※本コラムは2023年6月2日に実施したIRインタビューをもとにしております。
株式会社アップガレージグループは事業展開のさらなる加速と企業価値向上を目指し、2023年4月に組織再編・商号変更を行いました。
代表取締役社長COOの河野映彦氏へ、自動車業界を支える事業の特徴や今後の成長方針を伺いました。
株式会社アップガレージグループを一言で言うと
中古カー&バイク用品のリユース事業アップガレージの運営と新品カー用品流通企画事業を主軸とした事業会社です。
代表就任の経緯
新卒から7年ほどは野村證券に勤めておりました。
元々自分自身が実業に携わりたいと思っていた中で、証券会社でキャリアを積むことで見える世界と、早い段階で外に出て見える世界は違うのではないかと思いました。そこで、ネット業界やIT業界に転職することを決意しました。
当社に転職したきっかけは、創業者との出会いでした。「車業界はマーケットが大きい一方で、ITの力が遅れている。だから一緒に挑戦してみよう」というお話を受け、非常に感銘を受けました。
2012年に当社に入社し、特に2年後からはIT事業の事業本部長を担当するようになりました。
私が当社に対して最初に力を入れたのは、ECサイトの立ち上げと中古品の在庫管理システムのリプレイスでした。
我々のビジネスのメイン商材は中古品ですので、単品管理の必要性があります。創業期から独自のシステムは持っていたのですが、この基幹システムのリプレイスにあたっては、失敗も経験しました。
しかし、それらは結果的に、自分自身と会社の経験値を高め、事業のスピードと成長を加速させる原動力となったと感じています。
一方、企業がITを使って成長するためには、IT関連子会社が事業会社本体の事業も担当し、業績成長の役割を果たすべきだと考えていました。
事業会社の本業にも深く携わることで、自分の経営者としての価値を高めることができ、会社にも多くの貢献をすることができると思ったのです。
このような経緯から、2018年から昨年まで、株式会社アップガレージの代表を務めておりました。
そしてこの度、当社は子会社での吸収合併ともに商号を変更した株式会社アップガレージグループとして再び上場をいたしました。
上場を機に会社を1社化し、さらに成長スピードを上げていくべきではないか、会社の価値を高めるためにスピード感を重視するべきではないか、という考えのもと、今年の4月より現職に就任しております。
事業の概要
当社のメイン事業は中古のカー用品やバイク用品の買取販売です。直営店とフランチャイズ店を合わせて全国で総ブランド数230店舗以上を運営しています。
中でも、業界特有の複雑な事情をシステムやオペレーションで解決し、誰でも運営できるような仕組みを整えることに、創業以来投資をし続けてきた会社といえます。
また、新品のカー用品やバイク用品を卸すB to Bのwebサイトも運営しています。これはモノタロウさんのカー用品やバイク用品版とイメージいただければと思います。
この事業を通じ、我々は中古車ディーラーや車検工場の事業発展を支援しています。
事業の優位性
いずれの事業も、ITやDX、そしてデータが重要な役割を担っています。
在庫管理能力
例えば、その一つは当社の在庫管理能力に還元されています。
創業期から継続してデータを集め続け確立されたノウハウや基幹システムにより、適正な買取・販売価格設定が可能となっています。「3か月で商品がすべて入替る」売場作りを目指しており、これは当社の優位性といえます。
OMO戦略
また、近年では事業承継が増えており、業務効率向上を図る後継者世代が当社プラットフォームの導入を検討していただくケースが増えています。
さらに、人材不足に悩むフランチャイジーに我々のwebサイトや店舗を訪問する方を紹介する人材紹介サービスも展開しています。このようにフランチャイズで生じた課題を解決することをフックに業績向上につながる提案を行うことで、価値提供を続けています。
一方、中古のカー用品やバイク用品の小売市場に当社以外で参入している会社はなく、それが故に成長スピードには課題があると認識しています。
そのため、我々が我々自身を律し、新たな挑戦をマーケット拡大に繋げていかなければならないと感じています。
足元では、昨年7月よりEC・WEBサイトの利便性の向上によりオンラインと実店舗を繋ぐOMO戦略に取り組んでいます。
中古のカー用品は基本的に一物一価です。そのためこれらの商品を店頭だけでなく、インターネットを介して日本全国、ないしは世界中の消費者に販売することで、商品の露出を大幅に増やしています。
しかし、ただ単にECの割合を増やしてしまっては持続的な成長にはつながりません。
EC在庫が増えれば店頭在庫が相対的に減少しますが、我々が店舗に豊富な在庫を抱えているからこそ、お客様にも商品を買取に持ってくるインセンティブが生まれているのです。
そのため、適切な在庫管理と販売比率のバランスには非常に力を入れています。
出店戦略についても、新店舗の出店は1年間で5〜20店舗程度に抑え、既存店舗の在庫を圧迫しないように配慮しています。
先に述べた在庫管理能力や、店舗・EC運営の総合的なノウハウが当社の強みといえます。
収益性の向上とビジネスの多角化
一方、新品用品の流通卸に関しては積極的に拡大を進めています。また、自社で開発したIT技術をSaaSモデルで提供し、自動車業界の企業に安価に、幅広く利用してもらうことで、当社の収益性の向上を目指しています。
例えば、美容院の予約管理システムのような、オンラインカレンダーを提供しています。
自動車業界はいまだにFAXなど紙ベースの管理が主流です。このオンラインシステムによって事業者の業務効率化に貢献するとともに、自社ビジネスの多角化を図っています。
中長期の成長イメージとそのための施策
毎年直営3-5店舗、FC7-10店舗のペースで新規出店を継続しつつ、引き続きOMO戦略を重点施策に据えて”中古パーツの循環マーケット”を構築したいと考えています。
繰り返しになりますが、重要なことは店舗・EC運営のバランスと、自社を律し成長スピードを高めていくことです。
我々の業界は市場規模が大きくない一方、参入障壁が高いという特徴があります。つまり、我々自身が市場を拡大すべき、またはすることができるポジションにいるのです。
メインブランド”アップガレージ”は中長期的な総店舗数目標を300店舗とし、さらにアメリカにおいてのリアル店舗展開を模索してまいります。
一方、流通卸売業態ですが、相対的に見るとマーケット規模は大きいものの、利益率は低くレッドオーシャンな市場といえます。
それでも、当業界のDX化の遅れに対し、適切な価値を提供することでトップラインは大きく伸ばせると考えています。受発注プラットフォームの導入社数、および購入単価・購入頻度を伸ばすことで、売上高と利益率を向上させてまいります。
新業態ビジネスの拡大
また、”アップガレージサイクルズ”および”アップガレージカーズ”を新しいビジネスの業態として拡大させていきます。
まず前者についてですが、中古自転車マーケットは中古カー用品マーケットと同じくらいの大きさを持ちながら、国内に主要プレーヤーは存在しません。
そのため、我々が強みとする在庫管理や店舗・EC運営のノウハウを横展開し、マーケットリーダーになることを目指しています。
また”アップガレージカーズ”では改造車販売を行いながら、その実際の目的は、改造車を他店よりも高く買取することで、自店に改造車を持ちこむ方々を増やすことです。
また、買取した改造車から外したパーツを店舗で売りつつ、車自体には純正パーツをつけてオークションで販売しており、パーツを集める手段の一つとしても機能しています。
当社のビジネスはどれだけ在庫の幅を広げられるかという買取力が重要ですので、この観点からも事業全体へのメリットがある取り組みといえます。
注目していただきたいポイント
我々は単なる小売店を運営している会社ではありません。
一方では高利益率の小売業を運営しながら、もう一方ではモノタロウさんのようなwebショップも運営しています。
当社は「テクノロジーを活用して小売業を改革し、そのノウハウを業界内のあらゆる企業に利用してもらうことで、業務効率改善や業績アップに繋げる」ことを目指してまいります。
投資家の皆様へメッセージ
まずは我々の業績の堅実性に注目していただきたいと思います。独自のノウハウを軸に堅実に成果を積み上げながら、IT投資を進め収益率を向上させていきたいと考えています。
当社のブレークスルーポイントは私の代ではなく次のリーダーが果たすかもしれません。
しかし、そのために土台を整備し、人材を集め、投資を継続することを私の役割と捉え、今後も取り組みを進めていきます。
本社所在地:神奈川県横浜市青葉区榎が丘7-22
設立:2014年4月1日
資本金:522,100千円(2023年11月アクセス時)
上場市場:東証スタンダード(2023年3月31日上場)
証券コード:7134