがBとなっているため、一般的には投資不適格とされる点に注意しよう。
おすすめの期限付劣後債
劣後債の購入方法は、新発債が新しく発行されるタイミングで購入する方法と、すでに発行された既発債を債券市場で取引する方法の2種類だ。
いずれにしても、証券会社で口座を開設して取引する必要がある。
ここでは、過去に発行された期限付劣後債の条件を紹介する。
2023年に発行されたソフトバンクグループ社債の発行条件は下記の通りだ。
発行体 | ソフトバンクグループ |
---|---|
利率 | 当初5年間固定金利4.750% 5年目以降変動金利 1年国債金利+4.840% 20年目以降変動金利 1年国債金利+4.890% 25年目以降変動金利 1年国債金利+5.590% |
申し込み期間 | 2023年4月17日〜2023年4月27日 |
発行価格 | 額面100円につき百円 |
利払日 | 毎年4月と10月の各28日 |
発行日 | 2023年4月28日 |
償還日 | 2058年4月26日 |
任意償還日 | 2028年4月28日以降の各利払日 |
申し込み単位 | 額面100万円単位 |
取得格付け | BBB(JCR) |
上記の劣後債は、ソフトバンクグループが発行した債券だ。
最終償還日は2058年となっているが、任意償還日が2028年以降に設定されている。
当初5年以降の金利は変動金利になり、1年国債の金利に上乗せ金利をプラスする形で適用金利が決定される。
こうした新発債は、販売期間内に証券会社で購入手続きを行う必要がある。
おすすめのドル建て劣後債
続いて、ドル建ての銘柄をいくつか紹介する。
ここでは、SBI証券で取り扱っている既発の米ドル建債券を抜粋してまとめた。
発行体 | 利率(税引き前) | 参考単価 | 利回り | 償還日 | 残存 |
---|---|---|---|---|---|
三井住友フィナンシャルグループ (実質破綻時免除特約付) | 3.202% | 90.70 | 5.213% | 2029年9月17日 | 約5.4年 |
バンク・オブ・アメリカ | 4.750% | 91.77% | 5.411% | 2045年4月21日 | 約21.0年 |
ゴールドマン・サックス・グループ | 4.20% | 98.53% | 5.314% | 2025年10月21日 | 約1.5年 |
出典:SBI証券 外貨建債券 既発債券
上記のように、発行体や償還日などによって債券の利回りは異なる。
また、日本の企業であっても米ドル建やユーロ建などで債券を発行することもある。
ドル建ての銘柄を購入する際は、為替リスクについても理解しておこう。
購入時から為替が円安に進めば、ドルを円に戻した際に為替差益が発生する。
逆に為替が円高に進めば、ドルを円に戻した際に為替差損が生じてしまう。
劣後債投資におすすめの証券会社
劣後債投資におすすめの証券会社として、SBI証券と楽天証券が挙げられる。それぞれおすすめの理由や魅力について紹介していこう。
SBI証券
大手ネット証券のひとつであるSBI証券は、債券でも幅広いラインナップを揃えている。
国内債券では個人向け国債や利付国債を取り扱っていることに加えて、外国債券では米国債や米ドル建ての劣後債も取り揃えるなど、リスク許容度に応じてさまざまな選択肢がある。
たとえば、現時点で募集されている劣後債については、三井住友フィナンシャルグループやシティグループ、JPモルガン・チェース・アンド・カンパニーが発行体のものもあり、いずれも5%前後の利回りが期待できる。
また、豪ドル建債券やメキシコペソ建債券など、米ドル建て以外の外国債券も豊富だ。
もちろん発注はオンラインで行うことができ、自分の都合に合わせて手続きが行えるのも大きな魅力である。
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楽天証券
楽天証券では、国内債券は国債だけでなく地方債の取り扱いがあり、外国債券に至っては200銘柄を超える取り扱いがある。
債券投資では総合証券の方が取り扱いが豊富であるイメージを抱く人も多いかもしれない。
しかし、楽天証券では総合証券に劣らないラインナップがあり、利便性と選択肢の豊富さが両立されているといえる。
また、楽天証券では銘柄の検索機能が充実していることも魅力だ。
参考利回りや残存期間、通貨など好きな条件を入れて銘柄を検索できるため、豊富なラインナップの中から自分の意向に合った銘柄をピックアップすることができる。
普通社債も多く取り揃えられているので、「さまざまな債券の中から投資先を探したい」、「劣後債以外も検討したい」という人は楽天証券がおすすめだ。
劣後債投資のコツ
劣後債投資に取り組む際は、いくつか心がけたいコツがある。それぞれくわしく紹介していこう。
発行体の信用力を見極める
劣後債投資を行う際は、通常の債券投資に取り組むとき以上に発行体の信用力を見極める必要がある。
万が一発行体が破綻して債務不履行となった場合、劣後債は他の債務者に比べて返済の優先順位が低く、元本や利息の支払いが滞るリスクがあるためだ。
破綻したときのリスクを低減するためには、発行体の財務状況や業績の推移、経営体制などをしっかりと把握したうえで、「債務を履行する信用力があるか」ということを判断して投資することが重要である。
特に、収益力や今後の見通し、経営の安定性はよくチェックしておきたい。
その際は、信用格付け機関からの評価も参考にすることで、より客観的な評価が下せるといえる。
リターンと利回りのバランスを考慮する
劣後債は、通常の債券に比べて高いリターンが期待できる一方で、債務不履行のリスクも高いという特徴がある。
そのため、劣後債へ投資する際はリターンだけを追求するのではなく、それに伴うリスクの大きさも理解しておく必要がある。
たとえば、「短期運用を希望しており、あまりリスクを許容できない」という場合、比較的リスクが高い劣後債にはあまり向いていないといえるだろう。
反対に、「ある程度リスクを取りながらリターンを狙いたい」という場合は、劣後債投資が選択肢のひとつになりえる。
まずは、「どれくらいの期間運用するのか」「どれくらいの損失を許容できるか」「どれくらいのリターンを希望するか」という自分の投資意向を明確にしておこう。
それを踏まえたうえで投資先を選定すれば、より適切な資産運用に取り組めるといえる。
資産運用の専門家へ相談する
劣後債は、通常の債券に比べてリスクが高い特徴がある。
その分高いリターンが期待できるメリットはあるものの、投資の際は十分リスクを検討する必要がある。
最近では、ネット証券を通じて自分で投資先を選定することもできるが、初めて劣後債に取り組む人の中には「仕組みやリスクが難しい」と感じる人もいるかもしれない。
発行体によってリスクも異なるため、「どの銘柄が自分に向いているか分からない」という人も多いだろう。
より適切な資産運用に取り組むためには、資産運用の専門家へ相談することがおすすめだ。
資産運用の専門家への相談は、不明点をクリアにしながら劣後債投資へ取り組めるメリットがある。
また、購入時だけでなく売却のタイミングについても相談できるので、「いつが売り時なのか判断できない」と不安を感じる人でも安心して債券投資に取り組める。
劣後債投資を始めるなら「資産運用ナビ」で専門家に相談しよう
これから劣後債投資を始める人は、専門家へ相談することをおすすめしたい。
ここからは、専門家へ相談するメリットや、相談先の探し方について紹介していこう。
劣後債投資は専門家への相談がおすすめ
劣後債には、一般的な債券投資にはない特有のリスクが存在する。劣後リスクや元利金支払債務免除リスクなどを理解したうえで投資しなければならない。
一部のネット証券ではオンライン上で劣後債に投資できる場合もあるが、「書面で読んだだけではリスクをきちんと理解するのが難しい」と感じることもあるかもしれない。
その点、専門家への相談は、分からない単語や不明点について対面でたずねながら投資に取り組むことができる。
しっかりと商品性を理解したうえで投資を行えるため、劣後債投資の経験がない人でも安心だ。
また、専門家へ相談することで、資産全体のポートフォリオについてもアドバイスがもらえる。
劣後債は比較的リスクの高い金融商品であるため、資産配分には十分注意したい。
専門家へ相談していれば他の保有商品とのバランスについても考慮してもらえるので、きちんとリスクをコントロールしながら資産運用を行うことが可能だ。
「資産運用ナビ」で相談先を探そう
劣後債投資の相談先を探す際は、資産運用の相談サイト「資産運用ナビ」を活用することがおすすめだ。
「資産運用ナビ」とは、全国30社以上の金融機関から信頼できるアドバイザーを無料で紹介するサービスである。
利用者は、いくつかの簡単な質問に回答するだけで、投資の悩みを解決してくれるアドバイザーとマッチングしてもらえる。
アドバイザーの検索サービスは無料で、何度でも相談できるため、ぜひ資産運用の心強いパートナーとなるような存在を「資産運用ナビ」で探してみよう。
債券でも高い利益が狙える劣後債投資に挑戦してみよう
劣後債は一般的な債券投資に比べて高いリターンが期待できるメリットがあるが、その分リスクも高くなる傾向にある。
劣後債へ投資する際は、万が一債務不履行となった場合のリスクをしっかりと理解したうえで取り組むことが重要だ。
より劣後債の特徴を理解したうえで適切な投資を行うためには、資産運用の専門家へ相談することがおすすめだ。
資産運用の相談サイト「資産運用ナビ」では、相性の良いアドバイザーを無料で検索できるため、ぜひ気軽に活用してみよう。