※本コラムは2023年5月24日に実施したIRインタビューをもとにしております。
プラント解体に関する最先端の技術を多数有し、数少ない上場企業という優位性を活かして事業を展開するベステラ株式会社。
代表取締役社長の本田豊氏に、事業環境や今後の成長戦略についてお伺いしました。
ベステラ株式会社を一言で言うと
プラント設備の解体工事をマネジメントしているオンリーワン企業です。
代表就任の経緯
入社したのは2009年になります。入社後は企画部に所属しておりまして、会社全体の中期計画などを策定していました。現職に就任したのは今年の2月です。
当社は現会長の吉野が創業したオーナー企業でありましたが、より組織的に会社の規模を拡大するために経営体制を変更しております。
当社のターニングポイントとしては、技術力の面と信用力の面で1つずつあります。
技術面におけるターニングポイントは「リンゴ皮むき工法」という工法を開発したことです。この技術を得たことで多数のお客様から解体の依頼をいただくことができるようになりました。
信用力に関するターニングポイントは2015年の東証マザーズ上場です。我々の業界では、施主が重厚長大な会社であることが多く、上場していない会社だと直接取引ができないことが多々あります。
ですが、上場することによって元請工事という形で携わることができるようになりました。また、上場企業となったことで、幅広い企業の会社と業務提携を結べるようにもなりました。その提携先を活用した新たな領域に事業を拡大することもあります。
事業内容について
大きく3つの事業に分けられます。
1つ目は、下の写真のようなプラントの解体工事です。一番右の写真は高さ100m程度の製鉄所の高炉です。このような大規模施設の解体を1社で完結させています。「この規模の建物の解体を自社だけで賄えます」と言える企業は当社以外にはほぼありません。
その他事例として、火力・水力・風力・原子力発電所、石油・化学といった領域での解体があります。長年のプラント解体工事の経験をもとに、工法の提案、設計、施工計画、資機材手配、施工管理、安全管理、原価管理、資金管理、行政対応など、エンジニアリング全般を提供しています。
2つ目に、「リンゴ皮むき工法」や「転倒工法」など、当社独自の特許による解体工法を開発しています。
また、PCB、アスベスト、ダイオキシンなど、有害物質の除去に関する豊富なノウハウと経験を持っており、コスト、工期、安全性に優れたプラント解体工事を提供しています。
さらに、スクラップや再資源化、環境対策にも十分な配慮をしています。
3つ目は、人材サービスです。工事関連技術者の慢性的な不足に対応するため、プラント解体トータルマネジメントの強化を目的とした人材サービスを展開しております。
解体業者で上場している企業は当社を含め2社しかなく、このポジション自体が大きな優位性となっています。上場しているのとそうでないのとでは、やはり信用力という点に大きな差が生まれてしまいます。
当社は技術力に大きな自信を持っていますが、対象とする領域の構造上、会社としてのネームバリューやコネクションを併せ持つことも重要です。
脱炭素化や設備の老朽化という外部環境の変化を受け、解体の需要は急激に伸びています。
そのため、当社は人材採用に力を入れています。当社の考えとして、解体業界が未経験の方でも積極的に採用し、当社独自の教育を通じて一人前に育て上げようという方針があります。
数年前から新卒採用を本格的に開始し、人員強化に努めてきました。また、未経験の採用と合わせて経験者も採用し、教育部隊の増強にも注力しています。
当社の教育はOJTがベースとなります。元請工事という形で現場に入ることが多く、5-6人程度の配置人数枠があるため、ベテランと新人の混合チームを送り込むことができます。
そこで、小さな仕事から始めて、何か問題が起きたらすぐにサポートする。成功したら少し規模の大きな仕事を任せる。問題があったら指導を受ける。このようなサイクルで育成を行っています。
2次請け、3次請けとなると配置できる人員が1人、2人であることが普通ですので、このような育成体制をとることは厳しくなります。元請として現場に入れる当社ならではのプログラムであり、技術力を高める源泉ともいえます。
中長期の戦略イメージとそのための施策
重点戦略としては、3つあります。
まずは、脱炭素解体ソリューションです。地球環境に配慮した各種解体工法を開発し、世界最先端の技術を用いた脱炭素解体を実現します。
次に、DXプラントソリューションです。
この戦略に関しては具体的な施策が主に2つあります。1つは、ロボットを用いた遠隔・無人化施工です。
当社独自の解体技術とロボットの制御技術を組み合わせ、人とロボットの協働施工を建設現場へと導入することを目指します。
もう1つは、設計・施工業務を変革するソフトウェアの提供です。数十年前の建設時に用いられた書類を3Dデータに変換することで、工程が「見える化」された解体工事を可能にします。
最後の重点戦略は、人事戦略です。特に、ナレッジマネジメントに注力し、社内に遍在する技術・知識を組織の知識として可視化し、効率的に活用することで、情報の非対称性を解消し、組織の成長を促していきます。
解体産業の内需は縮小していると思われがちですが、実際は高い成長性を有する産業です。
市場規模に関しても、1兆円規模であるという試算もあります。さらに、ここ数年で脱炭素化の動きが加速していることに伴って、市場の成長スピードはさらに加速しています。
特に、二酸化炭素を多く排出する火力発電所と製鉄所に関しては耐用年数が経過していなくても設備更新されるようになっているため、需要は高まっています。
投資家の皆様には、当社事業と事業環境の双方に注視していただければと思います。
投資家の皆様へメッセージ
国全体で脱炭素化へとシフトしているため、解体市場にはかなりの成長性があります。
その中でも当社は大きな優位性を持っています。皆様には当社がもつこの優位性を認知していただき、応援していただけますと幸いです。
本社所在地:東京都江東区平野三丁目2番6号
設立:1974年 2月20日
資本金:843,176千円(2022年8月26日現在)
上場市場:東証プライム(2015年9月2日上場)
証券コード:1433