- 資産運用を始めるための最小限の金額はいくらなのか知りたい
- 資産運用はいくらから始めるべきなのか知りたい
- 運用額ごとの最適な運用方法が知りたい
資産運用や投資は、少しの金額からでも始められる。
新NISAや積立投資などの制度を活用すれば100円から始められるし、数千円あれば株式の一部購入も可能だ。
本記事は、これから資産運用をしようという方向けの、金額に焦点を当てた投資指南である。
運用開始が可能な金額から、無理なく投資できる額の決定方法、そして資産規模に合わせた運用方法に至るまで、さまざまな切り口で解説する。
ぜひ参考にしていただきたい。
資産運用はいくらから始められる?
資産運用とは、ただお金を貯めるのではなく、お金を増やすための方法や戦略を適用することを指す。
具体的には、投資(株式、債券、不動産、投資信託等)、預金、保険などの金融商品への資産配分を含む。
資産運用の目的には、インフレに負けない資産形成や、将来の財政的安定の確保がある。
資産クラスごとの基本的な「始められる金額」
資産運用は、その対象や方法により最低開始金額が異なる。
最低額は金融機関ごとに異なるが、基本的には以下のとおりである。
資産クラス | 始められる金額 | 説明 |
---|---|---|
株式 | 株価 × 単位株数 | 日本の株式は、単位株数は100株であることが多い 株価が100円なら10万円で購入できる |
投資信託 | 1万円~ | 投資信託の単位は「1口」であり、投資信託ごとに1口の額面が決められている たとえば、1口=1円で、口数が1万口以上のファンドなら、最低投資金額は1万円となる |
一般の利付国債 | 最低額面金額5万円~ | 一般の利付国債を購入できる最低額面金額5万円 普通社債などは10万円単位が多い |
個人向け国債 | 最低額面金額1万円~ | 個人が購入しやすいよう1万円からの購入となっている |
不動産投資信託(REIT) | 1口1万円程度~ | 売買単位は1口なので、リートの価格が購入できる金額 |
不動産(直接投資) | 数百万円~ | 物件の種類や地域によって、必要な金額は大きく異なる |
預金 | 普通預金1円 | 一般的に、残高が一定額(1,000円)を超えたら利子がつく |
貯蓄型保険 | 月々の保険料が数千円程度~ | 保険会社により異なる |
運用方法ごとの「始められる金額」
前項の資産クラスごとの始められる金額は、あくまでも「基本」のものだ。
金融機関などの仕組みや提供サービスを利用すれば、より低い金額でも開始できる。
たとえば株式個別銘柄の場合、基本は前述の「株価 × 単位株数」だ。しかし、新NISAや単位未満株取引などを利用すれば、より少額でも株の購入が可能になる。
以下は、代表的な少額からできる制度等である。
運用の方法 | 始められる金額 | 説明 |
---|---|---|
新NISA「つみたて投資枠」 | 100円から | 口座を持つ証券会社により異なる |
単元未満株取引 (株式ミニ投資、ミニ株) | 数千円程度から | 単元未満株での株式購入が可能な制度 SBI証券の「S株」では1株からの投資が可能 |
金融機関が設定する 投資信託の「積立投資」 | 100円から | 決まったタイミングに決まった金額で株式や投資商品を買い付ける(積み立てる)金融機関のサービス 楽天証券の「投信積立」は100円から設定できる |
金融機関を相手方として 商品を購入するサービス | 100円から | 金融機関を相手方として個別株・ETF・REITなどを購入するサービス PayPay資産運用なら100円1円単位で個別銘柄が購入できる |
iDeCo (個人型確定拠出年金) | 月々5,000円から | 月々5,000円から、1,000円単位で掛金を設定できる。 |
資産を預ける場所ごとの「始められる金額」
次に、資産をどの金融機関に預けるかによる違いを確認しておこう。
運用の方法 | 始められる金額 | 説明 |
---|---|---|
対面証券会社 | 数万円程度 | 最低限の金額が高く設定されていることが多い 前受金の入金が必要な会社もある |
ネット証券 | 100円から | オンラインで手軽に投資を始められる 手数料が比較的低い |
銀行 | 数千円から | かつては最低1万円程度からだったが、最近は積立型の商品で1,000円スタートも可能になっている |
ロボアドバイザー | 100円から | 多くは最低投資金額1万円 楽天証券のらくらく投資は、ファンド購入が100円から始められる |
資産運用はいくらから始めるべき?
資産運用を始めるための最適な金額は、個人により異なるため、一概に「いくらが適切」と言うことはできない。
ここでは「運用目標を起点とした、運用開始金額の設定方法」を紹介する。
① 運用の目標を設定する
まずは、資産運用の目標を設定しよう。
以下のように3つの時間軸で分けて、資産運用の目標を定めて欲しい。
- 短期目標
- 数年以内に達成したい目標
- 中期目標
- 5〜10年程度で達成したい目標
- 長期目標
- 10年以上先の目標
次に、目標達成のために必要な金額を計算して具体化しよう。たとえば、以下のように設定する。
② 余剰資金を割り出す
続いて、資産運用に回す金額を割り出してみよう。
運用に振り向ける金額は、生活にかかる費用や非常時への備えを除く「余剰資金」を充てることが原則だ。
余剰資金は、【資産や収入 – 短期的に必要なお金】により計算できる。
入ってくるお金から、日常生活での支払いや、緊急時のための資金を差し引いて求めるのである。
例として、①貯金のない20代会社員Aさん(月収25万円、生活費18万円)の余剰資金を計算してみよう。
Aさんは貯金がないため、収入ベースの余剰資金の計算となる。緊急資金として60万円の備えを持つため、1年間毎月5万円を積み立てていくことにした。
収入25万円から生活費18万円と、緊急資金用積立5万円を差し引くと、残るのは2万円だ。
この金額を上限として、運用を始めるのが一つの目安となる。
緊急資金の目安は一般的に、「3〜6か月分の生活費」とされる。Aさんなら、54〜108万円を準備しておく計算だ。
安定した職業の方や仕事が見つかりやすい若手は少なめに設定しても問題ないが、自営業者やフリーランスで収入が不安定な方は多め(6〜12か月分の生活費)に設定すべきである。
たとえば、② 貯金800万円の30代フリーランスBさん(月収35万円、生活費28万円)なら、緊急資金は多い方が良い。
以下は、貯金と収入の両方から計算した余剰資金である。
- 資産ベースの余剰資金
- 貯金800万円 – 緊急資金336万円(28万円×12か月) = 464万円
- 収入ベースの余剰資金
- 35万円 – 28万円 = 7万円
このほか、③収入が限定的で、予期せぬ支出の発生に備えるリタイア世代なら、資産ベースの余剰資金計算が中心となる。
資産から「平均余命を考慮した必要資金総額」を差し引いた残りが余剰資金となる。
余剰資金を割り出したら、ここからいくらを運用に回すかは投資家次第だ。
できれば、無理なく続けられる金額を設定して長く継続するのが理想である。
③ リスク許容度により「何にいくら投資するか」を決める
運用に回す金額が設定できたら、次に「何にいくら投資するか」を決めていこう。
これは、リスク許容度により設定できる。
ここで、先ほどの30代フリーランスBさんに、再度登場していただこう。
Bさんは目標を、「5年後に100万円の旅行資金、10年後に500万円の家の頭金、25年後に老後資金4000万円を準備したい」に設定した。
運用に回す資金は、前項で計算した「貯金ベースの余剰資金464万円、収入ベースの余剰資金7万円」の全額だ。
単純化のため、インフレ率や昇給は勘案しない。
- 5年後の100万円は、貯金66万円+毎月積立3万円で賄う
- 10年後の500万円は、貯金400万円を元手に運用して達成する
- 25年後の4,000万円は、貯金64万円と毎月積立7万円を運用して達成する
このような条件でシミュレーションを行ったところ、以下のような結果が得られた。
どの資産クラスにどの程度の資金を割り当てるかの、一つの目安が得られたことになる。
目標: 10年後の500万円 | 目標: 25年後の4,000万円 | |
---|---|---|
投資タイプ | 安定運用タイプ | スタンダードタイプ |
必要利回り | 年2.3% | 年4.5% |
株式 | 30%(国内株式5%、先進国株式15%、新興国株式10%) | 50%(国内株式10%、先進国株式30%、新興国株式10%) |
債券 | 70%(先進国債券50%、新興国債券20%) | 50%(先進国債券30%、新興国債券20%) |
ここまで紹介した方法は、あくまで一つの例に過ぎない。ご自身の状況に合わせて、さまざまに調整を加えて欲しい。
【運用額別】資産運用のポイント
運用金額を設定したら、いよいよ資産の運用に入るわけだが、その前に、注意すべき点を確認しておこう。
まずは、投資の原則を確認していく。そのうえで、運用資産の規模ごとの留意すべきポイントを整理していく。
すべての投資家が気を付けるべき「投資の原則」
以下は、運用金額やスタイルに関係なく、すべての投資家が気を付けるべきポイントである。
- 分散投資を心がける
- 投資対象を多様化することにより、一部の投資が損失を出しても、全体のリスクを抑えられる
- 緊急資金を確保する
- 予期せぬ出費が発生した場合でも、運用を継続できる
- 税制優遇制度を活用する
- 新NISAやiDeCoなどの制度を活用し、投資効率を上げる
- 低コスト商品を選ぶ
- 手数料等の負担は、利回りを悪化させる原因となる
- 長期的な視野を持つ
- 短期的な市場変動に振り回されず、時間を味方につけて長期的な複利効果を狙う
少額から始める資産運用のポイント
投資を始めるのに大金は必要ない。重要なのは、意志を持ってコツコツ続けることである。
少額でも一貫して投資することで、最終的には大きな成果を生むことができる。
できるだけ早く始めて複利効果を享受する
投資は、できる限り早く始めることが最も重要だ。
投資を始めるのが早ければ早いほど、そしてリターンを再投資すればするほど、投資資金が成長する時間が長くなる。
たとえば、毎月1万円を年率3%で30年間積み立てたとする。この場合、5年後は元本60万円に対し運用収益は5万円だ。
しかし、30年運用を続ければ、元本360万円に対し運用収益は223万円となる。長く続ければ続けるほど、雪だるま式に資産が増えていくのだ。
5年 | 10年 | 20年 | 30年 | |
---|---|---|---|---|
1万円を3%で運用 | 65万円 | 140万円 | 328万円 | 583万円 |
1万円を6%で運用 | 70万円 | 164万円 | 462万円 | 1,005万円 |
3万円を3%で運用 | 194万円 | 419万円 | 985万円 | 1,748万円 |
支出を見直し予算を再編成する
投資資金を捻出するためには、支出を見直して予算を再編成することが大切だ。
そうすることで投資資金を多く捻出でき、資産運用を計画的に始められるからである。
紙やスプレッドシートを準備して、以下の作業をすすめて欲しい。
- 自分の収入源と金額の把握
- 給与、ボーナス、副収入など、すべての収入を一覧に整理する
- 支出のリストアップ
- 次に、毎月の固定支出(家賃、ローン、公共料金など)と変動支出(食費、娯楽費、交際費など)をリストアップする
- 支出の分析
- 支出をカテゴリーごとに分析し、どこで節約できるかを見極める(外食の回数を減らす、サブスクリプションサービスを見直すなど)
無駄な支出は排除しよう。一方で、楽しみのための予算は確保しておくこと。
予備費として計上し、予定外の遊びや支出に備えておくと良い。
極端に厳しい予算を設定してしまうと、投資が楽しくなくなるだけでなく、挫折の原因にもなってしまう。
投資の継続には、厳しすぎる予算をつくらないこともポイントとなる。
自動積立で一貫して投資し続ける
自動積立の利用もおすすめだ。少額からでも一貫性を持って投資を続けることが可能になるからである。
一度自動積立を設定すれば、毎月決まった日に、自動的に投資が行われる。
これにより、市場の変動に左右されずに安定的に資金を投資できる。
定期的に一定額を投資する「ドルコスト平均法」を活用すれば、購入価格が平均化され、長期的にリスクを抑えられる利点もある。
新NISAのつみたて投資枠や、金融機関の自動積立サービスなどに申し込むことで、簡単に実践できる。
購入できる商品は、投資信託やETFなどさまざまにある。
少額でも分散投資を実践する
少額の投資でも、分散によるリスク管理は忘れずに実践して欲しい。
分散投資の効果は、リスクの低減にある。一つの投資先が不調でも、他の投資先が好調であれば全体の損失を抑えることができるからだ。
ある分析によれば、25年間の米国株式と米国債券の相関は、経済状況に応じて変わる。
経済成長期には、株式と債券の正の相関が高まる傾向がみられる一方、経済危機や市場のボラティリティが高くなる時期には、負の相関(逆方向に動く)が強まることが示されている。
分散投資は、ポートフォリオのリスクを効果的に管理し、安定したリターンを得るために有効な方法だ。
少額でも投資信託を選択するなど、多様な資産を保有するよう心がけて欲しい。
緊急資金の積立を優先する
たとえ投資に回す金額が少なくなったとしても、まずは緊急資金の積立を優先して欲しい。
資産拡大には長期間の運用が理想的だが、緊急資金が不足していると、不測の事態が発生した際に投資を中断するおそれがあるからだ。
市場が暴落した際に投資を中断すると、大きな損失を被るリスクが高くなる。
投資を継続するためにも、まずは緊急時に備えて十分な資金を確保しておくことが重要なのである。
長期的な視点を持ちつつ、細かな目標を設定する
少額投資家は、目標を細分化して達成していくのも一つのコツだ。
長期・中期・短期などの時間軸のほか、キリの良い金額目標を立てるとモチベーションを保ちやすい。
投資できる金額が1万円で、最終目標を資産3,000万円に置くとしよう。
利回り5%で運用した場合は、52年2か月という期間を要する。うんざりするほど長い期間であり、モチベーションを維持するのは難しい。
この場合、3,000万円は長期目標として維持しつつ、短期的には「10万円」「50万円」「100万円」などの小さな目標に集中する。
人間の脳はキリの良い数字を好み、達成感を得やすいという特性があるので、次の目標に向けたモチベーションを維持しやすくなる。
1,000万円の資産を運用するポイント
続いて、1,000万円の資産を運用する投資家が心がけるべきポイントを解説する。
まずは守りを固めてから、次のステップを目指す慎重な姿勢がこのクラスの投資家には重要となる。
高金利の借金を返済する
現時点で高金利の借金を抱えている場合は、その返済を優先的に検討することをおすすめする。
とくに、クレジットカードのキャッシングなど金利負担の重い借金があるなら、それを返済することが賢明だ。
たとえば、年利18%での100万円のキャッシングを行っていたとする。この場合、負担すべき金利は毎年18万円となる。
投資で安定的に18%以上のリターンを上げ続けることは難しいうえ、得られるリターンの多くが金利支払いに充てられてしまうため、投資の効果を十分に享受できない。
そのため、1000万円の資産があるのなら、まずは高金利の借金の返済に充てることを考えるべきだ。
債務を整理することで、健全な資産形成への第一歩を踏み出すことができる。
新NISAなどの税制優遇制度に最大限拠出する
新NISA(少額投資非課税制度)は、個人投資家の資産形成を支援する税制優遇制度だ。
投資から得た収益には、所得税および住民税等の合計で20.315%が課税されるが、新NISA口座を利用すれば収益に税金がかからない。
個人が利用できる非課税枠は1,800万円までで、年間で360万円(つみたて投資枠120万円、成長投資枠240万円)まで拠出できる。
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、新NISA同様に運用益が非課税になるだけでなく、掛金が全額所得控除の対象となるため、税負担を軽減できるメリットがある。
税金は運用効率に直接影響するため、これらの税制優遇制度を利用できる範囲で最大限活用すべきである。
ハイリスクな投資を避ける
高リターンの可能性は、非常に魅力的だ。しかし資産形成の途上にある個人投資家にとって高すぎるリターンの追求は、避けるべきものである。
高リターンの金融商品は、価格変動が大きい(ボラティリティが高い)。
短期的には大きな収益をもたらす可能性がある一方で、突然の暴落により元本を大幅に損なうリスクがある
こうした投資に手を出さず、安定的なリターンを積み重ねてこそ、次のステップにすすめるのである。
ぜひ、長期的に成長が期待できる銘柄や商品を見極める眼を養って欲しい。
企業の財務内容、競争優位性、市場での評価など、さまざまな観点から綿密にリサーチを行い選定すると良い。
分散投資をさらに意識する
資産が増えたことで得られる利点の一つは、より意識的に分散投資を実践できるようになることである。
資産が1,000万円を超えた今こそ、資産の多様化をすすめよう。
以下に、資産をどの程度分散するのが適切かについての一般的な見解を整理する。
- 株式投資では、最低でも10銘柄以上に分散投資することが望ましいと言われる。リスク分散の観点からは、20〜30銘柄程度が理想的
- ただし、銘柄数が多すぎると管理が難しくなるため、50銘柄以上は現実的ではない
- ポートフォリオ全体では、資産クラス(株式、債券、不動産など)を3つ以上組み合わせることが基本
- 各資産クラス内でも、さらに国内・先進国・新興国など、細かく分散を図ることが望ましい
- 1つの資産クラスや銘柄への集中投資は避けるべき(1つの銘柄への投資比率は10%以下が目安)
個人投資家の場合、個別銘柄を揃えて理想的なポートフォリオを作り上げるのは、面倒で難しいかもしれない。
投資信託やETFなどを活用し、リスクを抑えながらリターンを目指せる分散を模索して欲しい。
5,000万円の資産運用で注意すべきポイント
次に、5,000万円の資産を運用する投資家が注意すべきポイントについて解説する。
この資産規模に到達したら、投資家は目標の再設定をして欲しい。
運用目標を新たにし、それに合わせて運用戦略を調整することが重要だ。
資産運用の目標を再設定する
5,000万円が目標資産額のゴールであれば、これを維持するための運用戦略を考えるべきだ。
一方で、さらなる資産拡大を目指すのであれば、より積極的な対象への投資も選択肢となる。
「もうこれで十分だ」と考えるなら、資産維持を目標にすると良い。
一定の資産を元手に、残高をできるだけ維持しながら安定した収入源を得ようとする方法に「4%ルール」がある。
これは、総資産の4%を初年度に引き出し、その後は毎年インフレ率調整後の金額を引き出すという考え方である。
健全な市場でのリターンを想定した場合、引き出される資金のほとんどが元本ではなく利子や利益のため、資金は33年(あるいはそれ以上)維持できる。
資産5,000万円なら、初年度の引き出し額は200万円、次年度にインフレ率が2.0%なら204万円となる。
「もっと資産を増やしたい」と考えるのなら、さらにリスクを取る投資を検討すると良いだろう。
そうした方は、次項以降のポイントも参考にして欲しい。
集中投資のリスクが高くなっていることを認識する
資産が5,000万円という規模になると、投資先の選択肢が大きく広がる一方で、ポートフォリオの集中リスクが高まっていることに注意を向けなければならない。
特定の企業、業種、または資産クラスに偏重した投資は、大きな損失を招く危険がある。
たとえばS&P 500では、20%の下落は過去に5年に1〜2回のペースで、30%以上の下落は5〜15年に1回程度の頻度で発生している。
仮に投資家がS&P500連動の商品に全額を投資していたなら、一時的にではあれ資産が3,500万円から4,000万円に転じてしまうおそれがあるのだ。
「儲かりそうな投資」に飛びつかない
資産が5,000万円を超えてくると、投資先の選択肢も大きく広がってくる。
株式や債券といった伝統的な金融商品だけでなく、未公開株式や不動産、さらには事業への直接投資なども視野に入ってくるだろう。
また、金融機関からの投資提案も増えてくることが予想される。
しかし、良い投資話を受けたとしても、「これは儲かりそうだ」と安易に飛びつくのは危険である。
大きな元手を必要とする投資や、商品の仕組みが複雑で理解が難しいものには、慎重に対応する必要がある。
なかでも「必ず儲かる」と謳う未公開株への投資話やリスクが見えにくいデリバティブ商品への投資は避けるべきだ。
節税や保険など「守り」も固めておく
5,000万円の資産を築いた今こそ、「守り」の部分を固めておくことが重要だ。
投資で資産を増やすことも大切だが、資産を守り、次の世代に引き継ぐ備えを万全にしておくことも必要となる。
もっとも大切なのは税金対策だろう。資産が大きくなるほど、税金の影響は無視できなくなってくる。
所得税だけでなく、不動産の保有にかかる税金、さらには相続・贈与への備えも重要だ。
生前贈与や財産分与などは、早めの対策により、負担を軽減できるよう準備しておきたい。
税理士などの専門家とよく相談し、適切な税務プランニングの立案と実践をおすすめする。
医療保険や各種保険による備えも大切だ。万一の病気、ケガ、または自然災害による損失に備えて、適切な保険への加入は欠かせない。
資産が増えるほど、賠償責任リスクも高まるため、個人賠償責任保険など、リスクに見合った保険を検討すべきである。
1億円の資産運用で注意すべきポイント
続いて、1億円超を運用できる投資家に注意いただきたいポイントを整理する。
これまでのアドバイスをすべて確認したうえで、以下の点に留意して欲しい。
適切な資産運用アドバイザーの活用
自力での運用に難しさを感じたら、金融機関の富裕層向けサービスを活用するのも有効な方法である。
たとえばカスタムメイドの運用サービスと投資一任契約を特徴とする「富裕層向けラップ口座」などは、検討の価値があるだろう。
しかし、ラップ口座で運用できるのは金融資産のみである。
不動産資産などは含まれないため、より包括的な運用を行いたいなら、IFAなどの柔軟なアドバイザーへの相談がおすすめである。
リスク許容度から投資対象を選ぶ
1億円での投資を行う際は、目標とリスク許容度を今一度確認して欲しい。
1億円の資産があれば、無理にリスク商品を選択せずとも、目標を達成できる可能性があるからだ。
運用の目標をインフレ対策のみに置くなら、安定的な投資先でも達成を目指せる。
金融電卓で、1億円を毎月30万円30年間で取り崩す場合の利回りを計算すると、想定利回りは0.5%だ。
インフレ率を2%と仮定し考慮した場合、2.5%の利回りを得られれば良い。
定期預金や国債、安定的な配当株などの組み合わせでも、この目標は十分に達成可能だ。
一方で、より高いリターンを求めるのであれば、リスク許容度に応じて、オルタナティブ投資(代替投資)と呼ばれる不動産やコモディティ、プライベートエクイティなどへの投資も検討できる。
ただし、これらはリスクが高く複雑であることが多いため、専門家に相談しつつ慎重な検討が必要だ。
自分なりの運用方針を貫く
資産規模が1億円に達すると、魅力的な提案がさらに次々と舞い込んでくるだろう。
そのような状況においても、自分なりの運用方針を貫くことが最も重要である。
割安株にコツコツ投資するのがあなたのスタイルなら、目先の高リターンを求めた投機銘柄は適さない。
インカムゲインを重視するなら、キャピタルゲインを狙いの短期売買は避けるべきだ。
他人の投資行動に惑わされず、自身の優先順位、目標、価値観に基づき、自分が精通している分野や商品への投資を中心に行うことが重要だ。
また、市場のタイミングを狙いすぎないことも肝要である。
資産運用をいくらから始めるか始める金額や運用方法の相談は誰にするべきか
資産を賢く運用し、着実に増やしていきたいと考えるなら、専門家への相談が不可欠だ。
これは、少額から投資を始める人にも、すでに多額の資産を運用している人にも当てはまる。
資産運用のアドバイスを受けるメリット
投資を始めようとする人には、たとえ運用金額が少額であっても、専門家に相談することをおすすめする。
以下のようなメリットがあるからだ。
- アドバイザーを活用すれば、自分では知り得ない多くの選択肢の中から、自身のニーズに合った最適な商品選択の可能性が高まる
- 人生の各段階で直面する資産運用の課題に対し、その時々に応じた的確なアドバイスを得られる
- 短期・中期・長期の目標に応じた運用戦略を立て、定期的なモニタリングとリバランスにより、着実に目標達成へと導いてくれる
資産形成において、とくに力を発揮するのが、独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)である。
IFAなら長期的な資産形成の手助けができる
IFAは、特定の金融機関に属さない独立した立場の専門家であるため、顧客との長期的な関係が構築できる。
この長期的な関係性は、資産形成において大きな意味を持つ。
人生の各ステージにおいて、資産運用の目的や優先順位は変化するものだ。
たとえば、結婚、出産、子どもの教育、住宅購入、リタイアメントなど、ライフイベントに応じて資産運用の方針を見直す必要がある。
IFAなら、顧客の状況変化を長期的な視点で捉え、その都度最適なアドバイスを提供できるのだ。
良い専門家を選ぶための検索サービス「資産運用ナビ」
信頼できる専門家を見つけるなら、検索サービス「資産運用ナビ」の活用がおすすめだ。
利用者の居住地、資産状況、ニーズなどに基づいて、最適なIFA候補を複数選定してくれる。
各人の経歴や専門分野なども確認できるから、自分に合ったIFAを比較検討することも容易である。
資産運用は、早めに始めることが大切だ。運用額が少額でも、信頼できるIFAのアドバイスを受けながら一歩を踏み出せば、着実な資産形成が可能になるだろう。
資産運用はいくらからでもOK!今すぐ始めて大きく増やそう
本記事では、運用金額の決め方や、資金規模ごとの運用の注意点について、詳細に解説した。
資産運用を始める際は、自分の財務状況を考慮し、無理のない範囲で始めることが重要だ。
この点は、資産の額に関わらず共通している。ただし、運用戦略の策定や実践は、資産規模に応じて適切に調整していく必要がある。
そのため投資家には、各人の状況に合ったアドバイスが必要になる。
IFAなら目標やリスクへの態度をヒアリングし、資産規模に合わせた最適な方法が提案できる。
将来にわたる財務的な安定を目指すなら、IFAは頼れるパートナーになるだろう。ぜひ「資産運用ナビ」を活用し、良い専門家を見つけて欲しい。