令和4年12月16日、与党より令和5年度税制改正大綱(以下、「大綱」といいます)が公表されました。
大綱では、「マーケット」、「産業」、「人材」への成長投資を一体的に強化するとともに、税制に限らない分配政策も適切に組み合わせることにより、一人でも多くの方が豊かさを享受できる「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出していくこととされています。
そのために、オープンイノベーション促進税制は、M&Aに適用できるよう、ニューマネーを伴わない既存株式の取得も対象とされ、研究開発税制においては、投資を増加させるインセンティブが更に強化されるほか、高度な研究人材に対する人件費を対象とする特別試験研究費の新たな類型が設けられました。
加えて、国際課税制度の見直しに係る国際合意に沿って、法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するグローバル・ミニマム課税が、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から導入されます。
また、我が国の防衛力の抜本的な強化を行うにあたり、歳出・歳入両方から安定的な財源を確保するために、令和6年度以降複数年にわたり段階的に、法人税、所得税及びたばこ税について、税制措置が実施される予定となっております。
本内容は大綱に基づくものであり、実際の適用にあたっては、令和5年3月までに成立が見込まれる関係法令等を確認する必要がある点にご留意ください。
NISAの拡充及び恒久化
NISA制度の抜本的拡充と恒久化を目的としまして、今後、新NISAが創設されることとなりました。
新NISAについて、令和6年以降の取り扱いとなりますが、恒久化的な措置とされます。
具体的にはこれまでの一般NISA・つみたてNISAを一つにまとめまして、生涯での非課税限度額を1,800万円とし、上場株式よりも投資リスクの低い投資信託などを対象とすることに限定したつみたて投資枠として、最大、年120万を設ける一方で上場株式にも投資できる枠を年間240万円儲けることとされております。
現行のNISA制度につきましては、令和5年12月末で終了することになりますが、現状の非課税口座内にある商品については、新制度における非課税限度額の外枠で、現行の取り扱いが継続されることになっております。
特定中小会社が設立した際に発行した株式の取得金額の控除の特例(=スタートアップ支援)
保有している株式を元手に売却し、一定のスタートアップへ再投資する場合、再投資につき、当該株式の譲渡益の課税に対して課税の優遇制度が創設されます。
投資時
日本に居住をする個人投資家の方々が、保有している株式を元手にスタートアップ企業に対して投資をした場合、当該投資金額をその取得年分の一般株式の譲渡所得の金額又は上場株式の譲渡所得の金額から控除することとされました。
- 次項の通り、従来のエンジェル税制についても改正が行われる予定です。
譲渡時
上記の控除を適用された株式につきましては、当該株式の譲渡時の譲渡所得の計算における取得価額の金額は、上記で控除をした金額のうち20億円の金額を超える部分を控除して計算することが可能となりました。
- 本税制は、エンジェル税制との選択適用となります。
エンジェル投資の拡充及び要件の緩和
エンジェル税制について、対象となる企業の要件が緩和せれるとともに、対象会社の株式を譲渡した際の取得価額の調整について優遇措置が行われることとなります。
譲渡所得
投資時については改正がございませんが、譲渡時についてはエンジェル税制対象株式のうち、以下の要件を満たす株式について、譲渡所得における取得価額の金額は以下の通り計算することとされました。
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化
税負担の公平性の観点(高所得者層ほど所得に占める株式や不動産の譲渡所得の割合が高い点など)から、極めて高い水準の所得について最低限の税負担を求める措置が導入されることになります。
株式の譲渡所得のみならず、土地建物の譲渡所得・給与または事業所得等を合算した所得金額(基準所得金額)から特別控除額である3億3,000万円を控除した金額に22.5%の税率を乗じた金額が納めるべき所得税の金額を超過した場合に、差額をついて追加的に申告する必要があることとなります。
(所得金額 – 3億3,000万円)×22.5% > 基準所得税額
基準所得金額が上記の左記を超過した場合、超えた部分に相当する所得税が追加で課されることとなります。