※本コラムは2023年6月1日に実施したIRインタビューをもとにしております。
アドソル日進株式会社はサステナビリティへの貢献を目指し、創業来の強みを生かす自社ならではのDXと成長事業の強化に取り組み始めています。
同社が2030年以降の持続的成長を見据え取り組む戦略について、代表取締役社長兼COOの篠﨑俊明氏へ伺いました。
アドソル日進株式会社を一言で言うと
電力・ガスなどの社会インフラを支えるICTシステムや、AI、デジタル・データの活用を通じて、人々の安全・安心と豊かな環境づくりに貢献する会社です。
代表就任の経緯
1989年4月に新卒で当社に入社し、エンジニアとして社会インフラ事業、特に、大手キャリアの通信制御システムなど、通信、制御、監視分野を中心にICTシステム開発に携わってきました。
この業務を通じて、国内大手通信キャリアや海外のお客様など、様々な方とお仕事をする機会をいただきました。
お客様とともに課題解決に取り組む過程で、将来のビジネス構造に対する彼らの考えに大いに刺激を受けたのです。
それを機に、単に言われたとおりにプログラムを作成するのではなく、こちらから働きかけてお客様の課題解決にあたることこそが、真に求められることだと考えるようになりました。
そこから、当社の会社としての魅力や将来のビジネス展開そのものにも興味を持ち始め、徐々に営業やマネジメント方面へとキャリアをシフトしていきました。役員になった後も社会インフラを中心に事業の責任者を務め、現職に至ります。
この間、会社のターニングポイントもありました。それは事業領域を「社会インフラ」に絞ったことです。
約10年前、当社がどのような存在となるべきかを真剣に考え、議論し、“人々の暮らしを支える会社になりたい”と、創業以来取り組んでいるこの領域に集中すると意思決定したことは、結果的に当社が飛躍するきっかけにもなりました。
事業内容について
現在の当社は、数あるソフトウェア会社、システムインテグレーターの中でも独自のポジションを築いています。主力事業は先にも述べた「社会インフラ事業」と「先進インダストリー事業」の二つです。
社会インフラ事業は、電力・ガスのエネルギー領域を中心に、交通や防災、通信などといった、ライフラインやインフラに関わるICTシステムの開発・提供を行っています。
例えば電力なら「つくる(発電する)」「送る(送電する)」「(電気を)使う」というすべての領域で、私たちの技術や提供するICTシステムが活かされています。
一方、先進インダストリー事業では、日本のモノづくりを支える企業、人々の生活に欠かせない各種サービスを提供する企業などに対し、ICTシステムやソリューションを提供しています。
自動運転や先進EVといった最先端テクノロジー領域に加え、キャッシュレス決済をはじめとしたペイメントサービスなど暮らしのデジタル化が進行している領域、医療機器の組込みソフトウェアや電子カルテなど医療のデジタル化ニーズにも対応しているのがこの事業です。
いずれも、私たちの日々の暮らしとその発展に必要な産業・サービスばかりです。
そう考えると私自身は先進インダストリー事業も社会インフラの一環だと言えると思っています。
そして、この二つの事業を成長・加速させるカギとなるのが「ソリューション」です。当社はソフトウェア開発会社として創業し、これまでにも多様なプロダクトを作ってきました。
当社独自のソリューションを開発する際は、これまで培ってきた技術力・強みを活かすことができ、かつお客様にとって高付加価値なサービスであることを重要視しています。
代表的な事例は、自治体の防災関連システムの開発をきっかけに技術力とノウハウを培ってきた「GIS:地理情報システム」を用いたソリューションです。
GISは、地図上に様々なデータを重ね、情報を可視化し、分析・シミュレーションができる仕組みです。
身近な例なら、スマホの地図アプリや飲食店の検索アプリなどがわかりやすいでしょうか。各自治体の防災システムやハザードマップにも使われており、気候変動や豪雨の増加などで危機管理の重要性が高まる現代において、その需要は一段と高まっています。
しかし、GISの可能性は防災だけに留まりません。
例えば、新たにスーパーマーケットを設立しようとした場合、その地域の年齢層、性別、家族構成、車の所有率などの情報を地図上にプロットすることで、どの地域にどのような利用者層を想定したスーパーマーケットを出店するべきかを考えたり、周辺地域における電気自動車の所有世帯の割合などから、スーパーマーケットに併設するEV充電設備の規模をシミュレーションすることも可能です。
このようなマーケティング分析など、GISを活用した地図情報の使用方法は多岐に渡り、効果も実証されています。
2023年4月には、当社ソリューション初のSaaS型サブスクリプションサービスとして、店舗情報マッピングサービス「COCOYA(ココヤ)」をリリースしました。
昨年夏にパートナー契約を締結した米国のユニコーン企業Mapbox社の地図プラットフォームをベースにするなど、これまでGISで培ってきた技術やアライアンスで得たノウハウのすべてを組み込んでいます。
今後も、私たちのサービス提供価値をさらに高め、事業の核となる価値観である、「社会インフラの安全と安心」を通じ、更なる社会貢献の実現を目指していきます。
中長期の成長イメージとそのための施策
2023年5月、新・中期経営計画を発表しました。ここでは中長期的な事業の成長戦略として、「ベースロードビジネスの拡充」と「成長事業の強化」の二軸を据えています。
前者については、企業の業務効率化やビジネス変革を支援する“エンタープライズDX/モダナイゼーション”に取り組んでいきます。
「そもそもDXとは何なのか」と模索しているお客様もいらっしゃいますが、当社はそのポイントを「データ利活用」だとご説明しています。
鉄道システムや電力、航空関係など、人々や機械が動き、蓄積されてきた大量の情報、すなわち「データ」こそ、DXの基盤です。
膨大なデータの中から必要な情報を収集し、そのデータを利用して新たなサービスを開発するというケースであれば、データ収集・選択から分析、可視化までを一貫して担っていきます。
この戦略において当社が持つ強みは、データ属性への理解と、大量のデータ収集・蓄積・分析に対応する技術力です。
収集・分析にはAIも活用します。また、東京大学大学院工学系研究科と進める「宇宙・衛星データ利活用」に関する共同研究の成果も活かしていきます。
こうしたデータ利活用ノウハウを当社独自のソリューションにプロットすることで、特定の分野や業界に偏ることなく、様々なお客様のビジネスに対して有益なサービスを提供できると考えています。
これこそ、私たちが目指す当社ならではのDXです。
成長事業としては、「次世代エネルギー」、および「スマートインフラ/スマートライフ」の二つの分野に取り組みます。
まず「次世代エネルギー」でめざすのは、エネルギー会社の「需給の安定化・効率化」とその先にある「カーボンニュートラルの実現」への貢献です。
日本には、東日本と西日本で電力周波数が異なることによる制約の解消や、再生可能エネルギーの導入による環境負荷の軽減など、解決すべき課題が数多くありますが、私たちには長年にわたり、「つくる・おくる・つかう」の全ての領域のICTシステムをカバーし、エネルギー供給を支えてきた実績と自負があります。
また、2030年、2050年という将来を見据えて推進される国のエネルギー政策に基づきエネルギー大手企業が一斉に取り組みを進めていくことから、マーケットの成長余地に加え、このビジネスにも大きな成長ポテンシャルがあると見ています。
「次世代エネルギー」の成長は、効率的で環境に優しいエネルギー供給の実現、人々が安全・安心に暮らせる社会の創造にもつながると考えています。
もう一つの成長事業「スマートインフラ/スマートライフ」は人々の豊かな生活の実現に貢献するものです。
インフラが整備され、暮らしに関わるサービスがデジタル化されたことにより、ここ数十年で生活の利便性は飛躍的に向上しました。
これからは街そのものが「スマート」になっていくのだと考えています。つまり、単に鉄道や施設を整備するだけでは不十分で、街のDX・デジタル化で暮らしやすさや安全性を追求する時代がすぐそこまできているということです。
ただし、いきなり「スマートシティ」が出来上がるかというと、そうではなく、まずは基盤整備が必要です。
私たちが取り組む「スマートインフラ/スマートライフ」は、スマートシティに向けた基盤整備という位置付けです。早稲田大学や慶應義塾大学と進めている産学連携の取り組みも、スマートシティの実現につながるものです。
デジタル技術を活用して、より暮らしやすく安全な街づくり、スマートシティの実現に貢献していきたいと考えています。
投資家の皆様へメッセージ
新・中期経営計画では「デジタル社会の“ あした ” をリードするイノベーションカンパニー」をスローガンに、最高売上・最高利益・最高利益率の連続更新の達成、利益成長型企業への進化を目指してまいります。
同時に、人材を中心に積極的な投資も行い、2030年、その先を見据えたビジネスの核を育てていきます。
これらの取り組みを通じ、株主や投資家のみなさまをはじめとするすべてのステークホルダーの皆様に喜んでいただける会社になりたいと思っています。
本社所在地:東京都港区港南4丁目1番8号 リバージュ品川
設立:1976年3月13日
資本金:5.7億円(2023年6月アクセス時)
上場市場:東証プライム(2007年2月19日上場)
証券コード:3837