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【9262】株式会社シルバーライフ代表取締役社長 清水貴久氏 「後期高齢者が増加する日本において、中長期的な企業価値向上を目指す」

※本コラムは2023年4月21日に実施したIRインタビューをもとにしております。

後期高齢者をメインターゲットに、お客様へ安価で高品質な弁当をお届けしている株式会社シルバーライフ。

代表取締役社長の清水貴久氏に、今後の事業環境の変化や成長戦略についてお伺いしました。

目次

株式会社シルバーライフを一言で言うと

日本国内で、唯一数十年伸びる業界のトップリーダーです。

代表就任の経緯

この会社に入る前は同じ業界の別の会社に勤めておりました。その会社で最初に雇ったアルバイトの戸井(現 取締役)が独立して創業したのが今のシルバーライフになります。

当時の会社は取引先との関係があまり良くなく、戸井が独立した後も関係修復に努めていましたが実現せず、その会社を離れてシルバーライフに後から入社しました。

入社後は戸井は直営店の運営、私はフランチャイズの加盟募集という形で役割分担をしていました。

ただ、加盟店数が100を超えたあたりで社長を交代し、代表就任へと至りました。以降フランチャイズを中心に事業を伸ばしてきました。

創業以来ターニングポイントとなった出来事はいくつかありますが、やはり2013年に自社工場をもったことが一番大きかったと思います。

それまでは、食材は全て提携先の工場から仕入れて、我々は店舗経営とフランチャイズ部門に特化していました。

ですが、将来的には設備投資に注力したかどうかが成長の鍵となると考え、大手外食チェーンさんの工場を買収し、食材の製造から販売までを垂直統合しました。

これをきっかけとして、安価で高品質なものを提供できる環境を整えることができ、さらには他社様からの製造系OEMなど、周辺事業への拡大もすることができました。

株式会社シルバーライフ 2023年7月期 第2四半期説明資料 より引用

創業当初は私個人の店舗経営ノウハウで事業を拡大できていましたが、事業規模が大きくなるにつれて個人技に頼ることへの限界を感じました。

ここで方針を転換し、設備投資をして製造を内製化して良い製品をリーズナブルな価格で提供することに注力しました。

これを契機にチェーンの規模が再度大きくなり始め、最初の自社工場では応えきれないニーズが生まれると見込み第2工場建設を計画しました。

それを実現させるためのキャッシュがなかったので、上場することで確保しようと考え、上場を決意しました。

事業内容について

高齢者様向けの配食サービスのフランチャイズ本部の運営と、加盟店への食材販売を行っております。具体的には、買い物や調理が体力的に厳しくなってきた方々に毎日の食事をお届けしています。

販売先としては、フランチャイズ加盟店、高齢者施設、ECサイト経由での個人顧客の3つがあります。

当社の強みは、すでにフランチャイズネットワークが確立されており、かつそれを維持できていること、そして保有する自社工場にて生産性を高めるノウハウを兼ね備えていることです。

店舗の現場にフォーカスすると、店舗レベルでも優れたノウハウを持っているところは多数あります。また、商品製造についても同じで、良い製品を安く製造する能力を持っている会社はいくつかあります。

ですが、店舗と製造工程の両方で優れたノウハウが蓄積されている企業は他にありません。店舗レベルでは優秀でも大量製造の仕組みが整っていなかったり、良い工場を保有していても配送コストや店舗運営がネックとなっていることが多々あります。

本来的には配送コストが高く、2つのノウハウがないと事業として利益が出せない業界です。

うちは1つの会社で2つのノウハウを持っている。これが、大きな参入障壁にもなっています。

株式会社シルバーライフ 2023年7月期 第2四半期説明資料 より引用

当社事業は値段にシビアな傾向がある高齢者の方々をメインターゲットにしているため、価格戦略が非常に重要となってきます。

そこで、足元では一部業務の内製化を行い、コストダウンの原動力としています。内製化は本来、業績が低下した際のリスクヘッジが出来なくなるというデメリットがあります。

ですが、この事業領域は10年、20年と堅実に伸びてきているため、リスクヘッジが利かなくなるというデメリットを懸念しすぎる必要はありません。それよりもコストダウンによって得られるメリットの方が大きいため、積極的に行ってまいります。

当社は、自社事業を取り巻く将来の外部環境を3つの観点から捉えています。まずは、長期的には成長性があるという点です。

我々のメインターゲットは75歳以上の後期高齢者ですが、人間は80歳を超えると急速に身体が衰え始め、日常生活を自らの力で送るのが難しくなります。この世代は今後10年20年でより急速に増加するため、その分配食のニーズも高まります。

株式会社シルバーライフ 2023年7月期 第2四半期説明資料 より引用

次に、価格戦略が非常に重要であるということです。先ほども申し上げたように、価格にシビアな方々がお客様でありますため、他社よりも安価で提供するというところがなによりも重要です。

食事への需要がなくなることはありませんので、常に他社の動向を追いつつ、自社にとって最適な戦略をとり続けます。

最後に、この業界が、今後ナチュラルに成長し続ける数少ない業界であるという点です。すなわち、様々な会社が参入して競争が激化するということになります。

ただ現時点では、我々は他社に先駆けて店舗網や設備投資を完了させているため、大きなアドバンテージを持っているといえます。この優位性を活かし、協業も視野に入れながら収益を確保してまいります。

中長期の成長イメージとその施策

後期高齢者が増加する2025年を目安に社内インフラを整え、シェアNo.1を目指します。

まずはフランチャイズ加盟店事業において、店舗数と1店舗当たりの売上を増やします。

当社のビジネスモデルは、店舗数の上限が実質的に存在しません。各店舗にはエリア保護がなく、テリトリー権がない契約となっているため、同じ地域に多ブランドの店舗を重ねて配置できるようになっています。

そのため、今後も着実に店舗数を伸ばしていけると考えています。

1店舗あたりの売上に関してですが、これはその地域にお住まいの高齢者様が増えれば必然と伸びるため、我々としては高齢者人口の増加に相関して店舗当たりの売上も増加すると見込んでいます。

高齢者施設向けに関しても、価格帯で差別化したブランドをニーズに合致させて提供することで売上増加を図っていきますが、現場では手作り調理のニーズが今も残っており、少し苦戦しています。

我々が提供している商品は完全調理済みの冷凍パック食材であり、どんな方でも手軽にハイレベルな料理ができます。

しかし、高齢者施設に勤めている方々には手作り料理を入居者に提供したいという思いが強く残ってます。

ただ、逆らえない時代の流れとともにこの外部環境も変化するのではないかと考えています。人材不足と国からの補助金の削減は施設側のコストカットをもたらし、手作り料理から完全調理済み食材へと切り替えるようになります。

中長期的な目線で見れば、この領域も順調な成長が見込めます。

株式会社シルバーライフ 2023年7月期 第2四半期説明資料 より引用

直販の事業に関しては、マーケットの急速な拡大の波に乗るべく、生産・販売体制の構築を進めてきました。近年1世帯の構成人数が減少傾向にあり、手作り調理をする機会が減っています。そのため少しずつではありますが売上が伸びています。

加えて、今回のコロナウイルス事情によって一気にマーケットが成長し、市場拡大が急速に進みましたが、当社は第2工場の設備投資や冷凍倉庫が整っておらず、先頭を走る存在とはなれませんでした。

ですが、体制が整った我々は同じサービスを展開する他社とは別の角度からアプローチすることができます。それは価格戦略です。

今は1食あたり送料込みで600円から650円が相場となっていますが、当社の生産体制、輸送体制をフル活用すればこれよりも安価にお客様のもとへ食材をお届けできると見込んでいます。

当社は前年の業績を毎年上回るポテンシャルを秘めている存在です。事業領域としているマーケット全体が伸びていますし、その中で我々が最も先行して設備投資を実行しており、マーケットの伸びを一番享受できる立ち位置にいます。

派手な成長ができる会社ではありませんが、少子高齢化と人口減少が進む日本で確実な成長ができると思っています。

投資家の皆様へメッセージ

このマーケットは真面目に努力した結果がしっかりと表れる環境が残った、日本で最後のマーケットです。その中で我々が一番業界を熟知していて、かつ一番真面目に地道に努力している自信があります。

ですから今後結果として数字でお返しできる可能性は高いです。そこに期待していただければと思います。

株式会社シルバーライフ

本社所在地:東京都新宿区西新宿4-32-4ハイネスロフティ2階

設立:2007年10月

資本金:725百万円 (2022年7月末時点)

上場市場:東証プライム (2017年10月25日上場)

証券コード:9262

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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