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消費課税・国際課税・納税環境整備について【令和5年度税制改正大綱】

令和4年12月16日、与党より令和5年度税制改正大綱(以下、「大綱」といいます)が公表されました。

大綱では、「マーケット」、「産業」、「人材」への成長投資を一体的に強化するとともに、税制に限らない分配政策も適切に組み合わせることにより、一人でも多くの方が豊かさを享受できる「成長と分配の好循環」の連鎖を生み出していくこととされています。

そのために、オープンイノベーション促進税制は、M&Aに適用できるよう、ニューマネーを伴わない既存株式の取得も対象とされ、研究開発税制においては、投資を増加させるインセンティブが更に強化されるほか、高度な研究人材に対する人件費を対象とする特別試験研究費の新たな類型が設けられました。

 加えて、国際課税制度の見直しに係る国際合意に沿って、法人税の引下げ競争に歯止めをかけ、企業間の公平な競争環境の整備に資するグローバル・ミニマム課税が、令和6年4月1日以後に開始する対象会計年度から導入されます。

また、我が国の防衛力の抜本的な強化を行うにあたり、歳出・歳入両方から安定的な財源を確保するために、令和6年度以降複数年にわたり段階的に、法人税、所得税及びたばこ税について、税制措置が実施される予定となっております。

本内容は大綱に基づくものであり、実際の適用にあたっては、令和5年3月までに成立が見込まれる関係法令等を確認する必要がある点にご留意ください。

目次

消費課税について

適格請求書発行事業者となる小規模事業者に対する仕入税額控除に係る負担軽減措置

令和5年10月1日から令和8年9月30日までの間の日の属する課税期間において、免税事業者が適格請求書発行事業者になった場合又は、課税事業者選択届出書を提出したことにより課税事業者となった場合には、その課税期間における納税額について、売上に係る消費税額の2割の金額を上限とすることができる経過措置が設けられました。

留意点・その他ポイント
  • 令和5年10月1日より前から課税事業者を選択している場合には、同日の属する課税期間においては当該特例を適用することができません。
  • 当該特例については、消費税の確定申告書に当該特例の適用を受ける旨を付記することにより適用が可能となります。
  • 課税事業者選択届出書を提出したことにより令和5年10月1日の属する課税期間から課税事業者となる場合には、その課税期間中に課税事業者選択不適用届出書を提出することにより、課税事業者選択届出書はその効力を失います。
  • 当該特例の適用を受けた課税期間の翌課税期間中に簡易課税制度選択届出書を提出することにより、提出を行った課税期間から簡易課税制度の適用を受けることが可能となります。

一定規模以下の事業者に係る事務負担の軽減措置

下記のいずれかに該当する事業者については、支払対価の額が1万円未満である課税仕入れについて、インボイスの保存が無くとも、一定事項の記載がある帳簿の保存のみで仕入税額控除の適用を認めることとなりました(令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に行う課税仕入れを対象)。

  • 基準期間における課税売上高が1億円以下であること
  • 特定期間における課税売上高が5,000万円以下であること
留意点・その他ポイント
  • 上記を満たさない課税事業者については、少額な取引を含め原則として全ての取引についてインボイスの保存等の要件を満たす必要があります。
  • 上記を満たす事業者であっても、支払対価の額が1万円を超える取引についてはインボイスの保存等の要件を満たす必要があります(インボイス制度下においては、従前認められていた、いわゆる3万円未満の課税仕入れに係る帳簿保存の特例はありません)。

少額インボイスの交付義務の見直し

返品等、売上に係る対価の返還等のうち税込金額が1万円未満である場合には、いわゆる返還インボイスの交付義務が免除されることとなりました。

  • (令和5年10月1日以後に行う課税資産の譲渡等に係る対価の返還が対象)

適格請求書発行事業者の登録申請手続きの柔軟化

インボイス制度に係る届出書の提出期限について、以下の通り柔軟化されました。

シーズ税理士法人にて作成

国際課税について

グローバル・ミニマム課税への対応

新たな国際課税ルールへ対応するため、特定の多国籍企業グループについては、国別実効税率を基本税率(15%)までトップアップする形で国際最低課税額を計算し、法人税及び地方法人税とに按分して納める義務が生じることとなりました(内国法人の令和6年4月1日以後開始会計年度から適用)。

  • 対象となるのは、特定の期間における総収入金額が7億5,000万ユーロ相当以上である特定多国籍企業グループ
  • 国際最低課税額は、特定多国籍企業グループ全体の金額のうち、当該特定多国籍企業グループに属する構成会社等に配賦される国別国際最低課税額に対して内国法人の所有持分等を勘案して計算した帰属割合等を乗じた金額の合計額となります。
  • 特定多国籍企業グループ内に属する構成会社等の所在地国における所得金額が一定の金額以下である等一定の要件を満たす場合には、当該構成会社等の所在地国における国別国際最低課税額はないものとされます。
  • 本制度によって納めることとなる法人税及び地方法人税の申告及び納付は、各課税対象会計年度終了の日の翌日から1年3ヶ月(一定の場合には1年6ヶ月)以内に行うものとされます。
  • 別途、本制度に係る必要事項について上記と同じ期限内に税務署長に対して必要な事項をe-taxにより提供する情報申告制度が創設されます。

外国子会社合算税制等の見直し

外国子会社合算税制等について、以下の見直しが行われます(内国法人の令和6年4月1日以後開始事業年度から適用)。

  • 特定外国関係会社の各事業年度における租税負担割合が27%(現行:30%)以上である場合には、会社単位の合算課税の適用が免除されます。
  • 申告書に添付する必要がある外国関係会社に関する書類の範囲から、次に掲げる部分対象外国関係会社に関する書類を除外します(別途書類の保存は必要)。
    • 部分適用対象金額がない部分対象外国関係会社
    • 部分適用対象金額が2,000万円以下であること等の要件を満たすことにより本制度が適用されない部分対象外国関係会社
  • 申告書に添付する必要がある外国関係会社に関する書類(株主等に関する事項を記載するものに限る)の記載事項について、その書類に代えて、その外国関係会社と株主等との関係を系統的に示した図にその記載事項の全部又は一部を記載することができることとされます。

納税環境整備について

電子帳簿等保存制度の見直し

国税関係帳簿書類の電子化を一層進めるため、事業者等における経理の電子化の実施状況や対応可能性、適正な課税の確保の観点での必要性等を考慮しつつ、以下の緩和措置がとられます。

シーズ税理士法人にて作成

本コラム資料については令和4年12月16日に与党が公表した「令和5年度税制改正大綱」に基づき、一般的な概要をまとめたものです。従って今後の法令等において、本資料とは異なる内容が制定される可能性もある点ご留意ください。

執筆者

シーズ税理士法人の代表税理士。法政大学経済学部卒業。デロイトトーマツ税理士法人、山田コンサルティンググループ株式会社で組織再編成、連結納税、国際税務、事業承継、相続対策、組織再編成コンサルティング業務等に従事。2021年10月にシーズ税理士法人を設立し代表就任。

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