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【9223】株式会社ASNOVA代表取締役社長 上田桂司氏「足場レンタルの拡大で社会課題の解決に挑む」

※本コラムは2023年5月16日に実施したIRインタビューをもとにしております。

株式会社ASNOVAは国内で最も流通量の多いくさび式足場を主な商材とし、そのレンタルビジネスを展開することで循環型社会の貢献を目指しています。

代表取締役社長の上田桂司氏に事業の優位性やマーケット環境、今後の成長方針を教えていただきました。

目次

株式会社ASNOVAを一言で言うと 

世の中にとってなくてはならない存在の会社です。

当社の扱う足場は、老朽化したマンションの修繕や増加する自然災害からの復興・復旧など、近年の社会課題に対応する全ての現場に必ず必要なものなのです。

創業の経緯

当社の創業は、元々建設機械のレンタル事業を手掛けていた父の会社から、足場のレンタル業に注力することを決意したことから始まりました。

建設機械のレンタルが多種多様な商品を扱う一方で、足場のレンタルという一つの事業に集中することで、資本も集中させ事業を拡大させる可能性を見出したことが背景にあります。

また、我々が現在扱うくさび式足場のレンタルを手掛ける会社が全国に存在しないという、新しいマーケットの存在に気付いたことを期に2013年に創業いたしました。

そして、2013年の創業以降、我々のターニングポイントとなったのは資金調達でした。

レンタル事業は大量の先行投資が必要ですが、設立当初の資金調達は容易ではなく、お客様も思うように増えていきませんでした。

それでもコツコツと投資を継続し、足場の保有量が20〜30億円を超えた時点で、金融機関からの安定した資金調達が可能となったのです。

またこれによって新規の顧客が毎年100〜150社程度増え始めるという好循環が生まれました。これが創業から約3年後のことでした。

上場について、具体的な準備を開始したのは約6年前の2017年頃です。

当時、我々は投資の原資を金融機関からの資金調達のみに頼っていましたが、この頃になるとその金額は売上高に等しい規模にまで近づいていました。

そこで、上場によって会社の信用度を上げ、さらに資金を調達しやすくすることを目指しました。

また、特に繁忙期にはお客様の要望の半分にも応えられないといった機会ロスも発生していたため、上場を通じてこのデメリットを解消することも目指しました。

既に関東、中部、関西といった大きなエリアに機材センターは設けていましたが、これにより各地域の市場をより綿密にカバーする体制を整えることが可能となりました。

事業内容について

主力事業は足場のレンタル事業となりますが、特に我々が専門とするのは「くさび式足場」です。

この足場は施工性が非常に優れ、少ない人手でも簡単に組み立てが可能であるため、職人不足の現在において一層の重要性を増しています。そして、日本で最も流通している足場でもあります。

当社は大手レンタル会社とは異なり、取引先としては大手ゼネコンではなく、足場施工業者や塗装会社、イベント会社といった小規模な事業者が中心となっています。

このため、偏った取引先に依存しておらず、工事の受注状況による業績の波が少ないというメリットがあります。

株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料 より引用

取引先社数も2,500社を超えるほど多岐にわたっており、かつ新規のお客様も毎年150〜250社のペースで増加しています。

これにより、1社当たりの売上は小さくとも、安定したストック型ビジネスを形成しています。

このビジネスモデルを成り立たせるため、足場保有量増加に向けた投資と機材センターの拡大を継続し、「いつでも」「近くで」「安心して」借りられる体制を実現していることが、当社の優位性となっています。

中でも拠点については、自拠点の他、”ASNOVA STATION”と名付けたパートナー企業拠点も活用し、年々高まる足場の需要に応える仕組みを構築しています。 


株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料
 より引用

我々が所属する業界としては、建設業界というよりもリフォーム市場をイメージしていただきたいと思います。

特に、近年では築30年以上を超える老朽化マンションの大規模修繕需要が増えており、実はこれが大きな社会課題となっています。加えて、自然災害後の復興復旧工事にも足場が必要となり、これらの需要も年々増加傾向にあります。

そして、これら全ての工事の初期段階で足場が必要となるため、我々はこの事業を非常に社会性のあるビジネスであると捉えています。

このように既存建物の修繕や循環型社会へ対応するという観点から見ると、足場ビジネスの拡大余地や成長性を感じていただけると思います。

足場レンタルを広げる施策として”ASNOVA STATION”とともに力を入れているのが海外展開です。当社は特に、経済成長が著しいベトナム市場に注目しています。

不動産市場が足元で一旦下火になっているものの、人口増加に伴う建設ブームにより依然として市場は非常に活発です。

また、ベトナムではこれまで足場は購入するものとされてきましたが、近年ではその文化も変わりつつあり、レンタル事業を認識し始めているゼネコンや工事会社が増えてきています。

ただ、事業領域としてはまだまだ現地の会社含め全く発達していないため、この段階から市場に参入することに大きな先行者利益を見出しています。

加えて、ベトナムで製造される足場は寿命が短く、4-5年で買い替える必要があります。しかし、我々が現地に輸送している日本製の足場は20年から長くて30年ほどの耐久性があります。

つまり、ベトナムの市場において、消耗品として買い替える必要があった足場から、必要なときに必要な分を借りるという新しい形の事業へと移行する可能性があるのです。


株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料
 より引用

これらの市場のトレンドの変化を先取りし、品質面でも差別化を図ることで、独自のビジネスモデルを展開しています。

さらに、今後ベトナムが国として発展し、人口の構造が変われば、日本と同様に既存建物のリフォーム需要が出てくることも予測しています。

そのような意味では、現在はまだ投資フェーズにさえ達していないとも考えており、事業拡大の大きな可能性を感じております。

中長期の成長イメージとそのための施策

まずは足場保有量のさらなる増加に向け、毎年20億円規模の投資を継続していきます。足場の保有量は売上高に影響を及ぼす重要な要素であると認識しています。

くさび式足場レンタルの市場規模を現段階で正確に捉えることは難しいのですが、リフォーム市場における足場を含む仮設機材レンタルのマーケットはおよそ2,000億円となっています。

現在、当社は126億円分の足場を保有していますが、中期経営計画の最終年度である2026年3月期においては約186億円までの拡大を目指しております。

”いつでも借りることができる”というポジションを継続させるための施策として、投資家の皆様には足場保有額と契約顧客数の推移に引き続きご注目いただきたいと思います。

また、毎年2カ所の直営機材センターの新設、およびASNOVA STATIONの拡大も同時に図っていきます。

このパートナーを活用した全国展開には、当社が創業来培ってきた足場管理ノウハウが大きな優位性となります。投資をどれだけ増やしても、管理が適切に行われなければそれが事業全体に負のスパイラルを及ぼしかねません。

特に当社には棚卸しの差異率を限りなくゼロに近づける独自ノウハウがあり、業界平均と比較しても圧倒的な水準となっています。

このノウハウを活用し、中長期的には自拠点と同数程度のパートナー拠点を構えていきます。

先ほど申し上げたように、国内事業においては大規模な投資フェーズがあと5年ほど続くと見ています。

もちろんその後も投資は継続していきますが、特に海外展開へ注力していく方針です。海外事業は、マーケットの成長率等を勘案すると日本以上の足場保有量になる可能性があると考えています。

足元でメインターゲットとしているベトナムにおいては、まず今後3年間で約10億円、(約3000t)の足場を保有することで、現地における経営基盤の確立を進めます。

その上で、ベトナムにおける足場レンタルのシェアNo.1獲得を目指してまいります。


株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料
 より引用

我々は、主力事業である足場レンタルビジネスの普及により、社会課題の解決と循環型社会の実現に貢献したいと考えています。

このビジョンに基づき、仮設機材の総合サイトとして” ASNOVA市場”を今年の5月に新たに立ち上げました。不要となった足場を、必要としている方が買い取ることができるECサイトとなっています。

このように、これまで廃棄されていた足場の循環を促進することは非常に社会性のあるビジネスであると考えています。

今後、当社の契約顧客数や取扱商品幅を増やすことでプラットフォームを進化させ、足場施工業者以外の幅広い事業者、または個人のユーザーにとって活用できる場を作っていきます。


株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料
 より引用

我々のビジネスモデルは、レンタル業という性質上、大きな投資が必要であるものの、売上や利益の急激な伸びを期待しにくい部分があります。

現状、我々は投資フェーズにあり、売上原価の大半は足場の減価償却費となっていますが、投資フェーズが終わり回収フェーズに入ると、これが大きな利益につながっていきます。

また、何よりも社会への貢献を第一に考えています。もちろん短期的な利益を追求するのであれば投資を止める選択もできます。ですが当社は、社会からの大きな需要とまだ追いついていない供給のギャップに対応するために、投資を続けているのです。


株式会社ASNOVA 2023年3月期 決算説明資料
 より引用

投資家の皆様へメッセージ

足場のレンタルビジネスは、皆で足場を共有するという新しい循環型のビジネスです。

これは、一度使用後に廃棄されてしまう直線型のビジネスから変化したものであり、我々はこのビジネスモデルを、より多くの人々に知ってもらい、理解していただくことも使命としています。

この使命感を胸に、事業を通じて持続可能な社会の実現にしていきますので、ぜひ応援いただければ幸いです。 

株式会社ASNOVA

本社所在地:愛知県名古屋市中村区平池町四丁目60番地の12 グローバルゲート26階

設立:2013年12月24日

資本金:222百万円 (2023年5月アクセス時)

上場市場:名証ネクスト (2022年4月21日上場)

証券コード:9223

執筆者

2019年に野村證券出身のメンバーで創業。資産運用の相談サイト「資産運用マッチング」を運営。「投資家が主語となる金融の世界を作る」をビジョンに掲げている。

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