※本コラムは2022年9月15日に実施したIRインタビューをもとにしております。
脱炭素社会のなかで注目されるエネルギー源、再生可能エネルギー。その発電所の開発から発電、資金調達、管理に至るまで一気通貫に行う企業が、リニューアブル・ジャパンです。
一気通貫型のメリット、今後のマーケットの成長性などについて、代表取締役社長の眞邉勝仁氏に伺いました。
リニューアブル・ジャパン株式会社を一言で言うと
私たちは、「持続可能なエネルギーを届け、生き生きと暮らせる未来を実現します」というビジョンのもと、太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギー発電所の開発、発電、アセットマネジメント、オペレーション&メンテナンス(O&M)に至るまで、幅広く事業を行っています。
私たちの強みは、再生可能エネルギー発電所の開発から発電、運営に至るまで、一気通貫に行っていることです。
再生可能エネルギー発電所を開発するためには、発電所を造る土地を取得し、行政の許認可を取り、取得した土地を造成した後、EPCといって、発電所を造るためにEngineering(設計)、Procurement(調達)、Construction(建設)が必要になります。
こうして発電所が建設されたら、実際に発電するのに加え、発電所が求められる性能で発電し続けられるようにするため、メンテナンスも行わなければなりません。これがO&Mです。
さらに言えば、土地の取得、発電所の建設などにかかる資金調達も必要になります。ここまでをすべて1社で行えるのが、私たちの強みでもあります。
創業の経緯
31年前にリーマンブラザーズに入社し、米国国債の売買に携わった後、事業法人部でデリバティブを担当しました。そして20年前の日本における証券化においても、草分けメンバーとして携わっており、格付け機関や銀行、アレンジャー、証券会社、弁護士など、証券化に関わる人たちが大勢集まって、ルールづくりなどで侃々諤議論をしていました。
リーマンブラザーズには14年在籍し、その後はバークレイズに3年。そこからCLO(ローン担保証券)に投資するザイス・ジャパン代表に就任し、インドなど海外のメガソーラー案件に関わるようになりました。もちろん太陽光発電など全くの門外漢だったので手探りで仕事する毎日でした。
インドである程度の成果を上げることができたので、その流れで欧州やアジアへも事業を拡大しようとしたところで東日本大震災に直面しました。これが、独立するひとつのきっかけになったのです。
当時の米国のビジネスパートナーから、「太陽光で稼働する浄水設備を寄贈したい」という申し出をいただき、震災被害に遭った複数の自治体に話をしたところ、大船渡市と女川町が是非とも、ということになり、自分で車を運転して浄水器を届けました。海岸線沿いに走り、被災地の光景を目にした時、「自分に何ができるだろうか」と自問しました。
その時には福島第一原子力発電所における事故もあり、世の中で再生可能エネルギーへの期待が高まってきていました。自分自身、海外でメガソーラーを手掛けていた経験もあるので、その分野なら復興に貢献できるのではないかと考えるようになったのです。
もちろん再生可能エネルギー発電の施設をつくるには、多額の資金が必要ですが、金融業界にいた時、証券化ビジネスに関わっていましたから、そのノウハウを活用できると思いました。こうして「再生可能エネルギーと金融の架け橋になる」というコンセプトのもと、2012年にリニューアブル・ジャパンを設立したのです。
事業内容について
事業内容は前述したように、再生可能エネルギー発電所の開発、発電、アセットマネジメント、オペレーション&メンテナンス(O&M)に至るまで、一気通貫で行えるビジネスモデルを持っています。
売電、アセットマネジメント、O&Mのところで長期にわたって安定したストック収入が得られることが、経営基盤になっています。
また、一方で再生可能エネルギー発電所の開発も行っていますから、それによる開発報酬やEPC報酬、発電所売却収入といったフロー収入が、ストック収入に上乗せされていきます。私たちとしては今後、売電事業に加えて、第三者事業者向けのO&M事業に力を入れることによって、より安定したストック収入の積み上げを目指していきます。
こうした一気通貫のビジネスモデルを構築できているのは、私たちが「地域」、「技術」、「金融」という3つの強みを持っているからです。
地域については、日本全国28か所に拠点を持っています。これにより、全国規模で再生可能エネルギー発電所の開発を推進するのと同時に、O&Mの体制を整えました。何よりも、これによって日本経済の大きな課題となっている、地方の雇用創出に寄与しています。
技術面では、自社EPCとしての高い技術力を持っていて、ゼネコンと同様の「特定建設業」としての許可を得ていますし、自社で施行部隊を持っているため、メーカーと直交渉してコストダウンを図ることができ、かつ外注する際にもEPC業者をコントロールできます。
またO&Mの際も、自社EPC部隊による自社修繕が可能です。太陽光発電施設は、パネルに雑草や雪が覆いかぶさると発電能力が落ちてしまうので、定期的に草刈や雪かきをする必要があるのですが、点検も含めてこれらを内製化することにより、コストを削減しています。
あと技術面では、再生可能エネルギー発電所を安全に管理するためには電気主任技術者という国家資格が必要ですが、それを取得、あるいはより上級の資格を取得できるようにするため、私たちは社内教育制度としてRJアカデミーを開講しました。これにより、熟練した技術者を増やしていこうと考えています。
そして3つめの強みである金融ですが、私たちは再生可能エネルギー発電所を建設するのに必要な資金を、主にはプロジェクトボンドの発行によってまかなっています。
2017年4月から2022年6月までの間に11件、合計で902億円の調達を行っていますが、これは日本のプロジェクトボンド市場全体の33%を占めています。また、グリーンボンドの格付は、格付会社であるR&IからGA1という最上級格付けを取得しています。
中長期の成長イメージとそのための施策
これからは日本国内だけでなく海外へも事業展開をはかっていきます。その第一弾としてスペインでの事業展開が始まりました。
スペインは「太陽の国」などと言われるくらい日射量が多く、土地が平坦なので、太陽光パネルを設置するのに適しています。
しかも、遊休地が多いので、発電所の規模をどんどん拡大することができますし、そのうえ、国が政策として再生可能エネルギーを推奨している点も、事業者としては非常にやりやすいというメリットがあります。
この部分の成長余地は、将来的にも非常に大きいと見ています。すでにスペインで現地チームを組成し、様々な案件の買収を検討しています。
海外での事業展開については、金融や行政の許認可が整っている国を候補にしています。スペインをはじめとする欧州各国や米国、あるいはオーストラリアなどが、これからの進出先候補です。
また、O&Mに関していえば、現在約1.1ギガワットの管理実績がありますが、これを2025年には2ギガワットまで増やすことを目標にしています。
これから太陽光発電の市場規模は大きく拡大していく予想が出されています。現在の市場規模が55.8ギガワットで、2030年までに117.6ギガワット、2050年までには300ギガワット超と考えられています。
1メガワット1億円と仮定すると、2030年までに約6兆円、さらにそこから2050までには約18兆円の成長余地があるので、当社のマーケットシェアをどんどん拡大していきたいと思います。
投資家の皆様へメッセージ
稼働済み自社保有発電所のネット設備容量ですが、過去3年間の積み重ねによって、2021年12月31日時点では57件、154.8メガワットだったのが、2022年6月30日時点では120件、337.4メガワットにまで増えました。
過去3年間の積み上げを上回る容量を、この半年間で確保したことになるのですが、これがまだ株価に反映されていないように感じています。その意味では割安であると考えていただければ良いのではないでしょうか。
また、当社は稼ぐ力(EBITDA)を経営目標としており、引き続き拡大予定ですので、EBITDAにも注目していただければと思います。
リニューアブル・ジャパン株式会社(Renewable Japan Co.,Ltd.)
本社所在地:東京都港区虎ノ門1-2-8 虎ノ門琴平タワー9階
設立:2012年1月25日
資本金:連結46億1,959万円(2022年6月末現在)
上場市場:東証グロース(2021年12月22日上場)
証券コード:9522